シンオウ地方の神話には、要約すると以下のようなことが伝えられている。
何も無いところから神と呼ぶべき存在が生まれ、そのポケモンの体から5体のポケモンが新たに生まれた。それぞれは“時間”、“空間”、“感情”、“意思”、“知識”を司っている。それらの計6体が今の世界を作り出した。
これが事実なのかどうかは定かではないが、少なくともこの6体が存在しない偶像的なものではないのは定かである。
なぜなら、その6体の内の1体がこのアグノムだからだ。
でもそんな重要なポケモンを捕まえてもいいのか?
「ほお、アグノム。どこかの神話に出てくるポケモンじゃな」
そしてこの神話はとても有名で、アグノムを出すと大抵驚かれるか怒られる。アグノムだって生き物だし、別にこいつだけがアグノムじゃないんだけどなあ。
「そいつを傷つけると意思がなくなるというのは本当なのか?」
「いや、それは問題ないよ。その力自体は制御できるっぽいし、そのケッキングの意思がなくなることはない」
「そうか、ならケッキング。かわらわり!」
巨体から繰り出されるかわらわりは物凄い勢いでアグノムの前方の空を切り、風切り音がここまで轟いてきた。
「いきなりとはずるいなあ。じんつうりき!」
アグノムが目を見開きケッキングを凝視し、ケッキングはたちまち苦しそうに顔を歪ませる。偏頭痛がもっとも近いのだろうか。
振り払うようにしてアグノムのもとへ走っていき、今度は多量のエネルギーを携えて突進していく。ていうかあのケッキング、全然
「きてるよ、50,1,50!」
するとアグノムの姿は消え、またしてもケッキングの技は不発に終わった。この戦い方はジンダイの時にもした座標でテレポートするものだ。
「ギガインパクトを
少しの間停止した後、ケッキングはおもむろにジャンプし腕を振り上げた。その方向は向いていないのにも関わらず、ケッキングのかわらわりがアグノムに当たったのは予想できていたとはいえ少し焦る。
「アグノム、Wの2だ!」
その言葉を聞くなりアグノムは天に向かって呟き始めた。たちまち黒雲は広がり、瞬く間に雨が降ってきた。そしてその雨は雷雨と変わる。雷の中の一つがケッキングに直撃し、またしてもダメージを食らったようだ。
余談だが、Wの2とはWeatherの2個目ということだ。ちなみに1個目はにほんばれからのソーラービームで、3個目はあられからのふぶきだ。
どちらも相手に当たる精度が格段に上がり、チャージ速度も上がる優れた戦法だと自負している。
「よっしゃ、ならそろそろか。喝入ったじゃろう!次はあばれてこい!」
バトル中の雨はポケモンの集中力を失わせる。それは普通に考えるとそうなのだが、このケッキングはむしろ逆で先程よりも集中力がましているようにおもえる。
現にケッキングの技は何発か当たってしまっている。
「アグノム!!」
そう呼ぶが目で大丈夫だ、と
にしても…。
──ウコン、君はもしかして頭が悪いんじゃないのか?
ふとそんな考えが頭をよぎる。きっかけはかわらわりを指示した時からだ。タイプの分類法でいえばエスパータイプのアグノムにかくとうタイプのかわらわりをするのは今のご時世考えられることではない。それにウコンは先程から攻撃技ばかりを指示している。補助技が鍵になる現代のポケモンバトルで、この戦い方は
そうなるとウコンは頭が悪いというよりも単に昔の人という結論になるが、どの道戦い方は見えたのだ。その答えは重要ではない。
ますます雨が強くなる中、ケッキングはついに疲れ果てて混乱してしまったようだ。
「今だ!もう一度かみなり!」
アグノムがまたも呟くと黒雲から一閃。脳天から電撃が迸る。食らったケッキングはふらふらとしており、今にも倒れそうだ。
だがこんなことで終わるはずはないと、自分で直感していた。
「ケッキング!あばれたあとだし怠けて良いぞ!」
その指示を受けケッキングは横になり手枕をし始めた。よく見るポーズである。
「えっと…、攻撃していいのかい?」
「もちろんじゃ。ほれ、今のうちじゃぞ?」
「アグノム、じんつうりき」
カッ!と目を見開いて再度じんつうりきを食らわせる。しかし今度は目を閉じて幾分威力を緩和されてしまった。じんつうりきは五感に働きかけて脳の血管を拡張させるものなのだ。本能的に理解出来たのか、目を閉じて視覚をシャットアウトしてダメージを軽減させたのは賞賛に値する。
怠けるのも終わったようでケッキングは立ち上がる。先程のダメージはほとんど見られない。
「ケッキング、相手の場所はもう把握出来たか?見えんでも行けるな?」
その言葉にケッキングは勢いよく頷き、続いてケッキングにしては珍しい技をチョイスした。
「ふぶき!」
「10,0!」
おそらくはふぶきが必中になると踏んで指示したのだろうが、雨の中ではふぶきは命中しにくいままだ。
「もうそろそろ終わらせるよ。かみなり!」
私がWの3を選んでいたなら答えはまた違ったんだろうけどねえ。
はずだった。
しかし、私はそもそもアグノムがどこにいるのかが文字通り
言い方を変えれば視認できなかった。
突然濃霧が漂い始め、かみなりを撃つどころではなくなってしまった。見えないままにかみなりを撃つと、もちろん偶然ケッキンクに当たる事はあるかもしれない。しかしトレーナーに当たるかもしれなく、最悪
「なるほど…、さっきのふぶきは霧を生み出すためか……。ここまで三味線をひいてるとはね、驚いたよ」
朝に放射冷却で霧が出来るのと原理は一緒だ。ふぶきで気温を下げたのだろう。
「にしてもウコン。よく考えたら技5つ使ってないかい?」
始めに打った“かわらわり”、テレポートで躱した“ギガインパクト”、ダメージを負った“あばれる”、回復に使った“なまける”、そして霧を生み出した“ふぶき”。
「いつからルールに技を5以上使ってはいけないと錯覚していた?」
──ルールは1対1でいいかい?
──審判はなしにせんか?
この二つしか明言していなかったのを思い出し、バトルの不文律さえ無視するウコンに場違いながらもさらに惹かれた。
「なるほど、それはそうだね!ならアグノム、ふういん!」
右手をケッキングの方へ向け、自分の覚えている技とかぶっている技を封印する。
「ほお、恐らくこれで霧は起こせんくなったな。じゃがケッキングはそれだけではないぞ!メガトンパンチ!」
無駄のない動きのパンチがアグノムへとつきささる。引き手の左腕は脇に抱え、筋肉を余すことなく利用したメガトンパンチはアグノムの体力を奪うのに十分な威力だった。
ふらふらとしているアグノムにバトル終了を言い渡そうと逡巡するが、その“諦めの意思”を読み取ったのかまたもこちらを見て目で訴えてきた。
「まだやめんか。なら次はメガトンキック!」
「まもる!」
「ならフェイントじゃ!」
キックを入れようとした足が急に跳ね上がり、
アグノムはとうとう宙に浮いていられなくなったのか、依然雨の降る地面に体を落ち着けた。
「最後、ギガインパクトで終わらしてやれ!」
ケッキングはエネルギーを体に溜め、アグノムへ突進していった。
しかし、それはただの突進にしかならなかった。
なぜならギガインパクトそのものが
「それを待っていたよ!アグノム、そのままスキルスワップ!!」
アグノムが地面に坐したまま突っ込んでくるケッキンクに両手を向け、淡い光を浴びせる。
その光を受けたケッキングの体は突然宙に浮き、突進どころではなくなってしまった。
「突然の無重力だとそりゃ慣れないよね。アグノム、トドメのかみなりだ!」
前のものとは比べ物にならない大きさの電撃、いや雷撃がケッキングを襲い、宙に浮いたまま倒れてしまった。
「ん、これは戦闘不能じゃな。エニシダ、お前の勝ちじゃ」
「よっしゃあ!」
ウコンはケッキングをボールに戻し、ケッキングをいたわっている。
「まさかスキルスワップでケッキングのとくせいをふゆうにするとはな…。にしても、お前さんのアグノムはふぶきだけじゃなくてギガインパクトも覚えておるのか」
「ふういんできる技は大いに越したことは無いからね。それとふぶきは確かに覚えてるよ」
「そうか。いやー、ええ勝負じゃった。なら約束じゃ、ワシもフロンティアブレーンとやらになってやろう!」
ウコンは胸を張ってそう言ってくれた。これで5人目、あと2人だ。ジンダイとアザミは新たな仲間を見つけてくれているだろうか。
「コゴミ、嬉しいお知らせだ。取り敢えずこれで一旦ホウエンに帰るよ」
無言でバトルを食い入るように見ていたコゴミだったが、その声にはっとしてこちらを見た。
「本当!?じゃあこれでジンダイさんとアザミに合流できるね!」
かなり嬉しいのかこのままだと小躍りでもしてしまいそうなテンションのコゴミ。それを見ている私まで嬉しくなってくるよ。
ウコンは仲間になってくれるし、コゴミはホウエンに帰れるし大団円!
…のはずだが1人そうもいかない状況の人がいたようだ。
「ちょっとちょっとちょっと!わたしはどうすればいいのよ!」
「ああ、そうじゃったな。はて、どうするかの……」
「ねえ、君家事は得意?」
私は唐突にそんなことを聞いた。
「え、まあ人並みかしらね。粗方できるわ」
「ならうちに住み込むかい?ホウエンならストーカーもおいそれと来れる場所じゃないだろうし、というか自家用のジェットで来てるから場所がそもそもバレない。加えて私の家は大きいからね、警備も万全だし家政婦の枠は余っている。雇われるという形でなら私たちについて来れるけど、どうだい?」
「そうね………、よし。わたしも行くわ。連れてって」
「了解。交渉成立かな」
実際のところ交渉なんて何一つしていないが、ここは様式美に則ってのものと思ってくれればいい。
「すまん、シロガネ山を出る前にポケモンセンターに寄ってもよいか?」
「ああ、それなら私も用があるからね。行くよ」
◇◇◇
「ではポケモンをお預かりします。回復が終わり次第アナウンスしますので、それまでお待ちくださいね」
そう言ってにこっと笑いかけてくるジョーイさんに私も人の良い笑みを浮かべてパソコンのもとへ移動する。
事前にポケナビでジンダイに連絡を取り、テレビ電話を頼んだ。パソコンでミナモシティのポケモンセンターにテレビ電話をいれ、現地のジョーイさんにジンダイと電話を代わってもらった。にしてもジョーイさん、ほんとどこのジョーイさんとも似てるよなあ。クローンを思わせるほどだ。
「やあやあ、ジンダイ。元気かい?」
久しぶりの顔はやはり変わっていなく、無愛想に応答した。
「上々だ。そっちはブレーンを見つけたのか?」
「ああ。元チャンピオンだ。といっても、辞退者だけどね」
それを聞いたジンダイの顔はわかりやすく驚いていた。
「まさかあのレッドか!?」
「いやいや、ウコンっておじいさんだよ」
「ああ、初の辞退者だったか、確か。…それはそうとエニシダ。空を飛ぶポケモンを貸してくれないか?」
「それはミナモシティに行けってことかい?」
1度カイナシティに寄るつもりだから意外と遠いんだけどな…。
「いや、今この場でだ」
「ああ、なるほど」
あれからちょうど10日目のことだ。ついに転移装置は実装され、ポケモンセンターに備え付けられた。リーグに近いのでこの辺境の地のポケモンセンターにもすぐ取り付けられていた。
「なら電話は繋いだまま転移させようか。コゴミもアザミと話したいだろうしね。空を飛ぶポケモンなら、やっぱり月火ちゃんだね。バトルに必要なのかい?」
「ああ、これに勝てば5人目…じゃなくて、6人目か。ならこっちはサマヨールを送るよ」
「え?別にこっちが送ればいいだけなんじゃないか?」
「交換がどんなものか見てみたくてな。それに一応の担保だ」
なるほど。まあそうしたいならそうさせるべきかな。
「了解。おーい!コゴミー!アザミとテレビ電話していいよー!!」
「おっけー!ありがとう!」
走ってくるコゴミを一瞥し、隣のパソコンに移動した。
「ここに置けばいいんだよね」
月火ちゃんのモンスターボールをボール置き場に設置し、自分の情報を入れるとすぐに相手の位置情報を検索し出した。いくつもの街が浮かび上がるが、その中にミナモシティを発見してクリックする。相手のジンダイという名前のものを発見し、情報にサマヨールとあることを確認して交換をクリックした。
変化はすぐに訪れた。
ボールを軽い光がつつみ、光が消えた。
ただそれだけのことなのに、変に神々しく見えた。
「さて、出ておいで。サマヨール!」
「ィヨー!!」
奇妙な声を発して出てきたポケモンを見てみる。
うん、サマヨールじゃないね。
……!?!?!?
今、これとは別のクロスssも書き溜めてるんですよ。この中に1人、妹がいる!ってわかりますかね?
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