「いいですか?余り時間もありませんし簡潔に話します」
演習の海上。ヌイヌイちゃんを中心に集まったアタシ達。今回のメンバーは、熊野さん以外の5人。ヌイヌイちゃんが一人一人に指示を出していく。ヌイヌイちゃんの見解だと、アッチは各個撃破を狙ってくるっぽい。
「先ずはポイポイ。恐らく彼方は比叡さんをぶつけてくる筈です」
アタシには比叡さんだって。うん、何となくはアタシも思ってた。このメンバーなら尤も火力があるのはアタシ。隊列を組んだ艦隊戦ならアタシが魚雷ごと相手の懐に飛び込んで一網打尽にできたりもするんだけど、一対一ではそう簡単にはいかない。アッチの子達もアタシの戦い方はトラック泊地で見てるし、きっとそうやってバラバラに攻めてくるだろう、って。
「ポイポイの弱点は遠距離戦と装甲の薄さです。比叡さんは必ず距離をとって攻撃してくる筈です。金剛型は高速戦艦、対してポイポイは駆逐艦。分かりますね?」
うわっ、ヌイヌイちゃんってばアッサリとアタシの弱点を言ってきた。つまり、『いつもの調子で被弾するな』って事っぽい。比叡さんは機動力を活かしてアタシの射程外から攻めてくるって事っぽい。だから、砲撃を落ち着いて確り避けつつアタシの距離に持ち込めって事っぽい。うん、ヌイヌイちゃん。なるべく気を付けはするけど‥‥‥ハイになっちゃったらアタシ、何処まで気を回せるかなぁ?
「暁、貴女には恐らく電が付く筈です。くれぐれも油断はしないように。貴女のイギリスでの経験に期待していますよ」
暁ちゃんは電ちゃんが相手っぽい。簡単にはやられないとは思うけど、電ちゃんは気は抜けない相手。「分かってるわ。レディが末っ子に負ける訳にはいかないもんね!」って言ってる暁ちゃん。うん、アタシも期待してるっぽい。
「吹雪、雪風、貴女達には青葉さんと文月が付くかと思います。重巡の青葉さんの火力は脅威ですが、貴女達なら何とか出来る筈。先に狙うべきは‥‥‥文月です」
吹雪ちゃん達は、青葉さんと文月ちゃん。アッチもきっと雪風ちゃんに青葉さんをぶつけて来るだろう、って。軍艦青葉といえば、度重なる激戦にも沈まずに終戦まで残った艦。だから、きっと雪風ちゃんと同様に『砲撃が当たり難い』だろう、って。だから、数的有利に立つ為に先に文月ちゃんを落とすっぽい。
‥‥‥あれ?じゃあヌイヌイちゃんは曙ちゃんと、って事っぽい?
「ええ、ポイポイ。ですから、恐らく不知火には交戦中に指示を出せる余裕は有りません。今回の演習での鍵は」
鍵は、雪風ちゃんと吹雪ちゃんっぽい。如何にして早い段階で、ヌイヌイちゃんがやられる前に文月ちゃんと青葉さんに競り勝つかだって。ん?って事は、ヌイヌイちゃんは曙ちゃんに負ける前提??
「横須賀の第一艦隊に居た曙に一対一で勝てると考える程、不知火は自惚れてはいませんので」
うーん、それはそうかも知れないんだけど‥‥‥ちょっと複雑。親友のヌイヌイちゃんが負ける、っていうのはあんまり考えたく無いかなぁ。
「では、各自宜しくお願いします」
ヌイヌイちゃんの号令と共に、アッチの艦隊と向き合うアタシ達。呉鎮守府の、何よりヌイヌイちゃんの為にも負けられないっぽい!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「司令官さんからの指示は、以上なのです」
電の口からあの優男(やさおとこ)の作戦を聞き終えた所よ。私の相手は不知火か‥‥‥まっ、あの優男にしては考えてるわね。
曙よ。今から演習。駆逐艦とは言え相手は呉の第一と第三艦隊。コッチは油断できる程強く無い。比叡さんは如何に長く生き残るか、私は如何に早く不知火を落とすか。それが問題よね。アッチの旗艦の不知火はコッチの作戦は読んでくるだろうし、コッチの練度は足りないし、全く不利な演習よね。
それにしてもあの優男、『雪風は狙うな』か。それなりに分かってるみたいね。確かに今の青葉さんじゃ、雪風には機銃の一発ですら当てられないでしょうね。
「分かってるわね、文月。出来る限り粘るのよ?」
「うん、頑張るよ」って笑みを見せて答える文月。全部アンタの粘り次第なんだからね?フンッ、絶対に呉の面子に一泡吹かせてやるんだから。ストレスも溜り気味だし、ひと暴れして発散しないとね。はぁ?ストレスの原因?そんなの金剛さんに決まってるじゃない。あの優男とは共通の目的の為に手を組んでるだけなのにさ、『曙はテートクに近過ぎマス!一緒に居過ぎデース!!』って嫉妬してくるのよ、全く。金剛さんには私と優男が仲良しに見えるみたいなのよ。お陰でぜんっぜん内偵が捗らないわ。
あ、あと電も、ね。私が優男と一緒に作業したり裏で‥‥‥コソコソするのは仕方無いわよね、電達には『深海棲艦は艦娘から生まれる』なんて言えないし‥‥‥まあ、そんな感じで一緒に居たりすると、電ってば寂しそうな表情したり悲しそうな表情したりするのよ。あれも嫉妬、ね。やれやれね。
失礼よね。私にだって相手を選ぶ権利くらいあるんだから。‥‥‥‥‥‥なっ、何よ?え?楽しそうに見えるって?そんな訳ないじゃない。優男とは共闘してるだけよ。他に特別な感情なんてある訳無いわ。
さてと、そろそろ私も演習に集中しないとね。手加減は無し。全力で不知火を叩くわ。この10㎝連装高角砲も問題無し。よしっ、不知火、覚悟しなさいよ。演習の為の急造艦隊になんて負けないんだから。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
開始の合図と共に水面を走り出すアタシ達。やっぱりヌイヌイちゃんの予測通り、向こうは各個アタシ達に向かってくる。そう来なくっちゃね。比叡さん、覚悟はできてるっぽい?さぁ、素敵なパーティしましょう?
互いに一定の距離を保ちながら並走するアタシと比叡さん。ふぅん、やっぱりアタシの事をみんなから引き離すつもりなんだ?良いよ、その手には乗ってあげるっぽい。
アタシは牽制も兼ねて砲撃をするけど、始めから当たるとは思ってない。アタシの連装砲では射程が短すぎるっぽい。何処かのタイミングで距離を詰めなきゃ。
幾ら比叡さんが高速戦艦でも、速力は精々30ノット出ないくらい。アタシの方が速い。アタシが本気で走れば追い付いちゃうけど、どうしよっかなぁ?
あっ、比叡さんが砲撃してきた。やっぱり戦艦の射程は長い。アタシの砲の届かない距離からでも、向こうは届かせてくる。まあ、でもこの距離ではアタシには当たらないっぽい。避けるだけの余裕はある。さて、っと。ヌイヌイちゃんの為にもさっさと片付けないとね。
被弾はするな、って言われたし、ここは慎重にジグザグに走るアタシ。後退しながら砲撃してくる比叡さんの攻撃の間を縫って、どんどん距離を詰める。そろそろいいかな‥‥‥アタシは魚雷を後方に射出、同時にそれを砲撃。魚雷と砲の発射の反動、それの爆発の爆風に乗って急加速。さあ比叡さん、覚悟するっぽい!
アタシは瞳を赤く光らせながら、降り注ぐ砲撃の中をものともせずに全速前進。比叡さんの焦ってる表情が見える。
比叡さんがその場で急停止して下を向いた。諦めたのかな?よーし、このまま至近距離まで詰めて魚雷を‥‥‥比叡さん、トドメっぽい!
‥‥‥んっ?何、今の比叡さんの『ニヤ』って表情?
えっ!?比叡さんの右肩の方の主砲が爆発したっぽい!?アタシまだ当ててないのに!ジャムったのかな‥‥‥‥‥‥反動で比叡さんの身体が急に左に流れて‥‥‥あっ‥‥‥ この至近距離で避けられ‥‥‥‥右腕掴まれた‥‥‥ヤな予感が‥‥‥。
「気合ッ!入れてッ!斉射!!」
ギャー!?比叡さん、この距離で撃ったらアタシも比叡さんも大ダメージっぽい!アタシの持ってる魚雷、ちゃんと見えてるっぽい!?演習弾でもすっごく痛いっぽ‥‥‥あっ‥‥‥これ駄目なヤツっぽい。比叡さん、全部あの瞬間を待ってたっぽい。アタシが超至近の避けきれない距離まで近付くのを待って、右肩の主砲を爆破、反動で比叡さんはアタシの右に回り込んで、アタシもろとも自爆。初めからアタシを脱落させるのが目的だった。アタシさえ居なければ、曙ちゃん達でどうにか出来るって踏んだっぽい。
当然、アタシが比叡さんにブチ込もうと思ってた両手一杯の魚雷は誘爆。アタシは轟沈判定、比叡さんも大破で戦闘続行は無理っぽい。あー‥‥‥ごめんねヌイヌイちゃん、アタシ、演習だからって油断してたっぽい‥‥‥。向こうは『演習だから誰も轟沈はしない』っていうのを利用して勝ちに来てるっぽい。
最初の脱落者は夕立でした。演習なら安全ですからね、ポイポイさえ居なければ、通常の艦隊戦。重巡の青葉が居る分向こうの方が有利。
イベで水無月さん(とその他)が実装されましたね。このSSには出ませんが。ロリ●ン提督の皆さんおめでとうございます。