抜錨するっぽい!   作:アイリスさん

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適材適所

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

やっぱり相手は凄いよ。休む暇もない。完全に向こうのペースで、コッチのみんなはそれに反撃するだけで手一杯。みんな息は乱れてるけど神通さんの訓練を受けてきただけの事はあって運動量は落ちてないんだけど。

 

『みんな落ち着いて!陣形を戻して!』

 

阿賀野さんの指示が聞こえてはいるけど、そんなの無理だよ。向こうの艦隊にバラバラにさせられて、追いかけられながら反撃のチャンスを窺う事しか出来ないもん。

 

それにしたって、どうして私を追いかけてくるのがよりにもよって吹雪先輩なの?私なんかじゃどうやったって勝てるわけ無いよ。大破しないように必死に逃げるので精一杯だよ。きっと私が一番弱いから、手っ取り早くコッチの艦隊の数を減らすのには丁度いいのかも。

ヒッ!?また砲撃してくる‥‥‥直撃コース‥‥‥!避けなきゃ、避けなきゃ‥‥‥。

何とか左舷に寄った瞬間、吹雪先輩の砲撃が海水に着弾。でもそれは私の右足の艤装を微かに擦って、海水に着弾。爆発。擦っただけだったら大した事はない筈だったけど、その爆発に巻き込まれて私は体勢を崩した。右足、右腕、それと背中の艤装の右半分にダメージ。中破判定をもらって、私の身体は右舷側に大きく傾く。どっ、どうしよう!?えっと、えっと‥‥‥そうだ、注水して水平を保たなきゃ。

 

慌て過ぎて気が付いて無かったんだけど、この間吹雪先輩が攻撃してこない。私がアタフタしてる間にいつの間にか呉のみんなが集まってきてた。他のみんなは小破。阿賀野さんと陽炎は殆んどダメージを受けてないみたい。そっか。一番新人の陽炎はダメージ少ないのに私は中破かぁ。やっぱり私って駄目だな‥‥‥。

 

「風雲ちゃんを中心に輪形陣!」

 

阿賀野さんの合図で、一番損傷の酷い私を中心にして、みんながそれをぐるりと囲む。私なんてもう放っておいてくれていいのに。足手纏いだもん。

ううん、分かってる。これがもし深海棲艦相手の実戦だったら、みんなで無事に帰還する為には私を守りながら後退していくしかないもの。だから輪形陣になるのは仕方な‥‥‥うぅ‥‥‥グスッ‥‥‥。

 

でも舞鶴の艦隊は、最初からこれが狙いだったみたい。輪形陣をとって固まった私達は完全に周りを囲まれた。機関もやられてるし満足に速度も出せない私なんて見捨てて反撃してくれないと、このままじゃ袋の鼠なのに。

 

「備えて!」

 

肉声が聞こえる距離で怒鳴った阿賀野さん。それでやっと泣き顔をあげた私は、舞鶴側が砲撃してきた事に気がついた。みんなは動けるからいいけど、私は相手の格好の的。ほら、砲弾だって真っ直ぐ私に向かって‥‥‥。

 

瞬間、私の右手首を陽炎が掴んで引き寄せて、私を引っ張り走る。さっきまで私が居た場所に砲弾が降ってきて水柱が上がった。

 

「まだ撃てるわよね?」

 

私の方に視線は向けずにそう聞いてきて、周りを警戒したままの陽炎。私は震える声で「うん」と間の抜けた返事をした。これじゃどっちが先輩か分からないよね‥‥‥。

あ、右舷の向こうの方で二回爆発音。僚艦が二人やられて轟沈判定。どうしよう、私のせいだよね。

 

数的不利になった私達。吹雪先輩は阿賀野さんに徹底マークで自由にさせてくれなくて、私と陽炎は三人に囲まれた。けど陽炎は私を見捨てる様子は無くて、右手首を掴んだまま。

 

「ほら、ボーッとしてないで反撃するわよ!」

 

‥‥‥謝ります。陽炎、貴女には負けたくないなんて言ってごめんなさい。私よりも貴女の方がよっぽど艦娘としての才能も勇気もあるよ。

私達の周りをゆっくり回りながら、舞鶴側が砲撃してくる。なるべく被弾をしないように少しでも動きながら私達も砲撃。その間も陽炎は私の手を離さない。

 

被弾も私は最少限で済んでるけど、陽炎はもう中破。私はもうあと一発でももらえば大破。相手も勝負所と思ったみたいで、雷撃してきたの。

 

「雷跡が‥‥‥3本ね。風雲、まだ動ける?雷跡の間を抜けて反撃するわよ」

 

陽炎に手を引かれて、海中を走る魚雷の2本目と3本目の間めがけて走る。けど‥‥‥なんだろう。雷跡と雷跡の間にもう一本雷跡が走ってるように見えるんだけど‥‥‥。

 

「何よ?どうしたの?」

 

「あのね陽炎、その‥‥‥」

 

私が躊躇して言い澱んでる間に、雷跡と私達の距離がどんどん詰まっていく。散々迷って、やっと勇気を出して言おうと思った瞬間、轟音と衝撃。目の前を走ってた陽炎が私の方に吹き飛ばされてきた。陽炎は魚雷の直撃を受けて轟沈判定。私は陽炎に衝突、大破判定で続行不能になった。

 

「イッタタタ‥‥‥。風雲は大丈夫?」

 

「えっと、うん、大丈夫」

 

雷撃の直撃を受けた所を痛そうに押さえて、それでも私を心配してくれる陽炎。

私と陽炎を狙ってた魚雷は6本だった。3本は陽炎も見ていた雷跡のそれ。旧型の魚雷。残り3本は酸素魚雷。態とらしく雷跡を立てて進む旧型の魚雷に気をとられて、その旧型魚雷の雷跡の間を走る酸素魚雷に気付かなかった陽炎は自分から当たりに行っちゃったの。先に気付いた私がちゃんと指摘してれば当たらなかったのに。

またやっちゃった。また私のせいで。私に運動神経と勇気が無いせいで。

もしも陽炎が先輩で私が後輩だったら、きっとこんな事にはなってないんだろうな。

 

「ごめんね、陽炎。酸素魚雷に気付いてたんだけど言い出せなくって」

 

「えっ?酸素魚雷!?そんなの全然気付かなかったわ」

 

先輩なのにリードも出来ないなんて、私駄目だなぁ。「司令と不知火に良い所見せよう思ったんだけどなぁ‥‥‥まぁ仕方無いわね。次頑張りましょう?」って手を差し伸べてくれた陽炎は、悔しそうにしながらも良い笑顔だった。直視できなくて、私は思わず目を逸らした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「演習が気になるかのう?」

 

あ?んだよ利根かよ。いきなり話しかけるなよな。

 

「息災で何よりじゃな」

 

「それはお互い様だろ」

 

利根だって空母水鬼戦から生還してきたんだろうがよ。ったく、このオレも出してくれりゃ良かったのによ。

 

天龍だ。フフフ、怖いか?

 

ああそうだよ。オレも舞鶴の奴らと呉の新人共の演習を見学してたんだよ。うるせーな、暇だったんだから別に良いだろ。それに吹雪達の様子も見ておきたかったからな。

 

「面白いものでもあったかの?」

 

「そんなもん無かったな。みっともない奴は居たけどよ」

 

そうそう、風雲。何だよありゃ。アイツあれでも艦娘かよ?ビビって逃げ回って腰抜かして、挙げ句後輩に引っ張られてよ。情けねー。あ?べっ、別に風雲を心配して見てたって訳じゃねーからな?あまりにも情けなくて目に付いちまっただけだからな?

 

「そうか。御主なら面白いものを見付けたかと思ったのじゃが」

 

「別に何も無かっただろ。自分の力を活かせない奴が居ただけじゃねーか」

 

さっきから何だよ?単に自分の適性も分からねー、活かせねー奴がこの先の戦いで生き残っていける訳あるかよ、って話だよ。得手不得手なんてのは誰にでも有るだろ。所詮は戦闘で得意分野を発揮出来るかどうかだろ?雷撃が不得意な夕立が世界一の駆逐艦になったのだってそうだろ?龍田だって言ってただろ。適材適所。何のための艦隊だよ?ってな。

 

「まあ御主の事だからな。精々期待しておるぞ」

 

「誰が風雲の面倒なんか見るかよ面倒くせぇ」

 

あ゛?風雲の事は話してないって?うるせぇな。だから別に風雲が心配な訳じゃねーって。それにオレよりも適任そうな奴が居るだろ。不知火とか暁とか。

まあ、夕立がどうしてもって頼むんなら見てやらない事も無いけどな。要は風雲に自信を植付けりゃ良いんだろ?アイツにしか出来ない事もあるしな。

 

 




適材適所。本人の気付かない風雲の特殊能力が垣間見れましたね。もうお分かりかと思いますが、改で風雲が持ってくるアレ補正です。

次回は演習の後。ヌイヌイと陽炎、ポイポイの動向‥‥‥かな?


そういえば次回のアップデートでヌイヌイの秋私服モードが実装‥‥‥?


※以下ネタです※
◆◆神風さんの受難◆◆

神風「照月が相談したいって?」テクテク

鈴谷「そうそう。何かさ、秘書艦する事が多い娘に聞きたい事があるらしいんだよね」テクテク

神風「それって司令官には言えない事なのかな?」テクテク

鈴谷「さあね?でも鈴谷達秘書艦だけにって事はそうなんじゃないかな?」テクテク

神風「そういえば鈴谷さんは秘書艦になった時って相談するような事とか無かったの?あ、鈴谷さんは熊野さんに相談してるとか?」テクテク

鈴谷「あー、熊野はこのSSと違ってポンコツだからちょっと‥‥‥」テクテク

神風「えっ?えすえす‥‥‥って?」テクテク

鈴谷「あ、まあ気にしないで」テクテク

神風「うーん‥‥‥‥‥‥あ、着いたわ」

~第2小会議室~

神風「失礼します、って‥‥‥」




Z3「あら?貴女達も呼ばれたの?」

呂500「お邪魔してます、って!」

初霜「鈴谷さん、神風さん、こんにちは」

曙「あれ?アンタ達も?」

霞「何よ?貴女達もなの?」





鈴谷「‥‥‥あのさぁ。鈴谷もケッコンカッコカリしてる身だからあんまり言いたく無いんだけどさぁ、これって」

神風「えっと‥‥‥なんだか駆逐艦が多いわよね?」

鈴谷「いやいやいや!どう見ても鈴谷以外は□リ艦ばっかりじゃん!?否定のしようもないよ!?」

神風「えっと、えっと!でも鈴谷さんともケッコンカッコカリしてるんだし、司令官が□りこん?とは限らないって言うか」

鈴谷「これ鈴谷とのケッコンカッコカリが提督の□リコン隠す為の偽装に思えてきた‥‥‥頭痛くなってきたよ‥‥‥」クラクラ




照月「皆さんスミマセン、遅れました!」バタン

神風「あ、来たみたい」

霞「で?秘書艦を集めて何を聞きたいわけ?」

曙「そうよ。仕事の事なら今執務室に居るクソ提督と漣に直接聞けば良いじゃない」

鈴谷「ナニナニ?『この中では唯一』のケッコン艦である鈴谷さんが何でも答えてあげましょう♪」

霞&曙 イラッ

照月「その‥‥‥直接は聞けない事なんです‥‥‥」

Z3・呂500(察し)

照月「私、この前の大規模作戦で着任してから何度も秘書艦にしてもらってるんですけど」

初霜「そうね。みんなで分担してお仕事するのは良い事よね♪」

Z3「ローテーションはこのメンバーでほぼ固定だけれどね」

鈴谷「初霜ちゃんが良い子過ぎる件について」

曙「‥‥‥それで?」

照月「あの‥‥‥皆さんは初秘書艦の時は中破で暫く待機とかありました?あっ‥‥‥もっ、勿論私の時は作戦中でドックが空いてなかったからですけど」アセアセ

神風「うーん、私の時は別に無かったかな?」

鈴谷(‥‥‥心当たりしかない)←改二になってすぐ中破姿のまま秘書艦した

Z3「そんな事だろうと思った」←夏場は大抵中破姿で秘書艦させられる

呂500「ろーちゃんはありません、はい!」←中破したらゴーヤにすぐに強制入渠させられる

霞「‥‥‥無いわね」

曙「あ、アタシは夏場になると時々あるかな」

霞(曙‥‥‥裏切ったわね)

照月「あ、やっぱりあるんだ‥‥‥もしかして海軍の伝統とかなんですか?」

霞「そんなわけ無いでしょ!」

初霜「でもドックが空いてない時は仕方無いんじゃないかしら?提督だって皆さんが無事な事が一番でしょうし」

鈴谷(初霜ちゃん、真実は違うんだよ?)

照月「そう‥‥‥ですよね。でも、その‥‥‥『高射装置を見せて欲しい』って言われてそのまま胸も触られる事があるんですけど‥‥‥怒った長10㎝砲ちゃんを宥めるのも大変だし‥‥‥」

一同(初霜を除く)「!!」

初霜「勿論良くない事だけれど、間違えたとか手元が滑ったとかなら仕方無い時もあるんじゃないかしら?私も魚雷発射官の位置を直してもらった時にたまに間違って触られたりしちゃうけど‥‥‥」

神風「えぇ‥‥‥」

鈴谷「それは‥‥‥」

呂500「‥‥‥ろーちゃんも、たまに触られる、って。『日本式の挨拶』って言ってた、って」

Z3「‥‥‥ふぅん、そう」←お怒りモード

曙「ねえ、霞」

霞「うん」

曙&霞((触られるのってアタシ(私)だけだと思ってたのに))

照月(部屋の中が険悪な雰囲気に‥‥‥やっぱり言わなければ良かったかなぁ‥‥‥)

鈴谷「まあ、アレだよ‥‥‥上手くかわして掌で転がす術を身に付ける事かな」

照月「えぇ‥‥‥照月に出来るかなぁ?」

神風(ケッコンカッコカリするの怖くなってきた)

霞&曙&Z3「「「‥‥‥ちょっとやる事ができたから失礼するわね」」」

照月「えっ?えっと、何処へ行くの?」

霞&曙&Z3「「「ちょっと執務室まで。あの『クズ』『クソ』『Dumm』を殴りに」」」スタスタ

初霜「みっ、皆さん落ち着いて!提督だって悪気は無いんですし!間違いは誰にでもあるわ!」

照月(提督に『キングストン弁(注水弁)の方はどうなってるのかな?』って聞かれた事は言わない方がいいよね?)

神風「‥‥‥あの」

鈴谷「‥‥‥なに?」

神風「ケッコンカッコカリしたあとって司令官と何か特別な事とかするの?」オソルオソル

照月「あ、照月も聞いておきたいです」オソルオソル

鈴谷「‥‥‥聞きたいの?漣に聞いた方が早いと思うけど」

神風「でも漣と鈴谷さんじゃ扱いが違‥‥‥え?それって扱いが同じって事?」

鈴谷「///」

照月「あっ‥‥‥そうなんだ‥‥‥」
察し

神風(どっ、どうしよう‥‥‥心の準備が‥‥‥)



※照月のキングストン弁‥‥‥生みの親曰く、『照月はスケベボディ』『何とは言わないけど色は赤。バックプリントは無しで底にあたる部分にキングストン弁が付いてますよ』とのこと(公式設定かよ!)。バックプリントって‥‥‥という事は照月の‥‥‥赤いブーツですかね?いやー、私にはよく解りませんねぇ(すっとぼけ)


漣「は・か・ど・る~(意味深)」

照月「照月のセリフはそんな意味じゃないよぉ~!///」プンスカ


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