『ふぅん、そうなんだ?金剛さん達も出撃‥‥‥』
「そうそう。話を聞いた限りだとどうもそうらしいわよ?何でも例の妖精さんを連れて行く、とかみたい‥‥‥あ、そろそろ着くわ」
『うん、それならまた今度。私もこの任務が終わったらそっちに遊びに行くから。狭霧ちゃんにもよろしく伝えておいて。ねっ?』
「ええ。由良、それじゃそっちも頑張って」
っと。通話は切って、と。
‥‥‥メタ発言だけど曙ちゃんが呉に行く前日の夜の事よ。
はーい、夕張よ。
通話の相手?うん、由良だけど。由良も明日から欧州に救援とか大変よね?
え?別にただの世間話よ?そりゃあ出撃関連の話もあったけど艦娘同士でのやり取りだし問題ないわよ。
「夕張さん?由良さんは何て?」
覗き込むように私を見る狭霧ちゃんに「狭霧ちゃんにもよろしく、だってさ」って笑みを返す。
今は狭霧ちゃんを連れて妙さんのお店に向かってるところ。私の少し緑がかった銀髪と違って、狭霧ちゃんは綺麗な銀色のロングヘアにカチューシャリボン。紫の瞳、グレーのセーラー服にプリーツスカート‥‥‥って言ってもそれは制服の時だけどね。今はプライベートだから勿論私も狭霧ちゃんも私服よ?
にしてもまあ何ていうかこの子、まだ子供なのに大人っぽいっていうかなんていうか。私でも時々ドキッとする事あるのよね。何でも噂だと良いトコのお嬢様、らしいのよね。なのに艦娘になるなんて。金剛さんといい熊野さんといい狭霧ちゃんといい、良いトコのお嬢様ってちょっと変わってるのかしらね?
「あの看板のお店ですか?楽しみです」
あ。言っておくけど別に狭霧ちゃんとデートって訳じゃないからね?新人研修中の狭霧ちゃんに妙さんのお店の話をしたら『是非連れて行って欲しい』って頼まれちゃってね。妙さんやレンちゃんも歓迎してくれるみたいだし。
‥‥‥え?しっ、下心なんて無いわよ?どうしてそこで五月雨ちゃんの名前が出てくるの?べっ、別に五月雨ちゃんのシフトの日なんて気にしてないから。本当だってば!
さーて、それじゃお店の扉を開けてっと。「いらっしゃいませ」って爽やかな声が聞こえて来たわ。
「‥‥‥夕張さん!」
私の顔を見た途端にパァ、と表情が明るくなる五月雨ちゃん。まっ、眩しい笑顔‥‥‥着てるお店のTシャツから伸びる綺麗な肌の手、それに五月雨ちゃんの二の腕が‥‥‥。ハッ!?ゴッ、ゴホンッ。
「久しぶりね、五月雨ちゃん!」
き、今日は五月雨ちゃんのシフトの日だったのね!へぇ、知らなかったわ、偶然ねぇ(棒)
「狭霧さんもはじめまして!」って笑顔で挨拶してる五月雨ちゃん‥‥‥はぅ‥‥‥良いわぁ‥‥‥。ハッ!?いけないいけない、五月雨ちゃんに見とれて危うく我を忘れる所だった。
「はい。はじめまして、五月雨さん」って丁寧に挨拶を交わした狭霧ちゃんは奥のテーブルへ。今日はレンちゃんは休みなのよね。『狭霧ちゃんがレンちゃんと会いたがってるみたい』って妙さんに言ったら時間を作ってくれてね。レンちゃんはもうシフト上がりで代わりにこれから五月雨ちゃんが出勤ってわけ。狭霧ちゃんもレンちゃんと色々話したいだろうし。そりゃそうよね。
‥‥‥‥‥‥え?何か?
「今日は山本中将や大淀さん達も来てるんですよ?」
そう言う五月雨ちゃんの視線の先に、大淀さんと山本中将がテーブルに着いて何か話してる。あの二人で飲むなんて珍しいわね?
「さっきまで曙ちゃんも居たんですけど、用事が出来たみたいで先に1人で帰ったんです」
あ。曙ちゃんも居たのか。それなら何か仕事の話のついで、みたいな感じなのかしら。
まっ、良いわ。アッチはアッチ。今日は私は五月雨ちゃんの働く姿を見て癒される予定なんだから。そうだ、動画!五月雨ちゃんの晴れ姿を動画に納めておかないとね!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
不知火です。
なん‥‥‥たる‥‥‥なんたる落ち度。寝惚けていたとはいえ、あろう事か曙の前で口付けをするとは。
ポイポイもポイポイです。人前で口付けをしたというのにどうしてそんなに平然としていられるのですか。
不知火が恥ずかしさで全身真っ赤になりながら毛布を被っている間に、曙は部屋を出たようです。少し早いですが食堂にでも向かったのでしょう。
「‥‥‥どうしてこんな朝早くから曙が?」
未だに真っ赤な頬を隠す為、頭半分ほどだけを毛布から出しポイポイを睨みます。「抜き打ちの査察っぽいわ」と悪戯っぽく笑うポイポイ。クッ、その表情は卑怯です。折角少しばかり落ち着いてきた鼓動がまた早くなってしまったではありませんか。曙もポイポイも覚えておきなさい。この辱しめの報いは必ず‥‥‥!
それにしても、抜き打ちとは言えこんな時間から査察とは妙ですね。しかも聞けば曙は1人で来たというではありませんか。何時もならば誰かしらと共に行動している筈なのに。
鼓動も収まり、頭だけを毛布から出していた状態だった不知火はベッドから抜け出し何時ものようにポイポイの向かいの椅子に座りました。先程まで曙が座っていたせいか、椅子は少しばかり暖かいですね。
そうしている間に備え付けのキッチンで二人分のエッグトーストを焼いたポイポイは、珈琲と共にその皿をテーブルの不知火の前に静かに置きました。
「ヌイヌイちゃん、良く聞いて」
急に真剣な表情に変わったポイポイ。寝起きなのでまだ完全には頭が回っていませんが、これは何かあったのだと不知火にも直ぐに分かりました。
「話す事は三つね」
一つ目は、不知火の実妹である萩風の成れの果て『駆逐水鬼』が現れた事。複雑な心境、といえばいいでしょうか。出来るならポイポイが駆逐水鬼を沈めたあの時で終わっていて欲しかった事です。ですが、同時にまた会いたいという思いもあるのも事実。
本心を白状すると、鈴谷さんや瑞鶴さんが少し羨ましかったのです。もう二度と会えない、と思っていた大切な人と再会できた二人の事が。ですから、駆逐水鬼が再び現れた、と聞いた時、もしかしたらまた萩風と再会できるかも知れないと思った。それがどれだけ奇跡的な確率かは分かっているつもりです。ですが、どうしても期待はしてしまう。不知火の心など、どんなに取り繕った所で嘗てのように強くはならないのです。今やポイポイの支えがあってやっと立っていられる状態なのです。
二つ目は。その駆逐水鬼は恐らく、というかほぼ間違いなくこの呉に仕掛けてくるという事です。言うまでもなく、此処に不知火とポイポイが居るからです。そして今度こそ、駆逐水鬼を消滅させる為に‥‥‥期間限定とはいえ『萩風』をこの呉に着任させる、と。
正直に言いますが、萩風を前に不知火が平静を保てるかは分かりません。陽炎の事ですら未だに心の整理が出来ない状況です。
しかし駆逐水鬼‥‥‥萩風の成れの果てを消滅させるには駆逐水鬼の持つ『駆逐艦萩風の魂』を今の萩風に移しかえる事が最も確実な方法だと。それにはポイポイや不知火の居るこの呉に今の萩風を連れてきて対駆逐水鬼戦に参加させるのが最善策。
朝食の途中ですが、不知火の手は止まったままです。気持ちを落ち着けようと珈琲を一口飲み、ポイポイに視線を向けます。昔なら動揺を見せまいとして隠すなりこの場を離れるなりしたかも知れませんが、今はその必要など無い。察してくれたポイポイは向かいの椅子から立ち上がり、不知火の右隣へ。寄り掛かった不知火の頭をそっと撫でてくれました。
「ごめんねヌイヌイちゃん。本当はもう少し落ち着いてから萩風と会わせようと思ってたんだけど」
このような事態になってしまった以上どうしようもありません。あとは不知火の心がどこまで耐えられるか。それでもポイポイが居てくれるのなら、不知火は‥‥‥。
少しの間、不知火は寄り掛かって瞳を閉じてその心地好い温もりに甘えていました。支えてくれる人がいるのです。不知火も、今度こそ前を向き乗り越えなくては。
瞳を開き体勢を戻した不知火に「それと三つ目」と再び真剣な表情に戻ったポイポイ。
成る程、スパイですか。厄介ですね。ですが居ると分かればやりようは幾らでもあります。炙り出す事は容易ではありませんが不可能という訳でもありませんし。
さて。話も朝食も終わった事ですし、行動に移るとしましょうか。はて?何をするのか、ですか?曙とポイポイに仕返しするに決まっているではありませんか。では先ずはポイポイから。覚悟しなさいポイポイ。
今回はヒトコト。
夕張ェ‥‥‥
※※以下ネタです※※
漣「あれ?金剛さん、何か良いことあった?」
金剛「べっ、別に何も無かったデース」
漣「ふーん‥‥‥御主人様に抱き締めてもらったとか?」
金剛「そっ、そんな事してもらって無いデース」ギクッ
漣「金剛さんから御主人様の匂いがするお」
金剛「きっ、気のせいデース」ギクッ
漣「ふーん‥‥‥ま、いっか」
神風(匂い!?匂いで分かるの!?)
金剛改二丙のケッコンカッコカリ後の母港ボイスの破壊力ヤバいです。
備蓄は万全。赤城改二の準備も万全。連休終わって仕事のピークもひと段落。春イベント何時でもオーケーですわ。