遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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大学始まるー嫌だー
そう言えば二三回しか出席してなかった講義の単位がS認定されてました。嬉しかったです(KONAMI感


第五十二話 A Place In The Light

一つの部屋で、無機質な機械音だけが存在を主張していた

白で統一されたその空間には、一つのベッド、一つの機械、そして一人の青年が眠っているだけだった。

それらを収めるにはその部屋は広すぎるかもしれない

 

 

「...」

 

 

身動きを一切せず、青年は何も音を発していない。傍らにある、何かの数値を図るモニターのような物が代わりに音を発しているようだった

 

心電図や血圧を図るものだが、この部屋のモニターには通常のそれには無い項目があった。単位も見たことのないものだった

 

 

「......っ」

 

 

青年が目を覚ましたようだ。口元のマスクが吐息で曇った。モニターにある例の数字もそれに伴い大きくなって行った

 

意識を取り戻した青年だが、まだ起き上がる様子は無い

 

 

 

「.....ここは...?」

 

 

 

虚空に呟くと、自身の有様に目を向けた

体中が包帯や湿布で包まれ、痛々しい格好だ

現在地も分からず、何が何だか分からないが痛みは無かった。

 

ひとまず無事な体を労るに留まる

 

ベッドから起き上がると、まずはマスクを取り外した。開放感と澄んだ空気を味わい、辺りを確認する

 

窓すらないそこは、マスクを外しても息苦しい思いにさせた

 

 

 

「...目が覚めたか」

 

 

 

音も無く一人の男性が現れた。

白く染まった控えめの頭髪に、鋭い三白眼。

しおらしくベッドに座り込む青年を、その男は見下すように睨んでいる

 

青年はすぐには答えず、下から上へと男を見渡し、やっと言葉を発した

 

 

 

「.....ここはどこだ?」

「本拠地、さらに言うなら地下の病室だ」

「...」

 

 

 

聞いておきながら理解はできていない様子だ。

三白眼の男は、黙ったままの青年を見据え、深くため息を着いた。近くのパイプ椅子を引っ張り、ドサリと座り込む

 

まるで着席がトリガーになったかのように、青年は何かを思い出したようだ

 

狭かった瞳孔も勢いよく開いた

 

 

「....っ!?そうだ、俺は蛭谷と一緒に詩織ちゃん達を追って.....」

「思い出したか。まぁ、座れ。順を追って話してやる」

 

 

思わず立ち上がった青年をたしなめ、再びベッドに座らせると、男はタバコを取り出した。躊躇なくそれに火を灯すと、独特な煙の匂いが青年の鼻腔をくすぐった

 

病室と説明した男がとる行動では無い

 

 

「まず体は大丈夫か」

「...痛みは......無いけど」

「頭痛はどうだ、自分の名前は言えるよな」

「.....」

 

 

言われてから頭部に違和感を覚えた。痛みまでは行かなくとも、正常とは言い難い何かを感じていた。

脳には異常はないように思える。当然名も語れる

 

青年はゆっくりと名乗った

 

 

「...村上慎也」

「あぁ、そうだ」

 

 

焦れったいとは自身でも思っているのだろうか、紫煙を勢い良く吐き出すと後頭部を乱暴に掻き出した。

 

だが、それは慎也にも言える事だ。何か少しでも今の状況を知るために必死に問い出した

 

「......あんた、何か知ってるのか?あの«цпкпошп»とか言う奴らは何者なんだよ!」

「«цпкпошп»を見たなら話は早い」

 

 

あくまで自分のペースで話すつもりらしい。慎也の質問には答えず、勿体ぶるように煙を撒き散らしていた。

 

慎也が苛立ちを覚え始めた頃、男は初めて名乗った

 

 

「俺は"化野(あだしの)"、今回の件の責任者を任されている」

「...」

「順を追うと言っただろ、"月下"の事はどこまで知っている」

「.....奴らの住む所か?」

 

 

納得のいかない答えだったようだ

化野は不満そうにフィルターを噛み潰した

 

 

「...なら決闘力(デュエルエナジ-)については」

「.....」

 

 

長い説明になりそうだと、双方が覚悟を決めた

慎也はベッドに座り直し、化野は灰をそのまま床に落とした

 

 

「流石に精霊について説明はいらないな」

「っ!」

 

 

不意を付かれた慎也は驚きを隠さなかった。自身がカードの精霊を宿している事が知られているとは予想外だった。

 

しかし、今はシエンもセラフィもレオもいない。得体の知れないこの男に精霊について話してもいいのだろうか

 

 

「安心しろ、俺は味方だ」

 

 

その気持ちを察したかのように化野はスーツの胸ポケットから何かを取り出して、見せた。

 

警察手帳とS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)のバッチだった

 

 

「...警察?」

「あぁ、まずは信用しろ、話が進まねぇ」

 

 

偽造したものにはみえないが、彼自身も警察には見えなかった。先程から指で挟んでいるタバコもそうだが、なにより風貌も警察のそれとはかけ離れていた。

 

勝手な警察のイメージと当てはまらないだけかも知れないが、慎也はやはり心から信用はできそうに無かった。

 

それでも話す気にさせたのは、彼のやたら断定的な話方だ。何かを知っているからこそのものだと思ったからだ

 

 

「化野さん.....でしたっけ」

「あぁ」

「...俺が精霊を見えるようになったのは最近です。今では3人見えています」

「...」

 

 

やっと情報を得ることができた

化野は役目を果たした紙くずをそのまま床に捨てると踏み潰し、火を消した。

 

せっかくの綺麗な床に黒い汚れが生まれた

 

 

「その精霊逹から決闘力(デュエルエナジ-)決闘(デュエル)原子については聞かなかったか」

「...決闘力(デュエルエナジ-)については少しだけ......原子については...あまり」

 

 

2本目の煙草を咥えながら化野は説明を始めた

 

 

「原子の流れがエネルギーだ、基本的には決闘力(デュエルエナジ-)もそれと同じ考えでいい」

「それぐらいなら化学で習いました...ですけど.....決闘(デュエル)原子って結局...」

「この世界には無かった未知の原子だ」

 

 

2本目も深く吸い込むと、多くの煙を吐き出した。一息置くと原子についての話に移ろった

 

 

「カードの精霊逹が元々いた世界、通称"永世界(えいせいかい)"という場所がある」

「...世界」

「世界と言っても別次元と言ってもいい、お互いに干渉できず、本来はお互い知ることもなかったはずの関係だ」

「.....そこからモンスター達が?」

 

 

実際にカードの精霊と出会っているから信じられる話だ。突飛なものには違いないが、シエン達について新たに知ることがありそうだ

 

 

「具体的な年月は分かっていないが、何千年も前から永世界とこっちの世界は干渉を始めていた。こちらがそれに気づいたのは最近、100年からそこらだ」

「に、100 年...」

 

 

慎也が生まれてすらない頃、果てしない時。だが干渉自体はそれをはるかに超える千年単位の話だった。

とても現実的な話では無い

 

 

「この世界同士の干渉が与えた影響は、こっちには無い未知の原子が流れ込んで来たことだ。我々はひとまず決闘(デュエル)原子と呼んでいる」

「...」

決闘(デュエル)原子は特殊な動きをする。人や物に集まる習性があり、それを集める量や速さには個人差があるとまで分かっている」

「.....その個人差が決闘力(デュエルエナジ-)の差を生んでいるって事ですか?」

「そうだな」

 

 

化野は見た身に似合わず、流暢に話す。専門的な会話に置いていかれないよう慎也も集中を崩さない

 

化野の会話のペースは上がっていた

 

 

 

決闘力(デュエルエナジ-)が人に与える影響は"適合"の幅が増えること、また精霊の認識が可能になること。そして身体能力にも変化が見られる」

「..."適合"?」

「一言で言えば回せるデッキの事だ」

 

 

ビル内で詩織とカムイの決闘(デュエル)を思い出した

たしかあの時カムイも適合者と発していた

 

この件を知るものには通ずる単語だとは分かるが、わざわざ適合という言葉を用いる事は解せない

 

 

「...普通にデッキは回せるんじゃ?」

「こればかりは科学で説明できないんだがな。そういうものらしい」

 

 

慎也が胡散臭いと言わんばかりの表情で化野を睨んだ。納得がいっていないと分かると、面倒くさそうに化野は携帯を取り出し、誰かに連絡を取り出した

 

それが済むと、携帯をしまい、話を続けた

 

 

「カードがどこで作られているか知っているか」

「...普通に会社とか工場?」

「表向きにはな。実際は国が秘密裡に開発と販売を行っている。あれは決闘力(デュエルエナジ-)と特殊な材料で作り出される1種のデータと言っても過言ではない」

「データ?」

「これについては話すと長すぎる、要はあっちの世界の力でのみ製作可能なツールと言おうか」

「...もしかして決闘(デュエル)ディスクも?」

「察しがいいな、あそこまで機能を詰め込み軽量化出来るのは決闘力(デュエルエナジ-)の恩恵に他ならない。ソリッドヴィジョンもだ」

 

 

初めて聞く単語に戸惑っていると、誰かが部屋をノックした。化野が入れ、と放つと若いスーツの男が入室した。

 

慎也も目をやると、最近会ったばかりの人物がいた

 

 

「て、輝元さん...っ!?」

「...久しぶりでもないか」

 

 

灰田の兄、灰田輝元

灰田と高校からの付き合いの慎也は何度か会ったことがある。すでに社会人である事は知っていたが、化野の後ろに位置するあたり、彼も国家権力であるらしい

 

化野はすぐに話を戻した

 

 

「デッキを出せ」

「はい」

 

 

化野の命じられ、輝元は手にしていた鞄から二つのデッキを取り出した。少し離れたばしょにあった机を引っ張ってくると、それを化野と慎也の前に置き、手にしていた二つのデッキをその上に乗せた

 

 

「このデッキは...?」

「片方は輝元の、もう片方はお前のだ」

 

 

言われて初めてデッキを手に取ると、中身は確かに慎也の六武衆だった。傷一つなく、大事に保管されていたようだ

 

ここで初めて所持品の行方を気にした。ほかのデッキやディスク。また携帯や財布も化野が持っているのだろうかと

 

 

「安心しろ、すぐにほかの持ち物と一緒に返す...まずはいつも通りディスクのシャッフル機能を使ってみろ」

「...シャッフル?」

「慎也、これを使え...」

 

 

化野の説明だけでは把握しきれなかったが、輝元に手渡された決闘(デュエル)ディスクによって意味が分かった。

 

目的はともかくデッキをシャッフルするだけだ

いつも通りにディスクにデッキを差し込み、シャッフルとテストプレイの操作により、初期手札5枚を取り出した

 

 

「こんな感じですけど...」

「もう戻していい」

 

 

[六武の門]

[真六武衆-カゲキ]

[六武衆の影武者]

[六武の結束]

[六武衆の荒行]

 

文句ない手札だろう。

一瞥しただけで戻すよう支持する化野を、慎也はやはり理解出来なかった。何が見たいのか、決闘(デュエル)させるわけでもなく、ただ初期手札を試しただけだ

 

 

「ディスクごとこっちに渡せ」

「あ、はい...」

 

 

言われた通り、ディスクを取り外すと化野に手渡した。

何をするかと思えば、化野は自身の腕に装着し、不慣れた手つきで操作しだした

 

そして同じように初期手札5枚を取り出し、慎也に提示した。

 

 

「...うぇ」 

「適合者からみるとどうだ、なにか出来るか」

 

 

化野が引いた5枚は

[六武衆の荒行]、[六武衆の結束]、[六武衆の理]、[諸刃の活人剣術]、[大将軍紫炎]。

 

とてもじゃないが何も出来ない手札、いわゆる手札事故と言えるものだ。慎也が苦笑いを浮かべていると、化野は何度かやり直して見せた。いずれも事故の一言だった

 

 

「...これはお前のデッキバランスに関係なく、俺が六武衆に適合して無いだけの話だ」

「.....でもそれって運じゃ」

「なら輝元、お前もやって見せろ」

「はい」

 

 

慎也の決闘(デュエル)ディスクは化野から輝元へと移った。輝元も同じように慎也の六武衆をシャッフルするが、やはりいい手札とは言えなかった。

 

化野程ではないが、二世代ほど前の遊戯王の動きしか出来ない

 

 

 

「...たしかうちの学園長も六武衆を回せてましたけど」

「一つのテーマに一人しか適合しない訳では無い。大神も少しは六武衆を使えるって事だ」

 

 

大神は慎也の通う聖帝大学の学園長の名だ。

六武衆の事よりも思わず聞き返してしまった

 

 

「.....ん?化野さん、なんでうちの学園長の名前を...」

「それについても順を追って話す。まずは適合に付いただ」

 

 

一蹴されてしまった。

大神との六武衆ミラーマッチを思い出した所で、適合についての話に戻る

 

 

「まぁ、この現象についてはまだよく分かっていない。基本的に適合デッキは一人一つだ。周りにも居なかったか、回せるデッキが限られているってな」

「確か...東野は元々魔導書を使いたいって言ってた...でも回せたのがおジャマしかなくて.....」

「特に魔導書なんかは適合者を選ぶ。誰でも適合できたと言えば征竜が記憶に新しい」

「...」

 

 

思い出したくも無かった。適合についての話で、あの征竜使いの糸目がやたらに脳裏に浮かぶ。

 

やはりカムイも何か知っているのだろう。

何も知らない自分に腹立たしくも思えた

 

 

「化野さん...適合とか原子とかは分かりましたよ、でもやっぱりあいつらの事が全然分からない。早く教えて下さいよ!」

「焦るな、俺も説明は上手くねぇ、順を追う」

 

 

2本目の煙草を捨てようとした時、輝元に携帯灰皿を差し出された。聞こえないくらいの舌打ちをすると、吸い殻を灰皿に収めた

 

 

「遊戯王の制作、決闘(デュエル)ディスクの開発、法律の設置、各職への影響、教育課程への介入。莫大な費用がかかった事は言うまでもないな」

「...そうでしょうね」

「これは決闘力(デュエルエナジ-)が人以外に与える影響が関係する。これを見ろ」

 

 

輝元のデッキを避け、いくつかの写真を慎也に提示した。慎也はそれを手に取り、1枚1枚確認した 

 

どれも風景画だった。

 

 

「...これは」

「学生ならどこか分かるか」

「.....スペイン?家の建方が特徴的...ですね、こっちは砂漠...雪原まで?」

「これらは全て同じ場所で撮られたものだ」

「...え?」

 

 

化野に言われ、もう1度写真を確認した

縦長に造られた住居、崖が多い地方。

一面の砂漠、はたまた樹木も凍る雪原。

ある1枚には巨大なハリケーンもあった

 

世界の国々の様子だ。同じ場所で一度に起こるはずが無い。

 

 

「...こんな場所、あるはず無いでしょ」

「いや、ある」

「.....じゃあ、これは何処なんですか?」

 

 

化野から告げられた地名は、予想していないものだった

やたら寄り道した説明も意味があったようだ

 

 

「そこは"月下"だ」

「っ!?」

 

 

勝手なイメージだった。日本国内に潜伏していると思っていた«цпкпошп»の勢力は、全く未知の地に身を隠しているようだ。

 

写真を見ただけだが、とても穏やかな気候ではなく、人が住めるかも怪しい

 

 

「"月下"は...いったい...」

決闘力(デュエルエナジ-)は空間にすら影響を与える」

 

 

3本目には触れなかった。驚きを隠さない慎也を見据え、タイミングを伺っている。

 

ここからが本題のようだ

 

 

「空間ってまさか...?」

「あぁ、"月下"は決闘力(デュエルエナジ-)によって生み出された別空間だ」

「あいつら...失彩(モノクロ)道化団(アクタ-ズ)はそれを利用してこんな事をっ!?」

「...違う」

 

 

近くにいた輝元の端末が振動した。

それを取り出すと、輝元は一旦部屋の外へ消えていった

 

化野は輝元が居なくなったことを確認すると、ペースを上げて話し出した

 

 

「”月下”が発見されたのは約50年前、発見したのは日本政府専属の科学者だ。日本政府はすぐに人材を派遣し、”月下”の調査に向かった」

「...」

「そこでは広大で豊な土地があった。行きで調査員の半分が死んだが、行く価値はあった」

「死...」

 

 

死人が出る話とは思っていなかった

固まる慎也を他所に化野は構わず話を続ける

 

 

「当時の技術では行くだけでも困難だった。それでも日本はどうしても月下を手にしたかった。そこで決闘力(デュエルエナジ-)の研究に拍車を駆け出した」

 

決闘力(デュエルエナジ-)で出来た土地に行くにも決闘力(デュエルエナジ-)が必要だったって事ですか?」

 

「そうだ、研究の結果、死人が出る原因は数年で分かった。単純に決闘力(デュエルエナジ-)が足りなかっただけだった」

 

 

慎也は歴史の教科書を思い出した。

海を渡るには船の耐久力が必要だった、それと同じものだと簡単に咀嚼しておいた

 

 

「それから10年後だ、永世界の住民がこちらの世界に現れたのは」

「...モンスターが?」

「そうだ、日本政府は彼らに知恵を求めた。決闘力(デュエルエナジ-)を我が国でも実用化させるためにはどうすればいいかと」

「...まさか?」

 

「そうだ、それが遊戯王デュエルモンスターズだ」

 

 

それは目の前にあるカードゲーム

1枚は薄い物体だが、慎也達の知らない深く、重い歴史が刻まれていた

 

1枚を手に取ると、慣れ親しんだカードを見つめた

ただ楽しく決闘(デュエル)が出来ればいいと願っていたのはいつだったのだろうか

 

 

 

「それからさらには10年後、世間に遊戯王を流通させることに成功した。永世界の者がいうと通り、そこの住人を模したカードゲームはすぐに日本を決闘力(デュエルエナジ-)で満たした。それに伴い月下の開拓も思うように進んだ」

「...永世界の人達はどうしてわざわざ教えてくれたんですか?」

「こちらでデュエルモンスターズが進めば、あちらの世界の活性化にも繋がるらしい。あちらが活性化すればこちらに投影できるカードも増える。まさに良循環だ」

「それだけ聞くといいようにしか聞こえないけど...」

「月下の開拓、ここからが本筋だ」

 

 

化野は等々3本目の煙草に火をつけた

 

 

「月下の存在は他国は愚か、国民にすら隠蔽する必要があった」

「...どうしたですか?」

「月下では日本本国と同じように...いやそれ以上に資源が取れる。天然化石やメタンハイドレートも確認出来ている。日本が独り占めするためには、日本が潤うためには他国には隠し通す必要があった」

「...」

「国民にも同じだ、どこから露呈するか分からん。そもそも決闘力(デュエルエナジ-)を知らない者からすれば絵空事だがな」

 

 

明らかになった国の陰謀に嫌気を覚えた

新しい情報が飛び交い、パンクしそうな頭を抑えながら思うことは疑問が多くを占めていた。

 

過去のファンタジーの様な話や、遊戯王の歴史、母国の影での行いと多くを聞いたが、なぜ自分の様なただの大学生にそこまで語るのだろうか

 

 

「化野さん...」

「まて、まずはすべて話す」

 

 

化野は見通しているのか、慎也の言葉を遮り話を続ける。まだ話す事があるのかと慎也の眉間にシワがよった

 

 

「今話した通り、月下開拓に当たって人材が足りなかった。そこで政府は身寄りのない子供や、戸籍の無い者、路上生活を虐げられている者や海外の黒孫子(ヘイハイツ)までも集め、月下に送った」

「...仕事を与えたってことですか?」

「あぁ、月下での決闘力(デュエルエナジ-)を安定させるために決闘(デュエル)の教育も施した。中国人には日本語も学ばせ、月下での戸籍や名前も与えた。その後は日本政府側から数名の権力者を送り、月下の管理を任せた」

 

 

大学の講義でしか聞いたことのなかった単語も出現した。それでももはや驚くことは無かった。

月下開拓と短く言ってはいるものの、規模は計り知れないようだ

 

 

 

「それか日本では決闘力(デュエルエナジ-)の研究と遊戯王が進み、さらなる技術発展をとげた。同時に民間個人に決闘力(デュエルエナジ-)の存在を悟られぬように法律で厳しく決闘(デュエル)に関して制限しだした」

「...決闘(デュエル)ディスクの改造や違法カードの制作?」

「そうだ、決闘力(デュエルエナジ-)の存在が露呈する事よりも、まだ未知の領域にある決闘力(デュエルエナジ-)が人体にどれだけ不可をかけるかの危険性を考慮した結果だ」

「...」

「それでも個人で新たな決闘(デュエル)ディスクの開発を行った男がいた。当然政府はその男と接触したが、その男の決闘(デュエル)ディスクは今までにない程活気的なものだった」

 

 

時代の流れは民間個人個人の技術も高めた。化野の言い方は、その個人で決闘(デュエル)ディスクを開発した男を罪人と呼ぶかのようだった

 

慎也は嫌な予感を感じ取った。

まさかあの男ではないだろうかと

 

 

「処分するには勿体無いものだった。それでも個人で決闘力(デュエルエナジ-)に関わった事を許す事も出来ない。そこで政府がとった行動は記憶操作だった」

「き、記憶操作...っ!?」

 

 

決闘力(デュエルエナジ-)の可能性を垣間見た

人に与える影響とは、脳内にまで干渉するのか

 

理系でなくともそれの重要性や危険性は肌で感じられた

 

 

「俺も専門的な事までは語れない。とにかく記憶操作を施し、決闘(デュエル)ディスクの技術だけを奪い、あとは自由にする予定だった」

「...だったとは?」

 

「...効かなかった。その男には決闘力(デュエルエナジ-)での操作は出来なかった」

 

 

拍子抜けとも思えた

今初めて聞いた記憶操作は不具合のあるものらしい。慎也は失敗作だったと消化しかけたが、どうやらちがうらしい

 

 

「記憶操作の技術を得てから初めてだった、耐性がある人物と出会ったのは」

「...耐性、その男だけに効かなかったってことですか?」

「そうだ、どうしてかはすぐに分かった。その男は永世界の住人をその身に宿していた。精霊持ちだった」

 

 

ここでやっと精霊を宿す事についたの内容が現れた。

長かったと言うのが正直な感想だが、まだ分からない事が多い。

 

 

「精霊を宿していると記憶操作は効かないってことですか?」

「例外もあるが、その認識でいい。とにかくその男は国が初めて見つけた精霊持ち、見過ごせなかった」

「...その人は」

「安心しろ、本業をそのままにS・D・T(スペシャル・デユェリスト・チ-ム)として今も働いてもらっている」

 

 

名前も知らない人物の安否が気になったが、どうやら無事らしい。慎也は何事も無く精霊と生活していたが、国からすれば重要視すべき事のようだ。

 

いまさら自分がこれからどうなるか不安に思えてしまった

 

 

「...その男に命じたのは次なる世代の精霊持ちや、高い決闘力(デュエルエナジ-)を持つ人物の探索だ。幸いな事にその男が経営する大学ではそれが容易かった」

「...」

「もう大体分かっただろう。その男は大神の事だ、お前らが通う聖帝大学にある決闘(デュエル)スペースや遊戯王の講義はそれのためにある」

 

 

思い当たる事は多々あった

入学試験で決闘(デュエル)を行う所や、やたら決闘(デュエル)をさせる講義。無理やり講義中に新しい計測器を導入し、教室が停電した事も記憶に新しい

 

大神本人から決闘(デュエル)を誘われた事もあった

あれはすべて強力な決闘者(デュエリスト)を見つけ出すためだったのか

 

 

 

「...”希望”っていうのは精霊持ちの事ですか?」

「”希望”も知っていたか、我々はそう呼んでいる。新たな決闘力(デュエルエナジ-)の探求に力添えできる可能性を期待した呼称だ」

 

 

«цпкпошп»と戦ったビルでやたら飛び交った”希望”という名。精霊を3人も宿している慎也がそう呼ばれたなら合点はつくが、彼らは慎也を攫う素振りを見せなかった

 

なぜ詩織だけが狙われたのか、解せない

 

 

「大神から毎月送られてくる希望のデータで我々はお前の存在を知った。確かに世を渡るプロデュエリストや精霊持ちの決闘者(デュエリスト)のような高決闘力(デュエルエナジ-)だった。何故いまさら送られてきたかは分からないが、とにかくそれ以来ずっと目はつけていた」

 

「...そんな時に«цпкпошп»の強襲があったってことですか?」

 

「そうだ、少しでも怪しい事件があればわざわざ出向きに行った。お前は知らないだろうがただのガキの喧嘩にまで出向いたこともあった。中には聖帝に改造ディスク片手に乗り込んできたガキもいた。出向いてみればお前はいない、その場にいた全員の記憶操作でその日は寝れなかった」

 

 

化野の話を聞かなくとも彼がずっと寝れていない事など分かっていた。目の下のクマが物語っている

 

それよりも改造ディスクで決闘(デュエル)を挑んたと言う話が気になった。目撃者の記憶が無いのだから噂などで回るはずはない。同じ聖帝に通いながらも知らなかった事はおかしくないが、誰が戦ったのかは気になる

 

 

決闘(デュエル)ディスクは全てがオンラインで国のスパコンと繋がっている。改造や違法カードの使用はすぐに判明する。例え誰かが通報しようがしなかろうが俺は現場に行かなきゃならねぇ」

「...」

 

 

個人的な質問はできそうに無かった

まずはこの件について把握しておこうとする

 

 

「話を戻す。月下と日本を繋ぐ道無き道、我々は”ゲート”と呼んでいるが、そこを何者かが通過した形跡があった。その件と輝元の弟の通報と時期が一致したため俺らはあのビルに向かった。案の定月下の奴らが何かしでかしてやがった」

 

「...」

 

「奴らが聖帝のインターンシップ説明会の会場をわざわざ都合のいいあのビルに設定したことが分かった。恐らく聖帝内部に協力者がいる。だが、目的は分かっていない。数人の生徒を月下に連れ去ったようだが、それ以上に月下の決闘者(デュエリスト)を残して逃げやがった」

「残した....?」

「40人もビルに残っていた。逃げようとする様子も無く、全員が黙って拘束を受け入れた」

 

 

知樹や捕まえた生徒を逃がすために何人もの黒服が戦っていた。慎也も詩織と再開するまでに何人もの決闘者(デュエリスト)を倒したが、それ以上の人数が警察に確保されていたようだ

 

 

「奴らが聖帝の生徒を連れ去った理由も分からん。何も要求をしてこない。今はこの事件から月下の存在が漏れないためにマスコミやネットへの隠蔽作業に追われている」

「...よく分かりました。ですが結局俺をどうするんですか?」

 

 

今回の事件についてひと通り説明を受け、ひとまず理解した。

ここまで色々と聞いてきた結果、自分の身柄がどうなるかは一切分かっていない。

恐る恐る問うと、化野は4本目の煙草を床に捨てた

 

 

 

「俺が話すのはこれまでの事だ、これからの事は俺からは言わない」

 

 

そういうと化野はパイプ椅子から立ち上がった

付いてこいと一言放つと病室を後にした

 

急いで慎也もベッドからはなれ、拙い足取りで化野のあとに続いた

 

 

部屋から出ると、同じ様に綺麗な床があり、相変わらず息苦しい廊下を歩いていった

 

 

これからの事よりも、既に煙草を手に取っている化野に不安を覚えていた

またこの綺麗な床を汚すのだろうかと

 

 

 




長かった...やっと伏線を回収できそうです...
今回色々と詰め込みすぎてこんなふうになっちゃいました。すみません



〜おまけ〜



月曜日の朝。一般的な大学生はこれから学生の務めを果たしに行くだろう。

時刻は7時と、遠方から通う生徒なら既に家を出ていてもおかしくない。徒歩で通える距離に住む慎也はまだ幾分余裕があり、朝食の支度をしていた


「さて、後は...」
「慎也!!」バンッ 
「...人んちに勝手に入るなよ」


勢いよく扉を開けたのは灰田だった。
朝から見たくない人物かもしれなかった

ボウルに卵を落としたばかりの慎也は仕方なくもう二つの卵を取り出した


「はぁ...座って、食べるでしょ?」
「ありがとう!何作るの!?」
「...」


ーーー
ーー



数分後に並んだものは揚げ物
絶妙な上げ具合のその表面には、美しいという表現すら当てはまるかもしれない

が、それは朝食にはとても似合わないものだった


「...慎也、朝から天ぷら食べるの?」
「た、食べたかったんだよ!要らないならいいよ!」
「いただきまーす!」


灰田がかぶりついた海老は冷凍のものでは無かった。
流石に彼にもそれがわかったようで、笑顔を浮かべると隣の野菜のかき揚げも味わった


「...旨い!」
「そう、野菜残すなよ」


仕込みも含めると慎也は何時から準備をしていたのだろうか。灰田に出来る事は残さず食べることだけだった


「...慎也っていつもこんな感じなの?」
「ご飯?.....確かに今日はめんどくさかったけど...」
「ん?」
「...食べたくなったやつを食べるから」


今日では朝食を取らない人も多い。
それでも慎也の食への執着は揺るぎなく、朝であろうと食べたいものを食べるらしい

三角コーナーにあるエビの殻が物語っていた


「...」
「どうしたの?」
「...いや!なんでもない!」



ーーー
ーー





「って事があってさー!」
「あ、はい...」
「やっと本題なのね」


皆木と黒川は灰田の長い話を聞いていた
結局何の話なのか、そろそろ講義も始まる頃に時間はあまり残されていなかった。


「それで慎也の朝ごはん気になって1週間調べたんだよ!」
「それって灰田君、1週間も村上君の家で朝ごはん食べてきたって事よね?...村上君も大変ね」
「羨ましいです!」


詩織の反応はともかく、灰田が見せたのは1枚のコピー用紙だった。もっと便利なメモは端末に入っているはずなのだが、わざわざ紙とペンを用いたらしい

汚い字で一生懸命綴ったようだ


「その日はまぁ野菜と海老の天ぷら!味噌汁も付いてた!」
「朝から良くやるわね...」
「そうですね!」


「次の日はコーンフレークだった!」
「あら、急に普通の朝食ね」
「コーヒーかけて食べてたよ!」
「こ、コーヒーですか...」


「次の日はそうめんだった!」
「うぅん...まぁ、軽いっちゃ軽かしらね?」
「冷麺ですか?」
「麺は冷たかったけどニンニクとネギが入った焦がし醤油ベースの温かい汁で食べたよ!」
「お、美味しそうですけど朝からは...」


「次の日はパンだった!トロトロのスクランブルエッグと一緒に食べた!」
「ホテルの朝食みたいね」
「あれってどうやって作るんですかね...?」


「次の日は焼き鮭だった!」
「和食ね」
「和食ですね」


「次の日はホットケーキだった!」
「いいわね、なんだかお腹すいてきたわ」
「そうですねーこの講義終わったらご飯行きましょう!」
「そうね、それで七日目...今日の朝ごはんは何だったのかしら?」


七日が巡り、月曜日へと戻って来た。
いくつか耳を疑うようなものもあったが、今朝は何を食したのだろうか

いよいよ興味が惹がれた頃、灰田から予想もしていなかったことが告げられた


「...今日は寝坊して慎也んち行ってないんだ」
「あら...」
「村上さん....何食べたんでしょうか?」




*




「村上ちゃん、弁当なんて珍しいね〜」
「あ、うん...」


同時刻、慎也は空きコマを利用し、古賀と共に学食で過ごしていた。古賀は麻婆豆腐にスプーンを入れながら慎也に語りかけた


「村上ちゃんの弁当美味そうだね〜」
「あ、よかったら食べる?」
「いいの〜?じゃあ麻婆豆腐とシェアしよ!」
「はいはい」


古賀は赤みのかかったスプーンを慎也の弁当に侵入させた。すくい上げたそれの上には、卵に包まれ、鮮やかな焦げ目のついたご飯。慎也の昼食は炒飯だった。


「...うおっ、旨いね!」
「あ、ほんと?良かったら半分くらい食べない?」
「いいの〜?村上ちゃんの分足りる?」
「俺朝もこれだから...」
「あ〜じゃあ、俺も麻婆豆腐半分あげるよ〜」
「ありがとうー」


双方の皿は同じ色に染まった
次の講義までに空腹を満たし、ある程度の談笑で時間を潰していた。

そろそろ完食するであろう時に、古賀は慎也に問うた



「てか今更だけど一人分の弁当にしては多くない〜?作りすぎちゃったの?」
「うん...最近やたら灰田が朝ごはんたかりに来るから多めに用意したんだけどさ、今日に限ってこなかったからそのまま弁当にした」
「へぇ〜...ってこれ朝ごはんようだったの!?」
「...うん」

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