抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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最後の手段

はー、死ぬかと思った。ジェット機乗せるとかどうかしてるでしょ。でも思っていた以上に早く着けたね。早速やられてる艦娘を探さないと。私の応急修理女神としての出番だね!

 

前回に続いて鈴谷妖精だよ!

 

さてさて、それじゃ先ずは敵の位置を確認して、と。深海棲艦の反応は2つ。今は両方とも近い位置に居るみたいだね。気付かれないようにしないと。片方は‥‥‥あ、あれだ、由良。もうあれは完全にレ級の姿だね。しかもflagshipとか頭痛くなってくる。小破にまでは至ってないけど、あちこちにダメージ貰ってるみたいだね。あんなのに攻撃通すなんて流石は武蔵さん達。けど悠長な事は言ってられない。逆を言えば小破にすら出来ていないって事だからね。早くリタイアしてる僚艦を見付けなきゃ。

 

あれ?あそこに居るのって夕立、だよね?居る場所が電探が示してるもう一隻の深海棲艦が居る筈の位置と同じなんだけど。故障じゃ‥‥‥無いよね?それに夕立の身体を赤いオーラが覆ってる‥‥‥夕立が深海棲艦に?いやいや、それはおかしい。艦艇の魂が耐えられない筈。ならあの現象は一体?確認する必要があるよね?

 

お?期せずして夕立がコッチに走って向かってくる。砲を構えて‥‥‥狙ってるのは私じゃ無い、由良にだね。あ、砲撃した。同士打ちって訳でも無さそうじゃん。それなら‥‥‥いや、たった一つだけ可能性がある。最も避けたかった事だけど。

 

由良と一定の距離を取りつつ、由良の周りを走りながら砲撃を繰り返してる夕立。由良も夕立を狙って砲撃してはいるけど、夕立が間一髪で全て避けてるね。でも夕立に余裕は見えない。避けるのが精一杯って感じ。由良の砲が着弾した場所は目も当てられない惨状になってるね。もし当たりでもしたら大変な事になりそう。

 

あ、夕立が私に気付いたね。コッチに走ってくる。そのままダイブしつつ私を回収、二回程前転して勢いを殺さずに立ち上がった夕立は、再び走り始める。

 

『どウシて来たノ!?」

 

『どうしてもこうしても無いよ、夕立。その力はまさか』

 

やっぱりだよ。夕立に触れて分かった。夕立のヤツ、艦艇の力を解放してるじゃん。道理で艦娘の反応が一つ消えた代わりに深海棲艦の反応が増えてた筈だよ。

でも不味いよ。今の夕立じゃ間違いなく長くは持たない。『沖立夕星』の身体と魂が限界を迎えるのが先か、それとも『駆逐艦夕立の魂』が崩壊するのが先か。どっちにしても詰みだよ?その失ってる左腕なんて、入渠してももう回復は不可能だし。

 

『色々言いたい事はあるんだけどさ。先ずは‥‥‥どうやって艦艇の力を解放したの?』

 

こんなの、夕立じゃ無くても危険過ぎる。普通の艦娘でも艦艇の魂に呑まれて深海棲艦化するレベルだよ?それなのに何で夕立は艦娘を、人間を維持出来てるのさ?

 

「初代雷ニ説得してモラったワ』

 

『はぁ!?』

 

待ってよ、初代雷?夕立ってば何いってんの?いや、この際それはどうでもいいや。問題は今の夕立の状況だよ。

 

『夕立?言っとくけどこれ以上艦艇の魂の力を解放したら駄目だよ?限界まで解放したら、下手したら夕立はその場であの世行きになるかも知れないんだからね?』

 

失言だったよね。これで夕立は『まだ解放できる、より強い力を手にできる可能性がある』って気付いちゃったから。全く、自分の迂闊さを恨むよ。

 

『私はまだ力を残シテるノ?まだ解放でキる力がアルのね?」

 

『いや、あの‥‥‥』

 

流石に推奨できないよ。これ以上艦艇の力を解放すれば、夕立‥‥‥いや、沖立夕星という人間は‥‥‥。

 

「やっテ。他に由良ヲ止める方法ハ無いワ』

 

もう‥‥‥どうなっても知らないよ!これで不知火には永遠に恨まれるんだろうなぁ。やってられないよ、全く。

 

『こうなればもうヤケだ!覚悟しなよ、夕立!』

 

『このまマナら由良ニ全員殺サレるだケ。元よリ承知の上ヨ」

 

私は夕立の最後のリミットを解除すべく集中し始める。夕立はその時間を稼ぐ為に由良に連続で砲撃したあと魚雷を数本投げて、それを砲撃。爆発した魚雷の爆炎と煙が目隠しになって、由良と夕立の間の視界を遮る。

 

それだけの隙があれば充分。艦娘に覚醒させるのとは違って、艦艇の力を全解放させるだけなら簡単だから。

 

夕立の、艦艇の力が一気に膨れあがるのが分かる。纏うオーラは赤から金色へと変わり、その瞳の色も赤から金へと変わる。夕立は、eliteからflagshipへと進化。ただしその代わりに‥‥‥。

 

『名モ無キ妖精、アタシヲ解放シテクレタ事、感謝スルッポイ』

 

夕立は、完全に艦艇の魂に、深海の力に呑まれた。解放した瞬間。夕立の、『沖立夕星』の存在は感じられなくなった。その姿も、嘗て見た駆逐棲姫のそれに非常に近い姿へと変わっていく。欠損した左腕には装着式の砲が付き、禍々しい有機的な艤装がその身体に現れる。

 

『心配ノ必要ハ無イ。モウ最後ダシ、アタシハ アノ子トノ約束ハ守ッテアゲル。ソレニ何ヨリ‥‥‥』

 

やっぱり。沖立夕星という存在は塗り潰されたか、若しくは夕星の魂はもう‥‥‥。

 

『由良ハ許サナイッポイ。個人ノエゴデ アタシ達艦艇ノ魂ノ力ヲ利用シヨウトシタカラ』

 

救いは、艦艇・駆逐艦夕立の魂が由良を敵と認識してくれてる事。駆逐艦夕立の魂だってもう長くは持たない筈なのにね。いや、だからこそか。

 

『由良、聞コエテルッポイ?サア‥‥‥素敵ナ パーティシマショウ?』

 

駆逐艦夕立は、私を抱えたまま再び走り出す。その身体のキレは、さっきまでの夕立とは比較にならない。

 

◆◆◆◆◆◆

 

一体なんだというの?夕立の姿が変わった。纏うオーラは金色へと変わり、その姿はさっきまでの艦娘のそれとは大きく変化し深海棲艦、駆逐棲姫のそれへと変わった。けれど私の味方になったって訳ではなくて、その装着式の左腕の砲は間違いなく私に向いてる。

 

由良です。

これは私の敵、なのよね?なら仕方ない。私は目の前の夕立を捻り潰すだけね。

私が尾の先の口の砲を向けるより一瞬早く、夕立は砲撃してくる。嫌な予感がして私はそれを咄嗟に避けて右へと走る。でも夕立はそれを読んでいて、私の右肩に夕立が投げた魚雷が当たる。同時に夕立の2発目の砲撃。さっきまでとは比較にならない程速いっ!魚雷が炸裂して、私はダメージを負う。中破‥‥‥?さっきまでは殆んどダメージを受けなかったというのに。まさか、夕立の力はこんなにも上がっているというの!?

 

『クソッ、夕立ノ癖ニッ!』

 

『アタシ達艦艇ノ魂ノ力ヲ利用シテヤロウ、ッテイウ愚カナ考エガ気ニイラナイッポイ。ココデ沈メ、由良!!』

 




覚醒した駆逐艦夕立flagshipこと駆逐棲姫flagshipと由良の戦闘は終局へ。夕立の存在は‥‥‥。

次回に続く。



今宵もサルーテ1巻読みました。サルーテ読んで「出てくる艦娘可愛いな!艦これやってみよっと」となったサルーテにホイホイされた新規提督が居たら御愁傷様です、という艦娘の出演ラインナップだなオイッ、ていうのが最初の感想でしたかね、うん。

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