抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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序章

「はぁぁ~」

 

またまた雨。ここ数日ずっと雨っぽい。梅雨自体は嫌いじゃないんだけど、哨戒任務があるから嫌い。一旦哨戒に出ちゃったら、どんなに頑張ってもびしょ濡れっぽい。こういう時は哨戒に出なくてもいい重巡洋艦や戦艦、空母の人が羨ましい。

 

びしょ濡れと言えば、駆逐棲姫を思い出す。最近思う。あれは、あの駆逐棲姫はきっと先代の夕立だったんだ、って。きっと沢山やりたかった事があって、でも沈んじゃって。その無念がああやって実体化したんだ、って。きっと、アタシ達に止めて欲しくて現れたんだ、って。だから、今度こそ安らかに眠れれば良いな、って思うっぽい。

 

‥‥‥あれ?でも、そうすると艦娘が居るから深海棲艦が生まれるって事?んんっ?でも深海棲艦が現れてから艦娘が‥‥‥初代の漣が現れたんだったっぽい?あれ?うーん?難しい事は良く分からない。覚えてたら誰かに聞いてみるっぽい。

 

で。今アタシが居るのは海の上。哨戒任務の真っ最中。ううっ、制服が濡れて肌に貼り付いて気持ち悪い。早く終わらせて帰りたいっぽい。

駆逐棲姫を沈めたけど、まだまだ予断は許されないっぽい。南半球の南極海近くで新たな深海棲艦が目撃された。超大型の弩級戦艦。今までに見たことの無い深海棲艦っぽい。見つけた艦娘達は全員大破。逃げ帰るのがやっとだったんだって。その艦娘達は一様に口を揃えて『真っ白な化け物だった』って証言してる。

 

髪の毛から足の先まで真っ白で、瞳が不気味な赤に光ってて。怪物の頭みたいな巨大な艤装に乗ってた、って。

ソイツの事を、大本営は『中枢棲姫』って名付けたっぽい。深海棲艦の活動が活発になってるのはソイツのせいだろう、って。

それだけ凄い深海棲艦なら、もしかしたら倒せばこの戦争が終わるかも知れない。そう考えてる艦娘も少なくない。この海に平穏を取り戻せるかも、って。

けど‥‥‥もし深海棲艦が居なくなって、世界の脅威が無くなったら、艦娘はどうなるっぽい?もう大人の艦娘や、アタシみたいに家族が居たりする人ならいいけど、身寄りの無い駆逐艦の子はどうなるっぽい?

 

‥‥‥考えても仕方ないか。今アタシが出来る事は、中枢棲姫を倒す為に努力する事。でもその前に、このびしょびしょに濡れた服を着替えたいっぽいぃぃ。

 

「うへぇ‥‥‥早く帰りたいかも」

 

ほらぁ、秋津洲さんも同じ事考えてるっぽい。あ、秋津洲さんで思い出したんだけど、アタシと秋津洲さんが組んでる時って決まって深海棲艦と会敵してる気がする。前回の哨戒の時は確か‥‥‥戦艦タ級の艦隊と遭遇したんだった。勿論、アタシの活躍で殲滅したっぽい!後で提督さんに『報告して此方の指示を仰いでから行動しろ』って怒られたけど。

 

丁度アタシがそんな事を考えてたのと、秋津洲さんが「あっ」て声をあげたのが同時くらい。二式大艇が何かを見付けたっぽい。

 

「夕立ちゃん、大変!大艇ちゃんから通信!敵艦隊を発見したかも!?」

 

ほら、やっぱり。今度も予想通りの会敵。今回は‥‥‥駆逐イ級と輸送ワ級?あ、ワ級は下半身が大きな丸い艤装にすっぽり覆われてて、頭に大きな帽子みたいなのを被ってる深海棲艦。輸送船だけあって、攻撃してくる事は殆んどないっぽい。にしても、んんっ?何だか変な組合せっぽい??

 

取り敢えず、大きく離れて行動してるヌイヌイちゃんに通信。先ずは旗艦の指示を仰ぐっぽい。

 

『分かりました。ポイポイ達は指示があるまで一時待機してください』

 

やっぱり待機だって。イ級とワ級くらい沈めてもいいと思うんだけど。まあ、また提督さんに怒られるのは嫌だから従うっぽい。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「トラック泊地の状況は?」

 

「芳しくないらしいわ‥‥‥覚悟を決めなさい、優男(やさおとこ)」

 

夕立達が輸送船団と会敵してた頃。大本営からの直々の出撃要請があった。全く、人を何だと思って‥‥‥って、人と認識されてるかは甚だ疑問ね。奴らの認識では私達は『兵器』なんでしょうね。

 

また会ったわね。曙よ。お陰様でまだ生きてるわ。って言っても、今回ばかりはちょっとキツいかしらね。トラック泊地からの応援要請。戦艦棲姫二隻と駆逐古姫率いる大艦隊と交戦中なんだってさ。ショートランド泊地やブイン基地、ラバウル基地なんかからも支援艦隊が出て応戦してるらしいんだけど、敵の数が多くて苦戦中らしいわ。トラック泊地にはあの『鬼神・綾波』や『幸運艦・時雨』、『防空駆逐艦・秋月』も居る筈だし、簡単には落とされないとは思うけど。

全く、それなら普通に考えてこんな規模の小さい鎮守府じゃなくって横須賀から支援を出せばいいのに。この鎮守府の戦力じゃたかが知れてるじゃない。まっ、これで私が轟沈すれば手間も省けるって事でしょうね。この優男ならまだまだ新人って事でそこまでの非は問われないでしょうし。

勿論、沈んでやるつもりなんてないわ。生き残ってやるんだから。見てなさいよ、必ず大本営のジジイ共を追放させてみせるんだから。

 

「電の事なら大丈夫よ。私が全力で守るわ」

 

少し前なら兎も角、今は此処には金剛さんや比叡さんも居る。何とか全員生き残れる筈よ。大本営の思い通りになんてなってやるつもりは無いんだから。

 

「済まないな‥‥‥君には苦労ばかり掛けるな」

 

全く‥‥‥この優男、電のこと甘やかし過ぎね。初の鎮守府で二人三脚で苦労しながら此処まで来てて、電が娘みたいなものなんでしょうけど。顔に出過ぎよ。

 

「気にしないでよ。アンタの為じゃなくて電の為なんだから」

 

さて。そろそろ電が出撃予定の艦娘を連れて戻って来る頃ね。話は此処までかしらね。っと、ノック音。電かしらね。

ドアの向こうから「司令官さん、皆さんを連れて来たのです」って聞こえたわ。

 

「テートクぅ‥‥‥離れるのは嫌デース!」

 

はぁ‥‥‥溜め息しか出ないわ。金剛さんは執務室に入るなり優男に抱き着いて離れない。悲しそうな表情してるけど、応援が無事済めば直ぐに戻って来るんだからね?

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

話は呉に戻るっぽい。提督さんの指示通りに輸送船団を殲滅してから直ぐに戻ったアタシ達。執務室に報告しに行くアタシとヌイヌイちゃんが見たのは、落ち着かない様子で廊下を行ったり来たりしてる霧島さんと、椅子に座って祈るように瞳を閉じてる榛名さん。

 

「榛名さんに霧島さん?何かあったのですか?」

 

ヌイヌイちゃんの質問に答えてくれたのは霧島さん。金剛さんや比叡さん達が、深海棲艦と交戦中のトラック泊地に向かったって教えてくれた。霧島さん達も応援に行く、って進言したけど、提督さんに断られたっぽい。

 

「霧島さん、お気持ちは分かりますが‥‥‥不知火達は本土防衛に回された、という事でしょう」

 

え?ヌイヌイちゃん、それって‥‥‥もしかして深海棲艦の大艦隊が日本に攻めてくる、って事っぽい‥‥‥?うん?じゃあさっきの輸送船団ってその深海棲艦の所に向かう予定だったっぽい?

 

ヌイヌイちゃんに「分かってるわよ!そんな事っ!!」って声を荒らげた霧島さん。霧島さん達にとって、問題はそこじゃない。うん、金剛さんや比叡さんが別の所で戦ってて、見えない所で危険な目に遭ってるかも知れないって事に苛立ってるっぽい。気持ちは分かるけど‥‥‥出撃許可が出ない事にはアタシ達にもどうしようも‥‥‥‥‥‥。

 

下を向いて少し考えてたヌイヌイちゃん、顔をあげて「直訴しましょう」って決意の籠った瞳をみせた。アタシ達は第三艦隊。呉には第一、第二艦隊が待機してるし、西日本の鎮守府、舞鶴や佐世保の艦隊だって動いてない。アタシ達が動いたくらいで簡単に防衛網は突破されない筈。だから、アタシ達だけでも行こう、って。

うん、そうだよね。大和さんだって主砲を新しくしたし、アタシもレベルアップしたし。きっと力になれるっぽい!

 

報告のついでに、アタシとヌイヌイちゃんで提督さんに直談判。けど。

 

「許可できん。大本営直々の命令でな。『鎮守府の全艦隊はいつでも出撃できる状態で待機』だそうだ」

 

「ですがっ!」って珍しく提督さんに食って掛かったヌイヌイちゃんにも「諄いぞ、不知火」って言って取り合ってくれない。今日の提督さんは頑固っぽい。アタシも不満でプクッて頬を膨らませてみるけど、効果がある訳も無かった。

 

 




中枢棲姫が動き始めました。標的は勿論日本の艦娘。トラック泊地近海で連合艦隊交戦中。時雨、綾波には後程出番を予定してます。

支援に出たのは曙、文月、電、金剛、比叡、赤城の六名。


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