抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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ブイン基地へ。中編その2

 

 

「休暇の所を手伝わせてしまってすまない」

 

んー、長門は気にし過ぎデス。ワタシはテートクの役に立てて嬉しいデスし。

 

「No problem、此れからは熊野のぶんも頑張らないとネ」

 

Hi、帰国子女の金剛デース!

忙しいテートクの頼みで今は長門と一緒に工廠に向かってマス。頼んでいた物がU.S.A.から届いたみたいデース。ワタシ達にとっては色々と思うトコロがある装備デスネ。

 

「でもU.S.A.もよくあんな物ワタシ達に寄越しましたネ?」

 

「ああ。その分此方からは二式大艇の技術を送ってあるからな」

 

そうなんデス。日本からは二式大艇の技術提供。秋津洲が抗議してたケド、別に彼女の大艇を取り上げた訳じゃ無いしネ。それに見返りは大きいヨ。U.S.A.からはF6F-3Nと夜間作戦航空要員妖精さんの為のマニュアル、それと16inch三連装砲Mk.7。そうデース、あのアイオワ級の主砲デスネ。大和型の主砲と比べると威力はそこそこですケド、明石に頼めばもう少し性能が上がると思いマス。まあ、肝心の明石は今ショートランドに居るケドネ。

 

工廠に着きマシタ。それじゃ中へgoデスネ。

 

「夜間航空機の方は予定通り赤城に試してもらおう。金剛は16inch砲の性能試験を頼む」

 

「O.K.。じゃあパパッと済ませちゃいマショウ」

 

長門は夜間機の方を見に行きましたネ。それじゃワタシは16inch砲を‥‥‥。

 

『Hi!貴女battleshipネ?』

 

‥‥‥何かあそこの椅子の所に妙にfriendlyな妖精さんが居ますネ。日本の妖精じゃ無いみたいデース。セーラー服に金髪の長い髪‥‥‥U.S.A.の妖精さんデース。

 

『Youがアレを使うのネ?任せて!Meが貴女を一人前のカンムスにしてあげるワ!』

 

んん?何か少し勘違いしてませんカ?ワタシは練度も限界突破してるから新人じゃ無いんダケドネ。ホラ、左手の薬指にringしてるデショ?この前テートクにpresentしてもらったんデース。ケッコンカッコカリのring‥‥‥エヘヘ、エヘヘヘ、エヘヘヘヘ‥‥‥。

 

『‥‥‥聞いてる?』

 

‥‥‥っと。sorry、ちょっとトリップしてタヨ。ちょっと()だらしない顔してたかもデース。

 

「コホンッ、ちゃんと聞いてマスヨ。それにしても妖精さん、日本語上手いデスネ?」

 

ピョン、ってワタシの右肩に飛び乗った妖精さん、エヘンと胸を張ってマス。ちょっと可愛いデス。

 

『Japaneseはアシガラに教わったからネ!‥‥‥そう言えばアシガラはドコ?元気にしてるノ?』

 

見掛けに依らず古参の妖精さんなんデスネ。足柄教官‥‥‥妙さんがU.S.A.に行ってたのはかなり昔の筈なんダケドネ。アッチもよくそんなベテラン妖精さんを出す気になったヨネ?

 

「足柄教官ならもう引退しマシタ。今はココには居ませんヨ?」

 

あ、妖精さんがシュン、て意気消沈しちゃいマシタネ。そんなに会いたかったん‥‥‥そうデスヨネ。こんな異国の地で、知ってる人間が妙さんだけだから不安なんデスネ。O.K.デス。性能試験が終わったら妙さんに会わせてあげマショー!

 

「分かりマシタ!今夜足柄教官に会わせてあげマース!」

 

そう言ってウィンクしてみせたワタシに、気を落としていた妖精さんもパアッ、と分かりやすく笑顔を取り戻したみたいデース。うん、今日も良い事しマシタ!

 

『Really!?恩に着るワ!ええっと‥‥‥』

 

恩に着るなんて言葉知ってるんデスか。本当に日本語上手いデスネ。っと、あ、成る程ネ。まだ名乗ってなかったデスネ。妖精さんが聞く前に名乗っちゃいマショウ。

 

「ワタシの名前なら金剛デース」

 

‥‥‥アレ?ワタシ今、何か変な事言いマシタっけ?妖精さん、ワタシが名乗ったら目を丸くして固まっちゃいマシタヨ?って思ったら、凄い剣幕で急に身を乗り出して来マシタ!?ビックリデース。

 

『Youがあのコンゴウ!?Really!?』

 

「ハイ、正真正銘の金剛デース」

 

って言った瞬間、妖精さんはワタシの顔目掛けてダイブ、抱き着いて来マシタ。アレ?ワタシそんな有名デシタッケ?コレはもしかしてautograph(サイン)の練習しておいた方がいいデスカネ?

 

『コンゴウ、貴女に会いたかったワ!!』

 

随分情熱的デスネ。ワタシってば何時の間にか向こうの妖精さん達に大人気だったんダネ!照れマスネ。

 

『向こうじゃ誰も信じてくれなかったの。だから志願して態々Japanまで来たのヨ?コンゴウなら信じてくれるワヨネ?』

 

妖精さんの次の言葉で、ワタシは一時停止。けれど直ぐに全部理解出来マシタ。

 

『Iowaヨ。I'm Iowa,BB-61』

 

「‥‥‥本当デスカ!?」

 

こうしちゃいられないデース!これでヤツの‥‥‥中枢棲姫を止める『Key』を手に入れマシタ!!長門も連れて直ぐにテートクに報告に行きマショウ!!性能試験なんて後回しデース!!

 

「Hey、長門、長門!大変デース!!」

 

「なんだ金剛、早く艤装を身に付けろ」

 

長門も鬱陶しそうに言ってる場合じゃ無いデース!この子が、この子は!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

昼食を終えた不知火とポイポイは、言葉通り海岸へと来ました。基地からは少しばかり距離はあるものの、深海棲艦が現れても日向さん達なら問題無く対処できるでしょう。それにポイポイも不知火も昼休憩中。特に問題は無い筈です。

 

それにしても。つい数ヵ月前までは観光客で賑わっていたであろうこのビーチにも、今は人の姿は有りません。やはり深海棲艦の影響は大きいですね。早く人類の脅威を取り除かなくては。その後の外交は‥‥‥霧島さん達に任せるしかありませんが。

 

!!

ポイポイが、不知火の右手に手を伸ばしてきて繋ぎました。不知火としてはあまり歓迎できない雰囲気ですね。

 

「ヌイヌイちゃん。少しだけ話、いいかな?」

 

「その前に一度手を離してもらえませんか?」

 

ポイポイは「それは駄目。だって、逃げられちゃうかも知れないでしょ?」と。不知火にとってあまり良い話では無さそうですね。

 

「呉に戻ったらね、指輪を受け取って欲しいの」

 

やはり、ですか。つまりそれは‥‥‥装備品として渡すという事ですよね?不知火の気持ちには応えずに。

‥‥‥あ。駄目ですね。涙が‥‥‥堪え切れない‥‥‥。

 

「待ってヌイヌイちゃん、泣かないで‥‥‥ううん、泣いたままでいいから聞いて」

 

ポイポイは不知火の右手を引き、そのまま正面から不知火を抱き締めました。ポイポイの胸に顔を埋め、不知火は情けない事に啜り泣き、同時にポイポイの言葉に耳を傾けました。

 

「うん、先ずね。ヌイヌイちゃんに指輪を渡す理由からね。ヌイヌイちゃんには、生き残って欲しいの。例えどんな状況に陥っても、生きて欲しい」

 

指輪による練度限界の突破。それは艦娘としての性能や、耐久力の向上をももたらしてくれます。つまり、指輪を渡す事によって、不知火が生き残る確率を少しでも引き上げよう、というのが一つのようです。

 

「それからね、もう1つ。私とヌイヌイちゃんの絆の証として。今はそれじゃあ駄目かな?」

 

つまり、貴女はまた結論を有耶無耶にしようというのですか‥‥‥ですが‥‥‥。

 

「ごめんね。結論は、少なくとも今は出せない。だから、それまでの仮の証の指輪。この戦争が終わったら、きっとちゃんと答えを出すから」

 

やはりポイポイはズルいです。こうして胸の中に抱き締められて、可能性がゼロじゃない、と思わせるようなそんな事を言われたら。今は納得しようと思ってしまう。それが偽りだとしても、信じようと思ってしまうではありませんか。

 

「‥‥‥嫌です。まるでフラグにしか聞こえません。それではまるで‥‥‥ポイポイが居なくなってしまうかのように聞こえます」

 

涙を堪えやっと絞り出した不知火の声。あと一押し、信じるに足りると思える一押しの言葉をください。そうすれば、きっと不知火は貴女の指輪を受け入れられます。ですから。不知火の心に響く最後の1ピースを。

 

 

 




いやー、長かった。ぬいぬいに指輪を渡すまでに124話使いました。察しの通り、少しずつこの作品の終話が近づいて来ました。
え?この話のあとの不知火と夕立ですか?野暮ってものです(次回に触れます)。

Iowa妖精登場。この子もやっと出せました。文字通り対中枢棲姫の鍵となる妖精さんです。



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