天才のちニート、時々イケメン   作:しゃけ式

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投稿遅くなって申し訳ございません。この作品ももうそろそろなので、あと少し付き合ってやってください。


五人目

「私は飛ぶポケモンなんて持っていないぞ?」

 

「oh…ジーザス!!」

 

あたしとヒースはポケモンセンターへ移動し、ジンダイを見つけて“美しいバトル”の説明をした。しかし初めに抱いた懸念は的中し、ジンダイは空を飛べるポケモンを持ってはいなかった。

 

「じゃあこの話はなかったことにしてくれ。美しくないバトルなんて正直やる価値を見いだせない」

 

不貞腐れたヒースはそう言った。悪く言えば変人、よく言えば天才肌のような印象が残る。

 

「待て。一応確認しておくが、お前は強いんだよな?」

 

品定めするような目でジンダイはヒースを見る。その言い草にムッとしたのか、強い口調で言い返した。

 

「もちろんだ!そもそも強さが1番の美じゃないか!」

 

「そうか。でももしそうなら地上でやる勝負もうつくしいとは思わないか?」

 

「ぐぬぬ…」

 

雰囲気が殺伐としてきたな、と人事のように考えていたところ、不意にジンダイのポケナビが鳴った。

 

「アザミ。エニシダからメッセージが入った。テレビ電話がしたいらしい。ジョーイさんに手筈を頼めるか?」

 

「そんなのアンタが行きなよ、って言いたかったんだけどね。行ってくるからさ、その代わりヒースを説得しといてよ」

 

そう言い残してあたしはジョーイさんのもとへ向かった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「これがポケモンを転送するということか…」

 

ボールが光に包まれたと思ったらすぐに消え、そこには先ほどと変わらないボールがあった。正直なところ、存外に感動しないので出た感想は適当なものになってしまった。

 

エニシダからはファイヤーが届き、向こうにはサマヨールが送られるはずだ。もし仮に今のが成功していなかったらと思うと、恐ろしくてたまらないな。

 

「ヒース、飛ぶポケモンは用意できた。アザミもそろそろ電話は切ってくれ。審判を頼みたい」

 

ヒースは首肯し、私のあとをついてきた。一方でアザミはしぶしぶといった表情でこちらを見返し、コゴミに確認をとってからテレビ電話を切った。

 

 

 

移動した先はやはりバトルフィールドで、そこで初めてファイヤーが届いているか確認した。

 

「出てこい、ファイヤー」

 

ポン!と子気味のいい音をたててボールから出たポケモンはまさしくファイヤーだった。一応こちらは失敗していない。協会の認可を受けたシステムが不良品というのは考えられないとはいえ、初めての試みだとやはり気にしてしまうのはしょうがないことだ。

 

ヒースはファイヤーを見て面食らっており、物珍しそうに見ていた。確かに伝説のポケモンというのは、そうそうお目にかかる事はできないからな。

 

「おお、これはすごいね!美しいよ!なんて可憐な姿!ビューティフォー!」

 

ひとしきり見終わったようなので、続いてヒースもポケモンを出す。

 

「さあ、美しく舞ってこい!ボーマンダ!」

 

出てきたボーマンダはなんとも迫力があり、ファイヤーとはまた違った雰囲気を持っていた。ファイヤーをヒースよろしく可憐と称するなら、ボーマンダは幽玄と言った言葉が似合う。幾多の勝負をくぐり抜けて出来た熟成度が並のポケモンとは違うのは一目瞭然だ。

 

私がアザミを一瞥すると、またも気だるそうに見返して声をかけた。

 

「勝負はじめ」

 

「ボーマンダ、まずは美しくいこう!りゅうのまいだ!」

 

りゅうのまい??と聞きなれない技名が聞こえたのでふとボーマンダの方を見ると、なにやら儀式的な何かを舞っていた。あの動きは確か異性のポケモンに見せつけるアレだったはずだが、意味はあるのか?

 

それはそうと、こちらも早く技を出さなければならない。ファイヤーを送ってもらった後改めてポケナビにどんな技を覚えているか書かれたメッセージを送ってもらい、一応技は把握している。

 

「ファイヤー、気にせずエアスラッシュ!」

 

翼で起こした小さなかまいたちがボーマンダを襲う。舞いは終わったようで、少しはエアスラッシュを食らったがすんでのところで(かわ)しきった。

 

「ファイヤーに急接近!かみなりのキバ!」

 

口元が帯電したボーマンダは真っ直ぐにファイヤーのもとへ飛んでいく。が、なまじ速いが故に直線的すぎる。

 

「ずれたら避けれるぞ」

 

私の指示に敏感に反応したファイヤーは素早く左へずれ、追加でまたもエアスラッシュを浴びせた。私は何も言っていないというのに、大したもんだ。

 

ちらっとヒースの方を見ると、彼の顔はとてもいきいきしていた。ボーマンダでさえもダメージを食らってるというのに楽しそうな顔をしている。こんなボーマンダを育てることが出来るのだ。門外漢のコーディネーターではヒースの相手は荷が重かったのだろう。

 

「いいねいいね!さあボーマンダ。次はドラゴンクローで行こう!」

 

先程の直線的な動きを気にしてか、今度は回り込んだり蛇行したりして突っ込んでくる。

 

「ファイヤー、回避したらゴッドバードの準備だ!」

 

迫り来るボーマンダに対して体をひねらせて回避し、瞬間ファイヤーの体が光に包まれる。

 

「そこだ!もう一度ドラゴンクロー!」

 

羽の勢いで急ブレーキをかけ、器用にターンしたボーマンダは避ける暇すら与えずにドラゴンクローをファイヤーに命中させた。食らったファイヤーは健気にゴッドバードを準備するも、ダメージが大きかったのかふらふらしている。

 

「いいのが入ってしまったな。溜まり次第ゴッドバード!!」

 

その指示を受けた頃にはもう既にゴッドバードは完成しており、一直線にボーマンダのもとへ飛んでいった。先ほどのボーマンダのかみなりのキバやドラゴンクローのものとは比べ物にならないくらい早いので、恐らくこれは避けることがかなわないだろう。

 

「てっぺき!!!」

 

ギィィィィン!!!!!と金物同士がぶつかるような甲高い音がし、音源を見てみると互いに顔を歪ませている2体がいた。

 

「今だ!かみなりのキバ!」

 

「ぼうふうで相手を撹乱させろ!」

 

素直に従ったファイヤーのぼうふうは確かにボーマンダの行く手を(はば)んだ。しかしボーマンダもまた並のポケモンではなかった。

 

かみなりのキバが直撃したファイヤーはよろよろと地面に落ちていき、もうそろそろやられるように感じられた。

 

「ラスト!ドラゴンクローSでフィニッシュ!」

 

蛇行して的を絞らせないこともせず、真っ直ぐ飛んできたボーマンダにファイヤーは目を向けることもしていなかった。

 

 

 

見る必要がなかったから。

 

 

 

「わかるな、ファイヤー!カウンターを合わせろ!オーバーヒート!!」

 

ファイヤーはすぐさま体に炎を纏わせ、そしてタイミングを合わせて口から特大の火炎を放出した。

 

 

 

が、当たることは無かった。なぜならボーマンダは手前で止まっていたから。

 

 

 

「だろうね、そのためのS(ストップ)だ!もう一度ドラゴンクロー!!」

 

そうしてもう一度ボーマンダは爪にオーラを纏わせて、ファイヤーに爪を突き立てた。

 

誰もが負けたと思い、勝負している私さえ負けたと思ってた。しかしそれは間違いで、ボーマンダはファイヤーに当たる寸前で動くことが出来ずにいた。

 

何が起こっているのか理解が遅れ、その間にファイヤーはエアスラッシュでボーマンダを倒していたのだった。

 

「…終わりか。ボーマンダ戦闘不能、勝者ジンダイ…?」

 

審判をしていたアザミも思うところがあったのだろう。いまいち覇気のないコールに拍子抜けしてしまった。

 

「戻れ、ファイヤー」

 

「ボーマンダ、お疲れ様」

 

ボーマンダを戻したヒースはこちらへ歩み寄ってきて、そして良い笑顔で口を開いた。

 

「ジンダイ、僕は君を侮っていたよ。まさか負けるとは思わなかった。ナイスゲームだった!」

 

出された手に、私は応えられなかった。

 

「……??握手は嫌いか?」

 

私は気づいてしまったのだ。なぜ直前でボーマンダは止まってしまったのか。初めは直前のSの指示に引っ張られたのかとも考えたのだが、理解してしまってはその考えも虚しい。不思議そうに聞いてくるヒースに私は思い当たった真実を打ち明けた。

 

「すまないヒース、今の勝負は私の負けだ」

 

「どういうことだ?」

 

「反則負けということだ。ファイヤーは5()()技を使った」

 

その答えにアザミは審判のミスだと捉えたようで、少し機嫌を悪くしながらも問いかけた。

 

「つまりあたしのジャッジミスってことかい?」

 

「まあ、見ようによっちゃそう捉えることもできるんだがな。実際に今のを見分けることが出来る審判なんて熟練でも難しいだろう」

 

そもそもそんな発想がなければ技を使ったなんて思わないだろう。現にポケモンバトルでは全く使われない。これは誇張表現でもなければ比喩表現でもない。

 

「ファイヤーはドラゴンクローを食らう直前、“にらみつける”をした。だからボーマンダは体の自由が奪われたのだろう」

 

エニシダとコゴミの父が戦った時に聞いたエニシダの説明を思い出しながら、そのことについて語った。

 

「まさかそんな芸当ができるとは…。さすが伝説のポケモンだ」

 

ヒースは驚きを隠せないようで、口まで開けて驚愕していた。

 

「というわけだ。この勝負は私の負け。つまりお前がフロンティアブレーンになる必要はなくなったが、どうする?それでもなってくれるか?」

 

反則とはいえ、そして人のポケモンとはいえ伝説のポケモンに勝利したのだ。喉から手が出るほど欲しい人材ではあるが、負けた以上強くは言えない。

 

「いや、そのフロンティアブレーンというの、是非ならせてもらうよ」

 

「な、本当か!?」

 

「そのにらみつけるさ、初めに使わなかったのは君がアンフェアだと思ったからだろ?確かにその技は強力すぎるけどさ、ハンディマッチで勝ったからハイ終了!なんてダサい真似はできない。強さを求める上でそんなこと僕は絶対にしたくない。それに、アザミもいるしね?」

 

言い終わってウインクするヒースに、アザミはわかりやすく嫌な顔をしてそっぽを向いた。今のがなければかっこよかったのにな。

 

「そうか。なら歓迎するぞ。改めて、よろしくな」

 

今度は私が手を差し出し、そしてしっかりと握手をした。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

ポケモンセンターに戻った私たちは、再度エニシダに電話をすることにした。6人目の報告だ。

 

「もしもし、エニシダか?6人目が仲間になった。名前はヒースといって、お前のファイヤーにも勝ったほどだ」

 

少しの沈黙が流れ、そして電話の向こうのエニシダはようやく反応した。

 

「…そうかい。それはよかった。……それよりさ、ジンダイ」

 

やけに重苦しい雰囲気を纏って話しかけてくる。何かあったのか?

 

「多分だけどさ、君のサマヨールは進化したよ」

 

「何!?」

 

サマヨールの進化だと!?そんなの聞いたこともない!

 

「で、恐らくなんだけどさ。その進化の理由が転移装置を使用したからなんだよね。試作品で転移させたユンゲラーもそれでフーディンに進化したんだ。ありえない話じゃない」

 

「どんな姿なんだ?」

 

「なんていうかな……、目元とかは面影があるんだけどね。浮いていて腹の部分は顔になっている」

 

…??要領を掴めないが、まあこちらへ来てからでいいだろう。

 

「わかった。あとどれくらいでこちらへこれそうだ?」

 

「ミナモシティはそうだな……、本気を出せば3日かな」

 

「なら3日でこい。サマヨールがどうなっているのか早く知りたいんだ」

 

「了解。それじゃあね」

 

通話はそこで途切れ、そしてタイミングを見計らってアザミが話しかけてきた。

 

「なんだったの?」

 

「私のポケモンが進化していた、なんて話だ。たわいもない。あと3日でミナモシティに来れるそうなんだが、何かしたいことはあるか?」

 

簡単に私がそう問うと、答えたのはアザミではなくヒースだった。

 

「すまない、質問なんだけどフロンティアブレーンってのは仕事になるんだよな?」

 

「ああ、そうなるな」

 

「てことは仕事がある人はなれないってことか?」

 

「まあそうだな。アザミもリストラされたからここへ志願したわけだし」

 

「うっさい!」

 

そう言って(すね)を蹴ってきたが、それを躱して続く話を待つ。

 

「なら会社は退社した方がいいよな?」

 

「な、アンタ会社で働いてたの!?」

 

「まあ簡単なもんだけどね。惚れた?」

 

ヒースの冗談は無視するものとしよう。

 

「ならヒース、今すぐは流石に無理そうだし機を見てやめてきてくれ」

 

「いや、大丈夫だ。少し待っててくれ」

 

そしておもむろにポケナビを取り出すヒース。ダイヤルをして耳に当てるその姿は妙に清々しく、すぐに何をするのかわかった。

 

「おい、やめとけ!それは迷惑がかかるだろ!」

 

「もしもし、聞こえてるー?僕今日で会社やめるし、あとは頼むね。あ、あと退職金とか貰えるんなら振り込んどくように社長に頼んどいて。それじゃね!」

 

プッ、と電話の切れる音がしたのが聞こえ、時すでに遅しと言わんばかりのドヤ顔を浮かべてヒースはこちらを一瞥した。

 

「ま、僕にかかればこんなもんだね」

 

「「人の迷惑を考えろ!!!」」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

3日後、本当にシロガネやまからミナモシティにまで飛んできたエニシダ達は無事ポケモンセンターで私達と落ち合った。

 

「久しぶりだね、ジンダイ、アザミ。で、そこの青年は(くだん)のヒースかい?」

 

「ああ、こいつがそうだ。にしても久しぶりだな。1ヶ月ぶりくらいか?」

 

「もうそんなにたつのか。…ああ、この老人がウコン。フロンティアブレーンで、過去にリーグを優勝したこともある実力者だ」

 

「「「リーグ優勝!!??」」」

 

アザミとヒースとコゴミは声を揃えて驚く。てか一緒にいたコゴミは知ってるだろうに…。

 

「どうも、ウコンという。よろしくな」

 

「自己紹介の流れだね!では、新参者のヒースです!好きな事はポケモンバトル、好きな人はアザミ、好きなポケモンは飛ぶポケモンだ!」

 

「アンタなに勝手にアタシの名前使ってんだよ!!」

 

「アウチ!!!!」

 

得意の脛蹴りがクリーンヒットし、ヒースが飛び跳ねる様を見てみんなは笑っていた。つられて私も笑い、そこで私は場違いかもしれないが暖かさを感じた。1人で旅をするのが普通だった私にとって、人と一緒にいる事は稀だったからか。心地よい暖かさにあてられていたのだった。

 

 

 

私たちは各々の自己紹介を終え、これからどうするかを話していた。

 

まず話し出したのはやはりエニシダであった。

 

「じゃ、あと1人なんだけどどうする?6人で行動するか前みたいに分かれる、どうしようか?」

 

「アタシは6人で回りたいな!」

 

手を挙げて発言をしたのはコゴミだ。最年少でありながらも遠慮することのない姿は微笑ましい。

 

「あたしはどっちでも」

 

「アザミがそういうんなら僕もどっちでもいいよ!できたら僕とアザミの2人でもいいけどね!」

「ワシは若いもんに任せる。人生なんてなるようになるんじゃからな」

 

口々に発言するフロンティアブレーン達。こうなったら多数決なのか。6人で回ることになりそうだな。

 

「私も任せよう」

 

「うーん…、ならやっぱり6人で回ろうか」

 

「やった!!」

 

それを聞いたコゴミはわかりやすく喜んでおり、それを見る周りも嬉しくなるようなものだった。

 

「じゃあ次はどこに行くかだけd…「ヒース!!!!!」…え?」

 

エニシダが次の議題に入るその時、突然呼ばれたヒースはビクッと肩をしゃくりあげて見返した。

 

「……あははー…、こんにちは〜、ダツラ。話はつけてくれたのかな?」

 

ダツラと呼ばれた柄の悪い男はなおも怒鳴り続けた。

 

「ああ、話はつけたよ。お前はクビだ!!!退職金なんかでねーからな!!」

 

「はあ!?シット!!!!なんでそうなるんだよ!!」

 

どうやら3日前に電話したツケが思いのほか早く回ってきたようで、大変なことになっていた。

 

「大体お前はいつも……、なんだ?」

 

肩を叩かれたダツラとやらは振り向き、用を確認した。叩いたのは他でもないエニシダだった。

 

「久しぶりだね、だっつん」

 

「だからダーツはもうやってねえって!!!…って、エニシダなのか?」

 

頭に血が上っていたようだったが、急に毒気を抜かれたような顔をして問いただした。

 

それにしてもエニシダ、本当に顔が広すぎるだろ。コミュ力お化けとでも呼ぼうか。なんでヒースの会社のとこのやつと知り合いなんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サンムーンのキュウコンは夢特性でゆきふらしとか来るんでしょうか。初手必中のタイプ一致で威力180をうつCSぶっぱのキュウコンとか割と強そうですよね。ガブとか抜けそう(小並感)
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