抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

33 / 158
鈍感は罪。

 

 

それから明日、アタシ達は漸く落ち着きを取り戻したトラック泊地を後にする事になった。飛龍さんもすっかり元気になったし、施設も妖精さん達のお蔭で元通り。また襲撃がないか心配は心配だけど、大本営からの帰還命令だから従うしか無いっぽい。

せっかく時雨や綾波ちゃんと仲良くなったのになぁ。任務じゃなくて気軽に遊びに来れたらいいんだけど、次会える時もまた任務なんだろうな。どうせなら今度はみんなが安全にこなせる任務‥‥‥演習とかで来たい。そしたらまたお喋りしたり遊んだりしようね、綾波ちゃん、時雨。

 

もうすっかり夜。最低限しか持ってきてないけど、自分の荷物を纏める。大和さんや熊野さんは明日に備えてもう眠ってるっぽい。

アタシが寝泊まりしてたのは時雨や綾波ちゃんと同室。本来は五人部屋っぽくて、アタシ、ヌイヌイちゃん、萩風の3人を泊めてもらってた。‥‥‥うん、そう。襲撃事件で沈むまでは秋月さんも居た部屋。秋月さんの荷物は姉妹で同型艦の初月さんの所に送られたっぽい‥‥‥。

 

部屋のみんなはもう眠ってるっぽい。起きてるのはアタシだけ‥‥‥だと思ってたら、今ヌイヌイちゃんが目を覚ました。おトイレかな?

 

「‥‥‥‥‥‥‥ぽいぽい?」

 

あ。ヌイヌイちゃん、完全に寝惚けてるっぽい。半開きの目でボーッとアタシを見てる。おトイレじゃなくって、アタシが荷物整理してたせいで起こしちゃったっぽい。うーん、ごめんねヌイヌイちゃん。

 

「これは‥‥‥ゆめ‥‥‥れすか?」

 

うわぁ‥‥‥ヌイヌイちゃん、呂律が回ってなくて舌足らずになってる。普段とのギャップのせいで凄く可愛く見える。ムービーに録っておきたいくらい。あ、でもアタシはそんな事しないよ。漣ちゃんならするかも知れないけど。だから、ここは上手く誤魔化してまた眠ってもらうっぽい。

 

「うん、ヌイヌイちゃん。だからちゃんとベッドに横になって眠らないと‥‥‥」

 

アタシはヌイヌイちゃんにずれた毛布かけ直して睡眠を促した。ポケー、っとしてベッドで瞳を閉じたヌイヌイちゃん、安心したみたいで瞳を静かに閉じたっぽい。うん、ヌイヌイちゃん、いつも夜遅くまで頑張ってるもん。たまにはゆっくり眠らせてあげないと。

 

「ぽい‥‥‥ぽい‥‥‥‥‥‥すき‥‥‥」

 

‥‥‥ん?ヌイヌイちゃん、今『すき』、って言ったっぽい?『すき』、って『好き』って事?もー、ヌイヌイちゃんは。そんな事言うくらい寝惚けてるっぽい。大丈夫だよ、ヌイヌイちゃん。アタシはヌイヌイちゃんの事も萩風の事も、勿論時雨や綾波ちゃん、熊野さんや‥‥‥って挙げてったらキリなくなるっぽい。みんな好きだよ。

 

「うん。‥‥‥おやすみなさい、ヌイヌイちゃん」

 

◆◆◆

 

それで、次の日。アタシだけ朝食の時間ギリギリに起きた。もうみんな起きて食堂に行ってるっぽい。‥‥‥みんな酷い!?なんで起こしてくれなかったっぽい!?うわぁぁん。泣いてやる!泣いてやるっぽいぃぃぃ!

 

顔洗って、髪解かして、うん、着替えは取りあえずコレとコレと‥‥‥っ。後の事は朝食食べてからするっぽい!

 

急いで食堂に行ってみたら、みんな集まってた。真ん中に居るのはヌイヌイちゃん?‥‥‥あれ?ヌイヌイちゃんだけ下向いてる。他のみんなは少し笑ってて‥‥‥まさか‥‥‥ヌイヌイちゃん一人に寄って集ってイジメっぽい!?そんな事絶対許さないっぽい!!

 

「ヌイヌイちゃん!!」

 

アタシは焦って走って輪の中心へ。ヌイヌイちゃんの後ろに立ってみんなに視線を向けた。

 

「イジメは良くないっぽい!」

 

けど、ヌイヌイちゃんも含めてみんなアタシの言葉にポカン、としてて。あれっ?アタシの勘違い?ならどうしてヌイヌイちゃんは下を向いて‥‥‥って、ヌイヌイちゃんの顔が真っ赤っぽい!?まさか病気!?大変!

 

「ヌイヌイちゃん、病気!?大丈夫!?」

 

「あっ、えっ、はっ‥‥‥はい」

 

何だかしどろもどろな返事のヌイヌイちゃん。ひょっとして体調かなり良くないっぽい?

焦るアタシの様子を見かねて、吹雪ちゃんが話し掛けてきた。「夕立ちゃんは、えっと、不知火ちゃんの事好きなの?」って‥‥‥‥‥‥ん?

 

「好きに決まってるっぽい!勿論吹雪ちゃんも、萩風も、時雨も、みんな好きっぽい!!」

 

‥‥‥‥‥‥あれ?どうしてみんな溜め息ついてるっぽい?え?ヌイヌイちゃんはクスクス笑いだしてるし、アタシ何か変な事言った!?

 

実は、ヌイヌイちゃんが寝惚けて目を覚ました時、他のみんなも起きてたっぽい。で、アタシとヌイヌイちゃんのやり取りを聞いてて。

 

‥‥‥ん?それで何でヌイヌイちゃんが恥ずかしそうにしてたっぽい?うーん、別に恥ずかしいような場面は無かった筈だけど。寝惚けてたのが恥ずかしかったのかなぁ??

 

「僕の口からは言えないかな。じきに分かる時が来るよ」って時雨は言ってたけど、うーん。

 

ヌイヌイちゃんも「ええ。いつか話しますから」って。分かったっぽい。ヌイヌイちゃんだって秘密の1つや2つあるよね。話してくれるまで気長に待つね。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「暁、Admiralが呼んでいるぞ?」

 

「分かったわ、今行く」

 

久し振りね、一人前のレディこと暁よ。フフン。司令官が暁に頼ってきてるみたいね。あ、今話し掛けてくれたのはグラーフさんよ。グラーフさんはドイツの空母なのよ。暁も初めて知ったん‥‥‥え?知ってるの?そっ、そそそうよね!グラーフさんが空母なのは常識よねっ!知ってたに決まってるわ!

 

グラーフさん、日本語上手よね。なんでも日本に親友が居るらしくてね、猛勉強したんだって。

‥‥‥なっ、何よ?英語は上達したのかって?あっ、あっ、当たり前じゃない!一人前のレディにかかれば1ヶ月でマスターできるんだから!

 

「ニホンから誰か来ているらしいぞ。キミの古い知り合いだそうだ」

 

「へぇ‥‥‥ありがとう、グラーフさん」

 

日本から?誰だろう。響かな?それとも不知火さんとか‥‥‥まっ、会えば分かるわよねっ。

 

それから司令室に入ってみてビックリしたわ。だって、だって‥‥‥。

 

「暁‥‥‥It's been a long time. If they get along?(久し振りね。仲良くやれてる?)」

 

「あっ、うっ、えっと‥‥‥おっ、お久し振りです‥‥‥」

 

ちょっとぉぉお!どうして足柄教官が居るのよ!?ヤバいわ!にっ、逃げなきゃ殺されるっ!!

 

「暁、アンタまさかこれだけの期間滞在してたのに英語話せないんじゃないでしょうね?」

 

一直線に核心突いてきた!?助けてっ!レディじゃなくてもいいからっ!英語話せなくていいから!何でもいいから暁を助けて!

 

「暁‥‥‥アンタねぇ‥‥‥別に獲って食うわけじゃないんだから」

 

「‥‥‥え?そうなの?だって、足柄教官は『鬼』とか『悪魔』とか呼ばれてるから‥‥‥てっきり‥‥‥」

 

あれ?足柄教官、なんだか目が鋭くなったような‥‥‥えっ?さっきの暁の言葉のせい?‥‥‥うそっ!声に出てた!?ヒッ、ひィィィィ!?!?

 

「アンタに大本営から正式な辞令よ。『7月一杯を以て日本に帰国せよ』って。ちょっと状況が変わったのよ」

 

‥‥‥あ、そうなんだ!やった!これでみんなに会える!響は元気にしてるかしら?え?響はロシアに行ったの!?そっか‥‥‥ちょっと残念ね。

足柄教官、ユーロと直接交渉する為に態々日本から来たらしいわ。それだけ悪い事態が起きてる、って事よね。暁も頑張らなきゃ。任せて!一人前のレディの実力を見せてあげるわ!

 

 

 

「それはそうと‥‥‥帰ったら私が直々に実力を見てあげるから。暁‥‥‥覚悟しておきなさいよ?」

 

 

‥‥‥前言撤回してもいい?足柄教官の目が怖いわ。やっぱり暁の言葉を根に持ってるみたい。‥‥‥帰りたくないっ!嫌っ!まだ死にたくないぃぃ!!

 

 




遂に暁が帰国します。東郷を巡って翔鶴との争い勃発か?

平常運転のポイポイ回でした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。