抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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言葉の裏側

今日は呉の第一艦隊が出撃中。だから秘書艦の翔鶴さんはいないっぽい。第一艦隊‥‥‥えっと、旗艦の翔鶴さん、航空巡洋艦の利根さん、軽巡洋艦の五十鈴さん、駆逐艦の雪風ちゃん、それから羽黒さんと吹雪ちゃん。

そうそう、吹雪ちゃんが大ベテランで第一艦隊所属っていうのはこの時に初めて知った。

「吹雪ちゃんめ!そんな事一言も聞いて無いっぽい!」って漣ちゃんが言ってた‥‥‥それ、アタシの真似っぽい?

 

第一艦隊を態々引摺りだした任務は、石油タンカーの護衛。日本は資源が少ないから、艦娘達の遠征とかタンカーでの輸入で賄ってる。特に重要なエネルギー資源、石油の輸入には今みたいに各鎮守府の第一艦隊が当たるっぽい。

タンカーはここ呉を経由、東京湾へ入ってから千葉にある石油コンビナートに向かう。だから、タンカーと一緒に呉に戻ってくるウチの鎮守府の第一艦隊と入れ換えで呉から東京湾迄の護衛任務に当たる為に、横須賀の第一艦隊が滞在してるっぽい。メンバーは武蔵さん、長門さん、妙高さん、島風ちゃんと曙ちゃん。それから、加賀さん。

 

横須賀の第一艦隊旗艦、武蔵さんはウチの提督さんとずっとお話してる。重巡洋艦の妙高さんと戦艦の長門さんはソファに並んで座って静かに珈琲飲んでるんだけど、何でかな?長門さん、さっきからアタシ達の事チラチラ見てるっぽい。

漣ちゃんは駆逐艦の曙ちゃんに捕まってる。あ、そっか。漣ちゃんと曙ちゃん、先の大戦であんな別れ方したんだもんね。ボケてる漣ちゃんにツッコミ入れてる曙ちゃん、「ハァ?漣、バッカじゃないの!?」って口では言ってるけど、雰囲気からは凄く嬉しそうなのが伝わってくるっぽい。あーあ、アタシも白露型の艦娘と再会してみたいなぁ。

 

それで、アタシはと言えば久し振りに再会した島風ちゃんと話してる。

 

「聞いたよ、夕立。姫級を一人で撃沈したんだよね!」

 

「けど、アタシもボロボロだったっぽい。不知火ちゃんが居なかったら轟沈してた」

 

島風ちゃんはこうして話してる時は日本を代表する駆逐艦には全然見えない。歳相応に見え‥‥‥アレ?島風ちゃんってアタシより凄く歳上なんだっけ?見た目が幼いせいで混乱してくるっぽい。

 

「また演習しようね!」

 

「うん!今度はきっと負けないっぽい!」

 

みんな呉まで態々来てるんだけど、このあと重要任務だから演習とかは無し。うーん、どのくらいアタシが成長したか見せたかったんだけど。ホラ、演習なら魚雷持って突撃しても平気っぽいし島風ちゃんにも通じそうだし。

 

あ、そうそう。正規空母の一航戦、加賀さんなら此処にはいないっぽい。瑞鶴さんと少し話してたっぽいんだけど、売り言葉に買い言葉で「頭にきました」って言って瑞鶴さんと弓道場へ向かったっぽい。

あ、帰ってきた。ポーカーフェイスで変わらない加賀さんと、すっっっごく悔しそうな表情の瑞鶴さん。弓道対決は結果を聞く必要も無いっぽい。

 

『提督、此方第一艦隊旗艦、翔鶴です。タンカーと共に間もなくそちらに帰投します』

 

ちょうど加賀さんが戻って来たタイミングで翔鶴さんから通信。無事に呉に戻って来たっぽい。あ、言い忘れてたけど、アタシ達が居るのは執務室。横須賀の第一艦隊は兎も角、アタシと漣ちゃんは遊びに‥‥‥じゃなかった、秘書艦代行の瑞鶴さんのお手伝いに来ただけっぽい。うん、怒らない提督さんが悪いっぽい。

 

「うむ、予定通りだな。翔鶴、停泊する迄は気を抜くなよ?」

 

『畏まりました、提督』

 

提督さんが通信を終えたの同時に、横須賀のみんなが立ち上がって整列。提督さんに向かって敬礼した後に執務室から出てった。タンカー護衛の準備の為にドッグへ移動するっぽい。

提督さんもあとから執務室を出てった。タンカーの船長に挨拶に行くんだって。‥‥‥うん?そういうのって軍のトップの人って普通はしないんじゃないの?提督さんは律儀っぽい?

 

「漣ちゃん、夕立ちゃん、聞いてよ!加賀のヤツってばさぁ!」

 

提督さんが居なくなった途端、瑞鶴さんが話し始めた。加賀さんに色々言われたっぽい。

 

「『身体のバランスが悪い』とか『弓を放つポイントがずれてる』とか『身体が微かに左右に揺れる癖が直ってない』とか『進歩が無いわね。この半年何をしていたのかしら?此れだから五航戦は』とか!キーッ!一航戦だからって先輩ぶっちゃってさぁ!アイツなんて絶っっ対見返してやるんだから!」

 

えっと‥‥‥詳しくは分からないけど、加賀さんが言ってる事ってそんなに悪い事っぽい?寧ろ瑞鶴さんの為に言ってるような‥‥‥。

 

「でさぁ!『その発着艦しやすい胸部甲板は飾りかしら?』なんて言いやがって!クッソー、加賀のヤツぅ!なーにが『此れを貸しておくから、扱える程度には精進しておきなさい』よ!」

 

あ、悪意も有るっぽい?でもどっちかって言うと加賀さん‥‥‥。

そうだ。その瑞鶴さんが言ってる、加賀さんが貸してくれたっていう艦上戦闘機なんだけど、『震電改』って言うっぽい。後で提督さんが教えてくれたんだけど『精進しておきなさい』程度で貸していいような戦闘機じゃ無いっぽい。横須賀艦隊が用意した装備リストには入ってなくて、加賀さんが自分で持ってきた私物っぽい。やっぱり加賀さん、瑞鶴さんの事気に掛けてる。不器用なんだね。

 

そんな瑞鶴さんを必死に宥めた後、アタシと漣ちゃんは自室に戻った。そこで‥‥‥事件は起きたっぽい。

 

「ヌイヌイちゃん、ただいまっぽい!」

 

アタシ達の姿を見るなり、ヌイヌイちゃんは暗い雰囲気で「‥‥‥はぁ」って溜め息。何時もなら(本当に微かに)笑って迎えてくれるんだけど、何か悩みがあるっぽい。

「ヌイヌイ、どうかしたの?」って漣ちゃんが聞いたら、アタシ達の予想しなかった答えが返ってきた。

 

「今年も‥‥‥サンタさんは不知火にプレゼントはくれないのでしょうか‥‥‥」

 

思わず固まった。あ、漣ちゃん、駄目だよ。笑ったら失礼っぽい。ここは頑張って吹き出すの堪えて。

季節はもう12月。クリスマスの季節っぽい。まさかあのヌイヌイちゃんがサンタさんをまだ信じてたとは思わなかった。うぅ、これはどうするのが正解っぽい??漣ちゃんは‥‥‥頼りにならないっぽい。熊野さんに相談しよう、うん。

 

◆◆◆◆◆◆

 

自然と涙が零れていました。私の中に眠る軍艦の記憶。轟沈の記憶を夢で見ていました。建造にかなり時間が掛かるそうですので眠っていました。8時間程でしょうか?

 

申し遅れました。大和型戦艦一番艦、大和です。と言ってもたった今建造されたばかりですが。え?はい、そうです。先の大戦で大和が極秘建造された呉鎮守府に配属となります。よくお分かりですね。

 

大和が艦娘となるきっかけ、ですか?そうですね‥‥‥幼馴染みが提督をしているんですけれど、彼が持っていた写真に写っていた妖精さんが見えたんです。え?はい。電ちゃんが秘書艦をしているそうですが。どうしてお分かりに?

 

それはさておき。これから此処横須賀の提督に御挨拶に行かなくては。ええ。足柄さんも一緒に。同型艦の武蔵は今日中には任務から戻るそうです。第一艦隊の旗艦だそうですし、この大和も早くお役に立てるように精進致します。噂をすれば、足柄さんが迎えに来てくれたようです。

 

「期待しているわ。私も、呉の東郷大佐も。‥‥‥勿論、大本営もね」

 

なんでしょうか。『大本営もね』という足柄さんの言葉には、若干の影が有るように聞こえました。聞き間違い‥‥‥ですよね?

 

それにしても、今目の前にある大和の艤装、とても大きい。主砲や副砲が幾つも有ります。本当に此れを背負って戦闘など出来るのでしょうか?自慢では有りませんが、運動には余り自信が無いのですけれど‥‥‥。

 

「艤装を着けてみてくれるかしら?」

 

此方の考えを見抜いたような足柄さんの一言。艦娘になったのですし、きっとなるようになります‥‥‥あれ?いざ着けてみると身体にフィットしますし、思った以上に動けます。これが‥‥‥超弩級戦艦大和の力でしょうか?

 

「問題無さそうね。それじゃ大和、提督に挨拶に行くわよ?」

 

艤装を一度下ろし、足柄さんに手を引かれていざ執務室へ。それでは、暫しの間ですが失礼致します。

 




ツンデレ加賀さん。震電改を貸す程度には瑞鶴を気にしている模様。
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