エルフの国に舞い降りしプレイヤー 《完結》   作:ラッキー鍟(らっきーきんぼし)

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ep7 帝国

「エルフの女王か、厄介事と取るか助け船と取るか……」

 

 ジルクニフは王を名乗るエルフからの手紙に悩まされていた。この国では奴隷の身分は保証され、労働力を提供する住み込みの仕事となっている。しかしエルフは例外だ。人とは違う、それだけの理由で捕らわれ心を折られ奴隷とされ買い主が殺しても罪には問われない。

 これまではフールーダと言う逸脱者が抑止力となり誰も止めることは出来なかったが、それを知ってなおエルフの自由を求めることはフールーダ如き取るに足らない存在と言うこと。例外として金銭を支払い解放させる手もあるが、手紙には「エルフの奴隷解放と制度の撤廃を要求する。三日後に帝国へ向かう」と書かれており、己の力に自信があるように思える。

 

 ふと目の前の鳩に視線を向ける。一見すると普通の鳥に感じられるが、皇帝の住まう一室まで届けたことを考慮すると魔獣が変装している場合もある。

 わざわざ手紙を寄越したことを鑑みると危険性は無いように思われるが、警戒はしておいて損はしない。

 

「お前はどう思う?」

 

「確認しないことには判断の使用がありません。《道具鑑定》(アプレーザル・マジックアイテム)

 

 フールーダであればより高位の鑑定魔法が使えるが、高弟である彼は残念ながら修めていない。翻訳魔法も修めていないので、別の魔法使いを呼んだくらいだ。

 魔導王との関わりを警戒したジルクニフが、新たな主席魔法使いとして優秀な高弟を仮として採用したのだ。魔導王を倒せるのはフールーダしか居ない。デス・ナイトを超越するアンデッドに有効な魔法の発見に邁進して欲しいと主席魔法使いの任を解き、時間の限りを研究に費やすように命じていた。

 確かに納得の行く理由だ。強大な魔法使いと戦う以上、命を落とすやも知れない。なら後任を据えるのは間違っては居ない。魔導国は周辺国家から畏怖の対象とされており、その対策を講じることは当然とも言える。そのため打倒魔導王が当の本人に伝わっても問題がないのだ。人間ごとき取るに足らない、そう考えるだろう。

 

「陛下、こちらは“伝書鳩”と言い手紙を届けるのみの能力を有したマジックアイテムになります」

 

「他の能力はないのか? 突然爆発でもされたら貯まったものじゃないぞ」

 

「ご安心下さい。一切の攻撃方法を持たない代わりに、攻撃を無効にする様です。持ち主に帰還する能力を有しているので、こちらから手紙を持たせられます」

 

 なる程、用件を伝えるだけのマジックアイテムか。城壁すらすり抜ける能力は異常と言えるが、他を捨てることで可能にしたのだろう。

 

「まぁ……来ると言うなら歓迎する他あるまい。唯でさえ戦力が足りないのだ。仲間として引き込めるなら国のエルフくらい幾らでもくれてやる」

 

 本来であれば魔導王に仕えるダークエルフ(アウラ、マーレ)を引き込むカードとして使いたかったが、エルフの女王が戦力になるのなら悪い手ではない。

 ジルクニフは訪問を歓迎する旨を綴ると、手紙を鳩に託した。受け取った鳩はここでの要件は終わったとばかりに天高く舞い上がり、一瞥(いちべつ)もせずに飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 ――三日後

 

「よし! いざ帝国へ出陣よ! ……私含めて二人だけど」

 

 いつものエルフが同行を志願したのだ。見ず知らずの土地に大切なNPCを連れて行くよりは、現地人の方が知識も多少は備わっていると思うし安全策とも言える。

 金銭を要求された時に備えてマジックアイテムや宝石を無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)に入れておいた。

 

「それじゃあ準備も整ったことだし……クリスタルよ! ドラゴンを召還したまえ!」

 

 天高く掲げたクリスタルには小さなドラゴンが入っている。召還の命を受けクリスタルが変形し光り輝く。10mには成るだろうか、強大なドラゴンが目の前に現れた。

 韻竜(シルフィ・ドラゴン)と呼ばれる種族で、ユグドラシルでは過去に滅びた高度な魔法技術を修めていた設定が付けられている。野生でエンカウントすることはなく、同じくクリスタルで配置されたNPCとして扱われる。

 強大な超位魔法まで有しているが蘇生不可能な特性があり、実際にギルド拠点地の守りとして使われた例はないため詳細を知る者は非常に少ない。

 

「じゃあトゥルク、この国にモンスターの侵入を許さないように。知的生物だったら言葉での説得をして、ダメだったら倒しちゃってね」

 

「畏まりました、マスター。ご意志のままに」

 

 肩肘をつき頭を垂れる。個人的には友達感覚で節してくれても良いのだけど、王に仕える女騎士の設定に縛られているのだろう。私が決めたことなんだから仕方がない。

 

「さ、陛下。ドラゴンに乗る準備が整いました」

 

 どう見ても馬用の鞍なのにドラゴンに使用できるのは、騎乗する種族の大きさに合わせて可変するからだ。マジックアイテムとはかくも便利なものである。

 

 何時ものエルフは側で待機している。私が乗るまで待ってくれるのは良いけど乗り方が分からないのよね。見本を示すために先に乗ってくれても良いのに。

 あー、でもマジックアイテムだから適当に跨がっても倒れないんだっけ。乗馬はコマンド操作で済んだけど今はどうなんだろう。まいっか。

 

「よいしょっ……と、よっと……よし!」

 

「では私も。どっこいしょっと」

 

「トゥルク、行ってきますね。この国のエルフ達とは……出来ればだけど、仲良くしてあげてね」

 

「畏まりました。お気をつけて、行ってらっしゃいませ」

 

 他のエルフとの顔合わせは昨日済ませておいたから問題はないだろう。念のため他のNPCも待機させ万全の体制を敷いている。

 帝国までの場所は探知魔法を使って半紙に地図を書き出しておいた。これを見ながら指示を出せば問題ないだろう、何時ものエルフが。

 

 ドラゴンは両翼を広げ、優雅に翼を動かした。これほどの巨体が鳥のように飛べるのは魔法世界ならではだ。

 長時間の乗馬はお尻が痛くなると聞くが、まるでテーブルに腰掛けているようだ。振動は一切無く、これ飛んでるの?などと疑問に思ってしまうほどである。

 空高く舞い上がり、エルフ達が蟻のように小さくなると飛行を開始した。直線距離なので長時間にはならないだろうが、それまで無言なのは辛い。指示を出すと言っても真っ直ぐなので方向だけ分かればそれで良いのだ。

 

「えーっと、今まで王に仕えてたみたいだけど先王から継いで私になって……やっぱり私なんかじゃ役不足じゃない?」

 

「とんでもないです。先王は保守的な方で、エルフ達に安永をもたらして下さった陛下ほど偉大な方は今の世におりませぬ」

 

「今の世にってことは過去には居たんだ」

 

「……はい。陛下に会うまでは最高のご主人様でした。ですが今は亡きお方。陛下以上の方はこの世におりませぬ」

 

「へー、そんな人が居たんだ。ん、そう言えば指に嵌めてるそれって……」

 

「昔、最高のご主人様より下賜った指輪です。私を守るために嵌めるようにと仰っておりました」

 

「普段から付けてるってことは、よっぽど大切な物なんだね」

 

「……はい!」

 

 右手の薬指に嵌めているってことはもう……。この人にも色々あるのね。大切な人を失う悲しさを味わったことのない私がどうこう言える話じゃないから、深く介入しない方が良いよね。

 既視感の湧く指輪だけど、何処で見たんだろう。

 

 山を越え森を抜け……いや空を飛んでいるだけなんだけどね。何はともあれバハルス帝国に到着した。

 

「あそこです、そこの中庭に降りて下さい」

 

「え、門から入らないの?」

 

「陛下、我々は客人ではありません。交渉をするために来たのです。力の差を見せつけてやりましょう」

 

 

 

 

 

 

「なんだ、外が騒がしいな。エルフの女王が到着したのか?」

 

「いえ、それにしては異様に騒がしいですね」

 

 中庭で警備を固めていた衛兵達から声が聞こえてきたのだ。執務室から中庭まで距離が離れているにも関わらず、悲鳴に近い叫び声が聞こえると言うことは相当切羽詰まった事態と言うことだ。

 

「ド、ドラゴンだ! ドラゴンが中庭に降りてきたぞ!」

 

「こうなりゃ一か八か! 剣で戦ってやる!」

 

「バカ野郎! この前の二の舞になりたいのか!」

 

「ひとまず待機だ! 距離を取って陣形を維持しろ!」

 

 ドラゴンから一人のエルフが舞い降りた。何という美しさだ。張り詰められた一触即発な空気が嘘のように感じられる。

 

 

「陛下、ドラゴンです! ドラゴンが中庭に降りてきました!」

 

「騎手はエルフか……この前のダークエルフと言い、奴らはドラゴンで城の中庭を陣どる文化でもあるのか」

 

 ジルクニフは頭を悩ませた。魔導王の側近と同じ対応を取るとは……前回とは別種のドラゴンだが、同じ系列だと厄介事に成りかねない。

 同等の戦力なら対魔導王としてぶつける手があるが、万が一関係者であれば王国の民を殺した魔法の矛先が帝国に振る舞われるのはかも知れない。

 もし魔導王が私の行動を見抜いた上で泳がせているのなら、喜んで泳いで見せよう。岸まで辿り着いた時が魔導王の死ぬときだ。

 

「エルフの女王が魔導王と繋がっているのか知る必要があるな」

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