エルフの国に舞い降りしプレイヤー 《完結》   作:ラッキー鍟(らっきーきんぼし)

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ep3 コーヒーブレイク

「話もまとまった事ですし、私はこれにて失礼致します」

 

 途中、昼食を挟んだが数時間も喋ると疲れるものだ。それもこれも魔法知識の無さに由来する。いや知識はあるのだが、調味料を作る魔法やお湯を沸かす魔法。植物の成長を促進する魔法など戦闘とは無関係なものばかりだ。

 私が使える魔法やその知識を一から話す必要があるため長引いてしまった。

 小腹も空いたから何か軽食を……紅茶と一緒に飲みたいわね。

 

「すみません、ここって紅茶とかありますか?」

 

「紅茶……えーっと、葉を乾燥させて云々のやつですよね。葉を摘むには森の奥へ進まなくてはなりません。昔はこの近辺でも葉が採れたと聞きますが今は……申し訳ありませんが採取することが出来ません」

 

 ティータイムは心の癒やし。古事記にもそう書いてある。それが出来ないのなら死んだ方がマシよ。どうして栽培しなかったのか。バカなのここのエルフ。

 

「ですが、他のお飲物でコーヒーでしたら、ご用意できますよ。この地域は原料となる豆が良く育つので、非常に香り高くなっています。他の豆は無いので比較はしたことありませんが」

 

 コーヒーは心の癒やし。それを栽培するとは分かってるわねここのエルフ。

 

「じゃあコーヒーと……うーん、ケーキなんかはあるかしら」

 

「ケーキ……ですか、原材料はあるので作れなくはないのですが予め予約をしておかないと無理です。作るのに時間がかかるので、手軽に創れる和菓子が良く食べられますね」

 

「和菓子も作るのが大変じゃ無いの? それとも昔からのノウハウがあるのかしら」

 

 和菓子は一種の芸術品。非常に繊細な作りなのに、それを食べて無くなる食品で魅せるのだ。ケーキも大変だが、和菓子ほど細かくはない。私が知らないケーキで緻密な物があるかもだが、知らない物は比較できない。

 

「ご安心を。一部の者は自身の体力を使い、手から和菓子を創造するクリエイト魔法を修得しておりますので」

 

 ここのエルフ独自の魔法だろうか。生活魔法と言うそうだが、私が知らない魔法分野だ。それなら紅茶くらい創ってくれても良いのに。

 

「じゃあコーヒーと和菓子で決まりね。さっきの食堂で作って貰えるの?」

 

「ここの食堂は沢山の食材を同時に加工しているので、個々に対しての料理は対応していません。この城を出て――にあります。地図を書いておきま……あの、読めますか?」

 

 今朝の文字が読めなかったことが原因だろう。地図と文字は違う気もするが、中には地図の見方を知らない人も居るだろう。そんなに私って脳筋に見えるかなあ。

 

「バカにしないでくれる? 知ってるわよ地図の見方くらい!」

 

「じゃあこれは?」

 

 記号。いやいや文字が読めないのだから記号か読めないのも仕方ない。これはドローね。いや地図ってことは……そうか!わかったわ!

 

「方位記号ね」

 

「なら問題ないですね。いえ、陛下が迷子だなんて周りの者に示しが付かないので……杞憂でした」

 

 

 

 

 

 

「この角を曲がって……っと。ここがメキシカンコーヒーのお店ね」

 

 看板の文字は読めないが鼻は嘘をつかない。ここが珈琲店なのは間違いないだろう。

 

 ガチャ……チリンチリン

 

 控え目な間接照明、五月蝿い客も居ない落ち着いた雰囲気。残念なのはダンディーなマスターじゃないことね。

 彼女は空いている席に座り、メニュー表に目を向ける。

 

「うん、読めない」

 

 ふざっけんなよあのエルフ! なーにが「お一人の方がお気楽でしょう」よ! 聞かなかった私も私だけどメニューが読めないんじゃ頼みようが無いじゃない。お店の人に聞くのも変だし、文字が読めないと思われるのもなんか気恥ずかしい。

 ここは私の知識を総動員して和菓子を予想する必要があるわ。和菓子……和菓子ってあの花みたいな形のよね。和菓子なんて饅頭以外何も知らないし。たい焼きは……違うわね。うぐぅ。

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

 ちょ、ちょっといきなり声掛けるの無し! まだ心の準備がまだなんだから。

 

「え、えーと……お薦めはなんでしょうか?」

 

「はい、本日は女騎士館(メキシカン)珈琲(コーヒー)にフルーツ大福のセットがお薦めです」

 

「美味しそうね。それにするわ」

 

「畏まりました」

 

 決まった! 流石私。本番に強いってことね。

 

 皿の前で軽く目を閉じる店主。軽く呼吸をすると唱える。

 ――和菓子創造(クリエイト・ジパングスウィーツ)

 初めに小分けされた果実が現れ、雲のように柔らかな生クリームが周囲を覆い、それら全てを包み隠す様に丸いお餅のような食べ物が誕生した。これが和菓子を創る魔法……ね。

 竹製の棒を添えて完成した。コーヒーも煎れ終わり、テーブルまで運ばれる。

 

「大変お待たせ致しました。コーヒーとフルーツ大福になります」

 

 ありがとう、と言うと店主は軽く笑い、カウンターの奥へ戻った。

 

「さて……お味は、っと」

 

 コーヒーを軽く口に含んだが、それは非常に苦く、芳香はあまりない。

 どうしてこんなに焙煎したんだ! 心の中で叫んでしまった。

 コーヒーは苦い方が甘い菓子との相性が良い。とは言え少し苦味が強い気もする。

 フルーツ大福は果物の甘さを大福が包み込んでくれる。甘ったるい口の中にコーヒーを流し込むことで中和され、それぞれの良さだけが残る。胸が時めく美味しさだ。

 

 できれば件のNPCも連れてきたかったが、この国ではエルフ以外の種族は目立つから止めるようにと言われてしまっては仕方がない

 持ち帰り用の豆があったら……うーん、煎れる道具が無いわね。

 インスタントコーヒー的な物がれば欲しいけど、私が知る喫茶店で持ち帰り用のコーヒーは煎れた豆しか知らない。

 読書が出来ないのが残念だけど、それは仕方のないこと。今は何も考えたくない。ゆっくりコーヒーを味わうことにしよう。苦い。

 

 リラックスも済んだし会計会計っと。ここに来る前に貰った銅貨数枚で支払えるはず。

 

「ん? あれは……ティーパック!?」

 

 まさかお茶が飲めるだなんて夢にも思わなかった。いや待て、葉が採れないのだからお茶以外の何かかも知れない。

 

「すみません、あそこにあるパック……ですか、あれは何ですか?」

「あちらは“おまん紅茶”になります。紅茶独特の苦みもなく非常に飲みやすい味に仕上がっております」

 

 おまん……おまんk!? 一体この店員は何を言っているのだろう。

 

「そ、そこの紅茶を頂けますか? えーっと取り敢えず一袋でお願いします」

 

「はい畏まりました。ではおまかせセットと、おまん紅茶で合わせて銅貨――枚になります」

 

 あ、やっぱりおまん……なんだ。あれかな、外国語だと挨拶してるのに発音を日本語に充てると下ネタになる的な。某湖とか某クパッカさんとか。

 財布から銅貨数枚を取り出した。これは先のエルフより貰った物だ。

 

「はい……確かに。こちらがティーパックになります。保存の魔法が付与されていますが、なるべくお早めにお飲みくださいね」

 

 確かに乾燥した葉が入っている。ほのかに香るそれはティーパックその物。一体何処に葉があったと言うのか。聞いてみるとその辺の葉っぱに魔法を付与して紅茶を作る自作の魔法が最近成功したとのこと。

 昔旅のエルフが持ち込んだ紅茶の味が忘れられず研究をしていたら偶然出来たという。その紅茶とは全くの別物だったが、せっかくなので売ってみることにしたらしい。

 開発したての魔法ならあのエルフが知らなくても無理はない。研究が進めば今以上に紅茶に近づくのかな。

 そんなことを思いながら店を後にした。

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