ARC THE LAD -生き残ったもう一人のいにしえの七勇者-   作:妄想プリン

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空白期
第十一話 再生の名を持つパワーユニット


アララトスを旅立ってからすでに1000年近く経過している。

 

1000年というときは人間であった自分からしたら長い時であったが、魔族として生まれた自分は1000年をあっというまに感じている部分がある。永遠を生きる魔族にとって人間のような時間間隔は己の崩壊を招きかねない。脳にあらかじめ刻まれている魔族としての本能が俺の精神の摩耗を防いでいるのが分かる。

 

すでにグラナダさん、ワイトさん、ノルさん、バルダさんの4人は寿命を迎えて亡くなった。

 

ノルさんは王国こそ作れなかったものの、自然と人間が共存して暮らしていけるような体制を作ることができた。アララトスは国として復活し、大崩壊の後の最初の人類の文明が生まれた場所となって現在も繁栄し続けている。それもあって人類発祥の地とも言われている。ノルさんが亡くなった時はアララトス中の人が、悲しみと感謝の気持ちを示したらしい。

 

バルダさんはアデニシア大陸中で人助けを行っていた。バルダさんがどこで最期を迎えたかは調べても分からなかった。しかしバルダさんの行いは間違いなく人々の心に刻みつけられて今なおも語り継がれている。

 

グラナダさんはスメリアに建国した。もともと七勇者となる前から聖騎士として名高かったグラナダさんの人望は厚く各地から人は集まったらしい。グラナダさんはその剣で人々の安住の地を作り、自らが王として国を作り上げた。

 

ワイトさんはトウヴィルで小さい集落を作った。そしてなんとグラナダさんと子供を作り、片方をスメリアの王子として、もう片方はトウヴィルの巫女として育てられていた。ワイトさんが聖母の力を持っていたことからワイト家は神の血を引く一族とされていた。そして今現在、ワイトさんとグラナダさんが子供を作ったからなのかワイト家の娘はスメリアの王子と結婚しなくてはならないというおきてができていた。

 

生まれた時から運命が決まっていることに対して俺も何も思わないわけではないが、王子と結婚できるのは女の子の夢であるのは理解しているし、なぜかワイト家と王族の結婚は夫婦仲が良く家族円満になることが多いことから、特に否定をしようとは思わない。

 

4人ともすでに命は残っていないものの決して少なくないものを残していった。俺は4人の最後に立ち会ってないのでその表情を見ることはできなかったが、心残りはあるかもしれないが決して後悔を残して死んだのではないのだと思う。みんな自分のやるべきことを行い、結果をだしたのだから。

 

ちなみに1000年かけてショタボディーからようやく15、6くらいの姿にまで成長した俺は外見だけでなく魔法の腕も成長した。攻撃魔法は空気中の水分を氷の結晶に変えることで、吹雪を起こして対象に水属性のダメージを与えるダイヤモンドダスト、鋼の鎧をも切り裂くつむじ風をおこし、対象に風属性のダメージを与えるウィンドスラッシャーを習得した。そして俺が最も必死に練習して覚えようとしたゴーゲンさんのオリジナル魔法、テレポートをついに習得した。

 

1000年かけてこの三つだけとは言わないでほしい。俺に魔法を教えてくれる人がいない中、自力で、しかも大魔導師のオリジナル魔法を習得できたのだ。少しくらいはいい気分でいさせてほしい。

 

テレポートは距離と連続使用回数に比例して物凄い莫大な量の魔力を使用する。ゴーゲンさんですら便利な魔法であったテレポートを頻繁に使用できなかったが、魔力量に関しては自身がある俺は比較的気軽にテレポートを使用することができる。今までは大陸を渡るのに約1年かけて船で移動していたのが今ではほとんど一瞬で移動できるようになった。

 

目的の場所にテレポートで移動するには一度は行ったことがある場所か視界に写る場所でなくてはならない。またこれは相当の荒技になるが自分の魔力を込めたものを頼りにして移動することもできる。例えばゴーゲンさんの数珠には俺の魔力が込められているので、ゴーゲンさんのもとにはテレポートすることができる。この方法の使い道は案外少ない。仲間に自分の魔力を込めたものをあらかじめ渡しておいて、仲間のもとに移動するときくらいしか俺には使い道が思いつかない。

 

なぜ俺がテレポートの話をしているかと言うと、まさに今ちょうど自分の魔力を込めたモノを目印にしてテレポートを行ったからだ。

 

俺は今、ジークベックを封印したヤゴス島から少し離れた海の海底に存在する海底神殿の中にいた。もともとここに移動しようと思ったわけではない。そもそもこんな場所に神殿が存在するのも俺は知らなかったのだ。

 

「まさかこんな場所に移動するなんて。」

 

俺がそうつぶやき、ため息をついた時であった。突然後ろのほうからすさまじい衝撃が加わり俺は顔から床にたたきつけられる。殺気や敵意が全く感じられなかったので完全に油断していた。

 

「わう!」

 

そして俺を床にたたきつけたソレはとどめとばかりに上からのしかかってくる。

 

「ごふっ。」

 

そして俺の視界と意識は真っ黒に染まっていった。

 

 

 

 

 

 

 

もうお分かりであろうが、俺は以前に魔力を込めたハトの首輪を目印にしてテレポートを行った。そして俺に多大なるダメージを与えてくれたのもハトである。俺を侵入者と間違って攻撃を加えたとかでなく、ハトなりの愛情表現によるタックルによって俺は気絶したようだ。

 

「くーん。」

 

「分かってるよ。わざとじゃないくらい。気にすんな。」

 

ハトはどこか申し訳そうな声をだし俺にすり寄ってくる。もともとそこまで気にしていなかった俺はハトの頭をなでながら、笑いかける。1000年ぶりのハトのカラダは相変わらずのモフリ具合で俺の心は癒されつつある。

 

「にしても、ハトがまだ生きているなんて思ってもなかったよ。」

 

そう、ハトと別れてからすでに1000年経過しているのだ。モンスターといえども、既に寿命を迎えてもおかしくはない。どうやら突然変異であるハトは寿命もかなり延長しているようだ。

 

「ソル、あなたがそれを言うのか?人間であったはずのあなたが1000年生きている事の方が異常だと思えるが。」

 

「ジャッジメント・・・。」

 

ハトのとなりから聞こえる低い機械音声。その主は最強の機神ジャッジメントであった。

ジャッジメントは最後に別れた時からなんら変わらない姿でそこに存在していた。

 

ジャッジメントの言うことももっともである。1000年前に別れた人間が例え当時子供であったとしても生きているはずがない。

 

俺はワイトさんやノルさんに話した内容と同じことをジャッジメントやハトに伝えた。多少驚いていたハトに対しジャッジメントは全く驚いたそぶりを見せなかった。ジャッジメントを始め機神団のみんなは俺が普通の人間でないことは薄々分かっていたようだ。というより機神達の最高峰の頭脳回路は俺がたまにおかしてしまったミスを見逃すことなく記録として保存していたらしい。

 

俺の体について一通り話し終えたので、今度は俺の疑問をジャッジメントにぶつけてみた。

 

「他の機神もだけど自分を封印するっていうからてっきり機能停止状態になっているのかと思ったんだが・・・特にそういうわけではないんだな。」

 

「最初はその予定であったが、この神殿にいれば特に誰かに見つかるわけでもない。ならば想定外の事態に備えて私たちは稼働したままでいることにした。」

 

ジャッジメントのいうことも最もである。俺もテレポートでハトを目印にたまたま来れたのだ。普通はここにやってくるどころか、この神殿の存在すら知るはずがない。

この神殿ははじめから海底にあったわけではないらしい。地上に建てられた神殿が大崩壊による地殻変動で海のそこに沈んで、海底神殿となったようだ。そしてこの海底神殿には海竜は住み着いているらしく、その海竜が神殿を守護する役をになっている。

 

どうやらここは俺の目的を果たすのに最もふさわしい場所であるようだ。

 

「ソル、お前はここに何の用できた?」

 

「・・・本来はジャッジメントが封印されていると思っていたから、そこにお前たちと一緒にコレを封印するつもりだったんだ。」

 

そう言って俺は背中に背負っていた袋から機械の部品を取り出す。それは1000年前の旅で俺たちが日常のように見ていたものだ。

 

「パワーユニット、それもPリバースだな。」

 

ジャッジメントの言うとおり俺が取り出したものは機神ヂークベックの力の源であるパワーユニットであった。

 

しかもこのパワーユニットは20あるパワーユニットの中で最後に作られた最高傑作であり、これをつけたヂークベックはジャッジメントやグロルガルデと互角以上の戦闘能力をもつ。Pリバースの最大の特徴は回復魔法を使用できることにある。以前にゴーゲンさんが言っていたとおり、回復魔法は弱者のために神が与えた魔法である。神が与えた魔法を人間の手によって機神が使えるようになる。ヂークベックを作り出した科学者はアイツとは別の意味で神に挑戦をしていたともいえる。

 

「俺は今までパワーユニットを世界中に封印してきた。そして残った最後のパワーユニットがこれだ。」

 

俺はそう言って手元のパワーユニットに目を移す。

 

「このパワーユニットは特別だ。他のパワーユニットも簡単には手に入らないようにしているが、これは更に慎重に封印する必要がある。」

 

パワーユニット、Pリバースによって使用できる回復魔法はキュアなどの一般的な回復魔法だけではない。回復魔法の奥義であるリザレクション。回復魔法のスペシャリストであり、聖母の力をもつワイトさんは相手の心臓さえ動いていればどんな状態であっても、いや例え心臓が止まっていても死んでさえいなければ蘇生させることができた。

そのワイトさんが使う切り札がリザレクションであった。

つまりPリバースをもったヂークベックが悪用されることは、それはワイトさんが敵にまわるようなものであった。

 

だから再生の名をもつこのPリバースの扱いは他のパワーユニットよりも慎重にならざるをえなかった。

 

「お前たちなら偶然出会っても他の人たちに見つからないような場所で眠るはずだと思ったから、ハトを目印にしてテレポートしたんだ。」

 

そういうわけで俺はここにやってきた。ハトが生きていることやジャッジメント達が稼働しているのはかなり予想外であったが。

 

「・・・ソル。」

 

「わう。」

 

おっと。いつの間にか俺は昔のようにハトのふさふさボディーでモフモフしていた。膨大な魔力によって精神抵抗が強い俺が気づかぬままにモフモフしてしまうとはなんて魔力だ(`・ω・´)キリッ

 

冗談はここまでにし、俺は予定を変更しPリバースを封印するのではなくジャッジメントに預けた。俺はテレポートできたからよくわからないのだが神殿の入口は封印しているらしいので、ここに置いておくだけでもはや封印されているといっても過言ではないらしい。

 

用事が済んだ俺は神殿にいる意味がないので出発しようと思い、その旨をジャッジメントに伝えた。そこで俺は衝撃の事実を聞くことになる。

 

 

 

 

 

俺が海底神殿にやって来てからすでに一週間たった。その間俺は1000年の時を埋めるが如くハトとじゃれあっていた。そして更に3日後、俺が海底神殿に到着してから十日目、ハトが息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

俺が来た時にはハトはすでに息を引き取る寸前であったらしい。俺にそんな素振りは見せなかったし、ずっと一緒にいたジャッジメントもあんなに元気なハトの姿を見るのは久しぶりであったようだ。俺がハトの最後に立ち会えたのが偶然なのか、それとも何かに引き寄せられたのかは分からない。

 

 

ハトは俺がいる間は最後まで幸せそうな顔でいてくれた。モンスターでありながらモンスターの心を持たないハトと、魔族でありながら人間の魂を持つ俺。普通の境遇でない俺たちだがハトは自分の歩んできた路に後悔はなかったのだろう。俺はそんな生き方が出来る自信はない。

 

 

 

俺はハトの最後を見届けた後、ジャッジメント達に別れを告げ地上へとテレポートした。

 

 

 

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