ARC THE LAD -生き残ったもう一人のいにしえの七勇者-   作:妄想プリン

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第八話 機神団の長ヂークベック

ワイトさんとの俺の出自に関する話を終えた次の日、ついに俺が旅立つ日が来た。世界中を旅するつもりなので大崩壊によって飛行機や定期船などがなくなったこの世界では、ワイトさんに再び会えない可能性もある。会えるとしても相当先の話だろう。しかしそんなことは関係ないとばかりに俺たちの別れはあっさりしたものであった。

 

トウヴィルを去った俺はあらかじめ機神団が用意してくれた船に乗ってスメリアを去った。いまのところ世界中を回る予定の俺は終着地を決めてはいない。しかし最初に行くところはすでに決めていた。

 

 

 

 

 

 

「ちっ。・・・瓦礫だらけで全くみつからねえ。」

 

俺はアルディア大陸の南部にあった神の塔の跡地にいた。神の塔とは世界を監視するためにアイツが各地に作った塔の一つである。そして俺たち七勇者と機神団が敵の機神兵と決戦を行った場所でもある。あの時の決戦でこの神の塔は機能停止となった。特に決戦を行った最上階は戦闘の影響により瓦礫の山となっていた。なぜ俺がそんな場所にいるかというと。

 

「ん?あ、あった!」

 

残骸が散らばる中、俺は目的のものを発見し周りの瓦礫をどけていく。それはところどころ傷付いているものの元の原型からは全く崩れていなかった。

 

「こんなにボロボロとなって瓦礫だらけ中でもちゃんと原型を残しているっていうのが驚きだよな。」

 

見た目はCAA-5の色違いとしか言えないほどにそっくりであるそれは、機神団の長であるヂークベックであった。

 

ヂークベックは機神の中でも特殊な存在である。純粋な性能では機神グロルガルデや機神ジャッジメントにはヂークベックは遠く及ばない。もともとがSA-100を改造したものであるCAA-5を基準に作られたわけだから仕方が無いのであるが。

 

そのヂークベックがジャッジメントをも指揮する立場にある機神団の長に任命された理由はパワーユニットと呼ばれる部品にあった。パワーユニットとは取り付けることで効果を発揮するパーツのことだ。機神は通常それ自体で完成しているのだがヂークベックはパワーユニットを取り付けるような構造を有していて、パワーユニットを取り付けることで起動できる。逆を言えばパワーユニットが外されてしまえばヂークベックは動くことすらできない。つまりヂークベックにとってパワーユニットはコアであり、弱点である。

 

しかしそんなデメリットをものともしないほどのメリットがパワーユニットには存在した。パワーユニットは20個存在する。そのそれぞれに異なる力が込められていて、ヂークベックはパワーユニットを入れ替えることであらゆる属性の特殊能力を使いこなしオリジナルの能力まで使うことができる。またパワーユニットを取り付けることによってヂークベックの基本性能も上昇するのだ。ヂークベックは同時に二個のパワーユニットを取り付けることができる。取り付けるパワーユニット次第ではグロルガルデやジャッジメントの基本性能をも上回るのだ。

 

特殊な機神であるヂークベックは敵に合わせて様々な戦闘を行うことができるように思考回路が他の機神に比べて大きく発達している。つまり指揮官向きでもあるということで、ヂークベックは機神団の長に任命された。

 

そしてヂークベックはここでグロルガルデと相討ちになって、機能停止となった。ヂークベック優位で続いていたグロルガルデとの戦闘は、最後の最後でグロルガルデの一撃がヂークベックの弱点でもあるパワーユニット構造に届いてしまった。予備のパワーユニットはいくつもあるが、取り付ける構造にまで届いていた傷を修理することをできるのは科学で世界を手に入れようとしたアイツの配下か大崩壊によってなくなってしまったヂークベックを作りだした研究所ぐらいしかないだろう。

 

俺には何百年かけても修理なんて無理だろう。俺に出来ることはヂークベックが誰かに利用されないように封印するぐらいだ。そして俺はそれを実行するためにここまで来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はヂークベックを完全に掘り起こした後、四苦八苦しながら作製したリアカーでヂークベックを運び出した。その後ここから比較的近いヤゴス島の洞窟の奥にヂークベックを封印した。そしてヂークベックを封印した場所の更に奥にパワーユニットも五つ封印した。

 

パワーユニットとヂークベックを同時に封印するかは相当迷った。パワーユニットを使用すればヂークベックの封印は簡単に解けるのでヂークベックの封印を誰にも解けないようにするという点で見ると明らかにまずい。

 

しかし未来の人がヂークベックの力を必要とする可能性があることを俺は否定しきれなかったのだ。ワイトさんもグラナダさんも闇の力が復活しないように行動している。もしそれによって封印が続くのならそれはそれでいいんだと思う。しかいアイツが復活してしまう可能性もある。その時に七勇者は俺しか生き残っていない可能性もある。

 

断言しよう。

 

無理だ。

 

どうやっても一人でアイツを倒して封印なんて無理である。いやアイツを倒すどころか聖柩の封印を解くのに必要なアークデーモン撃破でさえきわどい。俺が今後鍛錬を続けたとしても一人でアイツに勝つのは無理である。だから復活してしまった時のことも考え、行動しておく必要がある。

 

なぜ俺がこんなにアイツが復活してしまうことばかり考えているかというとゴーゲンさんの封印のせいである。ゴーゲンさんが自分を封印し続けている理由、それは未来に自分の力が必用になる可能性があると考えているのではないか?ゴーゲンさんは通常の人よりも長生きで、まだまだ長生きしそうであるがさすがに何百年、何千年も生きられない。だから自分の力が必用な時になるまで封印の眠りについたのでかないか?

 

これだけならゴーゲンさんの深読みの可能性もあるが、ゴーゲンさんの封印に精霊が一枚かんでいることが嫌な予感を増幅させる。全てのものに対してできるわけではないが、運命や未来を見ることができる精霊が未来に対する対策をとっているのならば、ほぼ確実にアイツが復活すると考えていいのだろう。

 

ということでアイツが復活した時の対抗手段としてヂークベックの復活を行えるようにしときたいのだ。悪用された時のことも考えてヂークベックといっしょに封印したパワーユニットはパワーユニットの中でも初期に作られた性能の低い5個にしている。もしヂークベックの能力を上げたいなら他のパワーユニットを探さなければならないのだが、他のパワーユニットの存在はヂークベック自身が話さなければバレルことはないだろう。

 

ヂークベックが信用してパワーユニットを話すような人物なら信用して他のパワーユニットを渡してもよい。まあ俺が直接渡すことができないような状況にある可能性もあるので、世界各地にパワーユニットを封印するつもりなのだが。

 

世界各地に封印するには途方もない時間がかかるだろうが、俺の時間はまだまだたくさんある。それに長い船旅生活は魔法の修行にはとても向いているのだ。永遠と同じ景色を見続けることで魔法を制御するのに必要な精神力を鍛えることができる。そして進行方向とは逆方向に魔法を撃ちまくることで船の速度を上げることもできる。・・・まえにやりすぎて船が転覆しかけたこともあるのだが、それは気にしない方向で。

 

ちなみにスメリアを出発してからすでに2年以上経過している。別に寄り道していた、とかではなくなるべく最短距離で来てこれなのだ。スメリアから見てアルディア大陸は星の裏側にあることを考えれば仕方が無いだろう。むしろ前世の知識を用いて方位磁針を作らなければもっと時間がかかっていたに違いない。

 

この世界は魔法や精霊、魔界なんて前の世界からは考えられないことだらけなのだが、意外な共通点が存在する。まず天体である。太陽、月は一つずつで、ちゃんと季節に合わせた十二星座も存在する。そして地形である。この世界の大陸や島の場所は地球の大陸や島の位置とだいたい一致している。

 

俺は地球の地理に関して隅々まで覚えているわけではないので細かいところにまで自信があるわけではない。しかし前に見たこの世界の地図は地球の大陸の地図と似たように見えた。ノルさんやバルダさんの故郷であるアララトスがあるハルシオン大陸はユーラシア大陸、バルダさんが向かう予定のアデニシア大陸はアフリカ大陸、現在俺がいるアルディア大陸は南アフリカ大陸そしてスメリアは日本。はじめて地図を見たときはここが過去か未来の地球じゃないかと思ったくらいだ。

 

それはともかく俺の今後の方針は世界を旅して各地でパワーユニットを封印。そして魔法の練習を行いゴーゲンさんの弟子として胸が張れるレベルにはなりたい。あとグラナダさんに頼まれていたことで、大崩壊で生き残った人がいたらスメリアに誘うっていうのも忘れないようにしないと。

 

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