ARC THE LAD -生き残ったもう一人のいにしえの七勇者- 作:妄想プリン
「あなたは魔族。しかも魔界からやってきた正真正銘の魔族ね。」
「ぶほっ。」
完全にばれていた。
この世界には魔族という種族は2パターン存在する。一つが魔物になり果てた人間のことを指すパターン。この世界で魔族を指す時はたいていこのパターンだ。実際に俺たちもこのパターンの魔族とは何度か闘ってきた。前に闘った例としてはカサドールというやつがいた。カサドールは七勇者となる前のグラナダさんのライバルであった。カサドールはは魔族となり、精霊から力を与えられて聖柩から勇者の力を与えられたグラナダさんと互角に戦っていたのだから魔族の力の強さがわかってもらえるだろう。
そしてもう一つのパターンが魔界という異世界出身のものを指すパターンだ。
「ヒントはいくつもあったわよ。まずその膨大な魔力。人間として最高峰であるノルさえあなたの半分の魔力すらなかったわ。」
俺はワイトさんの話を遮ることはしない。というよりもうすでにバレてしまっているのだ。ごまかす段階はすでに過ぎてしまっている。
「二つ目に思考力。あなたは確かに単純思考だけどとてもじゃないけど12年しか生きていないはずの者の思考力ではないわ。ましては出会った時にはまだ9歳。・・・あなたが見た目通りの年齢でないのは前から疑っていたわ。」
「それを確信したのは精霊の山でのあなたとゴーゲンとの会話よ。」
ワイトさんの言葉に俺はゴーゲンさんの言葉を思い出す。
―おぬしは今後、永い時を生き続ける―
確かゴーゲンさんはそう言った。
「永い時。普通に考えれば、まだ子供であるあなたの未来が長いことを指すのでしょうね。しかし、あなたの年齢のことを疑っていた私にとってはその言葉は別の意味にしか聞こえなかったわ。」
俺にとって永い時というのは単純な長い短いを表すものじゃない。
「永い時。それは永遠の長さ。魔族の寿命は無いに等しい。外敵によって危害を加えられない限り死ぬことが無いあなたの今後を指していたのよね?」
魔族は前者、後者のパターンに限らず寿命がない。大人になるまでは成長を続け、基本的に老いることはない。
「どうしてワイトさんは俺が魔界出身の魔族だとおもったんですか?」
俺はワイトさんの言葉を肯定も否定もせず、質問で返す。
「異世界出身の魔族はその身体は戦いを極め、その魔力は計り知れないと聞くわ。すくなくともあなたの魔力はそれを裏付けるには十分だと思わない?それに、あなたは何回かこの『世界』のことを『地上』というふうに表現していたわ。これはあなたが地上以外の世界を知っているからじゃないの?」
完敗だった。いや、勝負していたわけではないが完敗としか言いようがなかった。ここまで根拠がそろって、説明されたら俺はもう認めるしかなかった。
「さすがですね、ワイトさん。確かに俺は魔界からやってきた魔族です。」
「認めたわね。これでも認めなければさらに追い詰めるつもりだったから、少々あっけないわね。」
まだあるのかよ。
「例えばあなたは通常の子供が知っているような常識をいくつも知らないわ。最初は情報が閉ざされた村にでもいたのかと思ったけど、今思えばそれはあなたが魔界にいたからこの世界の常識を知らなかったのでしょう?」
「・・・その通りです。」
「こんな感じにあなたの出自を裏付ける証拠はいくつもあったのよ。一つだけ分からないことがあるわ。」
俺に理詰めで魔族であることを認めさせてしまったワイトさんは俺の方から視線をそらさずに言葉を続ける。
「山の精霊の言っていた魔の体っていうのはあなた魔族である、という意味よね?じゃあ、異なる魂っていうのはどういう意味なの?」
ワイトさんの言うことはもっともだ。精霊がそのような言い方をしたのは理由があり、それはおそらく俺に以外にはとうてい知ることはできない事情に関することについてだったのだから。
ワイトさんの説明はほぼ完璧であったが、一つだけ勘違いがあった。その勘違いの原因が精霊が言う『異なる魂』のせいだから仕方が無いのであるが。
「・・・それを説明するには先ほどのワイトさんの推理に一つ修正が必要ですね。」
「何か間違いでもあった?」
ワイトさんの顔には困惑が浮かんでいる。
「俺の年齢は12歳です。これは本当ですよ。」
そう、俺は12年前に魔界で生まれ、7歳のときに地上にきた。
「でもワイトさんの言っていることも間違いではありません。俺は12歳としては異常でしょう。」
だいたいこんな敬語を使いまくる12歳(ゴーゲンさんに敬語を使い始めたのは7歳)なんて明らかに不自然である。
「俺の頭には生まれたときから知識がありました。」
「・・・生まれたときから?」
ワイトさんが初めて怪訝そうな顔を見せる。
「自分でもメチャクチャなことを言っているのは理解しています。でも俺は生まれたときから知識を持っていました。」
そう、おれは生まれたときから知識をもっている。いや、正確には生まれる前から知識を持っていた。
「・・・それは母親の中にいた頃から意識があったという意味ですか?」
「違いますよ。」
ワイトさんのことば俺は苦笑する。さすがに母の中にいた頃とか全く覚えていない。
「ワイトさんは前世って信じますか?」
俺がこの世界に生まれた時、俺の意識が目覚めた。それと同時に知識が頭の中に流れ込んできた。それは魔法も精霊もいない科学が発達した世界。犯罪事件は各地で起こり、海を渡れば紛争もあった世界だが、平和な世界であった。そして俺はその世界で暮らしていた。
そうして様々な知識が入ってくる中、俺の頭は限界を超え意識を失った。魔族というちーとボディーを持っていたがゆえに俺はなんとか脳が無事であったが、もし普通の人間であったら障害が残ったか、死んでいたのではないかと思う。いや、俺も完全に無事ではなかったのかもしれない。俺は生前の自分についてほとんど覚えていない。名前、性別、年齢・・・。意識を失った際に知識が無くなったのか、もともとそれについての知識を受け継がなかったのかは分からない。確かなのは俺は中途半端に知識を持っている、ということだ。
とりあえずその知識のおかげで俺の精神年齢は見た目以上に高いはずだ。精神が体に引っ張られているところもあるので『精神年齢=前世の年齢+現在の年齢』とはならないが。
「ということです。」
「前世・・・この場合は転生とでもいうのかしら?確かにあなたの知識のアンバランスさ、年齢と精神年齢の違いは説明はつくわね。まさか・・・異なる魂って!?」
さすがワイトさん。最後まで説明しなくても自分で答えを見つけたらしい。
「俺が転生してきたことを指すんでしょう。異なるっていうのは魔族の体に人間の魂が入ったことに対して言ったのか、異なる世界の魂が入ったことに対して言ったのかは山の精霊しか分かりませんが。」
「・・・なるほど。」
山の精霊の言葉に対する解釈はともかく、魔族の体に人間の魂というのは明らかに異常であるのだ。だから俺はこの体を完全に使いこなすまでとても時間がかかった。正確にはまだ使いこなせてはいない。膨大な魔力をただの魔力タンクとしか使えていないのが、その証拠である。
「あなたの事情は分かったわよ。正直信じられない話だけど旅をしてきた仲間であるあなたが言うなら信じるに値するし、それによって今まで謎だった部分が説明できるのだから、否定するつもりはないわ。」
「ワイトさん。」
俺はワイトさんの言葉に感動していた。普通なら頭の異常をも疑われない内容なのにここまであっさり信じてくれた仲間を持てたことに関して感謝をしたい。
「むしろ都合がいいしね。」
えっ?
「転生云々はともかく、あなたが今後も生き続けるなら封印を見守ってくれるだろうし、闇の力に対する抑止力にもなるし。」
「あ・・あの。」
「それに何か起きた時に5大精霊とすぐに連絡が取れるように、定期的に5大精霊のもとに訪れるという役目も果たしてもらえるしね。」
気づいたら俺の仕事がどんどん増えていた。
「ワイトさん、もしかして今日わざわざこの話をした理由って。」
「あなたが魔族なら、寿命なんてないようなもんでしょう?そしたら私が死んだ後のことも含めて仕事を押し付けられるから、確かめる必要があったのよ。アークデーモンですら一生を封印にささげるんだから、あなたもこれくらいはがまんしてよね。」
俺の中から先ほどの感動と感謝はどこかへ完全に飛んでいってしまったようだ。
「ソル、頼んだわよ。」
めったに見ることができない彼女の笑顔は悪魔の微笑みにしか見えなかった。
主人公は原作知識は皆無です。