「はぁ‥‥‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥‥」
あれから何日経ったかしら。羅針盤も失って、元々少ししかなかった水もレーションも尽きて、僅かに残った燃料は無駄に出来ないから流されるままに海面を漂って。流石に限界が近い。
私だけなら兎も角、大怪我を負ってるこの子を早く入渠させなきゃいけないのに。
救難信号は出し続けてるけど、これといって変化も無し。今自分が何処に居るかも分からないわね。
‥‥‥あ。遠くに微かに島が見える気がするわ。Phantomじゃなければいいのだけれど。
「Insel‥‥‥。Phantomじゃない‥‥‥。この子‥‥‥生き‥‥‥てるわよね?」
この子も意識は無いみたいだけど息はしてるみたい。けれどこの子に残された時間が少ないのは明らか。あの島で体力を少しでも回復させて、この子の命を繋ぐ手立てを考えないと。
「動ご‥‥‥いて‥‥‥。せめて、あそこまで‥‥‥」
私の艤装、それに燃料。お願いだからあの島に辿り着くまで保って。私ももうこれ以上は‥‥‥。
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」
どうにか上陸はできたけど、艤装を持っての移動は無理ね。通信器だけ持って艤装は砂浜に置いて、この子を背負ってせめてあの木陰まで行かないと。
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」
身体に力が入らない、思うように動かない。でも、この子を少しでも休ませないと。折角助かった命だもの。何とか助けてあげたい。
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」
普段なら艦娘一人くらい背負って移動しても何て事もない距離だけど、今の体力じゃとてつもない距離に感じる。
震える足を気力で動かして、一歩一歩時間がかかりながらも何とか木陰に辿り着いたわ。でも‥‥‥駄目ね、私も限界みたい。この子を何とか寝そべらせて。私もその隣に横になる。
大丈夫、この子もまだ生きてる。私が‥‥‥私しか動けないのだから私が何か見つけて来ないと。
‥‥‥しまったわね。横になったのはいいけれど、起き上がるだけの体力が残っていない。このままじゃ私まで‥‥‥。起きなきゃ、起き上がらなきゃ。
『聞こえているか?聞こえているなら応答するんだ』
‥‥‥通信!!救難信号が漸く届いたのかしら。何処かの基地の通信範囲内なのか、或いは遠征中の艦隊か。どっちにしても応答しないと。
「‥‥‥た‥‥‥」
声が‥‥‥出せない‥‥‥。こんな時に限って‥‥‥。お願い、せめて一言、一言でいい。返事を返せれば。
『何だ?何が言いたい?大丈夫か?こちらブイン基地、日向だ。聞こえているなら応答してくれ』
ニホン語‥‥‥ヒュウガ‥‥‥?ブイン‥‥‥そう‥‥‥ニホンの。
「助け‥‥‥を‥‥‥。私‥‥‥は‥‥‥マックス‥‥‥シュルツ‥‥…」
やっとの事で絞り出せたのはその言葉だけ。『ドイツの駆逐艦か。分かった、必ず助けてやる』っていう通信を聞いた後に、安心感を感じたせいか私の意識は急激に遠退いていく。良かった。何とか助かりそう。リベッチオ、貴女ももう少しの辛抱よ。もう少ししたらニホンの艦隊が助けに来てくれるわ。
―――――
―――
―
どれくらい眠っていたかしら。次に目覚めた時は、海上でヒュウガに抱かれていたわ。視界の隅に、リベッチオを慎重に運んでるリュウホウの姿も。今も戦ってるであろう僚艦の事を考えると胸が締め付けられる思いだけど、先ずは私達は身体を治す事が先決ね。
‥‥‥次はやられない。首を洗って待っていなさい、潜水棲姫。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『両名とも艤装は大破。何日も海上を漂流していたせいだろう、栄養失調と脱水症状がみられる。マックス・シュルツの方は極度に体力を消耗してはいるが、傷の方は大した事は無い。リベッチオはあの怪我でよく生きていたものだ』
「そう。ありがとう」
沖立です。
今はまだ早朝。ブイン基地の日向さんの報告を受けていた所。
ドイツの駆逐艦、マックス・シュルツとイタリアの駆逐艦、リベッチオ両名を保護したとの事よ。二人が生きていてくれて本当に良かった。
エジプトからの情報に依れば地中海を警邏中だった二人の所属艦隊は、紅海側からの深海棲艦の艦隊の襲撃に対し応戦、スエズ運河近辺では今も一進一退の攻防が続いてるそうよ。スエズ運河を失えば、此方からヨーロッパへ行くには喜望峰を回って南下するコースか陸路を往くしか無くなる。海を北から回っていくのは現実的じゃないしね。少なくとも海運は大きく制限されるわ。何とか深海棲艦を退けてくれればいいんだけれど。
えっ?そうね、今は執務室に私一人。ヌイヌイちゃんならまだ部屋で気持ち良さそうに寝ているわ。きっと色々あったし精神的にも疲れてるんだと思う。
ええ、別に変わった事はしていない。普通に一緒に眠っただけね。ヌイヌイちゃんの気持ちを弄んでる、って言われればそうなのかも知れないけれど。私としてはヌイヌイちゃんが望んだ事をなるべく叶えてあげたいって思ってるだけ。私が存命な内に、ね。
‥‥‥ノック音ね。あの感じはヌイヌイちゃんかな。もう起きたんだ。
ヌイヌイちゃんは入って来て「おはよう‥‥‥ございます」って挨拶はしてくれたんだけど。うーん、ちょっと機嫌が悪いっぽいわね。不貞腐れてる感じかな。
「ええ、ヌイヌイちゃん。おはよう。もう少し寝てても良かったのに」
「どうして‥‥‥起こしてくれなかったのですか」
そういう事か。今日は寝かせておいてあげようって思ったんだけど、ヌイヌイちゃんには逆効果だったっぽいわ。まぁ済んだ事は仕方無いし、明日は起こしてあげようかな。
え?今夜も一緒に寝るの前提なのかって?だって、ヌイヌイちゃんはきっと今日も来るでしょ?とは言ってもスエズ運河の今後の状況次第では今夜は寝られないかも知れないけどね。
「気持ち良さそうにしていたから。分かった、次は起こしてあげるわね」
「次は‥‥‥。っと、そんな事を言っても不知火の機嫌はなおりません。起きてみたらポイポイが何処にも居なかったんですよ?あのなんとも言えない寂しさの責任を取ってください」
まだ拗ねてるみたい。口をへの字に曲げて頬を少し膨らませて、目を合わせようとしないヌイヌイちゃん。うーん。思ったよりも機嫌が悪いっぽいわね。どうしたものかしら‥‥‥。
私は引き出しを開けて。椅子から立ち上がってヌイヌイちゃんに近付く。その左手を優しく掴んで。
「これで機嫌をなおしてくれない?」
「ポイポイ‥‥‥貴女という人は‥‥‥」
状況を理解したみたいで、下を向いた状態で身体をフルフルと小刻みに震わせるヌイヌイちゃん。その声も同様に震えてる。うん、こんな渡し方でごめんね。
「こんな‥‥‥こんな大事な物を‥‥‥どうしてこんな形で渡すのですか‥‥‥ポイポイには雰囲気を大切にしようという気持ちが足りません!」
涙を溢しながら、今度は私に視線を向けて訴えるヌイヌイちゃん。けど本気で怒ってる訳じゃないのは私にも分かる。だって、その口元は明らかに緩んでるもの。お気に召してはくれたっぽい、かな。
そう。勿論、ヌイヌイちゃんの左手薬指に嵌めたのは、ケッコンカッコカリの指輪。もう少し雰囲気を考えても良かったんだけど‥‥‥そうするともの凄く重いモノになっちゃうから。
「ですが‥‥‥ありがとう、ございます」
あ。ヌイヌイちゃん、今度は紅くなって下を向いちゃった。床にポタ、ポタ、って涙の雫が落ちてる。やっぱり嬉しかったのね。
「ううん、此方こそこれから宜しくね、ヌイヌイちゃん。それから」
そうね‥‥‥仕事中は兎も角。プライベートな時間くらいはそろそろ敬語は止めて欲しいかな。前から思ってはいたんだけどそんな堅苦しい仲じゃ無いんだし。これを期に、ね。
ヌイヌイちゃんも分かってくれたみたい。「はい、分かりま‥‥‥ええ、分かったわ」って答えてくれた。涙で濡れてはいるけれど、凄く良い笑顔でね。
うん、やっぱりそういう顔した方がヌイヌイちゃんは可愛いわ。その表情、忘れないでね。例え私が居なくなる時が来ても、ね。
130話にして漸くぬいぽいがケッコンカッコカリ。うん、長かったなぁ。
それと深海側が攻勢を開始。ゲストとしてZ3とリベッチオ(名前だけ)が初登場。アッ‥‥‥アッ‥‥‥
谷風さんは丁改でしたね。その中破姿が‥‥‥アウトぉぉぉお!
それから七駆が秋刀魚祭モードに。ーダーリぼのグラがいい感じですね。
‥‥‥漣さんの改二はまだなのか。
ここで漣の良いところを貼っておきます。
・タダで『御主人様』と呼んでくれる
・本当はちゃんとお話したいと思ってる
・青背景なのに建造もドロップも出にくいレアリティ詐欺
・ケッコンカッコカリすると特に耐久増やす近代化改装をせずとも耐久35という最高の大破ストッパーの値になる
・まだ改二を残している
・季節グラ、季節ボイスともに充実してる
・可愛い
・ケッコンカッコカリの真面目な雰囲気に耐えられず、普段の御主人呼びでなく思わず『提督』と呼んじゃう
さあ、みんなも漣を育てるのです
次メンテで朝潮にハロウィングラ実装。これはTrick or Trickですわ。