海岸の岩の上に座り、水平線をぼーっと眺める少女が一人。
その少女の姿を見付けた身長のある女性がゆっくりと近づいてきて、右隣の岩の上に座った。
「Hey、此処に居たのね。探したワ」
日本人ではない長身の女性のその言葉に僅かに反応してチラリ、と視線だけを向けた少女。視線をまた水平線へと戻して座ったまま応えた。
「今日はヒマなの?」
「ヒマって訳じゃ無いケド。a little breakって所ネ」
長身の女性の答えに「まっ、良いけどね」と呟いて溜め息をついた少女。今度は顔を女性の方に向け悪戯な笑みを見せた。
「賭けは私の勝ちよ」
その「賭け」の結果が余程予想外だったらしい。女性は「Really!?」と大袈裟とも思える位に驚いた。
「demon classとbattleshipも居たのにあの包囲を突破したの!?」
「そうよ。当初の通り軽巡と駆逐の少数のみで、ね」
「Umm‥‥‥」と唸りまだ納得いかない様子の女性の背中をポンッ、叩いた少女はしたり顔で「だから言ったじゃない」と勝ち誇った様子。
「どうやってあのencirclementを抜けたの?穴は無かったように見えタケド?」
それを聞いて少女は少しだけムッとした表情に変わった。勿論、目の前の女性に苛ついた訳ではない。
「理由のひとつは慢心。『彼女』が勝ったと思って油断しなければ、結果は違ったかも知れないわ。それと、一隻のある駆逐艦の飛び抜けた目の良さ。あれは厄介かもね」
「けどそれだけじゃないデショ?他にもreasonがあったんデショ?」
女性の言葉を受け、今度はまた悪戯な笑みに戻った少女。「そうね」と今度は女性の左耳に顔を近付け囁く。
「夕立よ」
「ユウダチ?‥‥‥Oh、あのRed Eyes!成る程ね!」
夕立の仕業、と聞いて女性はどうやら納得したようだ。ただ、その表情は何処か不気味、というか悪意のあるものに変わった。まるで‥‥‥そう、まるで親の仇でも見付けたかのような表情に。
「成る程ね、じゃないわよ。ホラ、賭けに負けたんだから私の言う事を聞いてよね」
パンッと少女に背中を叩かれ、「Umm‥‥‥仕方ないワネ」とヤレヤレと両手を広げる女性。少女はその様子も意に介さずに話し始める。
「そっちの攻略は進んで無いんでしょ?」
「あのNew Aircraft carrierが現れてから苦戦してるワ。コッチの方が数は圧倒してるんダケドネ」
どうも女性の返答の内容が悪かったようだ。再び「はぁ」と溜め息をついた少女は、今度は自身と二倍近くあろうかという体格差のその女性を下からギロリ、と睨んだ。
「だ、か、ら。何時も言ってるじゃない。その『数でゴリ押しすれば勝てる』って考えは捨てなさいって」
少女は立ち上り、「because‥‥‥」と言い掛けた女性の言葉を遮る。
「戦争の基本は情報と兵站よ?その両方を潰す所から考えないと。だから先ずは‥‥‥厄介なイギリスを孤立させる」
「Oh,I see!確かにWarspiteの艦隊は厄介ダケド、孤立させて動けなくしてしまえば良いのネ!」
「そうよ。それと、ロシアとユーロの陸路の遮断。そっちには陸上型も居るでしょ?」
「O.K!分かったワ!」
「まだよ、聞きなさい。それと同時に海上の封鎖もよ?日本との海運の遮断は必須よ。鍵になるスエズ運河も押さえないとね。それはコッチで手配するわ。あ、それから」
最後に少女は思い出したかのようにそれらを付け足した。
「プリンツ・オイゲン、ビスマルク、ローマ、イタリア、ザラ、ポーラ、リシュリュー。それと雲龍。撃破すべき最優先目標よ、覚えておきなさい」
「Leave it to me!」
答えてグッと親指を立てた女性は、そのまま海面へと降り立ち、ゆっくりと海上を移動し始めた。「Red Eyesト足柄ノ首、次ハ期待シテルワ。good luck、イカヅチ」と背中を向けたまま右手を振る。
「エエ。貴女モネ、アイオワ。モーット私ヲ頼ッテモイイノヨ?」
ニヤリ、と笑いそう返事を返した少女‥‥‥レ級も、ゆっくりと岩場から降りて海面に立った。
「聞イテタワネ?」
その言葉に呼応するように海面が膨れあがり、そこから髪まで真っ白な少女が顔だけを海上に覗かせ、笑う。
「フフフッ。聞イテタノネ。運河ノ制圧ハ‥‥‥任セルノ!」
再び海面下へと潜った姫級の潜水艦を見送って、少女‥‥‥レ級は動き出しだ。
「サテ。私モヤル事ヤラナクチャ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
風雲よ。
今は提督の入渠完了待ちで、まだショートランド泊地に滞在中。私も陽炎も、提督の身体の事は今回初めて教えてもらった。陽炎は『あんな状態なのに提督に無理させちゃった』って愕然としてたわ。
それで私は、提督に謝られた。『嘘をついてごめんね』って。あのリボン、妖精さんが言ったように本当に只のリボンだったらしくて。でも、そんな事言われてもやっぱり信じられなくて。じゃあそれなら、って天龍さんに海上に連れ出されて。私の力は本物だった。偽りや借りものなんかじゃない、本当に私自身の力。確かに艦隊運動や他の事はまだまだだけど、私にも取り柄があるんだって分かって。凄く嬉しくて思わず泣いちゃったわ。
それで天龍さんに「夕立の命令だからな。帰ったら訓練つけてやる。覚悟しとけよ」って言われた。少し。本当にだけど、今までよりは前向きになれるかも知れない。
私の当面の目標は『一般的な艦娘のレベルに追い付く事』。不知火先輩も協力してくれるって言ってるし、せめて期待には応えられるようになりたい。
あ、それでね?今その不知火先輩が何をしてるのかっていうと。
「どうして止めるのよ!不知火だってムカついてるんでしょ?なら一言ガツンと言わせなさいよ!」
「ですから余計なお世話だと言っているではないですか。陽炎には関係の無い事です」
‥‥‥目の前で陽炎と喧嘩してるんだよね。
「はぁ?関係ないですって!?冗談はやめてよね!ネームシップとして黙ってられる訳ないじゃないの!」
「ですから!これは不知火と司令の問題なんです!貴女の出る幕ではありません!」
ほら、その‥‥‥不知火先輩は提督の事好きで、それで先代陽炎の事を引き摺ってて。そんな状況で陽炎を着任させて、提督はあんな態度で。陽炎は『不知火をコケにしてる!』って怒っちゃったのよね。それで、まだ入渠してる提督の所へ文句を言いに行こうとして、不知火先輩に止められたの。陽炎と同じ部屋に泊まってる私の目の前で。
「それに!まだ貴女をネームシップと認めた訳ではありません!」
「何ですって!?アッタマ来たわ!表に出なさい不知火!」
あ、ちょっと‥‥‥今の陽炎じゃどうやっても不知火先輩に敵いっこないと思うんだけど。
「いいでしょう。覚悟しなさい陽炎。その高慢な鼻をへし折ってやります。如何に貴女が半人前かを解らせてやるわ」
あ、不知火先輩も‥‥‥。二人の気持ちは分からなくも無いんだけど。不知火先輩は周り、というか第三者に大好きな提督の悪口を言われたくなくて。陽炎は提督の不知火先輩への扱いに我慢出来なくて。でも陽炎は兎も角、不知火先輩が冷静になれば状況は落ち着くような気がするんだけど。
「風雲も不知火に何か言ってやってよ!」
あ。矛先が私に‥‥‥。「不知火に落ち度でも?」って不知火先輩に睨まれた。正直、その眼光が怖くて漏らしそうになった。あ、も、勿論漏らしたりはしてないわよ?
あーあ、提督早く回復してくれないかなぁ。この部屋に居たくない‥‥‥。そうだ、後でお風呂に行くフリをして鈴谷さんと阿賀野さんの部屋に避難しよう。
悲報:風雲、レ級さんに目を付けられる。
前半は地の文で書かせていただきました。語りだと文の頭からレ級って事がバレちゃうので。
という訳で、欧州攻略作戦(深海側)再始動です。深海伊19さんが再登場。オイゲンちゃん逃げてぇ!
スエズ運河‥‥‥欧州打通作戦‥‥‥うっ、頭が‥‥‥。
※※以下ネタです※※
◆◆神風さんの受難◆◆
・・・艦娘遠征中・・・
艦隊が帰投しました!
神風「ふーっ。さて。執務室に報告に行かなきゃ」
神風「‥‥‥あれ?中から変な声が聞こえる」
<‥‥‥ノニャ
神風(今、何だか『にゃ』って聞こえたような?多摩さんが居るのかな?)キキミミタテル
<ツカレタノニャ
神風(多摩さんじゃなくて漣の声だ!?)
<ダメ?ウーン、ソレナラ コレハドウ?ツカレタピョン
<イイジャン、ヒザマクラ クライ
<♪
神風(うわぁ、うわぁ///あの漣が司令官に甘えてる!?///)
青葉「ですよね、びっくりしますよねぇ」小声
神風「うわっ!?びっくりした!」小声
青葉「本当は記事にしたい所なんですけどね」小声
神風「どうしてしないの?」小声
青葉「そりゃあ‥‥‥記事にでもしようものなら解体コースまっしぐらですから」ガクブル
神風「そっ、そっか」
青葉「ですのでこれは口外禁止、という事で」アディオス
神風「‥‥‥出直してこよう」スタスタ
神風「ふぅ」自室で一息
<コンコン
神風「あれ?誰だろう?はーい」扉アケル
漣 ( ・ω・)ノ
神風「あっ、漣!?どっ、どうしたの?」
漣「カミッカー、さっきの聞いてたよね?」
神風「なっ、何の事?」アセアセ
漣「聞 い て た よ ね ?」威圧
神風「」
漣「言いふらしたりしたら‥‥‥分かるっしょ?」威圧
神風「アッハイ」ガクブル
漣「よし、じゃあ遠征の報告行こうか?」ニッコリ
神風「アッハイ」ガクブル
白露改二いよいよ実装。作者の白露はレベル76で慢心中。あ、(祝)天龍改二実装。