天才のちニート、時々イケメン   作:しゃけ式

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正直一番悩むのってサブタイトルなんですよね。




故郷

次の日、私達一行はカナシダトンネルを抜けてキンセツシティに到着した。

 

「キンセツシティ、到着ッッッ!!!」

 

「ジンダイ、それシダケタウンの時はやってなかったよね」

 

「アタシ、キンセツシティなんて初めて来た!ねえ、ちょっと寄ってもいい?」

 

首を軽く傾けておねだりしてくるコゴミ。可愛いんだけど、なんだかキャラが定まらないなあ…。

 

「了解。じゃあどこから回ろうか。」

 

「ジム!」

 

それを聞くなりジンダイはやたらと嬉しそうにしてコゴミに言った。

 

「ここのジムはなあ、強いんだぞ!でんきタイプの使い手で、並のトレーナーならここが関門になるんだ」

 

「そうだっけ?私のイメージはルネジムとかトウカジムだけどなあ」

 

「そんなことはない!!コゴミ、キンセツジムはテッセンという凄腕のトレーナーがいるんだ。挑んでみるか?」

 

「できるんなら挑んでみたい!」

 

「ていうかなんでそんなやたらとキンセツジムを推すのさ……ああ」

 

そういえばジンダイはテッセンを3タテしてたね。というかコゴミに対するジンダイの扱いはどことなく親戚のお父さんってのを彷彿とさせる。いやまあ私にそんな人はいなかったけども。

 

「じゃあ2人はジムに行くんだね?私はこれをしてくるよ」

 

そう言って私は右手で何かを掴む素振りをして回転させた。

 

ジンダイは察したようで、

 

「……。ほどほどにな」

 

と忠告してきた。案の定コゴミは何のことかさっぱりな様子だ。

 

「じゃあ終わったら連絡するよ。そっちも頼むね」

 

そして私は件の場所へと向かった。そう、キンセツゲームコーナー(という名のカジノ)へ!

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

それから二時間ほど経ち、私達は落ち合った。

 

「どうだった?コゴミ」

 

するとコゴミは目を輝かせて言った。

 

「見て!バッジ!1vs1でテッセンさんに勝ったの!それにね、ジンダイさん凄いんだよ!昔テッセンさんに一匹のポケモンだけで三匹もたおしたんだって!」

 

などと矢継ぎ早に言って、その光景を満足げに見ているジンダイが目に入り私は一層辟易とした。

 

その変化に気がついたのか、ジンダイが話しかけてきた。

 

「なんだ、負けたのか?」

 

「いや、結局はプラマイゼロだけどね。ここに来る30分前までは大勝していたんだよ。あの時やめてさえいれば………ッ!!!」

 

「まあ金ならいくらでもあるんだろう?別にいいじゃないか」

 

と、ジンダイは血迷ったことを言ってきた。

 

「君は本当に何を言っているんだ!!馬鹿じゃないのか?いいかい、賭け事において重要なのは残金じゃない。プラスなんだよ!5万を溶かしたら5万まではノルマ!そこからのプラスが大事なんだ!!宝くじ当てて金持ってるんだし働いても給料0でいいよね。なんて言われてみろ!ブチ切れるだろう?それと同じ!理解した?!」

 

「お、おお……」

 

「なんかエニシダ怖いよ?」

 

「ああいや、これはすまない。私としたことが熱くなってしまったね。いつもはこんなんじゃないんだけど…」

 

なんて取り繕ってはみたものの、二人は私を白い目で見てくる。失敗したなあ……。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

アタシ達はキンセツシティの南へ進んだ。道中ではカラクリやしきに驚いたりもしたが、問題なく進み無事カイナシティに到着した。

 

潮の匂いがほのかに香る港町。辺りには市場があり、カナズミシティとはまた違った賑わいがある。アタシは生まれてこの方カナズミシティとトウカシティ以外には行ったことがなかった。

 

そんなアタシにしてみれば、キンセツシティもそうだったけどカイナシティはとてもわくわくするものだった。

 

なんて、物思いに耽ってみたり。

 

「このまま私の家に行くかい?」

 

そういったのはエニシダ。アタシとしてはもうちょっと辺りを見てみたい、とか思ってるんだけどなあ…。

 

それを見かねたのかはわからないけど、ジンダイさんが見事にアタシの気持ちを代弁してくれた。

 

「その前に少し見て回らないか?ここに来ることはあまりなくてな、興味があるんだ」

 

「……ああ、そうか。ごめん、そうだね。そうするよ。海の科学博物館とかどうだい?」

 

はっとした表情を見せたエニシダだったけど、すぐにいつもの顔で行き先を提案してきた。

 

「いいと思う!行ってみたい!」

 

前にスクールの子がそこに行ったのを聞いて気になってたんだよね。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

館内に入ると、なにやら船の部品や模型などが展示されていた。

 

「へえー、なんかすごいね」

 

なんて言いながら辺りを見ていると、面白い展示を見つけた。

 

海はなぜ青いのか

 

エニシダとジンダイさんは知ってるのかな?知らないならアタシが説明してあげようじゃないか!

 

「ねえねえ、エニシダ、ジンダイさん。海ってなんで青いかわかる?」

 

「海か。そういえば考えたことないな。わかるのか?」

 

そういったのはジンダイさん。アタシは少し得意な顔になって答えた。

 

「なんでかっいうt…「それね、確か太陽の光の青いところを吸収できないから海底に溜まって、それが青く見えるんだよね。あってるっけ?」……正解」

 

「おお、よく知ってたな」

 

「ありがとう。このくらいなら余裕だよ」

 

「ぅぅぅ。エニシダのバカ!!」

 

エニシダなんて知らない!

 

「ええ!?ちょっとコゴミ!?どこいくのさ!」

 

理不尽で怒ってるのはわかってるけど、それでもなんだか嫌だった。アタシは海の科学博物館を飛び出して適当に走り回った。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「おい、どうするんだよ」

 

ジンダイは私に呆れたように言う。

 

「いやあ、まさか答えるだけで怒るとは思わなかったよ」

 

予想外ではあったけど、想定内ではあるからね。対処法は考えてある。

 

「どうやって見つけるつもりだ?二手に別れるか?」

 

「いや、別にそんなことしなくても大丈夫だよ。カイナシティに来る途中コゴミにきんのたまを仕込んでおいたんだ。つまりこれがあれば見つけられるよ!」

 

自慢げに言う私へジンダイは懐疑の視線を向けた。

 

「本気で言っているのか?」

 

「ああ、このダウジングマシンさえあれば余裕だ。フーディンにこれを持たせてカイナシティの地図を渡せばどの家にいるかとかまでわかるんだ」

 

そういってモンスターボールから出したフーディンに地図とダウジングマシンを渡す。すると一息置いてフーディンがスプーンである場所を示した。

 

「ああ、ここか。なら大丈夫だ。この辺りは私の友人が住んでいてね。多分保護してくれるから、頭が冷えたら迎えに行こう」

 

今行くのは逆効果だろう。子どもだって考える時間が必要だ。

 

「なら私達はどうする?このままここにいたって面白くないだろう」

 

「先に私の家に行こうか。夕飯時になったら呼びに行くよ」

 

「了解した。お前の家は近いのか?」

 

「割とすぐだよ。大きいからすぐわかると思う」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

あれから1時間程が経った。見渡してもアタシがこの場所を知っているはずがなく、知らない人と知らない場所でいっぱいだ。

 

……ていうかなんであの二人は追いかけてこないの!?

 

いやまあ、追いかけられたら流石に逃げるけどさ。だからって追いかけないのは違くない?そりゃあさっきのは確実にアタシが悪かったけどさ。そりゃあアタシ達はまだ出会って2日だけどさ。そりゃあ子どものやることだけどさ。

 

この状況に何も思わないほど怒ってないじゃん!!

 

見てわかんないのかなあ。もうちょっとアタシへの理解を深めてほしいよ。これがいわゆる前途多難ってやつだね。というか今のアタシの状況がすでに前途多難だよ。ここどこなんだろう。

 

ふらふらとあてもなく歩いていると、不意に声をかけられた。

 

「君、もしかして迷子?」

 

「ひゃあ!?……はい。あ、いやいや、別に迷子なんかじゃないですよ?」

 

突然の呼びかけに驚いて変な声が出たけど、なんとか平静を取り繕えた。と思う。

 

「はははっ、そっか!ならどこに行こうとしていたんだい?」

 

小気味よく笑ったこの人はそう聞いてきた。別に目的地はなかったので、特にないと答えようと思ったが、なんとなく癪に障ったので適当にいうことにした。

 

「エニシダの家だよ。まあまだ行かないんだけど」

 

本当のことだけど、別に行かないもん。

 

「ああ。エニシダ君か。彼の家なら知ってるし、行く時間までは僕の家でも来てみる?」

 

「え、なんで知ってるの?てかエニシダ知ってるんだね」

 

「彼はカイナシティでは有名人だからね。家なんてみんな知ってるんじゃないかな」

 

「でもカイナシティって広くない?なのにみんな知ってるんだ。プライバシー、なにそれ食えんのみたいな感じだね」

 

「いやいや、エニシダ君の家は目立つんだよ。なんせこの街1の大きさだからなあ」

 

「そうなんだ!エニシダってお金持ちなんだ」

 

「その上タマムシ大学にも行ってたし、バトルも強いしみんなの憧れだよ」

 

みんなの憧れがエニシダ……。顔もかっこよくないし小太りだしなんとなく胡散臭いのに、そんなことがあり得るのかなあ。

 

失礼極まりないことを考えていると、この人は再度聞いてきた。

 

「それで、僕の家には来るのかい?少し時間を潰せたら送るよ」

 

「いや、不審者にはついていくなって父に言われてるので遠慮します」

 

「いやいやいや!僕は別に怪しくなんかないよ!」

 

「……なら名前は?」

 

「クスノキだ」

 

「ん。アタシはコゴミ。信用できる証拠は?」

 

「道行く適当な人に聞いてみればいいよ。クスノキさんは信用できますかー?ってね」

 

そこまでいうならやってやろうじゃないか。これで変な答えが返ってきたらそっこー逃げてやるんだから。

 

「あの、すいません。クスノキって人知ってる?」

 

聞かれたおばさんは微笑みながら答えた。

 

「ええ、知ってるわよ。クスノキってクスノキ艦長のことよね?あの人は若いのに凄いわよねえ」

 

クスノキさんを一瞥するとどうだ、と言わんばかりのドヤ顔を浮かべていた。釈然としなかったのでもう1人にも聞いてみた。

 

「すいません、クスノキっていう人がいるんだけど知ってる?」

 

おじいさんはまたも笑みを浮かべて答えた。

 

「ああ、クスノキ君ね。最近の若者は変なのが多いが彼は珍しくしっかりした人だ!ええやつじゃぞ」

 

「そっか、ありがとう!」

 

私がにっこりと笑顔を作り挨拶すると、気にするなと言っておじいさんはどこかへ行ってしまった。

 

クスノキさんのところへ行こうとするとまたもドヤ顔をしていたので、すねを蹴り飛ばしてやった。

 

「っ…痛いよ!!」

 

「……おうち行くよ。案内して」

 

そう言うとクスノキさんはくすっと笑ってこっちだと先導してくれた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

20分ほど歩いたところで、クスノキさんの家に到着した。

 

「お邪魔します」

 

中に入ると辺りには船の模型や部品、写真などが飾ってあった。さっきも艦長って言われてたし、もしかして船の関係者なのかな?

 

「ごめんね、変なものいっぱい置いてあるけど気にしないで」

 

「クスノキさんって船とか運転するの?」

 

「運転というか操縦かな。することもあるよ。基本は研究とか船の部品を造ったりしてるけどね」

 

「だから艦長なんだ!すごいね!」

 

「おお、ありがとう。さてコゴミちゃん、ゲームでもしてようか」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

キンコーン、とインターホンが鳴った。時間は午後6時。こんな時間に誰だ?と思い見に行くと、そこにはコゴミとクスノキ君がいた。

 

「やあやあ、クスノキ君。久しぶりだね。まさか君が直々に連れてきてくれるとは思わなかったよ」

 

「相変わらずだね、エニシダ君。彼女が僕の家の近くにいたから放置していたんだよね?効率重視はいいけど、やりすぎないようにね」

 

「善処するよ。それよりコゴミ、さっきはすまなかったね」

 

「いや、アタシこそ聞いといて思い通りにならなかったから出ていくなんて子どもだよね。ごめんなさい」

 

「別に気にしなくていいよ。それよりこれからご飯なんだ。本当はそろそろ呼びに行くつもりだったんだけどね。クスノキ君もどうだい?」

 

「じゃあご馳走になろうかな」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

中に入るなり、コゴミが独り言を漏らしていた。

 

「おっきいおうちだなあ…。アタシの家より大きい」

 

独り言なのは目に見えてわかったが、会話がなかったのであえて反応してみた。

 

「でもコゴミの家だって大きいんだろう?お父さんが元ジムリーダーなんだし、道場とかもありそうだ」

 

「道場はあったけど、足してもこんなに広くはなかったよ」

 

先程から私の家が広いと話しているが、どのくらい広いかというと、スクールの体育館程が3階建てだ。洋風の建物で和室は各フロアに二部屋ずつある。

 

そのまま進み、食堂に到着すると先にジンダイが座って待っていた。

 

「そこのやつは誰だ?」

 

ジンダイはクスノキ君を目で示してそのようなことを言った。

 

「彼はクスノキだ。クスノキ造船所の所長で艦長とも呼ばれているよ。それよりも、早く食事をしようよ」

 

そう諭して席に着くと二人も続いて座り出した。コゴミは緊張しているのか、少し動きが硬い。

 

「緊張しなくていいよ?やたらと金持ち金持ちした料理なんて出てこないし、なにより私の家だよ?」

 

「べ、別に緊張なんてしてないし!ただちょっと恐縮しただけ!」

 

「恐縮ってね、漢字で恐くて縮こまるって書くんだよ。緊張よりも重い意味になっちゃってるよ」

 

「あっそ!!!それより早くご飯!!」

 

すると感心したようにジンダイが私を見てきた。緊張をほぐせたのはたまたまだけど、それを伝えるのはプライドに障ったのでサムズアップをしてにかっと笑った。

 

「夕飯を持ってきてくれ」

 

家政婦に言うと、手際よくテーブルクロスの上に並べてくれた。

 

 

 

 

 

食事中、ジンダイが初めてクスノキ君に話しかけた。

 

「クスノキとやら、お前この地方で強いトレーナー知らないか?」

 

まさか話しかけられるとは思っていなかったのか、目を丸くしたクスノキは表情を戻して言った。

 

「強いトレーナーといったらそりゃエニシダ君だよ。僕の知ってるトレーナーなら、他はゲンジさんとかアオギリ君くらいだね」

 

「アオギリか!なるほどね。ナイスアイディアだよ、クスノキ君」

 

その様子を見たコゴミは聞いてきた。

 

「ゲンジって人はいいの?」

 

「ゲンジってあれだよ。四天王の強そうなおじいさん」

 

「もうお前が誰と関わってようが驚かんよ」

 

ジンダイが私にそう言った後、アオギリのことを聞いてきた。

 

「アオギリ君のことは僕が説明するよ。彼は以前エニシダ君とクルージングに行った時に一緒になってね。その時のイベントでポケモンバトルのトーナメントがあったんだけど、決勝にまで残るほどの実力者なんだよ。その時の決勝戦も凄かったんだ」

 

「というと?」

 

「エニシダ君とほぼ互角に闘ってたんだよ。最終的には彼は負けたんだけど、その時に交流を持ったんだ。ポケナビを交換してたでしょ。掛けてみたらどう?」

 

「思い立ったが吉日だね。掛けてみるよ」

 

そういってポケナビから登録された名前を探し当て、コールする。

 

数秒後、彼は電話に出た。

 

「珍しいな。エニシダが掛けてくるなんて。元気にしてるか?俺は元気だ!」

 

「やあやあ、アオギリ。こっちも元気だよ。突然なんだけど、明日は暇かい?」

 

「ああ。明日はちょうど暇なんだよ。ポケモンバトルの誘いか?」

 

「半分あたりって所かな。今どこにいるんだい?」

 

「今はムロタウンにいる。本気のジムリーダーと闘って回っているんだ。お前はどこなんだ?」

 

「私はカイナシティにいるよ。なら明日の12時頃に会わないか?久しぶりにバトルでもしよう」

 

「なら俺が向かうわ。ポケモンセンターのバトルフィールドで落ち合おうや」

 

「来てくれるんならお言葉に甘えようかな。じゃあまた明日ね」

 

「ああ」

 

そういうと向こうは通話を切った。

 

おずおずとした感じでコゴミは聞いてきた。

 

「怖そうな喋り方の人だったけど、大丈夫なの?」

 

「アオギリは色々荒いヤツだけどいい人なんだよ。優しい人でもある」

 

「明日のその勝負、私にさせてくれないか?」

 

ジンダイがそう言ってきた。

 

「別に向こうがいいって言うならいいけど、急にまたどうして?」

 

「レジロックとレジアイスの強さを試したいんだよ。まだ闘わせていないからな」

 

そういえばそうか。ここのところ私は連戦でそんなイメージはなかったが、言われてみればジンダイは見ているだけだったね。

 

「わかったよ。ただ生半可なレベルじゃ太刀打ちできないよ。ジムリーダー狩りなんて馬鹿げたことをしてるくらいだからね」

 

「それなら心配いらない。こいつらのレベルは65だ」

 

「「65!?」」

 

声を揃えてクスノキ君とコゴミは叫んだ。エリートトレーナーが使うポケモンでもレベル50辺りで、60を超えられるポケモンは少ない上にそれを育成できるトレーナーも限られてくる。かくいう私はレベル60を超えるポケモンは何体か持っているし、なんとなく自画自賛のような気がしないでもない。

 

ちなみに、月火ちゃん(ファイヤー)のレベルは72だ。

 

「それならアオギリとも闘えるよ。勝ってフロンティアブレーンになってもらおうね」

 

ジンダイは力強い声でおう!!と返した。

 

 

 

 

 

 

 

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