「ふーん‥‥‥」
探照灯を照らしてる旗艦の重巡リ級flagshipは兎も角。戦艦ル級、軽巡2隻、駆逐2隻。確かに敵艦隊の姿が確認できる。どうして?どうして私には見えてるんだろう。
「んじゃまあ、先ずは定石通りリ級を潰すか」
無理だよ妖精さん、重巡のflagshipになんて敵いっこないよ‥‥‥みんなで逃げようよ。それか、救援が来るまで何とか‥‥‥。
「なーに言ってんの。まともに動けるのが風雲と卯月だけって状況で逃げられると思う?それに、救援なんて待ってたら間違いなく全滅じゃん」
でっ、でも!幾ら妖精さんが頑張っても‥‥‥私は駆逐艦なんだよ?それに、他の子なら兎も角私の身体なんかじゃとても‥‥‥。
「まぁ見てなって」
私の身体を操る妖精さんは、海面を滑るように走る。それから持っていた連装砲を2発砲撃。1発は何も無い極近距離の海面に着弾。もう1発は左舷の少し遠方に居た敵駆逐に着弾。「ふーん、成る程」って何かに納得した様子の妖精さん。え?2発目は兎も角1発目は何の意味があったの?
「え?あぁ、小口径砲は使った事無かったからさ。試し撃ちってトコ。私は何時も使ってたのは『3号砲』だったからさ」
えっ、妖精さんって応急修理女神なのに3号砲も扱えるの?器用なんだね。
「えっ‥‥‥あっ‥‥‥。うん、まあそんなトコかな」
今の変な間はなんだろう?あっ、魚雷が来る!さっき砲撃した駆逐が居た左舷側から2発、正面から3発。右舷側に避けて!早く!当たっちゃうよ!
「いやいや、右に行ったらル級の砲撃の餌食でしょ。私を狙ってるの見えない?」
あ。本当だ。私の進路を限定して狙いを絞ってるのか。でもそれって。前からも左からも魚雷。旋回してる隙は無いし、もう右に行くしか‥‥‥被弾するしかないって事じゃ‥‥‥。もう駄目だ。
「避ける先ならもう1つあるじゃん」
え‥‥‥もう逃げられる方向なんて。って妖精さん、なんで身体を捻って背中向きで走って‥‥‥‥‥‥えっ?ジャンプした!?あれっ?いま私、空中で2回転くらいした?あ‥‥‥右足一本で着水。敵の魚雷はもう私の後方へと消えてく。妖精さん、凄い。
「いやいや、大した事無いって。中学生までフィギュアスケートやってたからね。回ったほうが跳びやすいっていうかさ。まっ、海面でも出来るように練習はしたけどね」
へぇ、そうなんだ。フィギュアスケート‥‥‥あれ?妖精さんの世界にも中学校とかフィギュアスケートとかあるの?
「あっ、えっと‥‥‥そっ、そうなんだよ!ほら、妖精は艤装作ったり扱ったりできなきゃいけないじゃん?アハ、アハハハ‥‥‥っと、此処からが本番だよ?気を引き締めて」
そっか。そうだよね。妖精さん達の事はよく分からないけど、色々大変そうだもんね。
それから。妖精さんの口数がガクンと減った。軽快に‥‥‥うん、まるで踊ってるような動きで、進路上に居た軽巡を雷撃、撃沈。その間にル級が砲撃してきたけど、妖精さんは全部避けてみせた。カンとかじゃない。妖精さんはちゃんとル級の方を確認して、撃つタイミングや砲の向きを見てる。その上、放たれた高速の砲弾を視認しながら、最低限の動きで避けてみせてる。それは丁度、フィギュアのスケーターが曲に合わせて演じてるかのように。凄い。身体は運動が苦手な私のものの筈なのに。
「よしっ、もらった!」
そうやって私の砲撃の届く距離まであっという間に詰めた妖精さん。リ級flagshipに砲撃。あれ?でも砲弾はリ級の左右に着弾。此処まで来て外した?
って思った瞬間。正面から爆発音。リ級flagshipは海の藻屑となって沈んでいく。えっ?まさか魚雷?砲撃を外したのもリ級の進路を限定するため?何時の間に撃ったの?
「説明は後!次はル級だよ!」
ぐるっと急旋回。近付かせまいとしてル級が幾度となく砲撃してくる。それに、軽巡も援護砲撃。妖精さんはその砲弾を目で追って、全部紙一重のところで避ける。
けど。もう少しでル級に届く、って所で、背中側から衝撃を受けて、私の身体は前のめりになって倒れそうになる。敵の駆逐が砲撃してきたみたい。私は中破。「チッ」って舌打ちした妖精さん。駄目だ、速度が思うように出ない。あと少しなのに。
「‥‥‥まだだよ!」
妖精さん、魚雷を発射管から2本抜いて、今まさに私の身体に砲撃しようとしてたル級に向かって投げた。『は?』って顔して一瞬止まったル級の隙を見逃さず妖精さんは2発砲撃、魚雷に命中して爆発。これでル級は大破。同時に発射した魚雷で軽巡は撃沈したけど‥‥‥。
「くっそう‥‥‥落とせなかったか‥‥‥」
もう第一戦速を出すのがやっとなのに。大破とは言えル級はまだ健在、駆逐も2隻健在。私は今度こそ駄目だって覚悟した。
『よくやったって誉めてやるっぴょん』
通信が聞こえて。背後から2度の爆発音がした。それから、私の身体の右の海面をすり抜けて真っ直ぐ走っていく酸素魚雷の雷跡。魚雷は前方のル級を捉えて、見事に撃沈。
『うーちゃんにかかればこんなものっぴょん!』
そっか。卯月ちゃんも居たんだよね。良かったぁ。何とかみんな生き残れたんだ。
「いやぁ、助かったよ」
『当たり前ぴょん!新米を助けるのはセンパイの役目っぴょん!』
ふぅ、って大きく息を吐いた妖精さん。でも妖精さんは凄かった。私なんかとは比較にならないくらい。
「いやいや、駆逐艦の身体は慣れてないからね。正直手探りだったよ。それに今回は風雲の『目』があったお陰かな」
疲弊してるみたいで、その場に座り込んだ私の身体。でもこれなら‥‥‥私よりも妖精さんが『風雲』をやったほうが‥‥‥そうだよ、出撃の時は今回みたいに妖精さんにやってもらえば、私なんかより余程役に立てる。
「駄目に決まってんじゃん。いいの?何度も私に身体を委ねてると風雲の意識は少しずつ薄れていっちゃうんだよ?」
‥‥‥え?
「ほら、漫画とかでよくあるじゃん?闇の力を使い続けるとその闇に飲まれる、的な。あれと一緒でさ、風雲の意識は最後には消えて、全部私に上書きされちゃうんだよ。風雲の魂は消滅して、私と入れ替わっちゃうの」(大嘘)
私が、消える?それは‥‥‥嫌だよ。やっぱり自分で何とかするしか無いのかな‥‥‥。
「大丈夫大丈夫。実際この身体に慣れない私がこれだけ動けたんだからさ。風雲もいつか出来るようになるって」って励ましてくれた妖精さん。そうなのかな?私でも出来るようになる?
「なるなる!そうだ、提督と神通に『風雲に合った訓練法』を提案しといてあげるからさ」
私に合った?確かに今の神通さんの訓練には付いて行くのは辛いし、実際そんなのがあるならやってみたいけど。でもそんな我が儘みたいな事許可してもらえるの?
「へーきへーき。私も他の艦娘とは別メニューで鍛えられ‥‥‥‥‥‥っと、何でもない。 まっ、そういう事だから。あっ、それとさ。今から身体返すけど、先に謝っておくね‥‥‥ごめん」
えっ?うん、返してくれるの?わかった。
そのすぐ後に妖精さんがポンッ、て私の胸の辺りから出てきて『アハハハ』って苦笑いしてる。最初はその意味が分からなかったんだけど、直ぐに思い知る羽目になった。
確かに中破してるし身体もダメージを負ってる。傷も痛む。けどそれとは全く違う、全身の疲労、痺れ、痛み。それも普通じゃない、この場から一歩も動けないくらいの。
「妖精‥‥‥さん‥‥‥?あの‥‥‥これ‥‥‥?」
『だから謝ったじゃん。へーきへーき。入渠すれば回復するって』
あれだけの動きをしてたんだもん。やっぱり私の身体、酷使してたんだ‥‥‥。もうやだ。絶対妖精さんには頼らないから。
風雲(の身体の鈴谷妖精)のターンでした。最後はうーちゃん!が美味しく頂きました。
いやー、何時以来かの連投。え?艦これがメンテだから?いやいや、今回はたまたまですよ、たまたま。今週は少し余裕があるので今のうち投稿ってだけです。
……ぬいぬい改二確定。早くメンテ明けないかぁ。