『そんな処かな。後はソッチに戻って報告するから』
「御無事で何よりでしたわ。川内さん、戻ったらゆっくり休んでくださいな」
思わず力が抜けて、その場に座り込んでしまいました。皆さん無事で本当に良かった。何せ相手は『あの』レ級。それともう一隻、深海棲艦の鬼級の特型駆逐艦が現れたらしいですし、心配しておりましたわ。
熊野です。今は川内さんの報告を受けていた処です。川内さんはまだ向こうの鎮守府に居ります。赤城さん、金剛さん、それと無理矢理支援に出て行った曙さんと共に念の為少しばかりアチラに滞在してから戻るそうですわ。
『休んではいられないよ。レ級は想像以上だった。私も含めて鍛え直さないとね』
「アラ、それでは指輪を受け取る気になったのですか?」
川内さん、今の今までケッコンカッコカリの指輪の受け取りを許否していらしたのです。『曲がりなりにも左手薬指に填める物だし、奥さんに悪いから』と。律儀と云えばそうなのかも知れませんが、そこまで気にする程でも無いかと。指輪といっても扱いは艦娘用の装備品ですし。まあ、金剛さんや曙さんのようにそうとは思っていない方もいらっしゃるようですけれど。
はい?わたくしですか?勿論、呉時代の東郷大将に頂きましたわ。ほら、この通り。それはもう、ロマンチックの欠片もないくらい実務的に渡されましたわね。あの方も、夕立‥‥‥夕星さんや暁さんが指輪を受け取った当時に勘違いしてしまった事を反省したのでしょうね。フフッ。
『まあね。さっき美鈴ちゃんに許可は貰ったからさ』
「そうですか。では指輪の申請は提督に言っておきます。明石さんに用意してもらっておきますわね」
何というか、本当に律儀ですわね。艦娘着任当時の、わたくしと同室だった頃の川内さんは『夜戦バカ』なんて呼ばれていましたのに。あの頃と比べて落ち着きましたわね。あれから随分経ちますし、川内さんもそういうお歳に‥‥‥‥‥‥と、それはわたくしも同じ事でした。艦娘は外見が変わらないので失念していましたわ。そうですわね、わたくしも年齢的には成人しておりますものね。時が流れるのは早いものです‥‥‥ハァ。
さて。外出許可を申請しておきます。今日は全員無事だった細やかな御祝いとわたくしの自棄酒ですわ。また妙さんのお店にでも‥‥‥はい?妙さんのお店は今日から連休なのですか?妙さん達は墓参り‥‥‥ですか。なら仕方ありません。貴方、わたくしの自棄酒に付き合ってくださる?‥‥‥‥‥‥そうですか、それは残念ですわね。ではわたくしは漣さんやグラーフさん、榛名さん達を誘ってゆるりと飲む事にしますわ。
それでは、ごきげんよう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「アンタ暇なんでしょ?提督さんがちゃんと仕事してるか見てきなさいよ」
「えー、そんなの瑞鶴さんが自分で行けばいいじゃん。鈴谷は今忙しーの」
瑞鶴さん、「はぁ!?」って睨んできたよ!自分だって暇そうなクセに鈴谷に頼んだりしてさあ!まあ、この人なんか苦手だし行くけどさ。
ちーっす、鈴谷だよ。
今は自分の部屋。神通さんと提督は朝から執務室に籠ったままなんだ。今日は訓練は休みだからゆっくりしてようと思ったのにさ、瑞鶴さんが「様子見てこい」なんて言うんだよ?大体さ、鈴谷が見に行かなくたって提督も神通さんも仕事サボる訳無いに決まってんじゃん。
なんて言うかさ、瑞鶴さんって提督に冷たいよね?あ、あれだ!歳下な提督に指図されたくないとか。歳下の上司に嫉妬してるんだよ、きっと。うっわー、サイテー!
でさ、その瑞鶴さん、部屋の扉開けたまま鈴谷の事ずっと睨んでるんですけど。もしかして鈴谷が行くまでずっと居る気かな?ハァ~、メンドーだなぁ。どーせフツーに仕事してるに決まってるけど仕方無い、行きますか。
「わかりましたー、行けばいーんでしょ、行けば」
「アンタは始めから素直にそうすればいいのよ」
ムッカー!ちょっと先輩だからってエラソーにしちゃってさぁ!清霜ちゃんや阿賀野さんの事は名前で呼んでるクセに、鈴谷の事だけ『アンタ』呼ばわりだよ?全くもう!
瑞鶴さんって何時もツンツンしてるよね。提督の前でもああなんだから困るよ。鈴谷だって提督とは仲良くやってるのにさ。そりゃあ、もしも提督がキッモイ男とかだったら距離取るかもしれないけど。
あーあ、じゃあ鈴谷は執務室に行こっと。最近は清霜ちゃんが頻繁に執務室に通ってるみたいだし、あの子の相手してたら神通さんとかに執務の手伝いさせられなくて済みそうだしね。
「瑞鶴さんさぁ、提督を親の敵みたいに睨むのやめなよ。あと、『アンタ』じゃなくて『鈴谷』だかんね!」
まだ扉で睨んでるから言ってやったよ!そしたら瑞鶴さん、「アンタに言われる覚えはないわよ」だって。フーンだ。
見た目の歳も近いし、折角仲良くやれるかもって思ってたのに。どうせならみんなで楽しく過ごせた方がいいじゃん?‥‥‥横須賀ではみんな家族みたいだったからさ。もー知んないかんね!
一応執務室に行きますか。行かなかったら行かなかったで後でメンドーになりそうだしね。
っと、着いた着いた。さてさて、突撃いたしましょう♪
「提督、ちーっす」
‥‥‥って、アレッ?なんか部屋の空気が重いんですけど!?神通さんも珍しく落ち着かない感じだし、提督なんか視線は広げてる書類に向いてるけど見えてない感じだよ、あれは。あ、清霜ちゃんも居る。
「清霜ちゃん、何かあったの?」
えっ!?清霜ちゃんも?なんでそんな必死に我慢してるような感じなの?トイレ行きたい‥‥‥とかじゃなさそうだし、うーん。
「鈴谷さん‥‥‥‥‥‥帰ってくるよね?」
涙目で口を開いた清霜ちゃんの第一声。思わず「うん?」って聞き返しちゃったよ。鈴谷は何処も行かないけど?
「大和姉さまは、無事に帰ってくるよね?」
あ‥‥‥そういう事か。大和さんがアッチに応援に行った理由って、この前のレ級と戦う為だったもんね。清霜ちゃんが心配するのも分かるよ。えっとさ、軍艦の記憶ってやつだよ。軍艦清霜は軍艦武蔵の最後を近くで看取ったんだっけ。大和さんは同じ大和型だし、前回轟沈寸前まで追い込まれたし、思う所があるんだろうね。
「決まってんじゃん、大和さんは絶対帰ってくるって!」
詳しい歳は分かんないけどさ、清霜ちゃんは鈴谷よりは歳下だよね?なら元気づけてあげないとね!
あれ?じゃあ神通さんと提督はなんで?やっぱり大和さんが心配だから?けど何て言うかさ、二人は『家族』を心配してる感じがするんだよね。何でわかるか?それは鈴谷も同じだったからだよ。ずっと、ずっとお姉ちゃんの無事を祈ってたもん。まっ、お姉ちゃんは結局沈んじゃったけどね。
‥‥‥ん?神通さんって川内型だよね?そう言えば熊野が『川内教官には妹が居る』って言ってたような?あれっ?
あっ、例の鎮守府から連絡みたい。あ、提督が電話とった。
「‥‥‥川内さんっ」
あ、電話の相手は川内教官みたい。けど何でそんな逼迫したカンジになってるの?
「うん、うん」ってずっと話を聞いてて頷くだけの提督。神通さんもハラハラしながらそれを見てるよ。うーん、もしかして何か起きてるの?‥‥‥まさかレ級が出たの!?だから3人ともこんなに落ち着かないの?
「提督、姉さんは何と?那珂ちゃんは!?」
あ。神通さん、川内教官の事『姉さん』って呼んでる。やっぱり教官の妹なのか。那珂ちゃん‥‥‥って川内型の三番艦だよね?じゃあその那珂ちゃんも実の姉妹って事じゃん。そっか、それは心配するよね。
「川内さんも、那珂ちゃんも、大和さんも。みんな無事だそうです。‥‥‥春雨も。良かった‥‥‥」
提督ってばスッゴいホッとしてるよ。誰も轟沈しなかったんだね、さっすが川内教官!
‥‥‥って、春雨?春雨って言ったらあの春雨?今の日本の駆逐艦のエースだよね?
「妹さんも‥‥‥本当に良かったですね」
え?神通さん、今『妹さん』って言った?じゃあその春雨は提督の妹さんって事!?うっわぁ、提督って姉妹揃って凄いんだね!
全く、熊野ってばそういう事話してくれないんだもんなぁ。言ってくれたらいいのにさぁ。
あれっ‥‥‥ちょっとストップ。もしかして瑞鶴さんって提督の事心配して鈴谷に見に行けって言ったって事?じゃあ、瑞鶴さんってホントは提督の事嫌いじゃないって事かな?うーん、鈴谷あの人の事分かんなくなってきた。
まいっか。みんな無事だったんだし。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「鈴谷さんは?」
「先程部屋に戻りましたよ、提督」
鈴谷さん、瑞鶴さんに様子を見てこいって言われてたみたい。私達がちゃんと仕事してるか気になってたっぽいわ。本当は瑞鶴さんも私達の事気にかけてくれてるのかも知れない、そう思いたい。
沖立です。山本中将達の予想通りレ級は美鈴ちゃんの鎮守府に現れたわ。何とか撃退には成功したみたいだけど、みんなボロボロだったって。大和さんや川内さん、比叡さん達が居てもそれほどの状況‥‥‥レ級を沈めるのには苦労しそう。今思うとあの時ここ呉鎮守府で轟沈する子が出なくて本当に良かったと思うわ。
そうそう。これからの事ね。清霜ちゃんの事。清霜ちゃんには暫く横須賀に行ってもらう事にしたわ。川内さんと相談したのだけれど‥‥‥。
「しれーかん?神通さんも?どうかしたの?」
私と神通さんの態度がいつもと少し違うのに気付いたみたいね。大和さんが無事だったのを知って落ち着いてた清霜ちゃん、私達に不思議そうな眼差しを向けてるわ。
「清霜ちゃんには、これから暫く横須賀に出張してもらうわね」
「え?しれーかん、なんで?」
私の我が儘で拒否してる時じゃない。少なくとも、レ級と対等に戦える力までみんなを引き上げなきゃいけない。特に、駆逐艦の底上げは必須。私‥‥‥『夕立』や『川内』、嘗ての『萩風』のように。それが、私と川内さんの出した答え。
「清霜ちゃん、強くなりたいんだよね?」
「‥‥‥清霜は、強くなりたい!」
今の私では満足に教えてあげられないけど、川内さんなら。勿論清霜ちゃんの事は心配だけど、この子ならきっと。
そう思って、嬉しそうに執務室を出ていった清霜ちゃんの背中を見送ったわ。
今度こそ。今度こそ、みんな無事で笑っていられるように。ねぇ、そう思うでしょう?鈴谷さん、翔鶴さん、島風ちゃん、それに、萩風。
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。本年で完結まで行けるかなぁ?
え?レ級戦?ちゃんとありましたよ?
はい?特型駆逐艦の深海棲艦?とっぷしぃくれっとです。
清霜強化計画始動の為、駆逐艦清霜は暫く戦線離脱します。
金剛「Hey、比叡。何してるデース?」
比叡「あ、お姉さま。Android版艦これですよ。艦隊のみんなを揃えようと思って建造してるんですけど、春雨ちゃんと天津風ちゃん、ゴーヤさんが出来ないんですよ」
金剛(天津風と春雨は今はまだ建造出来ない筈デース)
比叡「レア艦レシピ回してるんですけど‥‥‥あ、またですよ、はぁ‥‥‥建造時間30分‥‥‥またハズレですよぅ」
金剛(What!?30分なら島風でアタリデース!)
比叡「おっかしいなぁ、姉妹のみんなは建造ですぐできたのに‥‥‥」
金剛(始めたばかりで建造でワタシのsister全員‥‥‥御召艦補正ってヤツデスネ‥‥‥)