抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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横須賀、始動

 

 

「アタシ達に用って何だろうね?」

 

阿武隈です!

アタシは今、響(ヴェールヌイ)ちゃんと並んで一緒に横須賀鎮守府の執務室に向かって通路を歩いてる最中です。レ級と沖立提督の一件以来アタシは訓練してる事が多かったんだけど、今回は出撃任務かな?

 

「きっと遠征じゃないかな?ほら、曙が言ってたからね」

 

響ちゃんが言うには『多分、欧州遠征』じゃないか、って。アタシ達の加勢で深海棲艦をどこまで押し返せるかは分からないけど、何もしないで見てる訳にもいかない状況みたいだし。

 

「でもアタシ達以外の子達は静かだし‥‥‥」

 

その割には周りのみんなは静かなんです。欧州の艦隊に加勢するなら大勢出撃すると思うんだけど、今の所そういう話は聞かないし。

 

「それじゃ、別の任務かも知れない」

 

「響ちゃん、別の任務って?」

 

あれ?響ちゃん、何だか心当たりがあるみたい。別の任務って何だろう‥‥‥輸送任務‥‥‥とかじゃないよね?

あ、そんな事考えてたら執務室に着きました。それじゃノックをして中に入らなきゃね。

 

「失礼します。阿武隈、入ります!」

 

「響だよ。入るよ、司令官」

 

執務室の中に入ってみたら、アタシ達の他に金剛さん、摩耶さん、葛城さん、霞ちゃんが居ました。あ、今回はこの6人での任務なのかな?

 

アタシと響ちゃんを見て「二人とも来たか。これで揃ったな」って頷いた山本提督は椅子から立ち上りました。そのままアタシ達6人の前に移動した提督は「もう知っている者も居ると思うが、君達には欧州へ行ってもらいたい」って。待って提督!アタシ達以外の子は!?幾ら頑張ってもアタシ達だけじゃ戦力的には焼け石に水なんですけど!

 

アタシは顔を真っ赤にして反論しようとしたんですけど、その前に摩耶さんが「成る程な。あたし等は隠密部隊って事か」って金剛さんの方をチラッと見て言ったんです。

 

「察しが良くて助かる。そうだ。君達6人の任務は極秘裏に『中枢棲姫』に接触する事だ」って提督は言うんですけどぉ!

提督の話だと向こうの深海棲艦の艦隊には司令官として中枢棲姫が出てきてるみたいなんだけど、アタシ達だけじゃ‥‥‥。

 

確かにアタシ達は高速艦だし少数なら隠密行動はできるかも知れないけど。中枢棲姫を撃破するのがどれだけ大変かは山本提督だって知ってる筈です!北上さん達重雷装巡洋艦や大和さん、全盛期の夕立ちゃんや先代の島風ちゃん達、その他にも日本有数の艦娘達が協力してやっと撃沈した相手なのに!

アタシ達だけじゃ近付く事くらいは出来ても撃破なんてとてもじゃないけど出来る訳ないんですけどぉ!

 

「O.K.テートク!任せて下サーイ!中枢棲姫は必ず止めてみせるヨ!」

 

金剛さぁん!?どうしてそんなに自信満々なんですか!?流石にこの6人だけじゃ‥‥‥。

 

「提督!アタシ達だけじゃ近付くのが精一杯です!止めるなんてとても出来ないんですけど!」

 

漸くそう抗議したアタシに「大丈夫だ、上手く行くさ」って!もうっ!なんなんですか!

 

 

 

『そうよ、アブクマ。Operation will be successful』

 

ってあれっ?今の誰の声?何だか何処かで聞いた声だったような‥‥‥。よくよく見てみたら、金剛さんの胸の谷間に妖精さんが居ました。アタシの方を見てニコッて笑った妖精さん‥‥‥あの‥‥‥誰かに似てる気がする‥‥‥。

 

『Hi、アブクマ』

 

おっ‥‥‥思い出した!この妖精さん、中、中枢、中枢棲姫の顔とそっくりナンデスケド!声も!

それから、何時かの事もハッと思い出しました。金剛さんが深海棲艦から身体を取り戻した時の事。そういう事なのね!それなら最初から言ってくれれば良かったのに!みんなは知ってたのにアタシにだけ黙ってるなんて酷い!

 

「今回の作戦の要は響だ。隠密行動ではあるが、ある程度まで接近すれば発見されるのは必至。残り5名は持てる全てで響を守れ」

 

作戦、と言えるかは分からないけど。Iowa妖精さんを連れた響ちゃんが中枢棲姫へと接近、急襲。艦娘・戦艦Iowaを復活させて敵の戦力を大幅に削ぎ落とすのが今回の目的です。その間アタシ達は響ちゃんの障害となるモノを全て排除する。中枢棲姫に脅威と思われている筈の川内さんは水雷戦隊を率いて囮役をしてくれるみたい。

 

分かったわ、アタシの力が必要なのね!

第一水雷戦隊・阿武隈!旗艦、先頭、出撃します!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「いーのいーの。どうせ私が言ったって聞く耳なんて持ってもらえないんだから」

 

陽炎はああ言ってるけど、本当にいいのかな?提督と不知火先輩、二人の関係って微妙にズレがある気がするんだけど‥‥‥。

 

「でもさ、陽炎‥‥‥」

 

風雲です。

今日は休養日。私は陽炎の部屋にお邪魔してて、お茶しながらお喋りしてる最中。勿論、不知火先輩は秘書艦だから仕事中で居ない。というより不知火先輩、最近はこの部屋に居る時間って凄く少ないみたい。

 

「でもも何も無いわよ。不知火がうつつを抜かしてる間に実力で追い抜いてぐぅの音も出ない位にしてやるんだから」

 

そう話す陽炎の気持ちはまぁ、うん、分からなくはない。幾ら後からの着任って言っても陽炎だってネームシップの意地があるだろうし。今回の事に関しては多分不知火先輩じゃなくて陽炎の方が正しいと思うし。

 

「だいたい司令も司令なのよ。その気もないクセに形だけ不知火の事受け入れちゃってさ。ちょーっと『化け物駆逐艦』だの『世界最強』だのって言われてたくらいで調子に乗っちゃって」

 

確かに不知火先輩は今、周りが見えなくなってるとは思う。でも提督もきっとそれは分かってると思うし。それに提督は緊急時でも今の状態の不知火先輩を出撃させたりはしないんじゃないかな?まぁだからといって提督が悪くないって事にはならないけど。

 

「そうよ、司令ってば不知火の気持ちを弄んでるのよ。あー、考えてたら腹が立ってきたわ。やっぱり今から司令の所にガツンと言って来てやるわ」

 

えっ、今からは良くないよ。提督と不知火先輩にだって仕事もあるだろうし。それに提督にも何か事情があるのかも知れないし。事情を知ってそうな人に聞いてみてからでも遅くはないと思うけど。えっと、そうだ、熊野さんにそれとなく聞いてみるとか。熊野さんなら話してくれそうだし。

 

「駄目だよ、それより何か事情があるのかも知れないしそれを知ってからにしても遅くは‥‥‥」

 

私の言葉は陽炎の「知ってるわよ、そんなの‥‥‥知ってる」って言葉に遮られた。えっ?知ってるの?やっぱり事情があるって事?

 

「この前の作戦で先代の陽炎の記憶を受け継いだのよ。だから、知ってる。知ってるから余計に腹が立つのよ。煮え切らない司令の態度にも、力にすらなれない自分の無力にもね」

 

先代の陽炎の記憶‥‥‥そっか、先代の陽炎って確か作戦中に轟沈して。やっぱりそれと関係があるんだ‥‥‥。

 

「だから必ず見返してやるわ。誰よりも、それこそ司令よりも強くなって文句なんて言えないくらいにね。だから先ずは改二改装を目指すわ」

 

陽炎型の大規模改装、改二か。そう言えば別の鎮守府所属の黒潮さんが改二になったって聞いた。きっと不知火先輩もすぐに改二に改装されるだろうし、陽炎もすぐなれるんだろうな。

 

あーあ、私にも改二改装って来ないかな?そうすれば艦娘としての基礎スペックも上がるし、どんくさいのももう少しマシになるかも知れない。今の訓練を続けていれば確かにある程度は動けるようにはなるだろうけど限界はあるだろうしね。私も何時か不知火先輩や暁先輩のようになりたいな。

 

「‥‥‥決めたわ!明日から訓練のメニューを増やす!でもって早く改二になる!そうと決まれば神通さんと天龍さんに相談ね!行くわよ風雲、善は急げって言うでしょ!」

 

「えっ!?私も!?待ってよ陽炎、私今の訓練でも結構一杯一杯で‥‥‥ちょっと!」

 

陽炎はパッと立ち上がると、私の右手を掴んで引っ張り走り出す。向かってるのは神通さんの所。私は為す術も無く引っ張られるままに着いていく。

 

明日から訓練キツくなるのかぁ‥‥‥私、頑張れるかなぁ‥‥‥?

 

 




横須賀も動く。Iowa妖精を伴ってアブゥ達は欧州へ出撃。
目的は戦艦Iowaのドロップです。

陽炎と風雲の訓練もレベルアップする事に。


―――

陸奥の改二が確定。長い間待っていた陸奥嫁提督の皆様おめでとうございます。それから、次のメンテで風雲改二確定。これでこのSSの各章の主役級で改二が来てないのは曙と大和くらいに‥‥‥。

ウチの泊地の陸奥はLv90、風雲はLv81。今度こそ慢心してもいいよね‥‥‥?


ポール・アレン氏の遺した捜索チームが比叡を発見したみたいですね。リアル掘りはまだまだ続くようです。


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