抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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※オマケです、本編には関係ありません

時雨だよ。久しぶりだね。

 

今は佐世保鎮守府の寮の一階、とある部屋の掃除の手伝いをしているところ。そう、由良の居た部屋。由良の私物は押収されて殆んど残ってないから、部屋自体に物は殆んど無いかな。僕も明日には横須賀に戻らなきゃいけないし、せめてこのくらいはしておこうと思ってね。理由はどうであれ、由良を死なせてしまった原因の一端は僕にもあるからね。それに部屋は大きく無いしそんなに大変でもないから。

 

そう言えば由良は前に佐世保に居た提督と仲良かったらしいよね。今考えるとそれも情報を得やすくする為の演技だったって事なのかな。全部がそうだとは思いたくはないけど。

 

あっ‥‥‥うわっ‥‥‥‥‥‥!

 

 

 

『バキッ』

 

 

 

っと。イタタタ。やっぱり考え事しながらは善くないね。置いておいた濡れ雑巾を踏んで思い切りお尻から床に落ちた。それに何だか嫌な音がしたような‥‥‥あ、やっぱりね。尻もちをついた時に一緒についた左掌の下にある床板が割れちゃってる。幸い僕の掌には怪我は無いけど。

 

‥‥‥あれ?この部屋の床板ってこんなに簡単に割れるモノだっけ?尻もちくらいで割れるなんておかしいよ。幾ら僕が艦娘だからってこの程度で壊れるような床じゃない。僕だってこれでもみんなには『もう少し食べた方がいい』って言われるくらいなんだけど。

‥‥‥あ。これ、床下収納になってる。掃除してた時には何の痕跡も無かったし全く分からなかったよ。

 

収納の大きさは‥‥‥うん、小さいね。2L入りのペットボトルがギリギリ2本入るくらいかな。中に有るのは何かの錠剤が入った瓶が数本、それに何だろう、布のカバーの付いた分厚い本‥‥‥‥‥‥じゃないね、これ多分日記じゃないかな?一体誰の‥‥‥うん、誰のかは考えるまでも無いか。

 

念のため。その場に座り込んで、左手の中の日記を開いてページを捲る。

 

『●月■日。やっと新たな拠点を手に入れたし、日記でもつけておこう。歳の近い自殺者の戸籍を奪い、上手く成り代わる事が出来た。今日からは私は「佐藤みのり」だ。三好大臣の娘としての私は消えた。後は整形手術をした医者を消せば完璧。』

 

『私の大切な人達を奪い、私の人としての尊厳を全てぶち壊した奴等は絶対に許さない。父さんもあの人も、深海棲艦から人間を守ろうと必死だった。今更罪を追及する必要が何処にあったの?体制を変える必要が何処にあったの?私のささやかな幸せを奪っていい理由が、何処にあったっていうの!人間なんて皆殺しにしてやる。父さんや母さん、あの人を奪った主犯共は只では殺さない。東郷、木村、曙。こいつ等は絶対許さない。若造、とか言われていた人間の正体も早く掴まないと。』

 

 

『◆月▲日。日記をつけるのは危険だと妖精に忠告された。尤もだとは思うけど私はそれを聞き入れる気は無い。私は妖精の部下でも何でもないもの。』

 

 

『◆月▼日。横須賀鎮守府へ入る事に成功した。阿武隈の案内のお陰でスムーズだった。その阿武隈に「お姉ちゃんって呼んでもいいですか?」と言われた。冗談じゃない。吐き気がするが拒否する真似はしなかった。お姉ちゃん、と慕う人に裏切られ絶望と苦痛の中で死んでもらうっていうのも悪くないものね。恨むなら私の敵に手を貸した貴女自身を恨む事ね。』

 

 

『◆月●●日。何て事だろう。軽巡洋艦由良、というのは人間を滅ぼすには力が無さすぎる。戦艦や空母の一人にも太刀打ち出来ない。復讐を実行するには弱すぎる。自分の無知と力の無さをこれほど呪った事は無い。作戦を考えないといけない。』

 

 

 

‥‥‥‥‥‥。

これ以上は見ていられないよ。昔の、クーデターが起こる前の由良は穏やかで優しい人だったらしい、って聞いた。それが、どうしてこんな事になったんだろう。

 

さて、と。山本提督に連絡をしておかないとね。この瓶に入ってる錠剤だって、危険な物かも知れないし。

 

◆◆◆◆◆◆

 

「それが例の由良の日記か」

 

「うん、提督。僕も読んでみたんだけど、やるせなくてほんの数ページ読むのがやっとだったよ」

 

横須賀の執務室。戻ってきた僕は例の日記を山本提督に渡した。今はもう居ない由良の内面を記した貴重な日記だしね。

 

「時雨には精神的に参るような仕事ばかりさせてしまっているな。本当に申し訳ない」

 

提督は頭を下げてくれた。「僕なら大丈夫だよ」って答えはしたけど、正直少しばかり気持ちが滅入ってるのは事実かな。こういう所をちゃんと気に掛けて言葉にしてくれるのも提督の良いところだね。

 

「何かして欲しい事があったら言ってくれ。時雨には色々と無理をしてもらったし一つ言うことを聞くよ。出来る範囲で、だがね」

 

「いいの?」っていう僕の言葉に「ああ」って応える提督。それなら折角だしお言葉に甘えようかな。でも何にしようか?

 

って思ってた時だった。執務室の扉がバーンッ、って勢い良く開く。

 

「テートクー!!時雨の言うこと何でも聞くなんて羨ましいデース!ワタシだってアイオワ助ける為に頑張ったんダヨー?」

 

「べっ、べべべ別に羨ましいわけじゃ無いわよ?無理して頑張ったのは時雨だけじゃ無いんだから!優男は、わたs‥‥‥他のみんなにもご褒美をあげるべきよ!」

 

金剛さんと曙?気になって話を盗み聞きしてたのかな?あんまり褒められた事じゃないよ?

 

「そうは言ってもな‥‥‥」って提督も少し困ってるね。うーん‥‥‥そうだね‥‥‥。こういうのはどうかな?

 

 

 

「わかったよ、提督。それなら今度の休みに僕の買い物に付き合ってくれるかな?」

 

「買い物?時雨はそんな事でいいのか?わかった」

 

 

 

金剛さんは「テートクと二人でshopping!?Noooooォォ!?」って叫ぶし曙は「はぁ!?まさか二人っきりで!?それってもしかしなくてもデデデデデーt‥‥‥」って固まってる。うん、盗み聞きするような二人にはお仕置きが必要だからね。上手くいったみたいだ。それに僕は『二人っきりで』なんて一言も言ってないしね。

 

「時雨の次の休みに合わせて僕も休みを取る事にする。待ち合わせは‥‥‥そうだな、鎮守府を出て一キロ程先にカフェがあるだろう?あそこでいいか。時間は此方で決めても構わないか?」

 

「あ、うん。僕は大丈夫だよ、提督‥‥‥‥‥‥?」

 

ん?あれ?何だか二人っきり前提みたいな話し方だね‥‥‥?

 

「では時間は追って連絡する。まぁ大人数で動いて目立つよりは二人の方が何かと気楽でいいからな。それじゃ時雨、今日は下がってゆっくり休んでくれ」

 

んん?提督、それってやっぱり二人っきり、って意味だよね?僕なんかが相手で良いのかな?どうしよう‥‥‥ちょっと緊張してきたよ。

 

二人っきり、か。なに着て行こうかな。‥‥‥言ってみるものだね。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

呉鎮守府工廠内。

 

『ふーん、電ちゃ‥‥‥じゃなかった、美鈴提督の誕生日ねぇ』

 

ちーっす。鈴谷妖精、だよ。

今日は夕張が呉に来てるんだ。え?今度は夕張は何をやらかしたのかって?違う違う。第二改装の件でね。私が担当になったから夕張にご足労願ったわけ。

 

「そうそう、それで山本中将が内密にプレゼントを買いに行くって話でね。誰かそういうの頼りになりそうな人を探してるって話」

 

頼りに、ね。阿武隈は‥‥‥うーん、ちょっと頼りないし、龍田‥‥‥はねぇ。向こうだと後は金剛さんと曙‥‥‥は除外するとして。

 

『あ、時雨とかは?あの子丁度横須賀に戻ったトコでしょ?タイミングもいいし』

 

「あー、時雨ね。時雨なら大丈夫そうね。渡す相手が五月雨ちゃん!っていうなら私もプレゼント選びの自信あるんだけど」

 

あー、五月雨ちゃんか‥‥‥夕張は二言目には『五月雨ちゃん!』だからね全く。呆れるよ。もしも不知火が明るい子だったら夕張みたいに二言目には『ポイポイ!司令!』って騒ぐん‥‥‥あれ?それ今と割と変わらなくない?今日だって不知火は夕立‥‥‥ゴホン、提督の休みに合わせて休んで一緒に出掛けてる位だしね!だから夕張改二の総責任者は私なんだよね。

 

『あーはいはい、分かった分かった。それで話戻すけどさ、夕張の第二改装の案なんだけど、現段階で二通りなんだよ』

 

「二通り?へぇー、どんなのどんなの?」

 

微調整はあるけど現状は二通り。火力と対空能力を向上させた純粋強化か、対潜水艦特化、そのコンバートだね。

って説明したのはいいんだけど。

 

「‥‥‥えぇー!?そんなのありきたりじゃない!もっとこう、『これぞ兵装実験軽巡!』っていうのがいい!」

 

夕張のヤツ全否定だよ。こっちは色々考えて強化してるってのにさ、妖精を何だと思ってるんだろうね。

 

『夕張さあ、自分の艦のスペック分かってるよね?元の艦艇の大きさとか考えると妥当だよ?』

 

夕張は聞く耳無し。「これじゃまるっきり五十鈴さんの下位互換じゃない!嫌よそんなの!」って。あー、駄目だ、頭痛くなってきたよ。

 

『それじゃ一応聞くけどさ、これぞ兵装実験軽巡、って例えば何?』

 

「よくぞ聞いてくれたわ!先ず甲標的で先制雷撃、先制対潜爆雷攻撃も必須でしょ、対空カットイン(メタ発言)も出来て大発動艇で対地攻撃も。全部同時に!あ、勿論5スロ(メタ発言)でね!」

 

‥‥‥‥‥‥はぁ!?幾ら何でも盛りすぎじゃん!!そんなに簡単に都合良く強化出来るんなら深海棲艦相手に苦労なんてしないっての!

 

『あのさぁ、そんなに出来るわけ無いじゃん。その中の対空と対潜が出来るようになるんだから文句言わないでよ』

 

「‥‥‥え?出来ないの?」

 

は?夕張、何その真顔。何で出来て当然みたいな顔してんの?そりゃ装備のやりくりで頑張れば出来る事は増やせるけどさ、全部なんて欲張り過ぎじゃん。ハハーン、さては提督じゃなくて私が責任者だから無理言えばやってくれるって思ってるね?そうはいかないよ!

 

『出来るわけ無いじゃん。大発動艇くらいなら載せるスペース作れるかもだけどさ、全部ってのはね‥‥‥』

 

「なーんだ、出来ないの?天下の鈴谷妖精っていうから期待してたのに出来ないんだ?」

 

うっ‥‥‥そんな事言ったって乗せられないからね!妖精でも出来ないものは出来ないんだよ。

 

「あーあ、ガッカリね。大したこと無いなぁ。私が妖精だったら絶対出来るのに」

 

ムカッ。いやいや、落ち着け私。これは夕張の挑発、我慢我慢。

 

「あ、でも妹の鈴谷さんは航空巡洋艦から軽空母に大改装したのよね?それってエコ贔屓なんじゃないの?」

 

『いっ‥‥‥妹は関係無いし』

 

いや、あれは元々『改鈴谷型』って雛型もあったわけだし。妹だからって贔屓では無い。それに夕張にそれだけ積むとなると色々予算やら何やらオーバーになるし‥‥‥。

 

「‥‥‥なーんだ、やっぱり出来ないんだぁ?あ、良いの良いの。私は妖精さん達に無理して欲しいってわけじゃないから。でもそっか、まぁ鈴谷妖精さんには無理だったわね、ごめんごめん」

 

‥‥‥‥‥ブチッ。

 

『私には出来ないって?おー、やってやろーじゃん!完成したら土下座してもらうからね!!』

 

もう無理、アッタマ来た。やってやろうじゃん!予算オーバー?上等だよ!私の実力見せてやろうじゃん!見てなよ!

 

 

 

カーン、カーン、カーン、カーン。

ーーー

ーーーーー

 

‥‥‥で。まんまと乗せられてやっちゃったわけだけど。流石に観測機は載せるスペース無かったけどさ、これもう軽巡洋艦じゃなくない?これ阿武隈超えたんじゃ‥‥‥もう任務全部夕張でいいんじゃないかな‥‥‥。

夕張に言われた事は全部同時に出来るし、装備をそれぞれに特化させれば同時に出来なくなる代わりに雷撃、対空、対地、対潜水艦に強力な攻撃も出来るし。確かに船速は落ちるけど、タービンの増設でカバー出来る範囲だし。調子に乗って夕張用に甲標的丁型も開発しちゃったし‥‥‥あー、貴重な資材とかごっそり使っちゃったよ‥‥‥これなんて言い訳しよう‥‥‥不知火辺りに絶対怒られるヤツだ。

 

「流石鈴谷妖精さんね!これよこれ!こういうのよ!」

 

呆然として後悔する私を他所に、改二になった目の前の夕張の喜びようと来たらもうね。

 

 




ドーモお久しぶりデス。作者デス。1月ランカー争い多分ギリギリで負けました。

今回は「由良の残した日記(意味深)」のお話と夕張改二のお話。
夕張さんは書いた事一応全部いっぺんに出来ますが、
甲標的
秋月砲等の高射装置内蔵高角砲
ソナー(夕張の対潜値が85以上必要)
ダイハツ系
電探

と装備する必要があるので普通はやりませんね。ロマン装備です。通常は甲標的、魚雷、魚雷、ソナーやダイハツ等、電探、増設に機銃やタービン、って所ですかね。まあ普通に強いですね、素の運も高いですし。
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