リハビリシリーズーデレマス短編集ー   作:黒やん

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メリークリスマス!
黒サンタからのクリスマスプレゼントだ!←何様


あまく、しろく《佐久間まゆ》

『ふぇぇ……』

 

あれはいつのことだっただろう。確か幼稚園か、それより幼いころだったっけ。そんな思い出せないような時期のことだけれど、そこで起きたことと出会った人は永遠に忘れることはない。

公園で一人、さみしく泣いていた私は……あれ? そう言えばどうして泣いていたんだっけ。まぁいいか。思い出せないということはきっとささいなことだったんだろう。そんな風に一人だった私は、ちょっと年上のお兄さんに声をかけられた。

 

『どうしたんだ? なんかあったの?』

 

今もだけれど、そのときの私は極度の人見知りで、お兄さんの顔を見て泣き止んだものの、結局何も言うことが出来ずにいた。そのせいでまた涙がじわりと溢れてきたのだけど、首を傾げていたお兄さんに回り込まれて背中を押されたことにびっくりして、涙は引っ込んでしまった。

びっくりしたまま首を動かして後ろを見れば、イタズラが成功したときのような楽しそうなお兄さんの顔。

 

『おれたちむこうであておにやってんだ。おまえもやろうぜ!』

 

見ず知らずの女の子に、躊躇うことなく声をかけてくれた貴方。引っ越してきたばかりで周りに馴染めていなかった私を優しく導いてくれた貴方。

そのときから私は……まゆは、きっと貴方に惹かれていたんだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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朝、目覚まし時計の騒がしい音で目が覚める。大学に進学して以来、どうにも以前のような早起きが苦手になった。恐らく授業を選べることと、そのために朝一番の授業を受けないようにしていることが影響しているのだろうが、それはまぁいい。

体を起こして伸びをすれば、パキポキと軽快な音が鳴る。随分体が固まっていたらしい。少しだるさがあるが、今日は日曜日だ。特に何をする用事もないのでゆっくりできる。

さっさと着替えて部屋を出れば、台所からトントンという包丁の音が聞こえてくる。これもまたよく聞き慣れた音だ。世間的には聞き慣れてはならないのかもしれないがそうなってしまったのだから仕方がない。台所に顔を出して声をかける。

 

「おはよう、まゆ」

 

「あ……照さん、おはようございますぅ」

 

台所にいたのは佐久間まゆ……幼馴染みと言うのだろうか、近所の年下の女の子だった。俺の家に母親はいない。どうやら俺が生まれたときに亡くなったとのことだ。親父は一途だったのか、母さんが亡くなった後も再婚せずに今に至っている。それに仕事が忙しいらしく、最近はめったに家に帰ってこれないようだ。

そのこともあってか、近所で親交のあった佐久間さんの家に御世話になることも多かったのだが、高校辺りから俺がなんとか自活できるようになり、佐久間さんの御世話になることも少なくなった。すると何故か代わりにと言わんばかりにまゆが度々うちに来るようになったのだ。

昔は気恥ずかしかったのもあり、一度断ったのだが、まゆが「自分がしたいからこうしている」と言って聞かないので、最終的には俺が根負けした形になった。

 

「悪いな、いつも。疲れてたりするときは来なくてもいいんだぞ?」

 

「大丈夫ですよぉ。照さんの家に行くこともまゆの生活サイクルになってますから。それとも……まゆは迷惑でしたか……?」

 

「んなわけないだろ。お前がいてくれてすんげぇ助かってるよ」

 

「それなら……」

 

まゆがすっとこちらに寄って来て、頭を差し出してくる。俺はそんなまゆの頭に手を乗せて優しく撫でた。まゆは気持ち良さそうに目を細めると上機嫌な様子で一歩下がる。これもまたいつもの光景だ。いつもながらそんな報酬でいいのかとすら思ってしまうが。

 

「もう少しでお昼ご飯できますからぁ、テレビでも見て待っていてくださいねぇ」

 

「いや、なんか手伝うよ」

 

「大丈夫ですよぉ。まゆがやりたくてやっているんです。照さんはなぁんにも気にしないで寛いでいて下さい」

 

任せきりも悪いなと思って手伝おうとするが、まゆにやんわりと断られてしまう。まったく、人がいいというか、お人好しすぎるというか……。

それ以上言っても暖簾に腕押しなのは目に見えているため、わかったと一言残してリビングに戻る。

 

それから十分くらい経っただろうか、あらかた準備は終えていたのだろう、本当にすぐまゆが二人分のオムライスを持ってやってきた。両方にハート型のケチャップがかけられているのが、何と言うか少し気恥ずかしい。しかし年下の、それも妹みたいに思っている女の子にそんなことを知られるのも恥ずかしいため、何とか顔に出さずに隠しておく。

 

「相変わらず料理上手だな」

 

「これくらい普通ですよぉ」

 

手を合わせてから食べ始める。玉ねぎの甘味と鶏肉の旨みがご飯にしっかりついていて美味い。正直学校の食堂と比べるのが失礼に思うくらいだ。

 

「照さんは今日どこかにお出かけされるんですかぁ?」

 

「ん? いや、今日は特に何もないから家でゴロゴロしてる予定だけど」

 

「そうですかぁ……」

 

それを聞くと、もぞもぞと動いたり、チラチラとこちらの様子を窺ってくる。何ともわかりやすいが、この子はそれでいいのだろうか。せっかくの女子高生なんだから彼氏を作るなりした方がいいんじゃないかとも思うんだが。いや、この子の場合はそれはダメか。

まぁ、今はまゆの希望に応えることにしよう。

 

「飯、食ったら一緒にどこかに出掛けようか」

 

「! いいんですか!?」

 

「予定も無いし、あれだけそわそわしてたらそりゃあ、な?」

 

そう言うと、まゆは恥ずかしそうに頬を紅く染める。どうやら気付かれてないと思っていたらしい。付き合いの長さも相まって彼女の癖は大体知ってしまっているのだが、それは言わない方がいいのかもしれない。

 

「お前はわかりやすいな」

 

「うぅ……あんまり言われると恥ずかしいですよぉ」

 

「それで、どうしたい?」

 

「照さんがいいなら……まゆは、一緒にお出かけしたいです」

 

「なら、そうしようか」

 

まゆは小さくなりながらこくりと頷く。俺がこの子を弄ることは滅多にないため、余計に恥ずかしかったのだろう。まぁ、これはこれで可愛いまゆが見れたので良しとしよう。

 

「じゃあ、飯食ったら出発しようか」

 

「えっと、すみません。まゆ、出来れば一度お家に帰りたいんですが……」

 

「? 別に構わないけど、どうした?」

 

「服を着替えたくて……」

 

言われて、まゆの服を見てしまう。フリルの付いた白いスカートにボーダーのセーター。いつものまゆらしい可愛らしい装いだ。

 

「今のままでも充分可愛いと思うけど」

 

「うぅ……」

 

何故かまゆは袖で顔を隠して照れてしまった。相変わらず変なところで純情な子だ。たまに俺の部屋を掃除してもらったときは世の中のお母さんよろしく隠していたはずのああいう本を机の上に置かれていたりするのだが。

 

「じゃあ俺は家で待っていればいいか?」

 

「そうですねぇ……もし照さんが嫌じゃないんでしたらーー」

 

ーー待ち合わせ、してみたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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私が貴方のことを意識し始めたのはいつからだっただろう。

幼稚園の頃はまだ頼りになるお兄さんだった。小学生の頃でもまだかっこいいお兄さんくらいの認識だったはず。べったりだったのは否定しようのない事実だったけど。

となると、やっぱり中学校? うん、多分そのあたり。段々思い出してきた。確か、仲のいい女の子に質問されたのが始まりだったっけ。

 

『まゆちゃんは好きな人いないの?』

 

確かクラスのどの男の子が好きか、って話だったっけ。まだ初心だった私はみんながわいわい話しているのを顔を赤くしながら聞いていたんだけど、急にそんな質問が来たから慌てていないって言ったんだった。そのときはみんなまゆちゃんは初心だねって私も含めて笑ってたけど、家に帰ってまだ高校一年生で私の家に来ていた照さんを見て自分でもビックリするくらいドキドキしたんだ。

ああ、私は照さんのことが好きなんだなぁって本当に瞬間的に自覚した。もう理屈じゃなかった。

それからもう四年が経った。でも、私はそれまでの妹みたいな時期が長くなっていたせいか、未だに照さんにはきちんと女の子の扱いをしてもらっていない。だからこそ今日は、今日こそはーー

 

「あら? まゆ、どうしたの? 今日は照くんの家で過ごすんだと思ってたけど」

 

「あ、ママ」

 

決意を込めて家の扉を開ければ、そこにはママがいた。手にミトンをしているあたり、ケーキでも作っていたのかもしれない。なんたって今日はーー。

 

「ううん、その照さんとお出かけするの」

 

「あら? とうとうまゆもデートデビューかしらね?」

 

「もう、ママ!」

 

「うふふ、ごめんなさい」

 

心底楽しそうにママが笑う。この人をからかうのが好きな癖は治らないのかな。ママの言う通りなんだけど、それを自覚したらまたほっぺたが真っ赤になっちゃうのに。

 

「着替えたらすぐに出掛けるからね」

 

「ふふ、目一杯お洒落していかないとね」

 

そんなこと言われるまでもない。照さんとのデートをしっかり『デート』にするためにも、一切の手抜きは許されない。

しっかり、それでも急いで服を選んで、ほんの少しだけどお化粧もして。でも気付けば結構時間が迫っていた。

用意を済ませて玄関に出れば、キッチンからママが顔を出した。

 

「まゆ」

 

「なにー?」

 

「そのリボン(願掛け)、外せるのが今日だったらいいわね」

 

「……うん」

 

そうして、私は家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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From:千川穣

件名:助けてください

本文

友達とオールで遊んでから帰って来たら何故か俺の家にいた奏の機嫌が最悪なんですが、どうすればいいですか?

 

 

 

 

昼過ぎの駅前。まゆが待ち合わせに選んだ場所で待っていると、高校時代に仲良くなった部活の後輩からそんなメールが送られてきた。

とりあえず後輩には『今日が何月何日か考えてから行動しろアホ。後独り身にのろけ話してんじゃねーよドカスが』と二割の同情と八割の殺意を込めたメールを送っておく。あいつめ、俺が一度まゆと出掛けているところを見て以来、俺とまゆが付き合っているものだと本気で勘違いしてやがる。穣には美人な彼女がいるかもしれないが、俺は生まれてこのかた彼女なんて出来た試しがないというのに。

 

「ごめんなさぁい、待ちましたかぁ?」

 

スマホを見ていると、横からそんな声がかけられる。もちろんまゆだ。

淡い桃色のフリルが付いたワンピースに、種類まではわからないがもこもことした暖かそうな白いカーディガンを羽織っている。マフラーはしていないので流石に首もとは寒そうではあるが。靴はどうやらブーツのようだ。

かすかに息を荒くしているところを見れば、どうやら駅のホームからここまで走ってきたらしい。そんなに慌てなくてもいいと思うのだが。

 

「大丈夫だ。待ってないぞ?」

 

「そうですかぁ」

 

俺の言葉を聞くと、ほぅと一息吐く。寒さのせいか、息が白くなって宙に消えていった。

 

「どうする? 何か飲んでから動くか?」

 

「いえ、大丈夫ですよぉ」

 

そう言うと、まゆはいきなり俺の腕に抱き付いてくる。いきなりで少し焦ってしまうと、それが面白かったのかまゆはくすくすと微笑んだ。それが恥ずかしくて、照れ隠しに少し早めに歩き始めると、それすら愛らしいと言わんばかりにまゆは腕に抱きついたまま笑みを深くした。

 

流石に季節柄か、通りはイルミネーションで溢れていた。あちこちでセールやら何やらで賑わっていて、気分の問題か、カップルらしい男女が多いように見える。一人で歩いていたらメンタル死んでただろうなぁ、と思いながら辺りを見回していると、不意にくいと腕を引かれた。

 

「照さん、行き先は決まってるんですかぁ?」

 

「いや、何分急だったから決めてない。だからお前も何か気になった店とか物とかあったら教えてくれよ?」

 

「うふふ……わかりましたぁ」

 

そう言ってからしばらく周りを見ながら歩いていたが、どうにも今日は気温が低い。まゆが抱き付いているからか右腕は暖かいのだが、左側がその分寒さが強くなってしまっている。思わずマフラーに顔を埋めてしまうくらいには。

何か軽く暖かいものでも飲めないか、と喫茶店を探してみると、少し向こうにまゆが気に入りそうなカフェが見えた。

 

「まゆ、向こうのカフェなんかどうだ?」

 

「カフェ、ですか……? そうですねぇ、流石にずっと外にいても寒いですからぁ……行きましょうか」

 

そういうわけでカフェに入れば、外とは違う暖かい空気が俺たちを包む。二名ということで外が見えるカウンターに座れば、まゆがさっそくメニューを見ていた。

 

「決まったか?」

 

少ししてからそう聞くと、まゆは不思議そうにこちらを見てきた。

 

「まゆは大丈夫ですぅ。でも、照さんはメニュー見なくていいんですかぁ?」

 

「まぁ、俺が喫茶店とかカフェで頼むのはブレンド以外ないからなぁ」

 

「そうだったんですねぇ」

 

それを聞くと、まゆは店員を呼んで注文を済ませる。間もなく頼んだものが運ばれてきて、それを一口飲んでからようやく一息吐いた。

 

「悪いなまゆ。せっかく出掛けるってなったのに何も決めてなくて。寒かっただろ?」

 

「そんな……まゆは楽しいですよ? それに急なお出かけでしたし、行き先を決めろっていうのも無茶ですから」

 

微笑んだまましっかりとフォローしてくるまゆ。相変わらずいい子だが、もう少し砕けてくれてもいいのだが。

そして俺はコーヒー、まゆはショートケーキに手をつける。この子も甘いものは好きなようで、ケーキを口に入れた瞬間ふにゃりと顔を弛ませた。

 

「美味いか?」

 

「ふぇ?」

 

「いや、すごく嬉しそうに食べるからな」

 

「美味しいですよぉ。苺がたくさん入っていて甘酸っぱくて……そうだ」

 

そう言うとまゆはケーキを切って俺の前に差し出した。

 

「はい、どうぞぉ」

 

「えっと、まゆ?」

 

「味見です」

 

語尾に音符でも付くような声で言ってくるが、それは流石に恥ずかしい。しかしいかにも期待した目で見てくるまゆのお願いも断り辛い。

仕方なく覚悟を決めてケーキを口にする。確かに苺の甘酸っぱさがとても美味しいケーキだった。

しかし俺の顔は今人に見せたものじゃないだろう。多分真っ赤のはずだ。ちらりと隣を見れば、まゆはまゆで顔を赤くしてフォークを見つめている。そのまま気まずい雰囲気が流れていたのだが……

 

「あー……暖かい……」

「もう……相変わらず雰囲気も何も気にしないわね」

「だから謝って出掛けてんだろ」

「誠意が見えないのよ、誠意が」

 

後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。思わず振り返ってそちらを見れば、案の定後輩の千川穣とその彼女であろう美人がいた。

 

「ん? あ、先輩じゃないすか」

 

向こうも俺に気付いたようで、俺たちの横の空席に座る。穣の彼女もそれに続いて、溜め息を吐きながらも穣の隣に腰を下ろした。

 

「先輩もなんやかんやできっちり彼女さんと来てるんじゃないですか」

 

「そんな……彼女だなんて……」

 

隣でまゆが顔をより赤くしているが、俺は穣に呆れつつ返事をした。

 

「だから彼女じゃねぇって。妹分だよ」

 

ガタリ、と音がした。振り返れば、そこには席を立ったまゆがいた。表情は見えない。ただ、肩を震わせたまゆがそこにいた。

そしてまゆはそのまま店から走り去っていく。茫然としながらそれを見送っていた俺に、穣の彼女が声をかけてきた。

 

「追いかけないの? 追いかけないと……きっと後悔するわよ?」

 

「ちょ、お前この人年上」

「今はそんなこと気にしている暇はないわ。とにかく……早く行きなさい。会計は穣が持つわ」

 

「……恩に着る」

 

「いいわ。迷惑料と考えて頂戴」

 

その返事を聞ききる前に、俺はまゆを追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

「全く、不器用なんだから」

 

「お前にしてはまた、随分肩を持つな」

 

「あら、嫉妬かしら?」

 

「お前のそういうのに今更乗らねぇって」

 

「あら、面白くないわね。それより、会計勝手に引き受けたけど大丈夫? 足りないなら流石に受け持つわよ?」

 

「アホ。そこまで甲斐性なしでもなけりゃ鈍くもねぇよ。どうやら核心突いて余計な世話働いたみたいだしな。で、本音は?」

 

「穣にしては鋭いわね。そうね、同僚の幸せを祈るくらいはいいじゃない?」

 

「同僚って……おいおい、マジかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここか」

 

駅の近くの公園。そこのベンチにまゆは座っていた。

寒さもあってか、周りには誰もいない。ただ薄暗い蛍光灯の光とそれに照らされたまゆだけがそこにあった。

 

「……よく、ここがわかりましたねぇ」

 

「わからんと思ってたのか? 俺も低く見られたもんだな」

 

まゆは何か落ち込むことがあると必ず公園で一人になる。昔はそれを心配するばかりだったが、今になって役立つとは……人生何が役に立つかわからないものだ。

何も言わずにまゆの隣に座る。まゆはこちらを見ることもなく、ただ下を向いている。

 

「……覚えていますか? まゆたちが初めて会ったときのこと」

 

「……流石にそれは覚えてないな」

 

「ここで一人で泣いてたまゆを、照さんは泣き止ませてくれたんです。そのまま遊びにも誘ってくれて……こっちに来たばかりのまゆには、それがとっても嬉しかった」

 

言われてみれば、確かにそんな風だったような気もする。

 

「……ねぇ、照さん」

 

「ん?」

 

「照さんにとってまゆは……私は、やっぱり妹でしかありませんか?」

 

遂に本題が来る。しかし、俺の答えは決まっていた。

 

「ああ、そうだな」

 

「!」

 

まゆの肩がびくりと震える。それに構わず、俺は続けた。

 

「ーーそう思おうと、ずっと頑張ってたんだけどなぁ」

 

「……え?」

 

「俺が自活始めるって言ったときあっただろ? そんときは強がってたけど、やっぱり不安だったんだ。でも、お前が来てくれただろ? 心底感謝したし、なんか二人になるって思ったら、な?」

 

「……」

 

まゆはゆっくりとした動きで俺の顔を見たまま動かない。涙の跡が残っているのは俺の罪だろう。

 

「それでも、今まで妹みたいに慕ってきた奴をそんな目で見ちゃいけないって思ってた。……ま、ついさっきまでだが」

 

「照さん……それは……」

 

「ま、もう意味のない我慢みたいだから言うぞ? ーーまゆ、お前のことが好きだ。妹じゃなく、一人の異性として」

 

まゆの目から再び涙が溢れてくる。ただ、こっちの涙は止める必要はないだろう。

そう思っていると唐突にまゆが抱き付いてくる。顔を隠すように、俺の首より少し下に押し付けていた。

 

「……まだ許しません」

 

「……そっか」

 

「はい。女の子を不安にさせたんです。それだけじゃ許しません。だから……好きじゃなく、大好きって言ってください」

 

まゆの期待に応えるため、耳元まで顔を寄せて、そして囁く。

 

「大好きだよ、まゆ」

 

そのまま、まゆは俺の背中に手を回して強く抱き締めてくる。それと同時に嗚咽の音も聞こえてきた。

まゆの頭を撫でながら、空を見上げる。聖夜の空は、純白の雫で染め上げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、せっかくのクリスマスなのにプレゼント用意してなかったな」

 

「なら、この左手のリボンをほどいてくれませんか?」

 

「ん? そんなのでいいのか?」

 

「はい。叶えたい願いは叶いましたから。それにーー」

 

ーーあなたの隣にいることが、私にとって最高のプレゼントです。




・伊集院照
主人公。本当は名字を『赤城』にするつもりだったがまゆとの絡ませ方から断念。理由? 察しろ(麻雀感
お前なんで気づかないの系鈍感男と見せかけて、自分の中の獣を抑えていた系主人公だった。この辺実は割りとノリと勢い←
最終的にリア充爆発しろとなるのはお約束。

・佐久間まゆ
キュート。16歳。愛が重い系アイドルだが、今回は珍しく目のハイライトが消えてない綺麗なままゆを書いてみた。
ヘビークルシミマスざまぁ回だと思った? 残念メリークリスマスままゆ回でした!←
やっていることがほとんど変わらなくても、相手の受け取り方と固定概念次第で認識って変わるんだね……。

・おさんどんままゆ
完全に通い妻

・袖で顔を隠すままゆ
個人的に萌え袖してそうなイメージ

・まゆママ
昨今のままゆ家庭ヤバイ説に歯向かってみた。前回志希にゃん割とハードだったからね、仕方ないね!

・左手首のリボン
傷痕なんてなかった

・唐突な奏夫妻来襲
そう言えば高校生組って他のとことあんまり絡みないよね、と何か閃いた。まぁ、ふみふみ美波アーニャのとこが絡みすぎなだけという気がしなくもないけど。
多分穣くんは尻に敷かれてる←

・かっこいい奏夫妻
なんやかんや精神年齢すごい高そう

・本編
参考文献? エヴリデイドリームだよ!

現在の名前空き
美嘉主
凛主
美優主
志希主

書いてない(書くとも言ってない)名前決定済み
ありす主
周子主
美穂主
唯主

こう見るとあっと言う間に埋まったなぁ(感謝
実はお気に入り登録してる二次の作者さんにリクエストもらって嬉しかったり笑
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