抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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新たなる力を

「赤城さん、どう?」

 

「そうですね‥‥‥62型と比べると対潜でやや劣りますが、他の性能は悪くありませんね。トータルで考えるならこの機体の方を使うべきでしょう」

 

曙よ。

今は洋上で新型の‥‥‥いや、新型って言うのも変か。過去の世界大戦で使われた兵器だった訳だし。本当なら『思い出す』とか『復活させる』とかの方が正しい表現な気もする。

 

「熊野さんの方は?どう?」

 

私の問いに、熊野さんは両肩を竦めて盛大に溜め息。まっ、それはそうよね。

 

「答えるまでもありませんわね。わたくしは航空巡洋艦ですのよ?爆戦を飛ばせる訳が無いではありませんか」

 

今日は新型爆撃戦闘機のテストよ。零式艦上戦闘機63型。過去の世界大戦での『あの任務』に使われた機体ね。

そう言えばだけど、夕立の戦い方‥‥‥ほら、今まさに川内さんが清霜達に教えてるアレ。アレってさ『あの任務』を連想しちゃうから本当は私は好きになれない。実際に命と引き換えにって訳じゃないけどさ。

 

でさ。艦上戦闘機のテストに何で熊野さんも参加してるのかって言うとさ、『重巡洋艦熊野』ってあの大戦では航空巡洋艦になってないでしょ?だから、歴史のそれとは違う熊野さんなら『通常では有り得ない運用も出来るかも知れない』っていう期待かしらね。 まっ、結果は予想の通りだったけどね。熊野さんに艦上戦闘機が飛ばせるんなら空母は誰も苦労しないっての。

 

「わたくしの『艦娘としての力』が他の方よりも深海棲艦側のそれに近いというのは否定はしませんが‥‥‥」

 

上の連中はどう思ってるのか知らないけどさ、少なくとも私や赤城さん達は熊野さんの事そんな風には考えてないわよ。あの優男だって。そりゃあアイツは提督だし普段は甘ちゃんだけどさ、私達艦娘の事ちゃんと人間として見てくれてるからね。この前だって、雷の所へ応援に行く金剛さん達に私のワガママで着いて行かせてもらったし。レ級が相手だったし私みたいな駆逐艦が行っても足手纏いなのにさ。アイツ、結局私を行かせてくれた。『後悔してほしくないから』ってね。何よ全く、いつもは頼りない癖にああいう時ばっかり格好つけちゃってさ。私が何時もどんな思‥‥‥って何言わせんのよっ!?

 

「そんな事無いわよ。あの優男だってきっと、熊野さんが艦戦使えればその分艦娘の生存率が上がるからって駄目元で試してるんでしょ。全部私達が無事に戻って来れるように、って思っての事でしょ」

 

なっ、何よ?なんで赤城さんも熊野さんもクスクス笑ってるのよ?気持ち悪いわね!

 

「提督の前でもそのくらい素直になればいいのに、と思っていたのですわ。ね?赤城さん?」

 

「ええ、熊野さん。そうですね、曙さんはもう少し素直になるべきですね」

 

だーッ!!二人とも何言ってんのよッ!!わた、私は別にあーんな奴の事なんて何とも思ってないんだから!!余計な詮索はしなくていいの!今は63型の性能テストの結果のレポートの事だけ考えてなさいよ!

 

「何で何時もそういう話になるのよ!?私は別にあんな優男の事なんて好きでもなんでも‥‥‥」

 

私の言葉を遮って熊野さん、「あら、そうでしたの?では曙さんは脱落、という事で金剛さんや鈴谷に話しておきますわね」って。ウグッ、ひっ、卑怯よ。私だって別に脱落したい訳じゃなくて、その、素直になれないだけっていうか。

 

「‥‥‥前にも言いましたが不倫となると看過できませんわよ?それにさっきのはあくまでも『素直になった方がいい』と言っただけですわ」

 

‥‥‥熊野さんにハメられたっ!!今、きっと私は耳朶から足の先まで紅くなってるわね。全身が恥ずかしさで熱い。後で覚えてなさいよ!

 

「そっ、それは今はいいから!‥‥‥兎に角まだデータ不足よ。次からは葛城さんとグラーフさんにも協力してもらって詳しい性能を見るわよ」

 

全く、なんでこの私がアイツの事でこんなに焦らなきゃいけないのよ、あんのクソ提督っ!

まあ、私の事は置いておいて。63型が使えそうなら呉の瑞鶴さんの所にも送ってあげないとね。さてと。それじゃ報告しに鎮守府に戻りますか。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「不知火さんなら落ち着いてたみたいだから大丈夫よ」

 

執務室。さっきの不知火さんの様子を司令官に報告。全く、そんなに心配なら自分で会いに行けばいいのに。

 

「そっか。ごめんね、暁ちゃん」

 

暁よ。

でも仕方無いのかな?司令官は不知火さんへの返事には困ってるみたいだし。変に断って不知火さんの戦闘に影響でも出たりしたら大事だもんね。何時かの電‥‥‥美鈴提督の時みたいにさ。

え?その電の時の件?ああ、アレね。暁は直接関わった訳じゃないんだけどね、もう五年前くらい?まだ美鈴提督が駆逐艦電だった頃ね。ええっと、そうそう。ほら、川内さんがそのキャリアの中で唯一完敗した深海棲艦。ソイツが電の居た鎮守府に現れたのよ。その当時電は山本十三提督の事で色々悩んじゃってたみたいでさ、いつも通りに戦闘に集中出来なかったらしくて。その深海棲艦が電を狙った砲撃に気付かなくて、咄嗟に庇った僚艦の人が瀕死の重傷を負ったのよ。

歴戦の電ですらそうだったんだから。幾ら不知火さんでもさ、やっぱり恋愛感情が絡むと普段の力が出せないかも知れないでしょ?だから司令官はあんまり不知火さんにショックを与えるような事はやりたくないみたい。

 

けど。ずっと悶々とさせたままっていうのも結局変わらないと思うんだけど。暁的にはこの際ハッキリさせるべきだと思うのよね。その方が司令官と不知火さんお互いの為になると思うの。だって、二人は親友のままでは居られない訳でしょ?受け入れてくっ付くか、断って上司と部下の関係に留まるか。今の二人の間ではきっとそれ以外の選択肢は無いと思う。だから、司令官は結論を出すべきね。少なくとも暁はそう思うわ。って言っても、いつ決断するのかを決めるのは司令官だけど。

 

「どうせ集中出来てないんでしょ?もう夜も遅いし今日は執務切り上げて休んだら?まだ残ってるっていうなら後は暁がやっておくから。ね、司令官?」

 

「そうね。そうする。任せても構わない?」

 

ゆっくりと椅子から立ち上がって、「お願いね」って暁に笑いかける司令官。暁もたまにはレディらしい事もしないとね。司令官は疲れて重そうな身体を引き摺るよう部屋の外へ。もう。無理ばっかりしちゃって。

さて、あと残ってるのは‥‥‥あんまり大したものは無いかな。ほんと、こんなの神通さんや暁に任せてくれればいいのに。

 

ん?あれ?何これ?下着の申請?誰よ、こんな申請してるのは。こんなの休暇にでも買いに行ったら‥‥‥って、これ鈴谷さんのだ。あ、艤装の下着の方か。えっと、サイズが合わなくなったから大きいのが欲しいって?‥‥‥はぁっ!?航空巡洋艦になっただけで胸が大きくなったって事!?ズルイズルイズルイっ!暁なんて改二になっても子供の姿のままなのに!『胸が重くて肩が凝る』とか『あっても重くて邪魔なだけだから無い方がいい』とか言ってみたいのに!鈴谷さんだけズルイっ!!

‥‥‥‥‥‥ん?鈴谷さんって要は『改』よね?改になっただけでそこまで容姿が変わる艦娘って居たっけ?改二になったっていうんなら分かるけど。確か熊野さんは『改』の航空巡洋艦になった時は容姿自体は変化しなかった筈だったと思うけど。

 

他の艦の改造の事までは詳しくは分からないけどね。そんなに変わるものなんだっけ?

うーん。

一先ず鈴谷さんを呼んでみようかしら。だって、暁を差し置いてなんて酷いと思わない?

 

 

 

「暁ちゃん、こんな遅い時間になーに?‥‥‥あれ?提督は?」

 

「来たわね、鈴谷さん。司令官には今日はもう休んでもらったわよ。それよりこの申請はどういう事なの?」

 

‥‥‥あれっ?鈴谷さん、なんだか少し大人っぽくなってない?暁の気のせいかな?

 

「あぁ、それ?改造したら何だか今迄の服がキツくなっちゃってさぁ。下着も小さくなっちゃったみたいで」

 

あ、やっぱり大きくなったんだ。いいなぁ‥‥‥。鈴谷さん、お姉さんの容姿と益々ソックリになったわね。

 

 




さて、ここで追加エピソードのフラグ挿入です。おや?鈴谷の様子が‥‥‥?

※注意※

なンなンですか?なンなンですかァ!?なァンでオレの鹿島がこォンなキャラになってやがるンですかねェ!
‥‥‥という鹿島嫁提督の方は、以下読み飛ばしを推奨します(以下、只のネタです)。

◆◆神風さんの受難◆◆

(抜錨するっぽい!本編とは別の世界線の)ショートランド泊地。

神風「ええっと、第三会議室はコッチ‥‥‥かな?」キョロキョロ(・д・ = ・д・)

浜風「あ、神風さん」

神風(浜風か。あんまり話した事ないけど‥‥‥聞いてみよう)「ちょっと聞きたいんだけど、第三会議室ってコッチで合ってる?」←新参

浜風「合ってます。丁度私も向かう所ですから良ければご一緒しましょうか?」←新参

神風「ありがとう。もしかして浜風も鹿島さんに呼ばれたの?」

浜風「ええ。神風さんもですか。私も呼ばれたんです。理由は聞いてはいませんが‥‥‥次の演習に備えた指導でしょうか?」

神風「さあ?何かしらね‥‥‥あ、独逸艦‥‥‥なんだか挙動不審ね?」

オイゲン「おあっ!?Entschudigen(ごめんなさい)カシマ、Entschudigen‥‥‥って、ハマカゼにカミカゼじゃない。びっくりしたぁ」ホッ

神風「ぷりんつさん、どうかしたの?」

オイゲン「‥‥‥そうだっ!カシマに『ビスマルク姉さまに急用を頼まれたから行けない』って伝えておいてくれる?」

神風「いいけど‥‥‥」

オイゲン「Danke!恩に切るわ!それじゃまたね!」←ダッシュで逃亡

浜風「急いでいたみたいですね」

神風「ぷりんつさんも鹿島さんに呼ばれたのかしらね?」

浜風「あ、会議室は此処ですよ」

神風「時間は少し早いけど、中で待ってましょ」トビラアケル

電「あ‥‥‥神風さんと浜風さんなのです。お二人とも遂に呼ばれたのですね?」

呂500「ですって!」

島風「おっそーい!」

浜風(あれっ?私の気のせい‥‥‥かな?)

神風(遂に、って?)

電「神風さん、プリンツさんを見ませんでしたか?」

神風「ぷりんつさんなら急用がある、って言って何処かへ走っていったけど」

電「‥‥‥逃げられたのです」ボソッ

神風「え?」

電「なんでもないのです。リベッチオちゃんと大和さんは他の鎮守府と演習中なので、後は天津風ちゃんだけなのです」

浜風(やっぱり嫌な予感が)

鹿島「皆さんお揃いですね?神風さんと浜風さん、ようこそ『KSHK』へ。ふふっ」

神風「けいえす、え‥‥‥???」

浜風「」

鹿島「そうそう、天津風さんは入渠中ですのでもう少ししたら合流しますよ♪」

神風「え?天津風って確か今日は出撃とか無くてフリーの予定だった気が?なんで入渠してるの?」

鹿島「ええ。ですからさっきまで私が少し演習でお相手してあげてたんです♪」アマツカゼハニゲヨウトシテイタノデ

浜風「」

神風「えっ?鹿島さん、今何か言った?」

鹿島「コッチの話です。では今日の議題は‥‥‥おや?プリンツさんの姿が見えませんけど?」

神風「ぷりんつさんなら、『びすまるくさんに急用を頼まれた』って言ってたわね」

鹿島「‥‥‥へぇ。そうですか」ハイライトオフ

浜風(ヒイッ!?)ビクッ

鹿島「ではプリンツさんには私が後程『お話』しておきますね。では改めて。今日は鈴谷さんの改二が来た件についてです♪」ハイライトオン

神風「そっか!『さぷらいず』ってわけね。みんなで隠れてお祝いの準備をするのね!」

浜風「‥‥‥」チラッ

電・島風・呂500「「「」」」ガクブル

鹿島「そうですね、ある意味サプライズですね‥‥‥あの雌猫に」ハイライトオフ

鹿島「改二になった上に軽空母?しかも生意気にも設計図2枚と資材も使ってですか?軽空母になるにはレベル88?それってもう少し粘ればケッコン出来ちゃいますよね?」ウフフフフ

神風「あの‥‥‥鹿島さん?」

浜風「‥‥‥」

鹿島「しかも何ですか、あの紫の下着は?誘ってるんですか?誘ってるんですよね?普段の言動もそうですものね?『私の』提督さんを誘惑するつもりなんですよね?『折角設計図2枚も使ったんだし、もう少し頑張ればケッコン出来るから』って改二のレベルを引き上げてケッコンの口実を作るつもりなんですよね?きっと『私の』提督さんを横から奪うつもりなんです、あの裏切り者のドロボウ猫ッ!!!」ギリギリ

神風「ヒッ!?」

浜風(帰りたい)

鹿島「何としても!何としてでも鈴谷さんの改二を阻止します!!あのドロボウ猫がレベリングしに行った所を後ろから‥‥‥一発だけなら誤射ですし。それが駄目なら私や皆さんが随伴してレベリング初戦で無理矢理大破して即撤退とか、若しくは直接的に闇討ちとか」ウフフフフ

神風「ねえ、電。けいえす‥‥‥何とかってなんの略なの?」ヒソヒソ

電「KSHK。『改二が来ない新参ホイホイ艦娘の会』の略なのです。鈴谷さんもこの前まで参加させられていたのです。鹿島さんはレベル35で放置されたままだから気が立っているのです。この前は明石さんの身が危険だったのです。鹿島さんは『あの淫乱ピンクスリット、とっくに改になってるのに演習に参加してレベリングなんて‥‥‥提督さんを誘惑したんですね!許しません!』って言ってたのです」ヒソヒソ

浜風(もしかしてこれって提督に好かれやすい新参ホイホイの艦娘を鹿島さんが監視する会?‥‥‥異動願は今からでも間に合うでしょうか?)

鹿島「うふふふふふっ♪大丈夫ですよ、金剛さんも協力してくださいますから♪うふふふふふっ。『勿論協力するネー。ワタシもレベル92で放って置かれたままデース。鎮守府内の艦娘で初めてに90に到達して『テートクのハートを掴んだのは‥‥‥ワタシデース!!!』って嬉々として指輪の任務に参加したのも遥か昔の話デース(遠い目)』って言ってくれましたし♪‥‥‥あ、それから浜風さん?『恋人にしたいキャラランキング1位』らしいですけど、私の提督さんに色目使ったりは‥‥‥しないでくださいね?」

浜風「アッハイ」

鹿島「それと神風さん」

神風(矛先がコッチにも来た!?)

鹿島「大正ロマン可愛いのは構いませんけど、その和服に隠れた立派な胸部装甲で提督さんを誘惑しないでくださいね?」

神風「胸部装こッ!?そっ、そんな破廉恥な事しないから!」

島風「‥‥‥胸部?」ペターン

呂500「‥‥‥装甲?」ペターン

電「‥‥‥なのです?」ペターン

神風「ううっ、あんまり見ないで///」←隠れキョヌー

島風・呂500・電「「「グハッ!?」」」大破

神風(姉妹艦のみんな‥‥‥お姉ちゃんはこの鎮守府でやっていける自信がありません( TДT)


―――(気が向いたら)つづく。
登場した新参ホイホイの艦娘の皆様、電と島風以外は手に入れるの大変という罠。大和は大型建造のみ、浜風、天津風は建造不可な上ドロップ率も1%程、他の艦娘は通常は入手不可、イベントで手に入るかどうかってレベルですからね。彼女達に釣られて始めた新参提督の皆様、お気持ちお察しします。
あ、リベは4ー5、鹿島は6ー5で出るんでしたっけ。新任提督の皆さんやったね(白目)
かくいう私も浜風ドロップまでに燃料弾薬をのべ10万程消費しましたがね。
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