「なんだお前?私に勝負?」
いきなりの物言いにやはり怪訝な顔をして私に問い掛ける。まあそりゃそうだよねえ。私だっていきなりそんなことを言われたら変に思うよ。
「私には夢があるんだけどね、ちょっとそれに行き詰まったからバトルで発散しようと思ってさ」
「舐められたもんだな。噂を聞きつけてきたんじゃないのか?」
「おや、自分で自分の噂を知っているとはまた不思議なもんだ」
少し挑発気味に私が問い掛けると、彼はまるで意に介しないような表情で言い返してきた。
「そりゃまあ噂になりそうなことはしてきたつもりだからな。例えばここの砂漠の主であるフライゴンの撃破、テッセンとのバトルで3タテ、あとは…あれか。゙見たことのないポケモンを使ゔ」
「口振りからしてテッセンさんとは知り合いらしいね。それとフライゴンは…ああそうか。だからナックラーが怒ってたんだ」
すると彼は少し驚いた様子で
「おお、この言葉だけでここまで考えることが出来るのか。頭の出来は良いようだな」
と言った。過去にも幾度となく言われた言葉で、内心うんざりしながらも話題を転換した。
「そりゃどうも。ところであなたは……そういえば名前をきいてないな。名前はなんて言うんだい?」
「私の名前はジンダイという。それでなんだ?」
「ジンダイはここへ何しに来たんだい?噂が立つほどここに長居する理由は?」
不躾な質問とはわかりつつも聞いてみた。
「それは教えられない」
これは予想していた答えなのでさほどショックは受けない。むしろこの答えを待っていた。
「なら私がジンダイとの勝負に勝てたら教えてくれるかい?君が勝ったら素直に引き下がろう」
正直なぜここにいるのかなんてバトルをするための口実でしかないのだが、幸い彼には伝わらなかった様だ。
「了解した。ルールはどうする?エニシダとやらよ」
「2対2で交代あり、技は4つまで」
「審判はどうする?」
「私は審判もできるんだ。公正に判断すると誓うし、私に任せてくれないだろうか」
「あいわかった」
やっとこれで念願の勝負ができると思うとワクワクが止まらない。
「では、勝負始め!」
私が大きな声で宣告すると、まずはジンダイがポケモンを繰り出した。
「行け、サマヨール」
ヨマワルの最終進化系でタイプはゴーストのみ。耐久力に優れていた気がする。
いやでも、それよりも…。
「なんかすっごい禍々しい服着ていないかい?このサマヨール」
ジンダイはまたか、とでも言わんばかりに
「…なんかこいつ、ヨマワルの頃からこれ持って離さないんだよ。サマヨールになってからは着るようになってな」
と呆れた様子で応えた。
「……。まあ、じゃあ私もポケモンを出すよ。行っておいで、ストレス発散の時間だ」
そう言って出したポケモンはヒゲとスプーンが特徴的な黄色の体のポケモンだ。
「ユンゲラーか。タイプの相性を知らんわけではないだろうに…。」
「残念、ユンゲラーじゃないよ。頭に星マークがないからね」
私はこの後の考える顔が好きだ。未知に遭遇した時の人間の顔はなんとも言えぬ美しさがあるように思えてならない。
「なるほど。…ではなんだ?ケーシィにしては大きすぎる、だが確かにユンゲラーにしては違和感がある。それとも別の地方のポケモンなのか?」
「いや、正真正銘この地方のポケモンだよ。カナズミシティの横でゲットしたからね」
「そろそろ答えを言ってくれないか?自分が無知なのが苛立ってしょうがないんだ」
私は一息つくと、このポケモンが何かを教えた。
「君が知らないのも無理ないよ。なんたってまだ未確認のポケモンなんだから。このポケモンを見せたことがある人だって君を含めてまだ4人だ。」
ジンダイは驚いたようで、その先を聞き逃すまいと続く言葉を待っていた。
「このポケモンの名はフーディン。…といっても、仲間内で便宜上そう呼んでいるだけだけどね。実はまだ発表してない技術があって、その過程でユンゲラーが進化したんだ」
本当は未確認にちなんでアンノウンとつけたかったんだけど、やっぱりと言うべきか周りが反対したので仕方なくフーディンにしたことは内緒だ。
「差し支えなければその過程を教えてくれないか?」
「ポケモン転移装置。もっとも、名前は変わるかもしれないけどね。これがあればポケモンをデータとしての取り出しが可能になるわけだ。これを使ってポケモンを交換したらユンゲラーがボールの中でいつの間にか進化していたんだよ」
「そんなことができるようになっているとはな…。でもなぜ発表しないんだ?それさえ広まれば旅の効率は遥かに上がり、富や名誉だって手に入るだろう」
「掻い摘んで説明すると、まだ実用化に至ってないんだよ。私はこれでいいと思うんだけど、もう一人が納得してないんだ。もうこれを作って5年になるんだけど、もうそろそろとしか連絡が来なくてね…」
ほんとジョウトの血というか…細かいやつだな、マサキ。
「てか、そろそろバトルしないかい?フーディンも待ちくたびれてるよ」
「それもそうだな。ならもう1度掛け声を頼む」
「了解。勝負始め!」
◆◆◆
私はその掛け声を聞くとすぐにサマヨールに指示した。
「サマヨール、シャドーボールだ」
指示を聞いたサマヨールはすぐにシャドーボールを作りフーディンとやらに放つ。こいつの技の指示を受けてからの反応とシャドーボールを作る速度は一級品なのだ。
するとエニシダが妙な指示を出した。
「フーディン、テレポートで70,30だ」
いかにシャドーボールが速いと言えど、テレポートにスピードで勝るとは思わない。
「サマヨール、おにびだ!」
もう一つ、こいつは耐久力に優れている。つまり敵の体力をじわじわと奪っていく戦法に秀でているのだ。
「おお、これはまたマイナーな技を使うんだねえ。フーディン、テレボートで50,120からのめいそうだ」
マイナーというのは、現代のバトルではいかに早く攻撃を当てて倒すかということに重点を置いているからだろう。
エニシダはまた不可解な指示をしたあと、今度はバトルではほぼ意味が無いとされるめいそうをさせた。集中力を高めてバトルの効率が上がるわけでもないだろうに。
しかし、それよりもフーディンの位置が見当たらない!?
少しばかり考えたのち、相手に悟らせないように指示する。
「サマヨール、私めがけておにび!」
「なっ!?」
おにびに当たる瞬間、私は横っ跳びをして後ろにいるであろうフーディンへと攻撃を命中させた。さすがのエニシダも今までの飄々とした態度が崩れて焦った様子が見られた。
「やっぱりさすがだ。よくわかったね」
「そこしかないと思ってな。お前こそ見事な闘いぶりだ」
「だけど次はこうもいかないよ。フーディン、0,20 65,10 46,98,100」
まただ。また不可解な指示をする。フーディンがせわしなくテレポートをした後再び姿を消す。
2度も同じことはしないと思い振り返るとやはりいない。
「フーディン、めいそう」
何がしたいのかわからずに探すが見当たらない。仕方が無いので威力は弱いが必ず当たる技を指示する。
「サマヨール、シャドーパンチ」
サマヨールの手から黒い腕のようなものが出てきて、自動で敵に向かっていく。その方向はなんと上だった。
「よし、33,47 少し間を開けて 33,60 それで終わりだ」
フーディンがまたテレポートして、シャドーパンチがそれを追い進路を変える。もうすぐ当たるというところでまたテレポートをし、今度はサマヨールの後ろへ回った。
このままだとシャドーパンチがサマヨールにあたってしまう。テレポートで急に後ろに回られたので、普通だったら反応できない。
「まもる」
シャドーパンチは敵を最短距離で追う技だ。その点は最大のメリットでもあり時としてデメリットにもなる。故にテレポートを使いシャドーパンチをサマヨールに当てることくらいは想像がついた。予測できているので対策を講じることぐらいは訳ないのだ。
「あくのはどうで全方位を攻撃しろ」
策士策に溺れるとはまさにこの事だ。技の事前申請がいらないバトルだとその場に応じて技を選べるので楽に倒せる。
爆風が収まってポケモン達を見てみると、予想通り1匹は倒れていた。
しかし、倒れていたのはサマヨールだった。
「これはサマヨールが戦闘不能だね。フーディン、じこさいせい。さあ、次のポケモンを出してよ」
なにが起こったんだ!?これは一体…。
「さっき言っただろう?それで終わりだ、って」