ARC THE LAD -生き残ったもう一人のいにしえの七勇者- 作:妄想プリン
それが起きたのは突然であった。
俺たちに油断が無かったとは決して言えない。闇の力を封印し、敵の機神兵も機神団たちが倒したのもあり、いつもに比べれば気が抜けていた。いや、自分たちが力を使い果たしているのを知りながら警戒ランクを最大にしなかった時点で、相当気が抜けていたんだろう。
精霊の山に入りサルバシオの滝を目指して進んでいた俺たちの地面から吹きあがる炎に対応する間もなく、俺たちは炎に包まれた。
「ダイヤモンドダスト。」
炎が俺たちを覆い尽くす中、ゴーゲンさんの声が聞こえる。それと同時に俺たちの周囲に氷の塊が降り注ぎ炎が消える。
「い、今のはヒートウォール。」
「グルルル。」
不意打ちに対し動揺する俺の隣で、ハトがうなり声をあげながらある方向をみる。
そこには腰から上しか存在しないが、10メートルもある青の巨人がいた。胴には顔についている二つの目とは別の第3の目があり、その巨人から感じるオーラにより嫌でも強敵であることが理解させられる。
「あいつはラリュウキ。強力な魔法を操り、エレメンタル系のモンスターを生み出す力を持っているぞ!」
険しい顔で剣を構えるバルダさんが全員に聞こえるように叫ぶ。俺たちはこのハプニングに対応するべく、それぞれ構える。その時であった。
ゾクッ
戦闘の構えをとった瞬間に俺が感じたのは、本能からの警鐘であった。しかしそれは視線の奥にいるラリュウキに対するものではない。確かにラリュウキは強いだろうが、今の俺たちでもじゅうぶん倒しきる自信があった。
俺が、俺たちが感じた警鐘はラリュウキの後ろに浮かんでいたガーゴイルに対するものであった。
「なぜ、こんなところにアークデーモンが・・。」
ガーゴイルの方を睨みながら、グラナダさんが苦々しくつぶやく。
それもそうだろう。俺たちは以前にアイツが本拠地として使っていた城で、一度アークデーモンと戦ったことがある。その時も死力を尽くして戦うことになったのだ。
以前と今では俺たちの強さが異なるとはいえ、力を消耗した俺たちではアークデーモンとラリュウキに勝利するのは容易ではない。いやむしろ困難だと言えるだろう。
さらに厄介なのが2体ともモンスターを生み出す力をもつということだ。ラリュウキはバルダさんが言ったとおりにエレメンタル系モンスター(炎のような外見のモンスター)を、アークデーモンはグレーターデーモンというというモンスターを生み出す。
「機神団は新たに生み出されるモンスターを頼む。ジャッジメントと我らはアークデーモンとラリュウキを相手する。聖柩を死守するぞ。」
「いえ、二手に分かれましょう」
グラナダさんが全員に指示を出すが、ワイトさんがまったをかける。
「片方が聖柩を解放し、片方がモンスターを足止めする。これが最善手です。問題はだれがのこるかですが・・・。」
ワイトさんの言葉に俺は衝撃を受ける。全員でも勝てるか分からない敵に対して、メンバーが欠けた状態では足止めとは言え命を落とす確率がきわめて高い。しかしこの方法以外に世界を救う方法が、・・・この地上を救う方法がないのだ。
頭を使うのが苦手な俺だってわかるのだ。他のメンバーも理解し、納得しているのだろう。
「ふむ、ではわしは残ろうかの。」
そして真っ先にゴーゲンさんが前に出る。
「ラリュウキならわしのものすごい魔法でなんとかできるぞい。」
「奇遇ですね。私はアークデーモンを封じるすべがあります。私の方は補助が一人必要ですが。」
自信満々に対応策の存在を公言するゴーゲンさんとワイトさん。もし二人の言う通りであれば、三人だけでアークデーモンとラリュウキを対処できることになる。
「信じるぞ、二人とも。もうしゃべっている時間もない。」
そう、こうして話している間にもモンスターたちは近づいてきている。相手も不意打ち以外で、足止めもない遠距離攻撃が当たるとは思っていないのか攻撃をしてこない。しかしあと数十秒でモンスターたちによる魔法の弾膜がくるのは目に見えている。
もう、二人を信じて動くしかないのだ。
「補助はソル。あなたにお願いします。」
そう、ゴーゲンさんとワイトさん、そして俺が・・・・。って俺!?
「というより補助はあなたしかできません。いいですね?」
俺がワイトさんの言葉に驚いている中、ワイトさんは続ける。ワイトさんは俺たち七勇者の参謀役だ。聖柩から知恵を与えられているワイトさんであるが、聖母の力関係なくワイトさんは頭がいい。知識では長生きしているゴーゲンさんの方が多いだろうが、作戦立案や先読みはワイトさんにかなうものは七勇者にはいない。
「ワイトさんが言うならそうなんでしょう。任せてください。」
残れば高い確率で死ぬだろう。しかし俺には死ぬ覚悟なんてない。しかしワイトさんは俺しかできないと言った。なら残るしかない。
逃げるわけにはいかない。
死にたくないと思う気持ちは強い。旅を始めたばかりの頃なら、逃げていたかもしれない。この3年の旅で人間に対する失望と絶望を何度感じたか覚えていない。だがそれ以上に人間の尊さを見てきた。人間に対する希望を見た。仲間たちの使命にかける思いを知った。
そしてなにより、俺は自分の命よりもこの美しい地上が大切なのである。
「よし、3人ともここは頼む。俺たちは聖柩の解放を必ず成し遂げて見せる。」
俺が了承したのを見届けるとグラナダさんが決意を込めた目で俺たちを見てしゃべる。
「安心してください。生き残る自信はあります。」
「そうか。」
ワイトさんの言葉にうなずくとグラナダさんはノルさん、バルダさん、ハト、ジャッジメントの方に視線を移す。
「行くぞ!」
グラナダさんの声をきっかけに3人と1匹と1体は走り出す。彼らはこちらを振り返ることはない。こちらを振り返る暇があるのなら、一瞬でも早く聖柩を解放するべきだと知っているからだ。
こうしてこの場には3人と機神団が残った。
「ゴーゲン。あなたと私はおそらく同じ方法を考えているはずです。私にはソルがいますが、あなたにはいない。どう補うつもりですか?」
ワイトさんはモンスターの群れから目を離さずにゴーゲンに話しかける。というか同じ方法?そして俺?
「ふむ・・・。これよ。」
何についてしゃべっているのかよくわからないが、話しかけてきたワイトさんにゴーゲンさんは自身の手に持つどこか見覚えのある数珠を見せる。
「確かその数珠は前にソルが魔力を込めたものですよね?納得しました。ですがそれでは・・・。」
ワイトさんの言葉に俺は数珠について思い出す。半年も前のことになるが、それは確かにゴーゲンさんに頼まれて、俺がありったけの魔力を込めたものであった。ワイトさんはどこか納得のいったという顔になるが、それもすぐに元に戻る。そして何かを言いかけて、言葉が詰まる。
「ふぉふぉふぉ。百も承知じゃよ。」
そんなワイトさんに対しゴーゲンさんはいつものように気楽そうに笑って答える。
「さてソルよ。」
ゴーゲンさんはワイトさんの方から俺の方を向く。
「おぬしは今後も永遠に近い時を生き続ける。本来ならわしもその隣でしばらくは教えを続けるつもりだったんだがのう。」
「ゴーゲンさん?」
突然の話題に俺はどこか不安を感じながら声を出す。
「元気に暮らすのじゃよ?」
「どうしたんですか?俺だけが生き残って、ゴーゲンさんが死んでしまうような言い方は。どうせなら3人全員で生き残りましょうよ。」
どうしようもない不安で心が押しつぶされそうになる。ワイトさんは何か知っているのか口を挟まない。
「安心するのじゃ、わしは死ぬつもりはないぞい。」
死なない、と絶対の自信を持って言うゴーゲンさん。あふれる自信は俺にも伝わって来るものの、俺の不安は消えない。
「さあ、来るぞ!わしはラリュウキをテレポートで引き離す。アークデーモンは頼むぞい?」
ゴーゲンさんはそう言い残すと俺たちの前から消え、ラリュウキの前に現れる。そして次の瞬間、ラリュウキとゴーゲンさんは消えた。
原作から3000年前のいにしえの時代は10話で終了する予定です。その後は原作までのイベントがちょくちょく入ってくるためにキンクリしていくことになりそうです。
いつになったら原作に入れるのか^^;
では今後もよろしくお願いします。