天才のちニート、時々イケメン   作:しゃけ式

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二人目

「エニシダとやら、俺と勝負しろ!!もしお前が勝ったら好きにしてもいいが、俺が勝ったらここから消えろ!!」

 

「言われなくとも。それに今回はさすがの私も少し怒っているからね、本気で行くよ」

 

その光景をジンダイは少し面白そうに、コゴミはただオロオロと見ていた。

 

まず、なぜこんなことになったのか。時は30分前に遡る。

 

 

 

△▽△▽△▽

 

 

 

「じゃあまずはお父さんに挨拶だね」

 

「は、はあ!?マジキモいんですけど?ちょっとくらいバトルが強いからって調子乗らないでよ!」

 

「通報だな」

 

「ま、待ってくれ。別にそんな気はないんだって!誰がロリコンだよ!」

 

控え室でコゴミの思いを聞き、その旨をコゴミのお父さんに伝えようとか思っていた矢先にこれだ。

 

「オホン。とりあえずコゴミ。家はどこだい?」

 

「まさかストーカーまで併発しているとはな……」

 

「ジンダイは黙っててくれ!で、どこだい?」

 

「すぐそこだけど、ストーカーはやめてね?」

 

「するわけないから!」

 

なんて冗談を言い合っていたが、不意に扉が開けられた。何事かと見てみると、そこにはダイゴとサイホーンの社員親子がいた。

 

ダイゴが話しかけてきた。

 

「エニシダさん。まさか手加減されていたとはね。この子から話の顛末は聞いたよ」

 

「手加減?どういうこと?」

 

「コゴミ、別に私は手を抜いたわけじゃないからね?ただいつもは使わないポケモンを使っていただけだ」

 

そう言って私は息子さんに話しかけた。

 

「ね、サイホーンは強くなるんだよ。チャンピオンのポケモンだって倒せるくらいにね」

 

「だな!俺ももっと強くなってチャンピオンになりたい!」

 

「頑張ってね。君ならなれるよ」

 

すると察したようにジンダイは

 

「そうか…。だからお前はサイドンを使っていたのか。確かに変だとは思ったよ」

 

などと言った。

 

「とりあえず、エニシダさん。僕がもっと強くなったらその時はバトルフロンティアで闘おう」

 

「勿論だ。その時は私も本気で行こう」

 

そういうと、ダイゴたちは控え室から出ていった。するとジンダイは少し驚いた感じで言ってきた。

 

「お前、チャンピオンとも知り合いなのか。しかも口振りじゃお前の方が強いみたいな雰囲気だったな」

 

「彼はまだまだ弱いよ。私と引き分けた君なら恐らくはダイゴに勝てると思う」

 

「え!?ジンダイさんもバトル強いの?」

 

「当たり前だよ。フロンティアブレーンは並のトレーナーじゃ務まらない」

 

なんて気の早い話をしていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

私達はポケモンセンターに移動し、ポケモンを回復させていた。近くのソファーに腰掛けていると、なにやら筋肉の目立つ男が私達に怒鳴りつけるように言ってきた。

 

「コゴミ!!なんで一人で挑まなかったんだ!!それにお前!サングラスのアロハ野郎!なに勝手なことしてんだ!!」

 

察したよ。お父さんだね。

 

「ご、ごめんなさい。でもアタシ…そんなの勝てないよ……」

 

「それでも挑戦するのがポケモントレーナーだろうが!!このバカ娘が!!」

 

そう言って手をあげようとするお父さんの腕をジンダイが掴んだ。

 

「人の教育は人それぞれだかな。11歳にそれは違うだろう。ましてや体罰の禁止されたこのご時世だ。いくら意にそぐわなくても、そんなことはするべきじゃない」

 

悔しそうにジンダイを一瞥して手を振り払い、今度は私に向かって言い放った。

 

「お前だお前!!なんで勝手に試合に出てるんだ!!」

 

「デボンコーポレーションの社長と知り合いでね。そのつてで出てくれないかと頼まれたんだ」

 

「私がいないからか?そのくらいの意図も汲み取れないのかお前は!!これだから学のないトレーナーは嫌いなんだ!」

 

「不躾なことを聞くけど、あなたは学があるというのかい?」

 

「ミナモ大学つったらわかるだろうが」

 

ミナモ大学。ホウエンでは2番目に賢い国立大学だ。

 

「それは凄い。ホウエンで次席の大学とは恐れ入ったよ」

 

「……なんだ。お前も大学を出ているのか?」

 

こういう学歴重視な人はたまにいるんだよね。大学なんて研究するためだけのものなのに、まるでそれをステータスの様にひけらかす人が。

 

こういう人は学歴で負けている相手に弱い。

 

「一応ね」

 

「どうせアホ大学だろう?お前みたいなやつが行くところはな」

 

「そうかな。世間では一応頭がいいところとは言われているんだけどね」

 

「……。もしかして、カナズミ大学か?」

 

「ハズレ」

 

「なんだ、やっぱり俺より頭悪いんじゃねえか。大卒だからって調子にのんなよバカが」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すよ。……私より頭が悪いくせに調子に乗るなよ、頭でっかちが」

 

口調を変えると少し怖じ気づいたのか、彼の言葉が詰まった。

 

「だ、だがカナズミ大学じゃなければ俺より頭悪いんだろ!?なにが調子に乗るなだ!!」

 

「その考え自体がバカなんだよね。タマムシ大学だよ。携帯獣学部、聞いたことくらいはあるだろう?」

 

「は、はあ!?嘘をつくな!!そんなことで騙されるか!!!やっぱり浅はかだな、バカは!!」

 

…てか、子どもの前なのによくそんな口を聞けるよね。

 

「エニシダとやら、俺と勝負しろ!!」

 

こうして冒頭に至る。

 

 

 

▽△▽△▽△

 

 

 

私達はポケモンセンターにあるバトルフィールドに出て、ルールを確認した。

 

「技の事前申請はなしで4つまで。1vs1でいいね?」

 

「別になんでもいい。早く終わらせろ」

 

「審判は私がやろう」

 

ジンダイがそう申し出てくれた。

 

「いけ!ゴーリキー!」

 

やはり彼はかくとうタイプのポケモンを繰り出してきた。ポケモンはタイプによって育成方法が異なり、タイプを特化させている手持ちのトレーナーはそのタイプしか育成できないかそのタイプが単純に好きかだ。

 

彼はどっちだろうね。

 

「行ってこい、月火ちゃん!!」

 

私のボールから出てきた月火ちゃんは炎のたてがみを揺らし、荘厳な輝きを放っている。

 

「つ、月火ちゃん?ニックネーム?」

 

コゴミがそう聞いてきた。

 

「勿論。そんな名前のポケモンがいてたまるかだよ」

 

「けど見たことないよ?そんなポケモン。別の地方のポケモン?」

 

「そうだね。カントーにいた頃ナナシマっていう群島を調査したことがあって、その時に出会ったんだ」

 

「ていうかそれ、伝説のポケモンだろう……」

 

ジンダイが呆れた顔で言ってきた。

 

「で、伝説のポケモンだと!?」

 

「まあそうだけど。てかジンダイ、君も伝説のポケモンなら3体持ってるでしょうが」

 

「3体……」

 

コゴミとお父さんは絶句している。確かに初めて聞いたら私もそうなるだろうね。

 

コゴミはもう一つ気になるのか、またも疑問詞を添えて聞いてきた。

 

「なんで月火ちゃんなの?伝説のポケモンなら名前で呼ばないの?」

 

「本当の名前はファイヤーって言うんだけどね。月の綺麗な日にこいつの炎がとても映えていて、その時にゲットしたから月火ちゃんって名付けたんだよ」

 

「もういいか、始めるぞ!!!」

 

イライラした様子でコゴミのお父さんは言ってきた。

 

「そうだな、勝負始め!」

 

「ゴーリキー、ちきゅうなげ!」

 

ジンダイの声を聞くなり、いきなり命令した。

 

「月火ちゃん、飛び上がってかえんほうしゃ。命中したら回り込んでゴッドバード」

 

ゴーリキーのちきゅうなげは不発に終わり、かえんほうしゃで焼かれた。

 

月火ちゃんは回り込んで力を貯めている。

 

「ゴーリキー、まもる!そしてビルドアップだ!」

 

月火ちゃんがゴッドバードを行ったが、まもるでダメージをくらわなかったゴーリキーはすぐさまビルドアップを始めた。

 

「よし、ゴーリキー!ちきゅうなげだ!」

 

避けろ!と言いたかったが、ここはわざと受けて次で仕留めよう。月火ちゃんは案の定なにもせずにちきゅうなげを受けた。

 

「ダメ、あれを受けたらエニシダが負けちゃう!」

 

「どういうことだ?」

 

コゴミとジンダイが話しているのが見えた。

 

「ゴーリキーのちきゅうなげは少し違うの。関節をきめて投げるからすぐには動けなくて、そのあとのきあいパンチで倒すのがセオリーなんだ…」

 

「なるほどな。だが多分エニシダは勝つぞ。今のちきゅうなげだってわざと受けた感じがした」

 

その通りだよ、ジンダイ。ゴーリキーはこれで終わりだ。

 

「ゴーリキー!きあいパンチで仕留めろ!!」

 

コゴミの言う通り、月火ちゃんは動ける状態ではない。コゴミのお父さんも勝利を確信したようで、人の悪い笑みを浮かべている。

 

だけどね、お父さん。月火ちゃんは伝説のポケモンなんだよ?そんな簡単に負けるわけがないじゃないか。

 

「月火ちゃん!

 

 

 

に ら み つ け る だ!!!!」

 

 

 

 

その指示を聞いた月火ちゃんはゴーリキーの目をキッと睨みつけた。

 

これも研究でわかったことだけど、野生のポケモンがにらみつけるをするのは理にかなったったことだったんだ。バトルにおいてのにらみつけるは相手の防御反応の速度を下げる。つまり攻撃がいつもより効くんだ。

 

だけど月火ちゃんのにらみつけるは一味違う。普通のポケモンなら防御反応の速度が低下するだけだが、月火ちゃんがすると相手は10秒間程動けなくなる。無意識に行っている拍動や瞬きは止まらないが、体を意識的に動かすことはできなくなる。

 

普段は強すぎてあまり使わないが、今回のような場合は許されるだろう。ケースバイケースだ。

 

いくらコゴミのお父さんが指示してもきあいパンチは発動せず、再び行った月火ちゃんのゴッドバードでゴーリキーは倒れた。

 

「ゴーリキー戦闘不能!よって勝者、エニシダ!!」

 

「お疲れ、月火ちゃん」

 

負けたことが理解出来ないのか、コゴミのお父さんは未だ呆然としている。しかし次第に状況を把握し、私につっかかってきた。

 

「イ、イカサマだ!!毒を仕込むなんて卑怯だ!」

 

「ちきゅうなげの後動けなくなったのはあなたが最も理解しているんじゃないのかい?毒なんて盛れないよ」

 

ていうか毒がイカサマならどくタイプのポケモンはどうなるのさ。

 

「だ、だか!それならなんでゴーリキーは動けなくなったんだ!!」

 

面倒くさく思いつつも、私はにらみつけるの詳細を説明した。

 

「なるほど。お前のバトルにはいつも驚かされるな」

 

「引き出しは多い方が有利だからね」

 

「……凄い」

 

「だろう?だから私はキモくないんだよ。凄いんだよ!!」

 

「そういうとこがキモいんだよ」

 

「…そうかい。まあ、ともかくだ。お父さん、コゴミをください」

 

「通報だ」

 

「待ってよ!ただ言葉足らずなだけだろう?」

 

そういうと私はお父さんにバトルフロンティアのことを話した。

 

「…もともと俺が好きにしろと言い出したんだ。勝手にしろ」

 

「ということだ。コゴミ、君はこれから私たちについて来るんだよ」

 

コゴミは一足飛びな話についていけていないのか、いまいち釈然としない顔だ。

 

「アタシ、もう学校行かなくていいの?」

 

その問いには彼女のお父さんが答えた。

 

「ああ。どこへでも行ってこい」

 

「お母さんは?」

 

「俺から話しておく。…まあ、だからなんだ。お前が好きにしたいならそうしていい」

 

その言葉を聞くなり、コゴミは一つお父さんに礼をした。それが別れとなった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「さて、これからどうする?」

 

場所は先ほどのポケモンセンター。お父さんは帰っていった。

 

「今回は次の目的地が決まってないんだからな。適当に歩くか?」

 

そうジンダイが言うと、コゴミが異を唱えた。

 

「そんなのだるいだけじゃない?目的地は決めた方がいいと思うよー」

 

「ならカイナシティに寄らないかい?今日はここに泊まって、明日の朝にカナシダトンネルを通ってキンセツシティまで行けば昼頃に私の家に着くよ」

 

「なんでエニシダの家に寄るの?」

 

「私の家には乗り物がいっぱいあるからね。移動が楽になるだろう?」

 

「何を運転できるんだ?」

 

「車、バイク、船、ヘリ、飛行機とかも出来たかな」

 

「……何者だよお前」

 

ジンダイが怪訝な顔で聞いてきた。といっても、ニュアンスは当初の怪しんだ感じではないが。

 

「エリートコースをドロップアウトしたただのニートだよ」

 

「お前でただのニートなら世の中のニートの立場はどこにあるんだ」

 

続けてコゴミも言ってきた。

 

「ホント、エニシダってなんでも知ってそうだよね」

 

「何でもは知らないよ。知ってることだけ」

 

 

 

 

 

 

 





作者はファイヤーは勿論、ホウオウにもファイアローにもフィニクスにも月火と名付けました。

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