遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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第百二十二話 Kamui from sin

◐月下-南側大通り / 午前8時12分

 

 

「琴乃さん!」

 

 

グラスに勝利したのは渡邉。トドメを刺したのも無論渡邉だ

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)として、日本を背負った決闘者(デュエリスト)として成すべきことを成しとげ、貢献したのは間違いないはずだが、どうしてかそうは思えなかった

 

決闘撃痛(デュエルショック)に苦しんでいるはずの、先にグラスに敗北し倒れていたはずの南が聞いたことの無い名前を叫びながら渡邉とグラスの間に入ってきたからだ

 

 

「琴乃さん...琴乃さん!どうして...なの...」

 

「ごめんなさいね...ユイ」

 

 

自分は一体何を果たしたのだろうか

あのビルでの一件。一次日食の時から彼は彼なりに正しい事を、成すべきことを成してきたつもりだった

 

インターン参加希望者を守るため、逃がすため

和を乱す敵を倒すため、退けるため

今までの日常や当たり前を取り戻すため

 

聖帝4年の決闘者(デュエリスト)としてでは無く、人並みに抱く正義感が彼を今まで動かしてきていた

 

 

「教えてよ...どうしてこんな事に.....っ!」

 

「...それは」

 

 

今だってそうだ

精霊の導きで慎也を救った後は、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)への加勢。敗れた闘叶や暁星の生徒の仇のつもりも少しあった

 

だが何故か南はグラスから離れようとしない

倒すべき相手を見誤ったか、そう錯覚する程に彼女達は親密な関係にあるように見えた

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

◐月下-南側大通り / 午前8時14分

慎也side

 

 

「はぁ...はぁ.....カムイっ!」

 

「見事...だねっ、村上...」

 

 

決着はついた

本当に長い寄り道があったが、慎也は等々目的の1つであるカムイへのリベンジを果たした

 

しかし実際にディスクが決闘(デュエル)終了のブザーを響かせるその瞬間まで疑いが晴れずにいた

カムイの事だ、トドメの一瞬に何か成していたのでは無いかと不安が過って仕方なかった

 

だが、それも杞憂

慎也は正真正銘の勝利を掴んだのだ

 

 

「...詩織ちゃんは何処だ!」

 

「ふふっ.....ふはっ!」

 

「おい...っ!」

 

 

地に伏したままのカムイに追い討ちをかけるかのように慎也は胸元を掴み詰め寄った

その瞳には最早怒り以外の感情は存在しなく、目的を見失うか不安な程にカムイに刺さっている

 

しかしカムイは不吉に笑ったまま

それがまた慎也の神経を逆撫でしたらしく、言葉よりも先に右腕を上げ、振り下ろしていた

 

 

「そこまでだ」

 

「っ!」

 

 

いつの間にか側に居た渡邉が慎也の拳とカムイの間に割って入った

言葉にならない声で憤怒の限りを尽くす慎也を無理やり引き離すと、渡邉もそれ以上の力で慎也を制す

 

ここまでの怒りを見た事がなかった渡邉は、ただ黙って抑える事しか出来なかった

 

 

「っ、おい!離せよ、渡邉さん!」

 

「落ち着け、そいつを殴ったら解決するのか?」

 

「いいから...離してくれよ!」

 

 

慎也は荒れ、カムイは笑うだけ

そして自らが相手をしたグラスは静かに倒れ、それを庇うかのように南が寄り添っている

 

溜息が出るような状況だった

南とグラスの関係とはうって変わり、こちらは険悪そのものだった

 

一体誰が味方で敵なのか

何をするべきなのか渡邉はさ迷っていた

 

 

「はぁ...はぁっ.....村上」

 

「なんだよ...さっさと.....っ!」

 

 

カムイは突然とある物を慎也に向かって投げつけた

倒れたままのため上手く投げられなかったのか、慎也には届かず、渡邉が代わりに掴んだ

 

渡邉が手渡しすると、呆気に取られた慎也はひとまず受け取りそれの正体を検めた

 

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の通信端末と同じぐらいのサイズの機械

小さなボタンやスイッチのある下部と、画面のある上部とで別れており、画面の上で小さな点滅がみうけられる

 

一次日食のあったあのビルでも見たことがあった

慎也が2人組の黒服から奪った発振器を辿る装置だ

 

 

「...この反応が詩織ちゃんなのか?」

 

「厳密には...違うけど希望には会えるさ...ゲホッ」

 

「...」

 

 

反応はここから少し離れている

方向を確認すると中央にあることがわかる

 

本部だ

案の定失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)本部内にいる

 

 

「.....行けばいいさ、ただ」

 

 

カムイは慎也の行く手を妨げない

最早そんな事など出来ないほどに消耗しているのもあるが、敗北を経たからか意思も感じられない

 

ただ1つ

ただ1つ彼自身と失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)の話を聞いてもらうべく口を開いた

 

 

「行けばいい...恋人を助ける目的を果たせばいい。だけど僕の話を聞いて欲しい」

 

「...」

 

 

何も言葉を残さず、慎也はその場を立ち去ろうと歩を進め始めた

これ以上憎き彼を見たくもないし、声も聞きたくもない

 

何よりも目的がもうすぐの場所にあるのだ

先を急がない理由が無かった

慎也があまりにも自然に歩き始めたため、敵である灰被(シンデレラ)も呆気に取られ止めるに走るのが遅れてしまう程だった

 

 

「ま、待ってください!」

「カムイ様のお言葉にお耳を...っ!」

 

「...」

 

 

丁寧な口調で慎也に静止を願うが、その慎也は相変わらず無言で睨むばかり

 

そこにカムイがもう一言付け加えた

慎也が思わず足を止めるような内容を

 

 

「...ボスの、いや楠知樹」

 

「なんだと」

 

「どうしてこんな事をしたのか...知りたいんだろ?」

 

「...」

 

 

答えはしなかったが、もう一度踵を返すとカムイを見下ろす形をとった

詩織は絶対に助け出す

その前に頭に入れておきたい情報が目の前に出現したため歩は止めざるを得なかった

 

そのまま沈黙が作られると、カムイは何とか体を起こし苦しそうに語り始めた

 

 

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)結成の...いや、まずは僕自身の昔話かな...」

 

 

ーーー

ーー

 

 

「もう外して構わない」

 

「はい」

「...」

 

 

2人の男女が目隠しを外した

長い間揺られていたと思っていたのは随分大きなトラックだった事は今知った

 

日本を経つ前から視界を奪われていたため、ここが何処なのかどんな経路を辿ってきたのか一切分からない

 

強いて言うのならば月下と呼ばれていた事だけ知っている。S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)がどこまで秘密裏に行いたいか伺えるが、同じように日本から月下にやってきた人間も同じように不安を隠さないでいた

 

 

菅田和衣(かんだかずい)皇禅七海(おうぜななみ)

 

「あ、はい」

「はい...」

 

 

2人の男女の名前をスーツ姿の若い男が呼んだ

カムイとその隣の女性が返事する

 

今でこそカムイと呼ばれるが、昔カムイには菅田和衣という日本人らしい名前があった

当たり前の事だ

 

 

「纏めて渡しておく。後で自室の整理の際に中身を確認する事」

 

「分かりました」

 

 

渡されたのはそこそこに厚みのある封筒

表紙には七海と和衣それぞれの名前が記されている

 

この場で中身を検める事も可能ではあったが、重要な書類である事は一目で感じとれた

ここは言われた通り然るべき場所と時を選ぶ必要があると、和衣は七海の分も手に取り指示に従い移動を経た

 

 

 

*

 

 

 

「今日は特に予定は無い。自室を整え次第好きにしていてくれ」

 

「分かりました」

 

 

スーツの男がその場から去ると、広くも狭くも無いその部屋には和衣と七海だけが残った

しかし、やっと恋人と2人っきりに慣れたというのに、不思議と嫌な沈黙が生まれていた

 

旅行用のキャリーケースやボストンバッグを一先ず床に置くと、その沈黙を破るべく和衣は備え付けのベッドに仰向けで飛び込んだ

 

 

「おぉっ!中々寝心地悪くないねっ!」

 

「そう...?」

 

「君もおいでよっ、ずっと狭いトラックに揺られて疲れたでしょ?」

 

「...そうね」

 

 

隣に空いたスペースを叩くと七海を誘う

断る理由も無い彼女もごく自然と和衣の元へ歩むが、もう一度和衣に呼ばれるまで自ら座る事は無かった

 

やっと肩を並べ落ち着いて話が出来るようになったが、和衣が放つ言葉の数々は虚空に霞んでばかりだった

何度も短い沈黙が訪れ、ついには和衣も口を閉ざしてしまうほど

 

 

「...」

 

「...」

 

 

.....どれぐらいそうしていたのだろうか

お互いの呼吸の音まで聞こえてくるような沈黙に嫌気を覚え始めた頃、それを七海が破った

 

消え入るような声で呟いたのは、和衣へ抱いていた謝罪の意だった

 

 

「和衣さん...ごめんなさい」

 

「えっ、何の事っ?」

 

 

とぼけるような口調だが、和衣も謝罪が意味する言葉の裏を瞬時に理解出来ていた

月下に来た事について

 

日本有力の暴力団”七皇会”から逃げるように月下にやってきた彼女達だが、和衣も七海も同じ事を思っていた

 

 

日本で当たり前だった生活を捨てざるを得なくなり、月下に行かなくてはならない所まで巻き込んでしまった、と。

七海は自らの家を

和衣は何も出来ない自分自身を恨み、お互い同時に申し訳無い気持ちで溢れかえりそうになっていた

 

 

「私のせいで...貴方まで...」

 

「...」

 

 

多くは語らず、いや語れずに断片的な言葉になってしまった

だが和衣は何を言わんとしているかすぐに理解し、同時にどんな言葉を返すべきかを模索していた

今にも泣き出しそうな七海の横顔は、和衣にとって見ていられるものでは無い

七海にとって和衣は、自分と一緒にいるばかりにプロランクも日々の生活の安寧も失ってしまった被害者に見えている

 

そんな関係の中、どう返せば正解なのだろうか

 

自らも同じだと伝えるか

駆け落ちを申し出たばかりに七海の当たり前を奪ってしまったと形容するか

それとも新しい人生が楽しみだと嘘と否定を返すか

 

 

「...」

 

 

出会ってまだ1年ほどしか経っていない関係だが、和衣にはそれらが正しい答えではないと分かっていた

七海を納得させ、自らも納得するのに答えは無く、ただ別の質問をぶつかる事だと

 

 

「七海は、僕と月下で新しい生活をするのが不安かい?」

 

「えっ...」

 

 

論点のすり替えとも言えるが、七海は和衣の質問から答えを汲み取っていた

 

「自分に後悔はない、君はどうだ」

 

言葉の裏からそんな意を感じた七海は、少し考える素振りを見せると、ゆっくりと答えた

 

 

「不安は...ある」

 

「そっか」

 

「でも...嫌じゃない!私っ!」

 

 

七海の言葉は遮られた

和衣の唇によって物理的に

 

最早この2人に言葉など要らないようにも思えるが、本当にそれで十分な様子だ

 

お互いの意志を再確認しただけで、彼らの月下生活初日は終えていた

 

 

 

*

 

 

「それでは改名の必要は無いとの事で」

 

 

その後の彼らはおおよそ順調と言えた

月下にて最も初めに行った手続きは改名だった

日本であまりいい思いがなかった者や、そもそもの正式な名を持たない者がいる月下において、改名や命名の必要を問うのが先決らしい

 

だが彼らはその手続きに時間をかけなかった

 

 

「皇禅七海のみの改名...いや、この場合は別の手続きだな。改名手続きは無し」

 

理由も明確かつ単純なもの

改名の必要がないのだからしなかっただけの話だ

 

しかし七海の名は変わった

菅田七海

2人が正式に籍を入れたのはそれから1週間後のことだった

 

 

「適正検査の結果、菅田和衣は...」

 

 

次に行ったのはペーパーテストだった

5つの絵から共通点、規則性を見出すなどパズルのようなものだったと和衣は記憶していた

 

それによる結果、2人は異なる職種が与えられた

やたらと小難しい名前の職だったが、いざやってみるとただの警備

誰にでも出来そうだと初めは思ったが、やりがいもあった

 

 

 

 

「おつかれさん」

 

 

無論給与も出る

日本で二人暮しするには少し心持たない額だが、月下ならば十分に思えた

娯楽に溢れた国ではなく、七海も働いていたためそういった面では苦労も心配も無い

 

そして

 

 

 

「菅田七海は1年間就業を禁ず」

 

「はい」

 

 

月下に来て4年と半年ほど経ったころ

2人の関係を大きく帰る出来事があった

 

子宝

恋人から妻に変わった七海は、気が付けば和衣との子供を授かったのだ

 

育児休暇とは少し異なるそれが与えられた七海だが、気づけば顔なじみとなっていた若いS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の男から和衣は今の仕事とは別途に新たな業務を与えられた

 

 

「家族を守ってやれ」

 

 

月下で築いた友人や知人、はたまたS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)関係者らから盛大に祝われたのを昨日の事のように覚えている

 

あの時が最も幸せな時だった

月下に来た事を、日本を発った事に一切後悔など無くなり、これからまた多くの幸福を掴んでいくのだ

その日の夜までは心の底からそう考えていた

 

 

2011年2月2日

月下に一台のトラックがやってきた

月下のものでは無いそれには、月下の人間では無い数名の黒服が乗っていた

 

すぐに月下にあるS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)本部に連絡が着くと、彼らは相対した

 

 

「我々はLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)というここから離れた場所にある国からやって参りました」

 

 

目的は会うこと

月下民だけでなく、王家やS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の管理者、日本のS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)関係者も知りえなかった国の存在に初めは対処に困惑していた

 

その後LL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)が月下の本部に足を踏み入れるまでさほど期間は空かなかった

友好的で共に発展を築きたいという願いを断る意味も無く、月下とLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)が同盟を結ぶのも時間の問題だと思われていた

 

LL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)が月下に与えた影響は大きい

決闘力(デュエルエナジ-)発展、またそれを利用した様々な設備へのエネルギー供給等月下どころか日本すら持ちえなかった技術が提供されていった

 

 

「月下はLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)と友好関係を築きたい」

 

 

これは月下に流れた国内放送の一部

普段ならばお目にかかれない月下王家の当主が国民に語り掛ける姿が放送されたのだが、月下の民にとっては今更とも言える内容だった

 

既にLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)は月下に貢献してくれている

初めこそ信用の無かったのだが、今では誰として疑う者などいない

 

それに加えて月下の王家

 

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の管理者快凪と、月下王家の当主がLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)に出向くと言った発表も、反感無く受け入れられた

 

 

 

2011年5月3日21時

その事件は起きた。

突如現れたLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)の部隊、ガルナファルナが奇襲をしかけたのだ

 

破壊と蹂躙

軍事的な設備や用意など無く、何よりも信用していた国の襲撃に月下は成すすべも無い

そして何よりも快凪の存在が大きかった

 

 

「今この瞬間から月下はS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の管理下では無くなる」

 

 

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)から、王家から快凪という一人の男へ支配権が移った日

月下の土地や民も、LL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)の技術援助も全て快凪の手に落ちた瞬間だった

全ては仕組まれていたのだ

 

 

 

*

 

2011年5月6日

快凪が真っ先に行ったのは日本にある本部への連絡

内容は概ね問題なし

 

隠蔽から始まった快凪の支配は順調だった

民の生活が直ぐには変わることは無く、業務内容に破壊された設備の修復が追加されたぐらい

民はまだ姿を見せない恐怖に怯え生きるだけだった

 

 

「俺に忠誠を尽くすか否か」

 

 

本来王家の人間のみが使用するはずの国内放送。快凪に支配権が移ってから初めて流れたのは、快凪を支持するか否かの問

無論多くの人間が反発した

 

友人や家族、恋人を奪われた人間もいる中、単純に許されるはずがないと怒りに任せデモ活動に至るまで

数百名が参加した大きな出来事だが、それはたった1時間で制圧された

 

半分以上が殺されたのだ

 

 

 

2013年7月5日

月下の支配者が快凪に移ってからも、月下は発展を続けていた

インフラの整備、施設の増設、決闘力(デュエルエナジ-)の技術発展もS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の想定以上に捗っている

 

 

これは日本から随時送られてくる人間や、LL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)の技術あってのものだが、それを知るのは快凪だけ

その他真実を知る人間達は極度の開発地域に飛ばされるか、幽閉。あるいはLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)に身を置くか、その命を奪われているからだっま

 

快凪に忠誠を誓い月下本土で今まで通り生きる者

灰国民

 

月下存続に必要な力を持ち、貴族として本土に残る者

白国民

 

そして厄介払いの如く開発地域に飛ばされる者

黒国民

 

誰もが反発の精神を濁し始めた頃、民はそれぞれ異なる地位に分けられた

 

下本土に残った人間は、快凪に忠誠を尽くしたか弾圧された者達のみ

快凪の思惑通り彼は支配者であり続けられたのだ

 

 

「なぁ、カムイ」

 

 

和衣、いやこの頃から彼はカムイと別の名前で呼ばれていた。

これは灰国民以下に個性を持つことを禁ずる快凪の政策の内の1つ、罰名(シンメイ)

月下に来る前の人生や月下での貢献を度外視し、ただ快凪に仕えないと言うだけの理由で彼らは個性(本名)を奪われた

 

それも完全なるアトランダムな命名

ただ他者と区別できればいいだけの飾りものと化している。

しかし律儀に守る必要も意味も無い

黒国民と化し本部から遠ざけられたカムイを罰名で呼ばなければならない理由は、記憶にあった

 

 

「なぁカムイ...お前まだ本名を思い出せないのか...?」

 

「...うん」

 

 

本名が思い出せない

ある日を境にカムイは和衣を忘れてしまい思い出せないままでいた

それ故に他者はカムイをカムイと呼ぶしか出来ない。

初めこそ誰もが戸惑いにあったが、1週間もする頃には自然とその名前を使いこなしていた

 

嫌気もさす

日本での過去を捨てここに来たとしても、彼は名前だけは捨てなかった。七海との過去を、そして和衣という名前に何か意味を見出すために残したはずのそれは、快凪の支配と判別のためだけのものに陥ったのだ

月下の過酷な労働環境も、質素な食事も刹那な休息よりも、ただ個性(本名)を奪われ傀儡の如く扱われるのがこの上ない屈辱だった

 

 

「辛いよな...お前の場合は奥さんも...」

 

「...」

 

 

カムイのいる地域に七海は居なかった

黒国民として遠方に飛ばされたカムイとは異なり、七海は辛うじて灰国民として月下本土周辺にのこっている

 

お互いが生きているという事だけしか知らない

何処で何をしているのかも分からないまま、別れの挨拶も出来ないまま彼らは離れ離れになっていた

 

 

とある日

明け方から始まった彼らの開発地区に本部から快凪派のS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の男が派遣された

 

その男に見覚えがあった

カムイがまだ和衣だった頃、2年前初めて月下の土を踏んだ時に出会った男性だった

右も左も分からない彼らを支え、七海との結婚時には祝福の言葉まで口にしていたあの男だ

 

彼は快凪についたのだ

心のどこかで味方だと錯覚していたのだろうか、酷く深い悲しみよりも、怒りが込み上げていた

今すぐにでも握りしめた拳を力任せにぶつけてやろうとも過ったが、あまりにも大きすぎた消失感がやる気を萎えさせた

 

 

「本日午前10時に日本からS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)2名が派遣される」

 

 

彼が口にした内容はこうだ

今も尚支配の隠蔽を続ける月下として、日本本部の視察を受け入れなければならないが現状を見せるわけにはいかない

 

故に一時的に労働内容を変更するとの事

要約すれば平和を演じろと言うことだ

快凪が黒国民らの支配を続けるために、黒国民達にも隠蔽を強いるという事

 

 

「詳細はこれに記されている。各々確認が終了次第、焼却処分すること」

 

 

それだけ言い残すとその男は消えた

本部を騙す労働時間なら休息も充分にあるだろう。今日だけは休める。どこか他人事のように思い、男から封筒を受け取ったカムイは中身を検めると、風向きが変わった

 

中には彼が言う通り一日のスケジュールが刻まれているが、それとは別にそれの倍以上の厚みがある資料が入っていた

 

 

【離反計画書】 

 

 

何度も読み返したそれは、快凪から支配権を奪う計画書で間違いなかった

表紙をめくるとまず一言綴られている

離反の目的では無く、何故月下が快凪の手に落ちたのかについて

 

 

「現王家の記憶はLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)により改竄されている」

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

2014年5月3日

快凪派であるはずのS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)から離反計画書を受け取ってから1年が経過していた

 

この1年で随分と開発は進んだのだが、相反してクーデターの準備は滞っていた

それはやはり快凪派のS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)を信用出来なかった事が大きい

 

1週間に一度のペースでカムイ達の元へやっては来るが、多く語らず離反に関しての書類を残して去るだけ

その度に高揚感よりも不安と疑心感が募り、具体的な行動に移せず言われた通り書類を燃やして捨ててしまうだけ

 

しかしとある日の書類が彼らの意識を変えさせた

内容は一言一句残さず覚えている

 

快凪に奪われた月下を取り戻す。簡潔にいえばそれに終わるのだが、嫌に現実的な手段が記されていた

 

それは月下を統べるメインコンピューターの存在が関係している

電気・ガス・水道そして決闘力(デュエルエナジ-)

それら全てを管理出来る唯一のシステムが月下本部にある。本来であれば月下王家の人間或いは快凪と日本本部の人間のみが干渉、運用可能な物。

現在快凪が手にしているそれを奪取すること基取り戻す事が彼らの最終目的らしい

メインコンピューターのある部屋までのルートも事細かくまとめられていた。あとは決行までの人材確保やその他の準備を進めるだけ

 

 

「...そろそろ答えを聞こう」

 

 

その次の日

予定が無かったにも関わらず現れたその男は、初めて離反に関して口を開いた

 

乗るか否か

元より命懸けでここまで生きてきた彼らに、博打地味た計画など天秤にかけるまでもなかった

信用に値した瞬間から、彼らのクーデター計画は始まったのだ

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

その男はクーデターの話を対話のみで進めた

やはり快凪の目を気にしている様子で、慎重かつ丁寧に事を進めているらしい

 

開発が滞ってしまえば怪しまれる

その男と密談するために彼らは今まで以上に手を早め、少しでもその時間確保に専念した

月下に反旗を翻すために、月下に貢献するとは些か皮肉でもあるが、なりふり構ってもいられない

 

 

「お前達にはこれを作ってもらいたい」

 

 

計画書とは別にとある設計図を手に彼は現れた

それは決闘力(デュエルエナジ-)で稼働する決闘(デュエル)ディスクのそれ

 

月下の決闘(デュエル)ディスクはメインコンピューターで管理しているため足がつく

そのため隠密に彼ら専用の物を制作する必要がある

だが何故このタイミングなのだろうか

それはまたしてもメインコンピューターが関係していた

 

 

「メインコンピューターの管理権を奪うには王家の血を...決闘力(デュエルエナジ-)を継ぐ者が必要だ」

 

「それとディスクに何の関係が?」

 

余事象体質(アウトフェイト)だ」

 

 

カムイはこの日初めて余事象体質(アウトフェイト)とについて知った

決闘力(デュエルエナジ-)過多がもたらす新たな力

誰もが戸惑い疑う内容だが、実際に月下にいるためか自然と受け入れられた

 

記憶操作の事もだ

何故本名が思い出せないのか

何故ここまで大きな出来事がありつつも日本は何もしないのか

答えは出来なかったからだ

白国民やS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)関係者の記憶を根こそぎ書き換えたからこそ、快凪は支配者であれたのだ

 

 

「王家の人間達もそうだ。現在その血を継ぐものでメインコンピューターの動かし方を覚えている者はいない。快凪しか干渉出来ないんだ」

 

「だったら...どうやって」

 

「記憶操作を受けていない...いや受けない王家の血筋が必要不可欠だ」

 

 

歴史の講義でも受けている気分だった

王家の当主には22の息子が居たのだが、彼とは別に王には息子が居た

 

隠し子

若気の至りで産まれてしまったもう1人の息子。よくある話だ

現在月下に残っている王家の記憶全てが改竄されているため、これからも記憶操作を受けない人間が必要だと言うことだ

 

その隠し子も無論王家の血を受け継いでおり、とある理由で快凪の記憶操作を受けていないらしい

 

 

「彼の持つ余事象体質(アウトフェイト)継承(リ・アウター)”は他者の決闘力(デュエルエナジ-)と同期し、その余事象体質(アウトフェイト)や性質を受け継ぐ力がある」

 

「それを使って他の余事象体質(アウトフェイト)を集めるという事ですか」

 

「そうだ」

 

 

その男が全ての鍵を握る存在なのは話の途中でも明らかだ

実際に継承(リ・アウター)を使用するためには決闘(デュエル)ディスクを介す必要があり、ここで彼らもディスクの制作理由を理解した

 

月下を取り戻す活路が見えてきた。その隠し子さえ入ればカムイ達にクーデターは可能なのだ

 

 

「その息子はどこに?」

 

 

月下からどれくらい離れた場所にいるのだろうかと問うたのだが、男は意外な地名を口にした

カムイもよく知る場所だが、しばらく耳にしなかった名前だった

 

 

「日本だ」

 

「日本...?」

 

「あぁ、月下国内に露呈するのを恐れたようだが、どうやって日本に送ったのかまでは分かっていない」

 

 

その息子も厄介払い如く日本に捨てられたらしい

彼もまた被害者

勝手につくられ日本に追いやられるとは、同情の気持ちもあるが、返って良かったのかもしれないと錯覚した

 

こんな地獄(月下)に身を置かなくて良かっただろう

 

 

「その隠し子...は日本で何を?」

 

 

日本で何をしているのか

これは暗に無事なのかを聞いているのだが、男は察した様子で答えた

 

 

「無事だ、普通に生活している。彼との...」

 

 

いい加減「彼」「隠し子」など遠回しに呼ぶのに疲れたのか、突然その王家隠し子の名前を口にした

 

 

「今は楠知樹という名前で日本にいる。楠との接触は他の奴らが行う。お前たちはディスク開発に専念してくれ」

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

2015年1月9日

 

その後のクーデター計画は順調だった

カムイ達は決闘(デュエル)ディスクを完成させ、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の男がそれをどこかへ運び出す

 

それから1週間も経たないうちに隠し子の手に渡ったと知らせが届いた

そしてさらに2週間後

計画に必要な余事象体質(アウトフェイト)の内1つが隠し子に渡ったと新たな朗報が入った

 

 

「楠はどんな余事象体質(アウトフェイト)を?」

 

「カードの精霊を宿す余事象体質(アウトフェイト)だ。これで外部からの決闘力(デュエルエナジ-)操作を受けない」

 

 

適合と精霊の話も聞いていたため、あまり驚かずにカムイは受け止めた

そしてこれは第一段階で必要不可欠な力を手にしたと言うことだ

 

 

「ところで...その楠に必要な力とは全部でいくつあるのですか?」

 

 

少しでも進捗が知りたかった

疲れきった体や心をまた酷使するには何か希望を掴んでいなければ壊れてしまう気がしたからだ

 

そして興味本位でもある

我らの隠し子に何が足りていないか、と

 

 

「とおる人間から決闘力(デュエルエナジ-)の性質を、とある決闘者(デュエリスト)から余事象体質(アウトフェイト)を受け継ぐ必要がある」

 

「2人...それは」

 

「1人は王家現当主。現在のメインコンピューターの管理権を奪うのに必要。そしてもう1人は多彩な決闘力(デュエルエナジ-)を身に宿す特異体質だ」

 

「前者はともかく...後者は何に必要なのですか?」

 

決闘力(デュエルエナジ-)は肉体に流れるが、余事象体質(アウトフェイト)は魂に宿ると言われている」

 

「...はい」

 

「あらゆる余事象体質(アウトフェイト)決闘力(デュエルエナジ-)の性質を継承できる力があっても、受け入れる魂に限界がある」

 

「つまり結局複数宿す事は出来ないと?」

 

「通常なら不可能だ。だがその男の力があれば可能になるし、これからも他の余事象体質(アウトフェイト)を取り込んでいける。故に彼に必要な力だ」

 

 

決闘力(デュエルエナジ-)は肉体に流れるが、余事象体質(アウトフェイト)は魂に宿る

男はそう表現した

 

それは魂という正体不明のものに干渉出来ないと意味しているのだろうが、それを可能にする人間がいるらしい

しかし妙な話だった

既に精霊の余事象体質(アウトフェイト)を宿したのならこれ以上の継承は出来ないのでは無いのだろうか

 

その疑問は予想していなかった朗報で答えられた

 

 

「そして楠はその多彩な決闘力(デュエルエナジ-)を保持できる余事象体質(アウトフェイト)を既に入手済みだ」

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

「もう...分かっただろ?」

 

「知樹か...隠し子...?」

 

 

まるで自らが関わっているこの戦争に至る話とは思えなかった

聞いていた、見てきたものとは全くと言っていいほどに異なる月下の過去は受け入れ難いことだった

 

攫われた詩織を、奪われた日常を

日本の、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の為に戦ってきたのは一体なんだったのだろうか

 

知樹を倒せば全て丸く収まると思っていたのも間違いだ。彼もまた月下のいざこざに巻き込まれた被害者。

では、一体本当の敵は誰なのだろうか

 

 

「嘘だ...」

 

「嘘じゃない」

 

「快凪さんが月下を...そんな話!」

 

 

言ってみて自分でもおかしく思えた

あったことも無い快凪という男を庇うような台詞に何の説得力は無い

 

だがそれと同じようにカムイが本当の事を話しているとも限らない

慎也を揺さぶるための嘘という可能性も0では無いのだが、それを確かめる術を持つ男が口を開いた

 

 

《...村上聞こえるか》

 

「.....」

 

 

声の主は端末越しに話しかけてきた

それと同じタイミングで渡辺が送信用の端末から手を離したところを見ると、どうやら今までのカムイの話を通信に乗せていたようだ

 

つまりS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)全体へとこの話が渡ったという事

それは日本にいるS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)も例外では無く、日本で待機中の大泉が思い口を開いた

 

 

《我々も驚いている...だがその男の言葉から嘘はひとつも検出されなかった...》

 

「...」

 

 

大泉の嘘を見抜く余事象体質(アウトフェイト)

そう言えばそんなものがあったとまだ数時間前にある記憶を取り出すと慎也は沈黙で返した

どちらにせよ納得せざるを得ない状況に陥っていた

 

あまりにも信じ難い突飛な話がどうしても信じられない

 

この戦争の目的の1つでもある快凪の救出

その対象が諸悪の根源である事など

 

 

「君は恋人を、日常を奪われた被害者なんだろうね。だからこんな風に戦っても誰にも咎められない。正義のためだもんね...っ!」

 

「...」

 

「でも...僕達もそうだ。奪われた個性と平穏の為にここまで戦ってきた...これも僕らなりの正義だ」

 

 

何でもいいからなにか言葉を発したかった

そうでもしなかったら自分が自分でなくなってしまうように思え、正体不明の恐怖が背中にのしかかっていたからだ

 

すると解せない点に辿り着いた

未だカムイが語らない事だ

 

 

「まてよ...だとしたら詩織ちゃんや他の生徒をさらった理由は!?日本にまで手をかける必要は無かっただろ!」

 

「あぁ...」

 

 

本当に話忘れていたような反応だった

月下の民が月下を取り戻す為に日食に至った事について

 

 

「...知らしめるためだ」

 

「何を」

 

「月下の...快凪の、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の、日本の罪をだ」

 

「誰にだよ!」

 

「世界にだ」

 

 

痛みに震えながらカムイは体を起こすと、薄い瞳で慎也を睨んだ

湾曲的な言い方で要領を得ないが、慎也には理解出来た

 

月下の

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)の目的

この戦争にまでに発展させた真の理由を

 

 

「月下の存在を日本に露呈させるため...?」

 

「厳密には別世界(アナザー)の存在を世界中に、だよ」

 

 

繋がった

月下が日本の生徒を攫ったのも

それを人目のある場所、時に行った事

関東大学対抗戦の前日を狙った事

 

そして何より

何も要求せずただS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)が行動に移すまで何もしてこなかったこと

 

それらとカムイの言った「知らしめる」というワードが、今回の全てを繋げるきっかけになった

 

 

「ただ月下の...別世界(アナザー)の事を全世界に露呈させるためだけにこんな事を...」

 

「だけ、とは違うね」

 

 

漸く立ち上がったカムイはふらふらとしながらも言葉を続けた

随分派手に動き回り、尚且つ敗れた部下は全て日本に置いてきた

そしてその部下達は拷問の必要も無く素直に質問に答えている

 

全ては自分達の犯行を知らしめるため

犯行の目的が犯行の提示という事

 

随分と矛盾した理由にも思える

 

 

「意味が分からない...っ!月下の支配権を奪い返したならそれでいいはずだ!わざわざこんな事を...っ!」

 

「日本に責められたら僕達は被害者でしたって言い訳すれば良かったと?LL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)が関わっているんだ、事態はそんな簡単には済まない」

 

 

疑問は晴れていく一方

だが対極的に気分は滅入っていく

 

LL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)とガルナファルナ

そういう事だったのかと朧気に理解していると、カムイが補足を込めて続けだした

 

 

「今君が持っている端末。それはガルナファルナの物だ」

 

「...」

 

「記憶操作の技術も、日本の決闘者(デュエリスト)を拉致するのもガルナファルナの目的だ」

 

「そういう...事か...」

 

 

慎也が一次日食で敵から奪ったのと同じ端末を指さしてカムイは言った

初めは失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)の部下が手にし、詩織を追っていたのだと思っていたが、そもそもが違っていたようだ

 

一次日食を行ったのは、失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)では無かった

 

 

「じゃあ...あのビルにお前らがいた理由は...?」

 

LL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)の目的は分かっていたからね。ガルナファルナが狙っていた希望、皆木詩織の保護と事態を大きくするため...さらには自分達が代わりに捕まってガルナファルナをに出すため、だ」 

 

 

これにも納得がいく

初めは失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)とガルナファルナの違いすら分からなかった

同じ服装に戦闘手段、度重なる日本への攻撃や«цпкпошп»もそうだ。月下とLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)が手を組んでいるのかとも考えていた

 

次第にそれが誤りである事に気づき、寧ろ失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)とガルナファルナが敵対関係にある事までに至った

 

だが今でこそ本当の関係性が見えた

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)はガルナファルナを倒すためにガルナファルナに協力していたのだ

日本に正しい選択をさせないために、事態を混乱させるために

 

 

「ガルナファルナの犯行を日本に知らせるために自分達も一緒になって...」

 

「そうだ。僕達は日本とガルナファルナをぶつけるために間に入った。予想以上に君達の力は凄かったよ...だって三次日食までで殆どのガルナファルナを殲滅してくれたもんね...」

 

 

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)は打倒失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)は打倒ガルナファルナを

 

そしてガルナファルナは月下と日本を手にしようとしていた

 

複雑に絡まった各国の狙い

何時も後手に回されていた日本も、日食に失敗したLL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)より、明らかに失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)が上手だった

 

全ては月下の掌の上にあったのだ

 

 

「さぁ、行くといいよ...これで皆木詩織を狙うのは君だけだ。助けた後で、まだこんな馬鹿げた戦争を続けるって言うならそうすればいい...」

 

「...なんでガルナファルナは詩織ちゃん達を狙っていたんだ?」

 

 

これについてはS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)が把握している

三次日食で大神が掴んだ情報にある

 

ガルナファルナが執拗に日本の決闘者(デュエリスト)を狙っていた理由を

 

 

余事象体質(アウトフェイト)を移植する実験の材料...」

 

「そんな事...っ!」

 

「皆木詩織からは...精霊を奪い取るつもりだったらしい...そんな無茶な事したら多分死ぬ...だから僕達は...」

 

「...分かったよ、最後に...」

 

 

今抱いている感情の名前が分からない

あれだけ憎かった失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)や、カムイがしてきた事が、間違っていると本気で言えなくなっていたからだ

 

 

「なんで...そんなに上手く事が進んだんだよ」

 

「そんなのボスの力としか言えないよ」

 

 

もはや力が抜けて立っているのもやっとだった

そんな中苦し紛れに問うたのは疑問

 

 

「僕達が行ったのはボスが余事象体質(アウトフェイト)を集まるための準備だけ...後のことから今に至るまでは全てボスが導いた」

 

「...」

 

 

ふと顔を上げるとそびえ立つ失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)本部...元S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)本部が目に入った

そのどこかに知樹はいるはずだ

 

3年間聖帝で共にすごした知樹が

見えざる顔を持ち、誰もが予想も対応も出来ないような異常な作戦を作り出した知樹が

 

倒すべきはずだった知樹がだ

 

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