抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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突撃!

 

 

遂にポイポイの私室の前まで来てしまいました。あとはこの扉をノックするだけです。落ち着くのよ。こんな時こそ深呼吸をして‥‥‥スーッ、ハーッ。

 

コンコンコン、と軽く扉を叩く。まだ起きていたらしく「はーい」とポイポイの声が聞こえてきました。もう後戻り出来ない。覚悟を決めましょう。

 

「‥‥‥不知火です」

 

「ヌイヌイちゃん‥‥‥?鍵なら開いてるわ」

 

鍵をかけていない、とは何と不用心な。有り得ないとは思いますが、万が一不審者が鎮守府に侵入して寝ているポイポイの部屋に来たらどうするつもりですか。全く、ポイポイは自分の魅力を自覚すべきです。何かあってからでは遅‥‥‥いえ、そうですね。そういった事態になっても対処できるよう、やはり不知火が何時も傍に控えているべきですね。ええ、そうですとも。邪な気持ちなど一切ありません。これはポイポイを守る為の正当な行為なのです。ですから不知火がこれから部屋に入って同衾‥‥‥ゴホンッ、同じ部屋で待機するのは当然というものです。

 

もう夜も遅いですし静かに扉を開くと、白のTシャツに黒い布地のショートパンツという非常にラフな格好のポイポイは、ベッドでは無くテーブルに書類を広げて見ていたようです。

 

「心配して来てみれば予想通りですね。全く、まだ起きていたのですか」

 

「ええ。私にできる事は何でもやっておかないとね」

 

ニコリとして不知火に視線を向けるポイポイの表情に、思わずドキリとしてしまいました。

 

「‥‥‥ヌイヌイちゃん?」

 

ハッ!?思わずボーッと見とれてしまっていたようです。いけないいけない。此処に来た言い訳‥‥‥ではなくて理由を説明しておかねば。誤解が生じるかも知れませんし。

 

「気持ちは分かりますが。休むのも立派な仕事ですよ?ポイポイは只でさえ身体に負担を掛けているのですから」

 

不知火はポイポイから書類を取り上げ、背中を押してベッドへと誘導しました。やはり来て正解でしたね。

 

「身体を壊してしまっては本末転倒というものです。何時でも万全な状態で不知火達を導くのがポイポイの仕事。今後はこのような仕事を引き摺っての夜更かしは認めません。秘書艦である不知火が毎日こうして監視しますので」

 

「毎日‥‥‥ね。フフフッ」

 

なんですかポイポイ。そのように含み笑いなどして。今の不知火の説明に落ち度など無かった筈です。至極真っ当な言い分だった筈。なのにどうしてそのように笑うのですか。

 

「そうね。それじゃお願いしようかな」

 

言質を取りました。これで毎晩堂々とポイポイの部屋に入れ‥‥‥ではなくて。全く、不知火が居ないと体調管理も出来ないようではポイポイもまだまだです。仕方ありませんね。

 

「ではこの書類はまた明日にでも」

 

ムッ、この書類。東郷大将が呉に居た頃の作戦の計画書ですね。それも数年分の。勉強熱心なのは構いませんが、ポイポイにはポイポイの魅力というものが‥‥‥。

 

「ヌイヌイちゃんも一緒に寝よっか?」

 

‥‥‥はい!?突然何を言っているのですか。待ってください。確かに一緒に寝れたら良いと思っていたのは事実です。しかしまさかポイポイから言ってくるとは思ってもいませんでした。不知火が如何にして今夜此処に泊まっていくかの理由を考えていた所だったというのに。

 

「えっと、それは、不知火は‥‥‥」

 

いざその時になると言葉が出ません。こういった事態に慣れていないせいですね。

 

「フフフッ。だってヌイヌイちゃん、その為に来たんでしょ?そんな格好だし」

 

うっ‥‥‥言われてみればそうですね。その気が無いならパジャマでポイポイの部屋に来たりはしませんからね。何も考えずにこの格好で来てしまいましたが‥‥‥不知火の落ち度、ですね。

 

「ほら、おいでヌイヌイちゃん」

 

此処に入れと言わんばかりにポイポイは毛布を捲ってポンポン、とベッドを叩いていますね。

‥‥‥此処はポイポイの部屋。誰も不知火達を見ている者は居ない訳ですし。一緒に寝るのは恥ずかしいですけれど、これは千載一遇のチャンスです。行かない手は有りませんね。

 

全身真っ赤になりながらも、不知火はポイポイが招くがままにベッドへ。

嗚呼、これはいけませんね。恥ずかしさよりもポイポイの温もりと心地好さと安心感が‥‥‥駄目です‥‥‥よく‥‥‥眠れそう‥‥‥。

 

スゥ‥‥‥スゥ‥‥‥。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「暁先輩、この時は?」

 

「ああ、これね!この時はね‥‥‥」

 

フフンッ、暁よ。

今は風雲と一緒に暁が纏めた作戦ノートを見てるんだから。もう夜だしちょっと眠いけど、後輩の面倒を見るのは一人前のレディとして当然よね!

風雲も昼間は天龍との訓練で疲れてるのに頑張ってるんだもん。暁だってこのくらいへっちゃらだし!

 

あれっ?ノック音がするわ。

 

「まだ起きてるかしら?陽炎よ」

 

あれ?陽炎?こんな時間に何の用かな?不知火さんが居るのに出歩いて大丈夫なのかしら?

 

「起きてるわ」って返事したら、陽炎は部屋に入ってきた。あ、制服じゃなくて無地のカットソーにスパッツだけの格好か。もう夜中だし当たり前よね。

 

「あれ?風雲は兎も角暁先輩も起きてるんだ?」

 

「『兎も角』なんて失礼しちゃうわ。暁はお姉さんなんだから起きてるに決まってるし」

 

もーうっ、陽炎は暁の事御子様扱いするんだから。暁だってもう子供じゃないん‥‥‥ふぁ~ぁ。

 

「あっ‥‥‥ありがとう暁先輩。後は私一人で読んでるから」

 

風雲まで暁の事御子様扱いするの?プンプン。でもまぁ、眠いのは確かよね‥‥‥そっ、そうよ!レディは美容?にも気を配るものなんだから。夜更かしはお肌の大敵?なんだから。

 

「そっ、そうよね。夜更かしはお肌に良くないし、一人前のレディは寝る時間よね」

 

折角来てくれた陽炎には悪いけど、暁は先に寝る事にするわ。明日起きれなかったら困るもん。不知火さんや神通さんに怒られちゃうもんね。

 

「それじゃ二人とも、また明日ね」

 

ふぁ~ぁ。駄目ね、限界みたい。おやすみなさい‥‥‥。

 

「やっぱり暁先輩は見た目相応ね」

 

「駄目だよ陽炎、暁先輩だって頑張って私の我が儘に付き合ってくれてるんだから」

 

暁が眠ったあと。陽炎と風雲は暁を起こさないように小声で話しながら一緒にノートを見てたみたい。もーっ!!二人ともどうして暁の事先輩扱いしてくれないのよ!

 

「陽炎こそ大丈夫なの?不知火先輩は?」

 

「あー‥‥‥不知火ね‥‥‥」

 

夜中に出歩いたら不知火さんに怒られる、って心配してる風雲に、陽炎は何だか歯切れが悪いみたい。不知火さんはどうやら司令官のお部屋に行ったみたい。えっ?お泊まり‥‥‥?確か不知火さんって司令官の事‥‥‥。おっ、大人ね‥‥‥。

 

あっ、あっ、暁は一人前のレディだもん、暁だってそのくらい経験あるんだから!ほっ、本当なんだから!夜中に雷が鳴ってて怖くて一人じゃ眠れなかったから東郷さんの所に避難した事だってあるんだから!

‥‥‥え?それは東郷さんに子供扱いされただけ?そっ、そうなの?夜一緒の部屋で寝れたら大人なんじゃないの?違うの?

 

 




グハッ
おかしい、ブラック珈琲飲んでる筈なのに甘いんですけど?

ぬいぬいさん、やはりチョロインだった回。しかも陽炎にモロバレ。




さてさて。秋刀魚イベ終了。メンテ後に谷風に改1.5が実装ですか。彼女は果たして乙改(対空)、丁改(対潜)、丙改(重雷装)のいずれになりますことやら。
それとゴトランドの人気がジワジワ上昇してますね。掘り艦としては久々でしょうか?過去改竄系とかいう妙なカテゴライズされてるみたいですし。秘書艦にすれば分かりますが、ゴトランドはまぁ距離感が‥‥‥近い。



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