ARC THE LAD -生き残ったもう一人のいにしえの七勇者- 作:妄想プリン
真っ当に勝負して勝てない敵に対する方法。
それは封印であった。
ワイトさんは聖柩の力を使いはしたが、聖母の力によりアイツの闇の力さえ封印できる能力を持つ。つまり聖柩の補助なしにアークデーモンくらいなら単独で封印できるのだ。しかし、力を使い果たしたワイトさんにはすでに魔力が無い。つまり俺の役目はワイトさんに魔力を渡すことであった。
「ロブマインド」
「ぎゃあああああああああああ!」
ワイトさんの精神的ダメージを与えて対象の魔力を奪う特殊能力、ロブマインドによって枯渇しかけていた俺の魔力はほとんど空になった。精神的なダメージにより限界を迎えた俺は膝をつく。
「暗黒の支配者との戦いであれだけ魔法をつかってこれだけの魔力が・・・。ふざけているとしか言えないわね。」
心なしか先ほどより肌がテカテカしているワイトさんは俺の方を向き、ため息をつく。本来は敵に使用する魔法であるロブマインドを躊躇なく仲間である俺に使用したこと、そして魔力をうばわれた俺に対する言葉は、とても3年間苦楽を共にした仲間に対するものではなかった。
目から心の汗が流れそうになるのを必死にこらえる。
以上が魔力を渡した(奪われた)時の回想である。
俺から奪った魔力を使用しワイトさんは呪文を唱える。するとアークデーモンは突然動きがピタッと止まりその場から動けなくなった。動けなくなったアークデーモンを俺がビシビシ叩いている間にワイとさんが唱えた呪文によって四肢の動きの自由を奪われる。
ラリュウキがいなくなりアークデーモンの自由が奪われたことにより、敵のモンスターたちは疲れを知らない機神団によって倒された。
ワイトさんは完全にアークデーモンを封じるために、長い呪文をさっきからブツブツ唱えている。俺は体力と魔力の回復に専念し、機神団はアークデーモンが暴れないように取り押さえている。
「主と戦った後の状態で、我をこうも容易く封じることができるとは。」
怨念がこもった言葉に俺は内心ドキドキしながら、アークデーモンをにらむ。ワイトさんが最初の呪文を唱えるきるまで、ワイトさんの盾として攻撃を受け続けた俺はすでに指一本すら動かす力はない。今の俺に出来ることはアークデーモンを見張ること。そしてこの後のために魔力を蓄えること
「準備は整ったわ。ソル、一気に魔力を放出して!」
ワイトさんの声に合わせて、一気に魔力を放出する。万全には程遠い状態だが、エクスプロージョン3発分くらいはあると思われる。
「次にそれをアークデーモンの周辺に移動させて。」
指示通りに魔力を移動させる。ワイトさんは再び何かをブツブツつぶやくと、自分の魔力と俺からうばった魔力を使用し、俺が放った魔力を包むように展開する。
「アークデーモン。この時をねらって襲ってきた貴方は確かに正しい判断ね。」
パッと聞いただけでは、相手を褒めているかのように聞こえるが俺には分かる。ワイトさんはぶちぎれている。
「だけど運が無かったわね。貴方の身は聖柩の封印に使用させてもらうわ。・・・永遠にね。」
「なっ!?」
今までふてぶてしい態度を崩さなかったアークデーモンは、ワイトさんの言葉に動揺を見せる。
「怨むなら自分の浅知恵と私達を敵に回した愚かさを怨むのね。さようなら。」
ワイトさんとアークデーモンの周りから青白い光が放たれる。ワイトさんの周りから放たれる光はどんどん少なくなってきているが、それとは反対にアークデーモンの周りから放たれる光は強くなっていく。そしてアークデーモンの体が完全に光に包まれる。
そして・・・・・アークデーモンは消え去った。
「私達の方はもう、問題ないわね・・・!」
ワイトさんが安堵の息をつくのと同時に北の方から巨大な魔力を感じた。しかもそれは。
「これはソルの魔力ね。」
魔力を感じた方に顔を向け、ワイトさんがつぶやく。
「・・・・なるほど。ゴーゲンさんは直接俺から魔力を奪うんじゃなくて、俺が魔力を込めた数珠から魔力を引き出したのか。そしてその魔力を利用してラリュウキを封印するつもりだったんだ。」
「そうね。訂正するとするならば、奪ったという表現くらいね。」
ワイトさんは俺の言葉を肯定する。しかし、あれを奪ったと言わずに何と言えばいいのか問い詰めたい。
「どうやらゴーゲンも封印に成功したようね。後はグラナダたちを信じて待つだけ。」
ワイトさんの言葉を信じるなら、ゴーゲンさんはラリュウキを封印できたようだ。しかしそうだとしたら、なぜゴーゲンさんは分かれる前にあのような言い方をしたのだろうか?
それになぜワイトさんはそんな悲しみを押し殺したような顔をしているのだろうか?
「ワイトさん、どうし・・・・。」
俺がワイトさんに声をかけたその時であった。
世界が変わった。
大崩壊とアイツの力によって地上から消えつつあった生命の息吹が一気によみがえった。人や動物が増えたわけではない。しかし確実に地上に生命の力が溢れだしてきている。これが意味することは一つしかなかった。
―聖柩は解放されました―
「声が・・・。」
直接頭に語りかけるような声。俺だけでなく、ワイトさんにも聞こえているようだ。突然の事態ではあるが、その声からは俺たちに対する害意は感じられないので戦闘態勢をとることはしない。
―私はこの山の精霊―
今まであった五大精霊のように姿を現すことはないが、声から感じる力は間違いなく精霊のものであった。
―聖母の力を持つ巫女ワイト、魔の体を持ち異なる魂を持つ魔導師ソル―
山の精霊が俺たちに語りかけると天空から俺たち二人の体に光がはなたれる。その光に包まれた瞬間、俺たちの体の傷は癒され、魔力も回復した。
―聖柩が解放されたことにより自然はよみがえり、精霊の力も元に戻りました。これは使命を果たした勇者たちへのささやかなお礼です―
精霊は自然と表裏一体であり、自然が失われると精霊の力も失われる。3年前、精霊たちは自分たちの力が完全に失われる前に七勇者に精霊の力と聖柩を与えた。もし1年でも遅れていたら、力を失った精霊たちは人間に救いの手を授けることはできなかっただろう。
「ありがとうございます。山の精霊よ、聖柩の解放を行った者たちは今・・・。」
ワイトさんが山の精霊に礼を言い、グラナダさん達について質問する。
―勇者の力を持つ聖騎士グラナダを始め彼らは全員、傷はあっても命に別状はありません。その傷も五大精霊たちが癒しているはずです―
「そうですか。」
ワイトさんはグラナダさん達が使命を果たした上に、無事であったことに顔をほころばせる。これはなかなかレアなシーンであることは言うまでもない。
―これは本来聖柩を解放した際に五大精霊が貴方たち全員の前で行うはずでしたが、このような状況なのであなた達には私が行うことになりました―
聖柩を解放した時に精霊が俺たちに行うもの。思い当たるものなど一つしかなかった。
―七勇者よ。あなた達は精霊に選ばれ力を手にし世界を救う使命を背負いました―
―そしてあなた達は人間の王の闇の力を封印し、聖柩を解放し滅びの道へと向かっていた世界をすくいました―
―これを以てあなた達七勇者に課された使命は達成されました―
俺たちの使命は果たされた。