あの時のお礼を言って、足りない実力を埋めるために稽古をつけてもらう。最初はそんな気持ちでヘルエスに会うつもりだったが……いざその時に顔を出せば、三角巾とエプロンを身に包んだ彼女の姿がそこにあるわけで。何時もとは違った立ち振る舞いに驚きつつも、料理器具を片手に佇む彼女は何時もと変わらない優しさと凛々しさがあった。
不思議な気持ちだった。憧憬を抱いてから、一面しか見えていなかった彼女の本質は関わりをもつことで二面に変わり、やがて多角的に見えるようになる。平面だったものが立体となって、あらゆる角度からその存在を証明し始める。
センは幸せだった。お茶会を通じて、ヘルエスのことを更に深く知れたような気がして。憧れの人物が抱く理想を、理念を、ひしと心に刻み込むことが出来たような気がした。
――けれどもそれは、彼女が純粋無垢であるが故の「気のせい」で。
実のところセンはヘルエスの本当の「心の在り方」を捉え切れていなかった。
柔和な笑みの下に隠された心情は思っているよりも簡単な動きをしておらず、滑らかに出てくる言葉に相反する想いは、人知れず彼女の様相を曇らせている。
疑うことを、怪しむことを知らない無垢な性格が災いしてか、センはヘルエスの本当の「心の痛み」を知ることが出来なかったのである。その痛みがセンにも関わっていると知った時、果たして彼女はどんな顔をするだろうか。
順風満帆に何事もなく物事が進んでいくように見えて、現実はかくもひた隠しのまま。
あと一歩の想いが触れ合うことなく、お茶会は終わりを迎えた。
私用があるからと言って先に席を立ったセルエルは「片づけをお任せして申し訳ありません」と頭を下げ、その場を後にした。その背中を見送りながら、二人はキッチンに残された洗い物を片付け始める。
「ヘルエスさん、今日はありがとうございました。紅茶とお菓子、美味しかったです」
「いえいえ。こちらこそ準備とお手伝い、有り難う御座いました。また次に行う時は、今度はお客人として御持て成ししたいところですね」
「そ、そんな……悪いですよ。お手伝いがあるならまたやりますから。私に出来ることがあるなら言ってください。……が、がんばりますよっ」
そうグッと意気込むセンの目は真紅に光るヘルエスの瞳を捉えていて、控えめに感じる語りではあれどもその想いは本物であることが直ぐに分かる。
全てを見透かされているような真っ直ぐな視線がくすぐったくて、けれどその思いが少し自分を後ろめたい気持ちにさせていることにヘルエスは気づく。
そんな自分の思いを知られたくない故に、彼女は困ったように相好を崩した。
仕方ありませんねと言ってタオルで手を拭き、彼女の髪を指でくすぐると「ふにゃあっ」と猫のような声を上げてセンが驚いた。それでも撫でられることは嫌ではなかったようで、すぐさま口角を上げて綻ばせる。
しばらく灰色の髪をいじられるままだったセンだが、ふっと思い出すように
「あ、そうだ。ヘルエスさん。この後っておひまだったりしますか?」
「この後……ですか? 特に用事もありませんね」
団長と今後の方針について議会を開く予定はあったが、それは夜を迎えてからのことになる。それまでの時間は特に何かを決めてはいなかったので、読書に時間を割り振ろうかと考えていたのだが
「本当ですかっ。それなら……お招きしたいところがあるのですが」
「招きたいところ……? それは一体どこです?」
「ふふふ、それは来てみたらわかります。片づけが終わったら、一緒に向かいましょうっ。……えと、それでなんですが、あ……あのぅ」
「はい」
「き、気持ちいいんですけど、も、もう髪をなでるのはやめてもらえませんか~!」
「あら、これは失礼しました」
頬を朱色に染めてあうあう言いながら、されるがままになっていたセン。
猫をあやしているかのような気持ちで撫でていたのが原因か、いつの間にやら能動的に続けていたようだ。「お、お片付けの続きをやりますよっ」とセンに促されて手を目先の洗い物に向けて動かす。話題はそれてしまったが……しかし、一体どこに連れていくつもりなのだろう。
行く先の知らぬ疑問とわずかばかりの期待を胸に抱きながら、ヘルエスは朱色に頬を染めたセンをまじまじと眺めるのであった。
◇
爽やかな風が、大海を染み込ませたような碧空を駆ける。高くは淡青、低くには群青を描く空模様の中、今なお稼働して雲間を切り抜けていくグランサイファーの甲板部にヘルエスとセンは居た。
けれどもそこはただの甲板部ではなく、日陰と日陰の隙間から太陽光がちょうどよく差し込み、それはまるで、小さな光の結晶を空から募らせているような――そんな神聖な雰囲気を漂わせていた。
涼し気に揺らぐヘルエスの銀髪が、その陽光の反射で美麗に煌いて眩しく映る。通り過ぎていく風に三つ編みを躍らせながら、ヘルエスはセンに問いかけた。
「……ここは」
「ふふ、どうですか? ここは私と団長さん以外誰も知らない場所なんですよー」
得意げに胸を張って、センは微笑みを見せる。甲板はそこそこに広く、日の当たる場所も少なくはない。けれども、彼女が言う「団長と自分しか知らない場所」は、確かに日の当たるだけ、という場所ではなかった。頬や肌に伝わる優しい風は心地よく、戦闘続きで疲れ果てた心身に緩やかな癒しを感じることができ、加えて他の場所よりもグランサイファーの稼働音が小さく聞こえ、小さく振動する甲板はまるで揺りかごのような安息感を与えている。自然が生み出したリラクゼーションにヘルエスは小さく感嘆の声を上げた。
「なるほど。しかし……グランサイファーにもこのような場所があったのですね。驚きです」
「えへへ。それじゃヘルエスさん、一緒に日向ぼっこしましょうか」
そういってヘルエスの手を添えて、センはその場にすとんと座った。同じようにヘルエスも腰を下ろすが――少しだけ躊躇う自分もそこにはいて。日向ぼっこ、か……幼少の頃はセルエルと一緒に勉学と鍛錬の暇をぬって休息を取っていたことはあったが、こうも気の緩みが生じやすいところで睡眠に耽るのは少々、いやかなり隙を見せてしまうのではないだろうか。
そんな風に気難しい顔で思慮に没頭していた彼女であったが――幸せそうにくつろぐセンの様子を見てそんな堅苦しい感情はどこ吹く風のように去っていった。
しかし――唐突に昔のことを思い出してしまったせいか。暗く淀んだ感情の一端が様相に現れていたことにヘルエスは気づかなかったようで。その様子を察したセンが不安な物言いで訊ねてきた。
「……ヘルエスさん、どうかしたんですか?」
「……あ、えっ。はい、なんでしょう? 私が、何か」
「えっと、なんだか少し難しいような、悲しいような、そんな顔をしていたような気がして。私の勘違いだったらごめんなさい……ヘルエスさん、私といてもつまらないですか?」
そう訊く彼女の瞳は不安に揺らいでいる。もしかしたら、気分を害してしまったのかもしれない。来たくないのに、自分のわがままで連れまわしてしまったのかもしれない。そんなマイナスな感情が心の中でぐるぐると渦巻いているのがはっきりとセンの相貌から描き出されている。
……これ以上は、隠し通すのも無理なのかもしれない。
そう観念したヘルエスは、小さくため息をつくと、センに向けて凛とした声で言った。真っ直ぐではあれども――言葉の端々に憂いをにじませたような、そんな声色で。
「そうではありません。ただ……言いようのない不安と、自分の至らなさを痛感しているだけです」
「不安と、自分の……至らなさ、ですか?」
「ええ、実は少し過去を思い出してしまいまして。私がこの騎空団に加入するずっと前のことです。……今はこの騎空団に加入していますが、それよりも前――私がアイルスト王国の元王女だったということは、あなたもご存じですよね」
ヘルエスは憂う瞳で彼女を見据え、センもまた真剣な姿勢でその話に耳を傾ける。
「私の国は、真龍ディアドラ様の加護によって安寧を保たれていました。しかし我が父王の愚策により、討伐に出向いた騎士によって、ディアドラ様は器を無くし、加護を失った我が国は瞬く間に魔物たちに滅ぼされてしまいました。
その時私は他国への遠征に出向いており、一報を聞いて急いで帰国した時には――荒れ果て、変わり果てた故郷がそこにありました。私の愛した民が魔物たちに虐げられ、事切れたままでいる様相は――今でもはっきりと覚えています」
平穏そのものであったアイルスト王国は、真龍ディアドラの加護を失ったことにより崩壊の一途をたどった。星の民との協定は長い時の中で忘却へと消え去り、王子と王女の采配に嫉妬した王は、王たる威厳を取り戻すためにディアドラ討伐という愚策を弄した。結果的にそれは民を脅かす災厄となって国のあるべき姿を失ってしまう。
誰もが嘆き、悲しみ、得られることのない結末を生んだアイルスト王国は現在、王制を撤廃し新生アイルスト王国として発展し、かつてのような賑わしい日々を取り戻そうとしている。
過去の栄華と誇りを取り戻さんがために、民たちは今を生きるために強く国を変えようと躍起になっている。
けれど――王が愚を犯した原因が自分にもあることに気付いて、それが悔恨となってヘルエスの心を蝕んでいることも事実だった。あの時、王の世迷いにいち早く気づき、止めることが出来ていれば。自分が少しでも王の異変に気付いていれば――今とは違う、また別の結末を迎えていたのかもしれなかったかもしれない。
「その時の光景を思い返す度に私は思うのです。人とは、こうも愚かで弱い生き物であるのかと。過ちに気付くことも、止めることも出来なかった己の無力さに辟易し、そして自分の浅はかさに絶望して……時には嫉妬すら抱く」
そして、グランたちがアイルストに訪れ、真龍ディアドラの儀式に協力してくれたおかげでディアドラは器を取り戻して復活した。現在でもスカーサハと名乗り城下町に顔を見せにいくところも多々目撃されており、それはアイルストに再びの平穏が訪れたという紛れもない事実だった。
新しい形に生まれ変わっていく故郷に安堵し、王族の権威を撤廃し、国の行く先を民意に委ねるべきだと決意したヘルエスは、変わりゆく故郷のため、そして空の世界を見るためにグランの団に加入した。
団に加入し、それから幾許か過ぎた頃――続々と加入していく団員たちと親睦を交わし、そして――今回のティアマト・マグナ討伐戦に参加したセンとも出会った。他の者に比べて年相応で戦闘経験が浅いはずであろう彼女だが、その潜在能力の高さには底知れぬものを感じていた。感じていたからこそ――ヘルエスはどうしようもない焦燥に駆られてもいた。
「センさん。あなたは強い。強いからこそ……私は不安に思うのです。ティアマト・マグナで共に戦った時のことを覚えていますか? あなたが放った一撃は強大な星晶獣に傷を負わせ、それが起点となって勝利を得ることが出来ました。その洗練された動きに、戦闘中であるにも関わらず私は――烏滸がましくも嫉妬の念を抱きました。
極めて高水準な戦闘技術を持つ貴女に、私はいつからか不安と羨望を抱くようにもなりました。あなたの持つその強さが羨ましいと同時に、あなたが持つその力は、一体どこからくるものなのか。私はそれを知りたい。それを見極めたいのです」
――強すぎる力は、道を違えば暴走し畏怖を招く。
彼女の放つ一撃はかくも見事に映えて、迷いのない爪撃は純粋なる力となって現れている。けれどその純粋さは裏を返せば黒に染まりやすくもあり、一歩踏みしめる道を誤るだけで暗闇一色に染まり切るであろう程の脆さも兼ね揃えていた。
グランとそう変わらない歳とはいえ、彼女はまだ空の世界を知らない。
そして知らなすぎるが故に、その手に宿る力がどれほどのものか、それを理解しているのだろうか。ヘルエスはそれが心配だった。かつての王とはまた境遇が違えども、同じような過ちを、彼女もまたしてしまうのではないのか、と――。
しかし、そんなヘルエスの心配をよそに、しばらく黙っていたセンはパッと顔を挙げて――静かにこう語った。
「……おそらくですけど、私の力はヘルエスさんが持つそれと同じだと思います。誰かを護りたい、その感情が私を動かしているんです。……私は、山奥の村でみんなを助けるために力を付けました。それは今も変わらない。誰かを護るために、この力があると思っています」
誰かを護るため。そのために自分の力をふるう。
そう強調したセンの口々からあふれ出す言葉に虚偽はなく。
初めて明かす心のうちに、ヘルエスはしっかりと彼女の言葉に耳を傾けた。
「空の世界を見てみたいという私の我が儘を聞いてくれた村のみんなと、それを受け入れてくれた団長さんたちがいたから、私は強くなれるんだと思います。雲の上に広がる世界を知って、そして私が知らないことをたくさん経験して――ここでヘルエスさんと出会いました。
……私は、はっきり言って強くないです。団長さんが、ヘルエスさんが、そして騎空団のみなさんが傍にいてくれるから、全力を出すことが出来るのです。信じているから、自分の力を出すことが出来るんです。
ティアマト・マグナ戦では、それがよくわかりました。諦めという形でその身を投げ出した私でしたが――団長さんが私に叱ってくれなかったら、また同じ過ちを犯すところだったと思います」
たどたどしく語るセンではあるが、仲間への信頼を失っていないその想いは、しっかりとヘルエスにも伝わっていた。この子は、しっかり先を見ている。そして犯した過ちを自分なりに反省して、次に活かすように努めている。その双眸はただの碧空ではない――遠く彼方に広がる世界をしっかり見据えていた。
そんな彼女は、朱色に頬を染めながら言葉を紡いでいく。
「私は、団長さんと同じくらい、ヘルエスさんが大好きです。優しくって、格好良くって、頼りがいがあって……だから、そんな顔はしないでください。私は自分の力を見誤ることはありませんし、たとえ私が道を外れたとしても――」
ぽふ、とヘルエスの肩にセンの頭が寄りかかる。
柔らかな灰色の長髪が触れ、その吐息が、その息遣いが近く感じられる。
えへへ、と相好を崩すセンは見上げるようにヘルエスを眺め、こう言った。
「団長さんや、みなさんがそばに居る。そばに居て、すぐに正しい道に戻してくれる。そう思えるから、そう信じているから――私は、私らしい力を使うことが出来るんです」
たとえ道すがら、人とは異なる道を、行ってはいけない道を歩もうとしていたら。
団に属する仲間が自分を助けてくれる。そう信じているから、本気を出して強敵に挑むことが出来るんだと。
結局のところ、ヘルエスの心配は杞憂に終わった。
彼女の強さの秘密を知りたい。その好奇心から生まれた謎はあまりにも自分の抱いているそれと似通っていて、それでいて変わらない素直な心を描いていた。
高貴によって隠されていた心の弱みは解消されたわけではないけれど。
それでも、その本心を知ってから気づいた。仲間への確かな信頼がそこにあったことに。強さの秘訣は、誰しもが抱く仲間たちへの信頼であったことに。
感慨深くその想いを脳内で反芻させた後――ヘルエスは首をかしげてこちらを眺めているセンに少しばかりのいたずら心が芽生えて、つい
「センさんは、団長殿のことが大好きなのですね」
「ふ、ふにゃっ!?」
そうからかってやりたくなった。
その反応は案の定というべきか。突然の話題にセンはしどろもどろになって口を開く。情緒不安定なのは誰が見てもわかるくらいだった。
「え、えと、えと、その、そのぅ……た、確かにグランさんのことは好きですけど、それは仲間でというか、信頼しているからというか……で、でも時折見る格好いいグランさんをじっと見ているとドキっとするというか、それでいて優しく頭を撫でてくれる時とかも胸がキュッとなったりして、こうやって傍で日向ぼっこしてると急にドキドキしだしたりして――って、ち、違う違うんです~っ! わ、忘れてくださいヘルエスさん~!」
最初は否定していたくせに、ふっと遠くを見て頬を染めたかと思えば、今度は耳をピコピコ動かして真っ赤になって慌てたり。グランのことを問いただしただけでこうまで慌てるあたり、相当な熱を持っていることがよく分かる。
団長も罪作りな方ですね。そう思いながらも「うううぅ……」と猫のように縮こまって真っ赤な顔を隠しているセンに微笑みを浮かべた。そんな時だ。上目遣いに空の景色を眺めていたセンが「何か」に気付いたのは。
「……あっ、ヘルエスさん。みてください、あれっ!」
そう彼女が指さす先は、七色に弧を描く線であった。
雨上がりなどでよく見られる光景であったが、新しい空域に入ったせいだろうか。
代り映えのない快晴に見られるその光たちは、はっきりと形を描いて彼女たちの眼房に映りこんでくる。
「これは――虹、ですね」
「ですね! わぁー、綺麗です~!」
子供のようにはしゃぐセンを尻目に、ヘルエスもまた童心に振り返るが如く、心をほんの少しだけ躍らせていた。たかが虹、されど虹。幾度となく子供の頃にみたはずであろう物なのに、こんなに無邪気な気持ちで眺めることが出来るのは何故なのだろう。そう思い込んで――それが、隣にいる彼女の影響なのだとすぐに気が付いた。
笑顔を絶やさず、楽しさを共有する。そんな一面があるからヘルエスもセンの気持ちと同調し、昔のような気持ちでいられたのかもしれない。
穏やかな気持ちのまま、ヘルエスとセンはいつまでも七色の流星を描く虹を眺めた。晴天続く碧空の中、グランサイファーはイスタルシアを目指して舵を切る。仲間たちの確かな絆を乗せたまま――騎空艇は今日も翼を羽ばたかせて空を駆け続けるのであった。
◆
「いつまで経っても戻ってこないと思ったら……やれやれ。こんなところにいるとは思いませんでしたよ」
――あれから。団長に言われるがままヘルエスとセンを探しに来たセルエルは、二人を探してあてもなく騎空艇内を探し回っていた。一向に見つからない二人に首をかしげるセルエルだったが、甲板で二人で見かけたという情報を頼りにこちらまで足を運んだところで――見つけた。寄り添うようにして寝息を立てている二人の姿がそこにあった。
「……くぅ……くぅ」
「……すぅ」
「……全く。人の気持ちも知らずに気持ちよく眠っていますね。こんなところで寝ていたら風邪をひきますよ」
ぶつくさと文句を述べるセルエル。起こそうと思い、気持ちよく寝ているヘルエスの肩に触れようとしたところで――ふっとその手を止めた。
……こんな無防備な姉の姿は久しぶりに見た気がする。こんなにも安堵に満ちて、心からの安息を楽しんでいるような姿など、かれこれ何年も見ていなかった気がして、セルエルは――
「……ですがまあ、ここで起こすのも無粋と言いますか。片づけを任せたばかりに、こんな役回りが来るとは思ってもいませんでしたよ」
伸ばしていた手を戻し、くるりと踵を返した。
見なかったことにする、というわけではない。ちゃんと見つかったことをグランに報告して、然るべき対応を取るまでだ。いつまでも幸せそうに寝ている二人を横目で眺めながら
「さて……新品の毛布は、どこにありましたか。
早速、団長殿に聞いてみるとしましょうかね」
ほんの少しだけ楽し気に、そうつぶやくのであった。
高貴な好奇心‐fin‐
読了お疲れ様でした。これにて「高貴な好奇心」完結です。
次回作も引き続き頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。