-閃光が憧れし漆黒の剣士・前編-
アスナの思考___
約一年。これが、現在の最前線第49層までくるのにかかった時間だ。「ならクリアまで2年くらいかかるのか〜」という考え方もできるが、私はそうは思わない。理由を挙げるとするのならまず、単純に考えてもボスやモンスターはだんだんと強くなっていくのだ。逆にレベルを上げるのに必要な経験値は多くなるため、今のペースで攻略とレベリングを続けられるかと聞かれれば、答えは「NO」になるだろう。
そしてもう一つは、クオーターボスの存在だ。第25,50,75,の3つと最後の層第100層。これらのフロアは通常のモンスターも強力だが、何より苦戦するのはボスだ。攻略済みの25層でも大きな被害を出したらしく、次の50層は目前となっている。この層で大きすぎる被害を出しでもしたら、戦意喪失するプレイヤーも出てくるはずだ。前回の25層の場合は、団長という英雄的存在の誕生により立て直したが今回も現れるかと聞かれれば、その答えも「NO」に限りなく近い。
しかし、新たな戦力が必要とされている原因はもうひとつあり、それも団長に関わっている。団長のユニークスキル「神聖剣」の存在だ。このスキルは攻防一体でバランスのとれたスキルとされているが、それはあくまで対プレイヤーの時や、対通常モンスターの時の話である。例外はボス戦の時で、その場合圧倒的な防御が主になるだろう。つまり何が言いたいのかというと、攻撃と防御のバランス。いや、要約すれば「神聖剣」と釣り合う攻撃力が無い事が、現在の攻略組が抱えている最大の問題だと私は思っている。
その攻撃力の存在にあてがあるかないかと聞かれればそれは「YES」だが、問題はそのプレイヤーだ。そのプレイヤーは25層攻略で姿を消している。
攻略組がこれからどう変わっていくかはわからない。しかし、この第49.50層は、きっと「転機」の層になるだろう。
リズベット武具店にて___
私はリズベット。第49層のリンダース(つまり今の最前線)に新しく店を構えている鍛冶士。今日も時間どうりに看板を<close>から<open>に変え、お客さんを待っていると、最近なかなか来なかった親友が一番乗りにやってきた。
「やっほーリズ〜!」
血盟騎士団副団長を務める「アスナ」だ。彼女はその肩書きと閃光の異名がつけられるほどの剣技を持ち、さらには超がつく美少女とくるものだから現在のプレイヤー人気投票でもしたら、一位間違いナシといい切れるくらいの有名人だ。私はその彼女の第1層からの親友で、専属のスミスにしてもらっているのだからこれほど名誉なことはない。
(しっかし最近こなくなったと思ったら明るくなって帰ってくるって....ちょっとカマをかけてみようかな?)
そんな少し意地悪なことを考えながら、いきなり爆弾を落としてみる。
「久しぶりねアスナ。前来た時よりすごい明るくなってるけど....好きな人でもできた?」
「えっ!////えっと....その...あの...//」
(まさかの図星だった!?というかまさかあの閃光様に男なんてね〜どんなやつかすごく気になるわ!)
さあ、こうなってしまうともうアスナは逃げられない。せめて少しのポーカーフェイスで「あるわけないでしょ〜」みたいに言っておけばよかったかもしれないが、後戻りはできない。
第1回リズベットタイムの始まりだ〜
「ねえねえ!その人どんな人なの?教えて!教えて!」
「ち、ちがうよ// ただ昔助けてもらった人に会っただけだよ//」
「へぇ〜アスナ姫は助けてくれた勇者に恋しちゃったのか〜」
「だ、だ、だから違うって〜//」
「あれ、そういえば第1層でアスナが助けられたことあったよね。そっか〜あの時の彼か〜あの時フードかぶってて顔見れなかったんだけどどんた人?ねえねえ!」
「ち、違うって言ってるでしょ//」
「物語王道の恋だけどここゲームだしね(笑)「攻略の鬼も乙女だった!」みたいな題名で情報屋の鼠に売ったら大スクープだろうね〜」
「もうやめて.....///」
ふっふっふ...普段弄れない分めちゃくちゃいじってやったぜ☆
あの閃光様が茹蛸のように真っ赤になってるなんてレアだねーしっかりとこの目に焼き付けないとね。
閃光様回復中__
「リズ〜!」
「ごめんごめん」
私は今絶賛怒られ中だ。もちろん理由は弄った事だね〜 まあとりあえず話を切り替えよう。
「ところで今日はどうしたの?」
「あ、そういえば剣の修理に来たんだった。これよろしくね」
そう言って渡されたのは彼女の愛剣ランベントライト。この剣は、現時点での私の最高傑作で、アスナのメイン武器だ。耐久値がいつもなら半分くらいで持ってくるが、今回は8割削れている状態だった。
「あんたねぇ..耐久値が結構ギリギリよ」
「あはは...最近はちょっと対人とかでも練習させてもらってるから迷宮区で壊れることはないんだけど..」
「そういえば助けてもらった人にあったって言ってたわね」
「そうなの。その人に剣を教えてもらってるんだけど」
「え!?アスナが教えてもらってるの?その人どんな化け物プレイヤーなのよ」
「以外と団長にも勝っちゃいそうな人だよ」
絶句...それが今の私に当てはまる言葉だろう。まさかあの人外と同レベルの奴がまだいたとは....
「よいしょっと..はい!これで修理完了よ」
「ありがとうリズ!仕事頑張ってね」
「あなたも頑張りなさいよ」
そんなやり取りをした後、彼女は店を出て行った。
(アスナはまだ強くなろうと頑張ってるけど、前みたいな危うい感じは消えててよかった)
リズベットは安心した。前のアスナは鬼のようなハードスケジュールでいつも張り詰めていたが、もうあまり心配がなさそうだったから。しかし、それと同時に気になった
(彼女はどうしてあんなに変わったのだろうか...)
リズのその問いの答えとなる出来事は、アスナがリズベットのもとに訪れた数日前に遡る.....
数日前___
10時25分。それは、今回の第49層フィールドボス攻略戦の集合時間だ。現在この攻略に参加する24名(4パーティー)全員が北の荒れ地に集まっている。この階層はとても珍しい造りで、街中は水車やレンガの家ですごく綺麗な作りになっているのに、一度外に出ればそこは荒地になっているのだから不思議なところだ。偵察隊によればボスはモグラ型の怪物で、攻撃力も耐久値も大したことがなく楽勝だが、ランダムに発動される奇襲攻撃を食らうと一気に体力を削られるらしい。
「それではこれよりフィールドボス攻略戦を始めます」
今回の全体指揮を担当するアスナが声を上げる。
「作戦開始!」
その合図により計画されていたパーティーが前に出る。
この攻略戦の構成は簡単だ。タンク隊一パーティーが攻撃を防ぎ、すかさず2パーティーあるダメージディーラーが攻撃する。敵が攻撃するならタンクとスイッチし、その様子がなければもう一つのアタッカーにスイッチする。最後の1パーティーは怪我の回復や、投擲などの援護パーティーだ。
攻略は順調に進んだ。途中一度奇襲攻撃があったが、うまくやり過ごすことができ、ボスのHPはもうレッドゾーンに入ろうとしていた。そしてレッドゾーンに入れば大抵ボスは暴れ出す。それに合わせてすかさず指示を出す。
「一時後退!」
メンバーが後ろに下がると予想どうりボスが暴れだした。激しく振るわれる爪によって砂煙が立ち、その中から飛んでくる石に当たるとダメージを受けたが特に問題はなかった。
でも、何かがおかしい気がした。第六感と言っては少しおかしいが、不安よりも恐怖に近いそれをアスナは感じた。ボスの暴走をやり過ごして一斉攻撃すればもう終わるのに、その感覚は終わらない。
(何かがおかしい?何がおかしい?)
嫌な予感が膨らむ。もしものことを考えボスをよく観察してみる。ボスの姿を隠している砂埃越しに、よく目を凝らして観察する。今のボスは.....奇襲攻撃のモーションに入っていた!?
「き、奇襲攻撃回避!」
慌てて声を出す。しかし、そのタイミングが少し遅かった。
パリーンッ!
アスナは理解したくなかった。その音の正体が、プレイヤーが消滅する時のエフェクトと同時に発せられる効果音だということを。
(う、そ...)
直後もう一つ巨大なエフェクトと効果音によりボスが倒されたことを知らされるが、アスナの耳には届かなかった。
一人死んだ。その5文字がアスナを絶望に叩き落とすのは初めてではなかった。それでもクオーター直前で、しかもフィールドボスで犠牲を出したという事実は、16歳の少女には重すぎた。
アスナは攻略が終わると、フラフラとよろめくようにどこかへ消えてしまった.....
はい、楽しんでいただけたでしょうか?ちょっと微妙なところでのENDになってしまいましたが、続きを待っていただけると幸いです。というかキリトさん出せなかった.....本格的に出番が始まるのは次か次の次くらいなので、少々お待ちを。ちなみにタグにもありますが、不定期更新です。