遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる! 作:v!sion
普通に2万超えてて直すのも書くのも読むのも大変なので...
てか最近寒すぎぃ!
「.....ボクの過去?いやー話せば長くなるけどねっ!」
「一言で言うならヤーさんの娘とお駆け落ちしようとして大失敗したっ!」
「...いやいやホントだよっ?」
「付き合い始めてから知ったんだ。彼女は都内でも有力な暴力団、”
「それでね...あ、いやいやっ親っさんは歓迎してくれたよ?娘をカタギにするつもりだったらしいし、ボクの事を気に入ってくれたんだ」
「うん、親っさんはボクを認めてくれたよ。でもね、それから1週間後に親っさんは死んだんだ」
「詳しくは教えてもらえなかったけど、まぁ他殺だろうね。次の会長も決まってたし、親っさんが死んでからボクは彼女に会いづらくなったんだ」
「新しい会長は彼女を別の組へ嫁入りさせようとしてたんだ。繋がりを作って組織をさらに拡大させようと親っさんが生きてる頃から企んでいたらしいよ」
「当然自分の娘を、ましてやカタギにさせたい子をヤー公の嫁になんてやりたくないでしょ?だから殺されたんだとボクは勝手に思ってるよ。義理も筋もあったんもんじゃ無い」
「その娘も最初は仕方ないってボクとの恋は諦めてたんだよっ!でもね、ボクの方は諦めなかったの。何とか話をつけられないかってその新会長と直接話をしに行ったさ」
「そうしたらね、ある条件を果たせば好きにしていいって言ってくれたんだよねーっ!」
「それはね、今ではあんまり聞かないけど"
「...うん、勿論犯罪だよ?でもその時は逃げる方が無謀だと思ってたんだ。いつかは絶対に見つかるだろうって。だからボクは組の人間としてそれを受け入れたんだ」
「最初の内は集金だったり本当に簡単なことばっかりだったんだっ。でもね、段々と要求はエスカレートしてってね。八百長や、デッキの盗み見とか、酷い時はエクストラデッキ丸パクリまでやらされたものだよっ」
「...あれ?言ってなかったっけ。ボクは日本でプロデュエリストだったんだよ。そこまで階級は上じゃなかったけどね。だから関係者の控え室とか結構簡単に入れたよ」
「...そうだね、プロなんだからそんな輩と関わる事事態が問題だったんだ。あっちからしたらいい手駒だもんね」
「ある日。ボクが朝方に集金から帰るとね、彼女がボクの顔を見るなり泣き出したんだ。何かと思って鏡を見たらボクもビックリだったよっ、ひどい顔だった。自分でも自分には見えなかったさ」
「疲れてたんだよ。賭博を無理強いされた弱い人から金を、なんの罪もない
「1年くらい続いた、本当に地獄だったよ。子供の頃夢見てたプロってこんなものなんだっけって毎晩考えたさ」
「...それでねっ!昇格がかかった大会当日にボクの悪事がバレちゃったんだっ当然プロライセンスは剥奪されたし、組との関わりも明るみになったんだよ」
「そうしたらね、”
「いや?仕事が出来なくなると一切庇ってくれなくなったよ...さぁね、やっぱりも元会長の娘の恋人って鬱陶しいんじゃない?初めからボクとの約束は守る気無かったらしい」
「ボクは逃げようかとも考えた。もはや命が危ないからね、でも最後にもう一度彼女に会いたいって思ったんだ。縋る気持ちで初デートで行った公園を覗いてみたんだ」
「...いやいやっ!ボク27歳だよ?携帯ぐらい合ったし持ってたよ。でもヤー公に狙われ始めてから携帯の電源は切ってたからね。つけるのも怖かったよ」
「会えなかったらあきらめるつもりだった。そんな気持で向かった公園は人気で賑わってたんだよね」
「...でもね、すぐに分かったよ。彼女は思い出の噴水の前で静かに座っていた。ボクは周りも気にせず走っていったよ」
「彼女もボクに気が付くとまた泣いてたね。会うなり”逃げて”ってね」
「親を殺されて、結婚相手を強いられてるってのにボクの心配なんかしちゃってさ...二人揃って泣きじゃくったよ」
「その時ボクも決意したんだ。この人と逃げる、2人で普通の幸せを掴むって。でも彼女は首を縦に振らなかった」
「”私が何とか話をつけるから貴方だけでも逃げて”ってね?何処まで彼女は自己犠牲の精神を貫くつもりなんだって思ったよ」
「ボクは彼女と一緒になりたいって心から思ってたんだ。なんとか来てくれないかって必死に抱きしめながら説得した」
「何時間そうしていたのかな、彼女もやっと本音を語ってくれたよ。ボクと来たいってね」
「でもね、彼女は監視されていたんだ。人混みが少なくなったと思ったら辺りは元同業者、ヤーさん達で囲まれてたんだ。もう見たらわかるようになってたよ、”七皇会”の人間だってね」
「逃げられないのは考えなくても分かる。でも掴み直したこの人をもう絶対に諦められないからね、とっさに懐のエモノを握ったんだ」
「そして叫んだ、”こいつを傷つけられたくなければ道を開けろ雑兵ども!”ってねっ!」
「思いの外うまくいったよ。一瞬の隙をついて彼女を連れて死ぬ気で走った。皮肉な事に普段から逃げなれてたおかげで路地裏とか網羅してたんだ」
「でもね、最初からわかってたんだ。あの組織から逃げ切るなんて無茶だってね。それにその時は他の組からも狙われてたし」
「バス停も駅も空港も使えなかった。というか大通りすら歩けなかったよ。ごっついナイフなんて持ってたからね、警察の職質も巻かなきゃいけなかった」
「1週間くらいかな、2人で夜中路地裏をさまよっていた時。組の連中に囲まれた」
「もう流石にその時は無理だなって思ったよ。みーんなハジキなんか構えちゃっててさ。ボクは殺されるんだってね」
「するとね、真っ暗な路地が急に照らされたんだ。ヤーさんも彼女もボクもなんだなんだって困惑したよ。そしたらその辺一帯は警察がさらに囲んでいたんだ」
「こんな下っ端ども捕まえて何になるんだとも思ったけどね、実は彼らは
「当日はまだあんまり知名度が低かったんだけどね、どうやら”
「銃刀法も重ねてもう現行犯逮捕だ。組に殺されずには済んだけど当然ボクもその対象なんだよね」
「1人のポリ公がボクに気付いてね、ヤー公共の怒号が飛び交う中静かにこっちを見てきたんだ」
「見るからに上層部の人間がボク達の前に来てね、何を言うかと思ったら”逃げたいか?”って言ったんだよ」
「意味がわからなかったよねっ、逮捕しないでくれるってことかと思ったらそうでもなかったんだ」
「あの組はパクれても”七皇会”自体は無理だ、お前らはこれからも追われ続ける。特にお前は釈放された後も命を狙われ続けるだろうってボクの右手を見ながら言ったんだ」
「...服の下でナイフを握ってたんだよ。もう自分がどうなろうと彼女だけでも自由にさせるんだって。今思えばバレバレだったのかもねっ!」
「そこで初めて知ったんだ、月下の事をね。そこで働いてもらえば新しい戸籍をやるって言われた。...いつの時代だよっ!って感じだったね」
「日本で死に怯えて暮らすか、彼女と安全な月下で暮らしていくか選べとも言われたね。もう頭ん中めちゃくちゃだったよ。でも決断はその場でしなくちゃいけない」
「...うん、彼女と幸せに生きるにはそれしかないって甘んじて受けたよ.....どうせ日本では職がないしねっ!」
ーーー
ーー
ー
「そのような経緯で.....」
「もう昔の事だよっ」
広い一室で、カムイと黒服の男達が対談していた
黒服の男は話の最中美しい姿勢を保ち続け、カムイの昔話を聞き続けた
話が終わる頃にはすっかり息消沈してしまい、暗い雰囲気と化している
被害者とも言えるカムイ本人に全く気にした様子はないが、時折見せた悲しい表情がやはり苦い思い出なのだと知らしめていた
「それで...カムイ様は月下に来たことを後悔されているのですか...?」
「いんやっ、全然っ!」
「ですが...月下奪還作戦を行ったのは最近です。それまで...」
察して欲しいと言わんばかりにたどたどしく話している。カムイはそれを汲んでのことか、より一層明るく振る舞い、大げさに答えを語り出した
「やっと彼女と自由が掴めそうなんだっ、もう何だってするよ!」
「...そうですか」
「何時でも、何処でも、誰にでも不条理な事は起きる。今この瞬間だって何処かの誰かが”自分は世界一不幸だ”って嘆いているんだ」
カムイは立ち上がり、黒服の男を見渡した
いつもの糸目では無く、真っ黒な瞳が鋭く光り、異質な雰囲気を醸し出している
「そしてまたどこかで誰かが言うんだ。”何故自分だけがこんな目に”ってね。全部違うんだよ」
「違う...とは?」
「条理にしたがって生きてるわけでもない連中がね、何かあった時だけ”不条理だ”って言うのは虫唾が走る...」
カムイは男を見下しながら歩き出した
席に座ったままカムイを目で追うが、少し部屋を周り窓付近で立ち止まった
背中しか見えないが、恐らく悲しい顔をしているだろう
聴こえてくる声はいつもと違う、低い音だった
「やっと掴めそうなんだ、ボクは月下を渡さないよ...」
「...」
男が黙っていると、カムイは窓の外から男へと視線を移した。その顔は笑っていた。いつものように、幼さが感じられる様なものだ
「まっボクは罪人だ、こんな人間が条理とか不条理とか語るべきではなんじゃないよねっ!」
「.....いえ、カムイ様は真っ直ぐなお方です」
「ありがとうっ.....さぁ、行こう」
カムイは扉を力一杯押し開けた
無機質な床や壁が伸び、いくつかの扉が見える
上質な廊下だ
スーツのポケットから一つの端末を取り出すと、2F1と映された範囲が赤く光っていた
すぐにそれをしまうと、ゆっくりと歩き出す
後ろには同じ服装をした5人の黒服の男達
差別化を計った綺麗な白スーツの襟元を直すと、カムイは決意を新たにした
「...行くよっ、お前達!作戦通りボクは顔を見せるだけだ。あとはお前達に任せるよっ!」
「「「「はい!」」」」
やがて一つの扉の前に辿り着くと、もう一度端末を取り出した。時刻は12時54分。しばらく睨み合い、それが55分を変わった事を見届け、扉を力強くノックした
攻めてもの礼儀だ、それが済むとゆっくりと扉を開けた
「...みなさんこんにちわっ!」
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◑日本-S・D・Tスペシャル・デュエリスト・チ-ム本部
「俺は[サイバー・ドラゴン・コア]を通常召喚!」
[サイバー・ドラゴン・コア] ATK 400
先攻に選ばれた海堂が
召喚権を行使して呼び出したモンスターはテーマカードをサーチするそれ
早速使用テーマが垣間見られた
「効果でデッキから[サイバー・ネットワーク]を手札に加えるぜ」
「どうぞ」
サイバーに後攻を与えてしまってはワンキルもおかしくない。今回は先攻だが、これからの
だが今は
「...チッ、カードを3枚セットしてターンエンドだ!」
海堂 手札:2枚 LP 8000
モンスター/ [サイバー・ドラゴン・コア] ATK 400
魔法・罠 / リバース3枚
「俺のターン、ドロー!」
ターンが早めに帰ってきた
無論ドローから始めるが、どこかで控えめだった海堂に気を使っているようだ
今回、
「俺は手札の[赤目のダイス]を捨てて、[ワン・フォー・ワン]を発動!デッキから[チューニング・サポーター]を特殊召喚する!」
[チューニング・サポーター] DEF 300
「そして[ダブル・ヨーヨー]を通常召喚!効果で墓地の[赤目のダイス]を特殊召喚する!」
[
[
「ほう、あんたも機械使いか?」
「まぁね、俺はレベル1の[チューニング・サポーター]に、レベル1の[
[フォーミュラ・シンクロン] DEF 1800
「[フォーミュラ・シンクロン]と[チューニング・サポーター]の効果発動!デッキから2枚ドローする!」
「あぁ」
同じ機械族使いだからか、先程より解れた表情で慎也のプレイを見ている。通常の
「手札から[スピード・リバース]を発動!墓地の[赤目のダイス]を特殊召喚!」
[
ここで慎也は一度止まった
チューナーと非チューナーが揃った今、当然シンクロ召喚を行うのだが、手札のカードについて悩まされていた
発動タイミングを考えているのだが、相手のフィールドを見て今発動する事にした
相手もスローペースな
「[赤目のダイス]特殊召喚成功時、手札の[
[
「[56プレーン]の効果発動後、俺は風属性モンスターしか特殊召喚出来なくなる。だけど、特殊召喚成功時の効果を発動![サイバー・ドラゴン・コア]の攻撃力を600ポイントダウンさせる!」
「チェーンする。[サイバー・ネットワーク]を発動。デッキから[サイバー・ドラゴン]を除外するぜ」
[サイバー・ドラゴン・コア] ATK 400→0
[サイバー・ネットワーク]は発動後3回目のスタンバイフェイズに破壊され、墓地に行くと除外されている機械族・光属性モンスターを可能な限り特殊召喚可能な永続罠
つまりチェーンを経ても攻撃力ダウンは回避できない
だが、[サイバー・ドラゴン・ドライ]を除外すれば、戦闘破壊耐性を持たせることは可能だ。今回は攻撃力0が確定したため、サンドバック化を回避するため耐性は付けなかった
結果除外ゾーンの貯蓄のみに留まる
「俺はレベル4の[
[
「そして、手札から[タケトンボーグ]を特殊召喚!」
[
「効果発動!自身をリリースし、デッキから[
[
「俺はレベル5の[
[クリスタルウイング・シンクロ・ドラゴン] ATK 3000
「...チッ、なんだよ、結局ドラゴンになんのかよ?」
「え?あ...うん」
目に見えて海堂は落胆していた
身なりや口調こそ悪いが、機械に対する思いは素直に見える
制圧力のあるモンスターに少しだけ申し訳なさを覚えた慎也は、次に召喚するモンスターを選んでいた
「じゃあ...墓地の[電々大公]の効果を発動!自身を除外し、墓地の[赤目のダイス]を特殊召喚する!」
[
「[赤目のダイス]の効果で[56プレーン]のレベルを4にする」
[
「墓地の[マッハゴー・イータ]の効果発動!俺のフィールドに
[
「俺はレベル4となった[
[
「はっ!いいフィールドじゃねえか?」
「それはどうも」
[クリスタルウィング]を除いた3体のモンスターは、全て機械族モンスターだ。
海堂の評価は得たが、そのモンスター達の合計攻撃力は軽く8000超えている。手応えはなかったが、あえて長引かせる事も無いだろう
静かにバトルフェイズへと移行した
「バトルフェイズに入る」
「あぁ、セットしていた[DNA改造手術]を発動する。フィールド上のモンスターすべてを機械族にするぜ?」
宣言後、唯一のドラゴン族である[クリスタルウィング]に歯車のような物が装着された
申し訳程度の機械要素が組み込まれ、これで全てのモンスターが機械と化した。問題は選択された種族が機械族であり、海堂のデッキはサイバーという所にあった
似たような体験をした事のある慎也は、思わず顔を顰めていた
「...[クリスタルウィング]で[サイバー・ドラゴン・コア]に攻撃!"烈風のクリスタロス・エッジ"!」
「ならセットしていたもう1枚のカードを発動するぜ![超融合]を発動!」
「えぇっ!?やっぱりそれかよ!」
フィールド上すべてのモンスターが飲み込まれ、海堂の元に新たなモンスターが一体のみ現れる
禍々しい色彩達がコントラストを描き、やがて一つに集約した
「異形の機械龍よ、俺に従い、俺に賭せ!俺に歯向かう邪魔者全てを粉微塵にしやがれ!融合召喚、暴れろ[キメラテック・オーバー・ドラゴン]!」
[キメラテック・オーバー・ドラゴン] ATK0→4000
「おいおい...」
「[キメラテック・オーバー・ドラゴン]の強制効果だ、俺のフィールド上のカードすべてを墓地に送るぜ」
慎也の呆れた表情を他所に、海堂は勝手に
「墓地に送られた[サイバー・ネットワーク]の効果だ、除外されてる[サイバー・ドラゴン]を特殊召喚するぜ」
[サイバー・ドラゴン] ATK 2100
「...」
「ヒャヒャヒャ!どうしたー?驚いて声も出ねぇか?」
「...あの、これデッキの調整じゃ」
納得のいかない慎也を前に、海堂の眉はピクっと動いて見せた。どうやら気に触る一言らしく、青筋を立てて怒りを現し始めた
「あ?何言ってんだよ。俺がいつ接待
「そ、そうだけど...」
「それにどんなデッキと戦うかなんか分かんねーだろ!勝手に油断してんじゃねーぞ!」
ハッとした表情を見せた
そうだ、これは海堂とのコミュニケーションの前に、月下へ行く準備の一環なのだ
あの地では今以上に危険かつ未知なる
それを教える為に海堂が
冷静になるんだ
異端に慣れるんだ
まだ適合どころの段階ではないはずだ
「.....墓地に送られた[チャンバライダー]の効果で除外されてる[
それでいい、今出来ることをするんだ
自分に言い聞かせると、慎也は黙ってフェイズを終えた
「...俺はこれでターンエンドだよ」
慎也 手札:3枚 LP 8000
モンスター/ なし
魔法・罠 / なし
「あぁ、それでいいんだ!ドロー!」
フィールドに何も残さないままターンエンド
サイバー相手に無謀以上のプレイだ
しかし、召喚権も使い風属性モンスターしか出せない以上、手札との兼ね合いも含めると何も出来なかったことに変わりない
だが、それは前のターンの事だ
「スタンバイにいいかな?」
「あ?なんかあんのかよ」
相手スタンバイフェイズに入ると、慎也はここでカードをプレイした
「相手フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいる時、お互いのスタンバイフェイズに[
[
「なんだそのカード?」
「[ビードロ・ドクロ]は他に
「チッ...めんどくせーな。だったら俺は[サイバー・ドラゴン]と[ビードロ・ドクロ]で融合だ!」
「融合...っ!?」
海堂がそう宣下すると、何もカードを発動すること無く指定されたモンスターが墓地に送られた。そして代わりに新たなモンスターが海堂のフィールドに現れた
[融合]を使わない融合召喚だ
「異形の機械龍よ、まどろっこしいのは無しだ!時は満ち、後はすべてを喰らうだけだ!融合召喚、行きやがれ、[キメラテック・フォートレス・ドラゴン]!」
[キメラテック・フォートレス・ドラゴン] ATK 0→2000
「くっ...機械族デッキじゃ相性が...」
「知らねーな、[サイバー・ドラゴン・ドライ]を通常召喚!」
[サイバー・ドラゴン・ドライ] ATK 1800
「クックックッ...バトルだ![キメラテック・フォートレス・ドラゴン]でダイレクトアタックだ!」
今度は慎也のライフが持たない
守るモンスターもセットカードも存在しない
勝ち誇る海堂の一手を傍観する事しか出来ず、狭い来る機械龍を見上げていた
「...何やってんだろうね」
「あぁ、そうだなー?」
考えていた
これから月下で戦う相手の事
倒すべき敵
数くべき友
目先の事ばかり考えていたのかもしれない
手札にある1枚のカードを見つめながら思いふけっていた
「.....集中しないとね」
「...あん?」
定まったと思い込んでいた決意を改める
彼は戦士だ、己の欲するもののため、貪欲に戦う戦士だ
こんな浅はかな戸惑いと油断は論外
ここで終わらせるわけにはいかない
手札に[電々大公]1枚を残し、もう1枚のカードをディスクにぶつけた
「[メンコート]の効果発動!直接攻撃時、自身を特殊召喚して相手モンスター全てを守備表示にする!」
「チッ.....なんだよ、防御札持ってんじゃねーか!」
[
「興醒めだなーっ!?」
「それは悪かったね」
勝負は決まった、そう確信していた海堂はぶっきらぼうに吠えていた。対する慎也は余裕そうに見え、心拍数は跳ね上がっている。
こんな事では負けられない
先程からその事ばかりだった
(...なんだろ、この感じは?)
慎也の中で、また新たな蟠りが生まれた
この
久しいその感情からか、すぐには分からなかった。だが、冷静になってみればそれは考える必要も無い、単純明快だ
(...そうか、楽しいんだ)
慎也はこの
ただそれだけだった
「...あんた何ニヤついてんだ?気持ちわりー、俺はエンドだよ!」
「ん?あぁ、ごめん」
海堂 手札:1枚 LP 8000
モンスター/ [キメラテック・オーバー・ドラゴン] DEF 4000
/ [キメラテック・フォートレス・ドラゴン] DEF 0
/ [サイバー・ドラゴン・ドライ] DEF 800
魔法・罠 / なし
「...俺のターン、ドロー!」
勢い良くカードを引いた
これまで慎也は何かと
ある時は遊戯王が蔑ろにされた悲しみ
ある時はそれに対する怒り
ある時は構内大会で果たした優勝への嬉しさ
カムイに敗北し、愛する人を失った時は自分の無力さに怒りすら湧き出さなかった
だが、
忘れかけていた楽しく
戦争の道具にはさせない。俺が取り戻すのだと
「墓地の[スピード・リバース]の効果発動!除外し、墓地の[タケトンボーグ]を手札に戻す!」
何度も世話になってきた万能蘇生札は、少ない手数を補ってくれた。再び手札に呼び戻した
「[死者蘇生]を発動!墓地の[赤目のダイス]を特殊召喚する!」
[
「[赤目のダイス]の効果で[メンコート]のレベルを3にする。さらに墓地の[マッハゴー・イータ]の効果発動!墓地から特殊召喚する!」
[
「便利な効果じゃねーか」
「もう1つ効果があるけどね、俺はレベル3になった[
[
「[タケトンボーグ]を特殊召喚。そして[マッハゴー・イータ]のもう1つの効果を発動!自身をリリースし、フィールド上全てのモンスターのレベルを一つ上げる!」
[DNA改造手術]と同じく、相手フィールドのモンスターにも影響を与える効果だ。だが、相手は融合デッキ。あまりレベルの変動は痛くなさそうた
[ズール]のレベルを上げることが目的なのだろうか
「[タケトンボーグ]の効果を発動!リリースし、デッキから[アクマグネ]を特殊召喚する!」
「またよく分からねーのが出てきたな」
[
「[アクマグネ]は召喚された時、相手モンスターと自身を素材としてはシンクロ召喚する効果を持つ!」
「...は?」
「俺はレベル5になった[サイバー・ドラゴン・コア]にレベル1の[
[スターダスト・チャージ・ウォリアー] ATK 2000
「効果で1枚ドローするよ」
「てめぇ!何俺のモンスター使ってんだよ!?」
「お前が先にやったんだろ!」
寧ろ慎也の方が多くのモンスターを奪われている
意味もない言い合いも程々に終えると、慎也は咳払い一つで仕切り直す。
まだ
「場に風属性モンスターが2体以上いる時、手札の[
[
「...は?
「軸は
「なんだよ、機械族使いじゃねーのかよ」
魔法使いの登場が、海堂の機嫌を更に損ねた。聞こえるような舌打ちや、1枚しかない手札を執拗に弾く仕草は、慎也にも苛立ちを伝染させるかもしれなかった
だが、慎也はいつも通りだ
余程機械に思い入れがあるのだろうと飲み込むに終わり、さほど気にしている様子も見えない
「続けるよ。俺はレベル6の[スターダスト・チャージ・ウォリアー]にレベル1の[
[クリアウイング・ファスト・ドラゴン] ATK 2500
「[ファスト・ドラゴン]の効果発動![キメラテック・オーバー・ドラゴン]の効果を無効にし、攻撃力を0にする!」
「チィッ!」
今回、後者の効果は必要なかった
効果が無効にされると、攻守は0となり、脅威は微塵も感じられなくなる。
守備の体勢だった機械の集合体は、効果と共にステータスとも言える高い力を無に帰されてしまった
[キメラテック・オーバー・ドラゴン] DEF 4000→0
「俺は[
[
「そして、レベル5になった[
[スターダスト・ドラゴン] ATK 2500
「そういやー召喚権使ってなかったな」
「あぁ、バトルだ![スターダスト・ドラゴン]で[キメラテック・オーバー・ドラゴン]に攻撃!"シューティング・ソニック"!」
慎也が命じると、美しき龍はシアン色をした空気の刃を数発放った。狙いはおぞましき機械龍だが、その戦いは呆気なく決する
戦闘破壊を見届けると、待機中の龍に命じた
「[ファスト・ドラゴン]で[キメラテック・フォートレス・ドラゴン]に攻撃!」
「クソが!」
とうとう海堂のフィールドにモンスターが居なくなった。しかし慎也の手札も限界を迎え、双方焦りも見え始めている
お互いライフは全く傷ついておらず、些か効果無効を備えている慎也の方が優勢だろうか
「エンドフェイズに、墓地に送られた[ズール]の効果を発動。墓地の..[ダブル・ヨーヨー]を手札に加える。ターンエンドだ」
慎也 手札:1枚 LP 8000
モンスター/ [クリウィング・ファスト・ドラゴン] ATK 2500
/ [スターダスト・ドラゴン] ATK 2500
魔法・罠 / なし
「俺のターン!」
海堂がドローを行うと、手札は2枚となった
その2枚でパチパチと音を鳴らし、嫌らしく何かを考えている
当然このターンについての事だが、慎也にはやけにその音が大きく聞こえた。やがてそれも済むと、海堂は早速メインフェイズに移る
「[強欲で貪欲な壺]を発動!デッキトップ10枚を除外し、2枚ドローする!」
10枚ものカードを処理するため、ディスクは聞きなれない轟音を唸らせた。早く、簡単なドローカードではあるが、デッキを削るそれはデッキによっては致命的なコストにもなりうる
他にドローソースが無い故の採用ではなさそうだ。何処か楽しそうに自らのデッキを削っているようにも見えた
「...墓地の[サイバー・ドラゴン・コア]の効果発動!相手のフィールドのみにモンスターがいる時、自身を除外する事でデッキからサイバー・ドラゴンモンスターを特殊召喚できる。行きやがれ[サイバー・ドラゴン・コア]!」
[サイバー・ドラゴン・コア] DEF 1500
「[コア]の召喚成功時、手札から[地獄の暴走召喚]を発動![コア]はフィールド上では[サイバー・ドラゴン]扱いだ、デッキと墓地から[サイバー・ドラゴン]を特殊召喚。さらに墓地では[サイバー・ドラゴン]扱いの[ドライ]も特殊召喚する!」
[サイバー・ドラゴン] ATK 2100
[サイバー・ドラゴン] ATK 2100
[サイバー・ドラゴン] ATK 2100
[サイバー・ドラゴン・ドライ] DEF 800
「なるほど、[粋カエル]と同じあれだね...でもよく除外されなかったね」
「カエルと一緒にすんじゃねー!2体の[サイバー・ドラゴン]でオーバレイ、エクシーズ召喚!行きやがれ[サイバー・ドラゴン・ノヴァ]!」
[サイバー・ドラゴン・ノヴァ] ATK 2100
「そして俺は[サイバー・ドラゴン・ノヴァ]でオーバレイネットワークを再構築!機械龍よ、時を越え現世へと姿映さん!無限の叫び、永遠に轟かせろ!エクシーズ召喚、行きな[サイバー・ドラゴン・インフィニティ]!」
[サイバー・ドラゴン・インフィニティ] ATK 2100→2700
「[インフィニティ]はORUの数×200ポイント攻撃力がアップするぜ」
「[インフィニティ]か...」
ここに来て制圧力のあるモンスターが現れた。あちらはあらゆる効果の発動を無効にでき、フィールド上のモンスターを吸収する効果もある
[ファスト・ドラゴン]1体だけでは一手足りなかっただろう
「[インフィニティ]の効果発動!てめぇの[ファスト・ドラゴン]をこいつのORUにしてやるよ!」
「お断りだ、[ファスト・ドラゴン]の効果発動![インフィニティ]の効果を無効にする!」
チェーンの最中、機械龍とシンクロ龍が互いに威嚇しあった。[インフィニティ]は長く連なった尻尾部位を軋ませながら∞の形を模し、そこに[ファスト・ドラゴン]を誘う。対する[ファスト・ドラゴン]も翼を煌めかせ、[インフィニティ]のステータスその物を無きものにするべく力を振るい出した
後は[インフィニティ]が更なるチェーンを経て、効果無効効果を発揮すれば、次に[スターダスト・ドラゴン]の出番がやって来る
そこまでは予想内だった
だが、自体は予想外に進んだ
「なら俺は墓地の[スキル・プリズナー]の効果を発動するぜ!対象にとる効果を無効にする!」
「い、いつの間に!?」
淡い色のヴェールが機械龍を包むと、[インフィニティ]は自身の効果を残したまま力を維持した
罠の墓地効果を止めることの出来ない慎也と[スターダスト・ドラゴン]は成すすべなく[ファスト・ドラゴン]を奪われる様を見ている
[サイバー・ドラゴン・インフィニティ] ATK 27
00→2900
「[簡易融合]を発動!エクストラデッキから[重装機甲パンツァー・ドラゴン]を特殊召喚する!」
海堂 LP 8000→7000
[重装機甲パンツァー・ドラゴン] DEF 2600
「俺はレベル5の[サイバー・ドラゴン]と[重装機甲パンツァー・ドラゴン]でオーバレイ、エクシーズ召喚!行きやがれ、[サイバー・ドラゴン・ノヴァ]!」
[サイバー・ドラゴン・ノヴァ] ATK 2100
「[エクシーズ・ギフト]を発動![ノヴァ]のORUの[パンツァー・ドラゴン]と[インフィニティ]のORUの[サイバー・ドラゴン]を墓地に送って2枚ドローする!」
再びドローを行ったが、手札は2枚
どうやら目的はORUを墓地に送ることだったらしい
「[ノヴァ]の効果を使うぜ、ORUを一つ取り除き、墓地の[サイバー・ドラゴン]を特殊召喚する」
[サイバー・ドラゴン] ATK 2100
「バトルだ![インフィニティ]で[スターダスト・ドラゴン]に攻撃!"エヴォリューション・ストリーム"!」
「グワッ!?」
慎也 LP 8000→7600
「まだだ![サイバー・ドラゴン]と[ノヴァ]でダイレクトアタック!」
「ググ...」
慎也 LP 7600→5500→3400
「俺はエンドだ!」
海堂 手札:2枚 LP 7000
モンスター/ [サイバー・ドラゴン・インフィニティ] ATK 2900
/ [サイバー・ドラゴン・ノヴァ] ATK 2100
/ [サイバー・ドラゴン・コア] DEF 1500
/ [サイバー・ドラゴン・ドライ] DEF 800
/ [サイバー・ドラゴン] ATK 2100
魔法・罠 / なし
「俺のターン...ドロー!」
手札は2枚しかない
だが先程の海堂も同じ様に2枚のカードからあのフィールドを築き上げている。慎也の場合[インフィニティ]を躱しながら動かなければならないのだが
「俺は...[ベイゴマックス]を特殊召喚する!」
[
「効果を発動するよ」
「チッ...ダメだな、[インフィニティ]の効果で無効にする!」
メインエンジンとも言える[ベイゴマックス]の登場は、機械龍の効果発動を促すものになった
また未知の
[サイバー・ドラゴン・インフィニティ] ATK 2900→2700
「じゃあ、[ダブル・ヨーヨー]を通常召喚!効果で墓地の[赤目のダイス]を特殊召喚するよ」
[
[
「[赤目のダイス]の効果で[ダブル・ヨーヨー]のレベルを1にする」
「また[フォーミュラ]か?」
「手札が無くてね、俺はレベル1になった[
[フォーミュラ・シンクロン] DEF 1800
「効果で1枚ドロー」
手札を求めて引いた1枚は更なるドローを可能にさせるものだった。このタイミングで引けるのは実に慎也らしい。どのデッキにも入るような万能ドローカードは、すぐにディスクに呑まれて行った
「[貪欲な壺]を発動!墓地の[クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン]、[フォーミュラ・シンクロン]、[スターダスト・チャージ・ウォリアー]、[スターダスト・ドラゴン]、[
「あ?[マッハゴー・イータ]まで戻しやがった...?」
海堂の言う通り、墓地にいて欲しい。墓地にいるべきモンスターまでも慎也はドローの糧とした。
緩い条件で非チューナーとなり、風属性しか許されない制約もそこまで辛いものではない
それでも慎也は手放した。なにか不都合があるのだろうか
「さらに墓地の[
「そいつは!?」
[
「効果発動。君の[サイバー・ドラゴン・コア]に、レベル1の[
[武力の軍奏] DEF 2200
「...まーた訳の分からんモンスターか」
「シンクロ召喚成功時、墓地のチューナーを効果無効にして特殊召喚する効果だ。墓地の[赤目のダイス]を特殊召喚!」
[
「[音響戦士ギータス]をスケールにセット。そして手札の[ガスタ・グリフ]を捨てて効果発動!デッキから[音響戦士マイクス]を特殊召喚!」
[音響戦士マイクス] ATK 2300
「...は?」
「墓地に送られた[グリフ]の効果でデッキから[ガスタ・コドル]を特殊召喚!」
[ガスタ・コドル] DEF 400
「...あんた、さっきから何デッキなんだ?」
「風属性シンクロデッキだね。俺はレベル3の[ガスタ・コドル]にレベル2の[フォーミュラ・シンクロン]をチューニング、シンクロ召喚!現れろ[
[
「さらに俺はレベル5の[音響戦士マイクス]にレベル1の[
[スターダスト・チャージ・ウォリアー] ATK 2000
「[ラリアン]と[チャージ・ウォリアー]の効果で2枚ドロー!」
「...こいつは長くなりそうだな?」
「[調律]を発動、デッキから[ジャンク・シンクロン]をサーチし、デッキトップを墓地に送る。カードは[クリア・エフェクター]だ」
「今度はジャンドかよ」
たった1枚でジャンドのギミックを示唆し、さらに強力なシナジーを見せた
海堂がそこそこに驚けば、慎也は今見せたカードをすぐに利用するようだ
「まぁね、[マイクス]で増えた召喚権を使って[ジャンク・シンクロン]を通常召喚!効果で墓地の[クリア・エフェクター]を特殊召喚!」
[ジャンク・シンクロン] ATK 1300
[クリア・エフェクター] DEF 900
「俺はレベル2の[クリア・エフェクター・サポーター]にレベル3の[ジャンク・シンクロン]をチューニング、シンクロ召喚!現れろ[
[
「[ラリアン]と[クリア・エフェクター]の効果で2枚ドロー...よし」
輝元との
枯渇していた手札を3枚まで回復させたと同時に、モンスターの展開にも貢献している
ここでやっと[マッハゴー・イータ]を戻した理由も生まれ、決め手となるコンボが完成したようだ
「手札から[スピード・リバース]を発動!墓地の[チャンバライダー]を特殊召喚する!」
[
「さらに墓地の[ベイゴマックス]を除外し、[武力の軍奏]を対象に[ハイ・スピード・リレベル]を発動!除外したモンスターと同じレベルにし、そのレベル×500ポイント攻撃力をアップさせる!」
「なんだ?そいつで殴る気か?」
[武力の軍奏] ATK 500→2000
墓地にはレベル7の[ビードロ・ドクロ]も落ちている
[チャンバライダー]を対象に発動すれば、攻撃力5700と5900の2回攻撃が可能になっていた
さらに[武力の軍奏]は守備表示であり、そもそも攻撃に参加することが出来ない
だが、慎也のこのプレイングに間違いはなかった
「いいや?[星に願いを]を[武力の軍奏]を対象に発動!同じ攻撃力・守備力のモンスターを同じレベルにする!」
「.....まさかてめぇ!?」
[
[
[スターダスト・チャージ・ウォリアー] ☆6→3
勘のいい人間なら何が目的か察知できるだろう
[武力の軍奏]はシンクロチューナーだ
おあつらえ向きな事に、風属性シンクロモンスター達は攻撃力2000が多かった
「俺はレベル3になった[
[シューティング・クェーサー・ドラゴン] ATK 4000
「よ、4体素材で[クェーサー]だと?」
「そう、3回攻撃だ。[ラリアン]でドローし、[チャンバライダー]の効果で[ベイゴマックス]を手札に加える」
慎也は過去に何度か[クェーサー・ドラゴン]の召喚に成功している。だが、4体素材の、いわゆるデルタアクセルより上のアクセルシンクロは初の試みだった
敵の機械龍も戦闘破壊し、さらにプレイヤーに直接ダメージを与える攻撃回数であり、ゲームエンドを示唆している
隣で控えめに存在している[ライブラリアン]も充分に貢献したが、慎也はシンクロ龍に特攻の命を与える
「バトル![クェーサー・ドラゴン]で[サイバー・ドラゴン・ノヴァ]に攻撃!"ザ・クリエーションバース"!」
[ノヴァ]の効果を慎也は分かっていた。フィールドまたは手札の[サイバー・ドラゴン]を除外する事で攻撃力が2100ポイントアップする効果だ。
相手ターンにも使用できるそれは、[クェーサー]の攻撃力を簡単に上回る。だが、それを見越しての[クェーサー・ドラゴン]だ。その発動を許すつもりは毛頭無い
「効果を発動するぜ...」
「許せないね、[クェーサー・ドラゴン]の効果で...っ!?」
海堂は1枚の手札を公開していた。[ノヴァ]のコストであるモンスターかと誤認したが、よく見るとそれは全く関係のないモンスターだった。
唯一共通する点としては、光属性であることぐらいだろうか
「ダメステに[オネスト]の効果を発動するぜ!?」
「うっ...く、くそ...[クェーサー・ドラゴン]の効果で無効にする!」
「さらにチェーンだ![ノヴァ]の効果発動!フィールド上の[サイバー・ドラゴン・ドライ]を除外し、攻撃力を2100ポイントアップさせる!」
[サイバー・ドラゴン・ノヴァ] ATK 2100→4200
結果は見えている
攻撃力が200ポイント足りていない慎也の龍が敗北を期す。折角のアクセルシンクロもこれで意味がなくなってしまったように見えた
2体の龍が轟音を鳴らし、己の全力をぶつけ合う様を黙って見ている事が証明していた
[クェーサー・ドラゴン]の咆哮が途絶え、その僅かな隙
を[ノヴァ]の重々しい爪が貫いた事で、この戦闘に決着がついた
慎也 LP3400→3200
「くっ...!フィールドを離れた[クェーサー・ドラゴン]の効果発動!エクストラデッキから[シューティング・スター・ドラゴン]を特殊召喚する!」
[シューティング・スター・ドラゴン] ATK 3300
「せめてもだ...[シューティング・スター・ドラゴン]で[インフィニティ]に攻撃!」
「チィッ!」
海堂 LP 7000→6400
「俺は...ターンエンドだ」
慎也 手札:2枚 LP 3200
モンスター/ [シューティング・スター・ドラゴン] ATK 3300
/ [
魔法・罠 / なし
スケール / [音響戦士ギータス](7)
「ケッケッケ...俺のターン!」
海堂は相変わらず卑しくカードを手に取った
慎也があれだけ苦労して召喚した[クェーサー・ドラゴン]をいとも容易く突破し、尚且つライフも未だ優位に立っている。余裕の表情を見せていたが、今引いたカードにより、さらに深いものに変わった
「俺は[サイバー・ドラゴン・ノヴァ]に重ね、[サイバー・ドラゴン・インフィニティ]をエクシーズ召喚!」
[サイバー・ドラゴン・インフィニティ] ATK 2300
「[インフィニティ]の効果発動!あんたの[シューティング・スター・ドラゴン]を貰うぜ!」
「くっ...」
本来であれば[クェーサー・ドラゴン]の後継。及ばずとも破壊効果を無効にする能力があった。
攻撃力も3300と大台にあるが、破壊でない除去には一切の耐性を持たず、黙ってフィールドを離れてしまった
慎也を守るモンスターが減るに比例し、敵のモンスターはさらに攻撃力を上げる。段々と窮地に追いやられるのをその身で感じると、自然と冷や汗が流れた
次のターンが帰ってきたとして、[ベイゴマックス]が機能するかも分からない。
[サイバー・ドラゴン・インフィニティ] ATK 2300→2500
「バトルだ![インフィニティ]で[ラリアン]に攻撃!」
「くっ!?」
慎也 LP 3200→3100
「[サイバー・ドラゴン]でダイレクトアタック!」
「ぐわっ!」
慎也 LP 3100→2000
「おまけだ、メイン2に[未来融合-フューチャー・フュージョン]を発動してターンエンドだ!」
「うわぁ...」
海堂 手札:1枚 LP 6400
モンスター/ [サイバー・ドラゴン・インフィニティ] ATK 2500
/ [サイバー・ドラゴン] ATK 2100
魔法・罠 / [未来融合-フューチャー・フュージョン]
「俺のターンドロー」
頼みの新たな1枚
1度は必ず効果を無効にされる今の状況で[インフィニティ]を突破し無ければならない
[ベイゴマックス]なら召喚権も使わず、海堂も無効にするかもしれないと慎也は考えた
が、肝心の[ベイゴマックス]が機能しなければ、
そして[フューチャー・フュージョン]を見た以上、あまり悠長なことは言ってられない
残りライフでは次の攻撃すら耐えられるか怪しい
責めるための手数は少なく、守りを固める時間は無い
恐る恐るディスクに通したカードは、
「...[ベイゴマックス]を特殊召喚」
[
「効果を発動する..」
「駄目だね![インフィニティ]の効果発動!無効にして破壊だ!」
[ベイゴマックス]が着地してくるのを待っていたかのように機械龍が吠えた
地に落ち着く暇もなく、無限を象った尻尾に弾かれると、[ベイゴマックス]の居場所は墓地へと移った
慎也も苦い顔で見送ったかと思えば、口角を上げていた
[サイバー・ドラゴン・インフィニティ] ATK 2500→2300
「...」
「ククク...どうした?もうやることねーのか?」
「いいや?ここを止めてくれると思ってたよ」
「...あ?」
慎也の表情は清々しい程に満足そうだった
先程の苦しそうな声や辛そうな表情がまるで嘘のように振舞っている
海堂が呆気に取られていると、理由を提示するかのように慎也は
「[ガスタの神裔 ピリカ]を通常召喚!」
[ガスタの神裔 ピリカ] ATK 1000
「効果で墓地の[赤目のダイス]を特殊召喚する!」
[
「墓地の[マッハコー・イータ]の効果発動。特殊召喚!」
[
「またてめぇか」
「もう1つの効果発動だよ。リリースし、フィールド上のモンスター全てのレベルを1つ上げる!」
今回の
だが、アタッカーになるわけではない
ここに来てガスタの採用に意味を見いだせそうだ
「墓地の[スピード・リバース]の効果発動。墓地の[タケトンボーグ]を手札に加え、特殊召喚する!」
[
「そして俺はレベル4となった[ガスタの神裔 ピリカ]にレベル2となった[
「...何が来る?」
合計レベルは6
海堂が警戒したのは[獣神ヴァルカン]だった。バウンスでの除去を警戒したようだが、今の慎也は風属性以外のモンスターを特殊召喚することが出来ない
それを踏まえて考えてみると、[魔剣ダーマ]が有力だ。まだ姿を見せておらず、[マッハゴー・イータ]同様に自身で蘇生が可能なモンスターだからだ
だが、現れたモンスターは機械でも獣でも無く、可憐なモンスターだった
「新たな風は力を拒む。我、追い風を纏いしその主を穿とう。強者よ、神風はやまぬ。凪を求めて媚びるがいい!シンクロ召喚、現れろ[ダイガスタ・スフィアード]!」
[ダイガスタ・スフィアード] ATK 2000
「.....はぁ!?」
「[スフィアード]の効果発動!シンクロ召喚成功時、墓地の[ガスタ・グリフ]を手札に加える!」
突如現れたガスタのシンクロモンスター
風属性のシナジーを汲んだガスタの採用だったはずが、気付けばエクストラデッキまで侵食していたようだ
あまり慎也を知らない海堂は素直に驚きを現し...
最早怒りにすら見えるほどに動揺していた
海堂が何かをいう前に、慎也は今加えた手札を捨てた
「[ギータス]の効果発動![ガスタ・グリフ]を捨ててデッキから[音響戦士マイクス]を特殊召喚する!」
[音響戦士マイクス] ATK 2300
「[ガスタ・グリフ]の効果発動、デッキから[ガスタ・ガルド]を特殊召喚!」
[ガスタ・ガルド] ATK 500
「おいあんた...マジで何デッキなんだよ!」
「...ガスタデッキだよ」
何の変哲もない冗談のつもりだった
だが、言葉にして放つと何処かで違和感を覚えた
前にも、いや何度も味わったものだ
それが何かまだ分からないが、ひとまず目の前のサイバーを倒すことに意識を戻した
無論、倒されるのはガスタなのだが
「バトル![ガスタ・ガルド]で[インフィニティ]に攻撃!」
「クソが!」
淡い色の羽を散らしながら、[ガルド]は巨大な機械龍に向かっていった。当然攻撃力が1800も足りていないため、戦闘破壊は免れない
だが、[スフィアード]の存在により、その数値の差に意味が完成されていた
海堂 LP 6400→4600
「[スフィアード]の永続効果によってガスタの戦闘ダメージは君が変わりに受けるよ」
「知ってるわ!」
「そう?ならフィールド上から墓地に送られた[ガルド]の効果発動、デッキからレベル2以下のガスタを特殊召喚する。[ガスタ・イグル]を特殊召喚!」
[ガスタ・イグル] ATK 200
「[ガスタ・イグル]で[インフィニティ]に攻撃!」
「チッ...」
向かってくる下級モンスターを前に、[インフィニティ]は仕方なくその機体を唸らせる。2度目の戦闘も難なく勝利したが、戦闘ダメージは相変わらず主の海堂が受ける
海堂 LP4600→2500
「戦闘破壊された[イグル]の効果発動!デッキからチューナー以外のレベル4以下のガスタを特殊召喚する。[ガスタの希望 カムイ]を特殊召喚!」
[ガスタの希望 カムイ] ATK 200
「また攻撃力が低いやつを..っ!」
「[カムイ]で[インフィニティ]に攻撃!」
ガスタの人形も例論なく機械龍に飛び交った
3度目の戦闘でもガスタは勝利できず、[カムイ]も同様に墓地へと身を預けた
だが、[スフィアード]が彼らの戦闘破壊を無駄にはしない
海堂 LP 2500→400
「...てめぇ...良くもやりやがったな...っ!」
一気にライフは逆転していた
見える箇所に妨害札は無い。だからこそ慎也は思い切ったガスタの特攻ができたが、それも数が足りなかった
結局慎也達は誰一人戦闘破壊できず、このままターンを終えれば海堂のフィールドに変化なく墓地が肥やされる
ライフを削ろうと、どちらが優勢かは分かりにくい状況たか、それもこのまま終えればの話だ
慎也はまたも意外な行動に出た
「...[タケトンボーグ]で[サイバー・ドラゴン]に攻撃!」
「はぁ?」
慎也 LP 2000→300
自爆特攻の必要の無いモンスター
これに関しは通常通り戦闘ダメージを受け、戦闘破壊される。機械と機械がぶつかり合う音が響き、小さな機械の[タケトンボーグ]が部品を散らして破壊されてしまう
[スフィアード]での攻撃を行えば、今の
だが、今度は
「戦闘ダメージを受けた時、手札の[
「あぁ!またわからん奴を!」
[
「そしてこの効果で特殊召喚に成功した時、フィールド上のモンスターで風属性シンクロモンスターのシンクロ召喚を行える!」
「シンクロ召喚だと...?」
「あぁ、俺はレベル5の[音響戦士マイクス]にレベル1の[
[
「...そいつは初顔だな」
「これで全部だね、シンクロ素材として墓地に送られた[OMKガム]の効果発動!デッキトップを墓地に送り、それが
「何個効果あんだよ!」
四体目の
ここで
何処か疲れの見える機械龍を睨みながら、ゆっくりと落としたカードは
「...[
「あんだけテーマぶっ込んどいて...何なんだよマジで...」
[
「[ダーマ]で[インフィニティ]に攻撃だ!」
「チッ...クソが!」
散々海堂の[インフィニティ]を利用しておいて、最後は通常の戦闘破壊を
当然ステータスアップを含めまずとも戦闘破壊は可能だ
力強く迫った機械仕掛けの魔剣は、[サイバー・ドラゴン]を慈悲なく切り裂いた。戦闘ダメージは、慎也に帰るって来ることなく、そのまま海堂にへと襲いかかる
慎也が[スフィアード]に視線を向けると、意味ありげに微笑みかけてきた。だが、目が合うとすぐに、ライフ0を刻む音が密室に響き渡った。
視線を合わせていた時間は短く、
300→0
海堂LOSE
ーーー
ーー
ー
「あぁぁぁ!ちくしょう!」
「お疲れ様」
ソリッドヴィジョンが一時的に停止した
対する海堂は納得のいかない様子で慎也に詰め寄った
何を言うかと思えば、必要ないほどに大きな声でこう告げた
「もう1回だ!」
「うん?」
「納得いかねぇ、あんなにテーマを詰め込んでいつも回るはずがねぇ!もう1回だ!」
「...協力的だね?」
再戦の強要
元々は慎也たちが調整の協力を命じていたはずだが、いつの間にか立場が逆転しいた。慎也としても断る理由もない
「いいけどちょっと待って」
「あ?」
そう言い残し、慎也はノートパソコンを手に取った
何かを操作すると、静かにもとの場所に戻した
海堂が何をしたのか尋ねると「たばこ」とだけ慎也は返した。
少し拍子抜けた顔を見せたが、やがて海堂は笑顔に変わった
数日ぶりの煙がよほど嬉しいのか、上機嫌に次の
だが、1枚のカードを手に取った時、その動作は止まった
先程活躍した[ダイガスタ・スフィアード]だ
「...」
「何やってんだ?さっさと始めようぜ」
「あぁ、ごめん」
それもエクストラデッキに戻すと、部屋にノックの音が聞こえた。まさかと思い開けると、先程説明をしていたスーツの女性がいた
「村上様、お求めの物をお持ちしました」
「早いですね」
「なんだ?もう来たのか!?」
海堂は割って入り、食い気味に女性の手元をのぞきこんだ。彼女は台車のような物を押してきたようだ。その台車の上には様々なものが置いてある
数枚のカード、灰皿、飲み物もあるが、海堂の目線を奪った物は一箱の煙草。
嬉嬉としていた彼だが、見慣れないそれにまたもや呆気に取られていた。彼自身でパソコンを操作し、煙草を選んでいたはずだが、届いたそれは全くの別物だった
「...おいあんた、発注間違えやがったのか?」
「いいや?」
「間違ってんだろ、これじゃねぇよ!」
相変わらず女性は無表情だった
ニコチン不足がわかりやすい怒りだったが、慎也は冷静だ。待っていたかのように口角を上げると、いやらしく言い放った
「煙草としか言ってないでしょ?これは俺の煙草だ」
「はぁぁあ!?」
「俺に買ったら君の煙草を頼むって約束でしょ?勘違いしてた?」
「て、てめぇ.....っ!」
「勘違いした君が悪いんじゃん。勝手に喜んでんじゃねーぞ!」
[超融合]のお返しと言わんばかりに捲し立てた
顔では笑っているものの、相当[超融合]には嫌な思いをさせられたようだ
これみよがしに新品の煙草のフィルムを破ると、火をともし、深く深く味わって煙を吐いた
その煙の奥で、海堂の顔から生気が抜ける様を見届け、受け取った灰皿に灰を落とす
少し挑発しすぎたかもしれなかった
これから彼には付き合ってもらわなければならない
慎也はこっそり隠していた彼の煙草を渡すタイミングを伺っていた
この煙が失った生気の変わりになればいいのだが
〜おまけ〜
「...何かラーメン食べたくない?」
「分かる!」
寒空の下、慎也と灰田は大学から帰路についていた
既に夕暮れ時であり、慎也の提案は若者らしく空腹を刺激させた
乗り気な灰田もふまえると、帰路は変更せざる得ない
自宅への道のりから、多くの飲食店が並ぶ商店街の方へと進行を変えた
「慎也!オススメのラーメン屋あるからそこ行こ!」
「へぇ、この辺?」
「ちょっと歩くけど近いよ!」
「じゃあ、案内してよ」
「うん!」
ーーー
ーー
ー
翌日-聖帝大学
「おはよ...」
「あぁ、おはよう」
「よぉどうした慎也?眠そーじゃねぇか?」
「うん...はぁ.....」
知樹と蛭谷に迎えられると、朝早くの講義の準備を始めた。蛭谷の隣の席を引き、座り込むとカバンをさらに隣の席に置いた
残り少なかった缶コーヒーを一気に傾けると、昨日あった出来事を語り出した
「...昨日ラーメン食べたくなってさ」
「あぁ」
「灰田オススメのお店に行ったの」
「あぁ、光明ラーメン好きだもんなぁ」
「片道1時間」
「「あぁ...」」
多く語らずとも灰田の奇行を察した
疲れた様子の慎也をいたわるように蛭谷が語り出した
「そいつは大変だな...で、ラーメンは美味かったのかぁ?」
「油そば屋だった」
「...それで、油そばは美味いのか?」
「美味しかったよ。ローストビーフが乗っててあっさりした油そばだったね」
「ほう、珍しい具だな?」
「だよね。でもなんか満足してなくて...」
ラーメンを欲していたはずが、1時間歩かされ、挙句に油そば屋に連れていかれたのだ
美味であろうと求めていたものとは異なるだろう
それを聞いた蛭谷は語り出す
「なら慎也、今日暇かぁ?」
「うん」
「なら美味いラーメン食わしてやるよ、なぁ知樹?」
「...そうだな、それがいい」
その日も、放課後にラーメンを求め蛭谷の帰路につく慎也だった
ーーー
ーー
ー
翌日-聖帝大学
「あら村上君、おはよ」
「おはようございます」
「おはよー」
蛭谷達とラーメンを食した翌日。その日もまた別の講義で朝から赴いていた。その日は、黒川と西条が既に席についており、慎也に気が付くと言葉を交わしてきた
「ねぇ、黒川達おいしいラーメン屋さん知らない?」
「ラーメンですか?」
「あら?蛭谷君や灰田君と行ったって聞いたけど?」
「いや昨日も一昨日も行ったんだけど...」
いつも通り教科書や筆記用具を取り出した
あらかた準備が整うと、未だラーメン欲求を満たせていないことを話し出した
「灰田に至っては油そば屋さんだし、蛭谷は手作りだった」
「手作りって...蛭谷さんはご実家がラーメン屋でして?」
「いや...あ、麺は既製品だよ?スープは鶏ガラで作ったって骨見せられた」
「すごいわね...それで美味しくなかったの?」
「いや、どっちもすごく美味しかったんだけど...」
煮え切らないようだ
何故そこまでラーメンに拘るのか、普段から食に貪欲ではあるようだが、既に二日連続で食している
未だ満足できない理由は何処にあるのだろうか
黒川がスマートホンをタップし、何時も締めに行くという店を慎也に見せようとしたその時、教室内に可愛らしくも勇ましい声がこだまして聞こえた
「話は聞かせてもらいましたよ、村上さん!」
「あ、詩織ちゃんおはよう」
「おはようございます!」
かなり遠巻きで挨拶を交わすと、詩織も大股で慎也の元へ近づいてきた。広い教室のため、後方に行くにつれ座席は高くなる。そのため道中段差が多々あるのだが、案の定詩織はそれに躓き、危うく転びそうになっていた
何とか辿り着いた詩織は、何事も無かったかのように本題に移った
「む、村上さん!今日このあとお時間は...?」
「どこか連れてってくれるの?」
「はい!私のオススメですよ!行きましょう!是非!」
「う、うん。じゃあお願いしようかな」
「はい!」
見る人を失った黒川の端末は、黒川自身の手によって暗黒に移り変わった。詩織と付き合いの長い黒川は、詩織がどこに連れていこうてしているのか察しがついているようだ
西条にこっそり耳打ちをすると、西条の表情も固くなっていた
「そ、そんなお店に皆木さんはお一人で...?」
「私は二度と行きたくないわ」
ーーー
ーー
ー
午後18時
詩織に連れられ、彼女の自宅付近まで慎也はやってきていた。普段見慣れない街並みを眺めながら、詩織の小さな背中を追って歩いている
仕事帰りや、部活帰りなど様々な人々が分かる。やがて詩織が指さした方向には、それらしきラーメン屋が存在していた
「あそこです、よく行くんですよ!」
「へぇー、楽しみだ」
実際、少しだけ不安があった
それは詩織のような小柄な女性御用達の店で、慎也が満足できるかだ。慎也も男だ、それに人並み以上に食べる。
いい加減にこの消化不全をどうにかしたいと、控え目に希望を抱いて詩織のあとに続いた
「らっしゃいませい!!」
不意を突かれ、慎也の瞳孔が開いた
活気と表現するべきか、もはや威勢とも言える歓迎の言葉に思わずたじろいだ
「...お、なんだい嬢ちゃん、今日は彼氏連れかい!?」
「か、彼氏だなんてそんな...///」
「す、すごい...」
慎也の不安は吹き飛んでいた
先ほどの勇ましい声、鼻腔をくすぐるニンニクの香り、油の跳ねる音、キッチンの奥は蒸気で視界が悪い
灰田に連れられた店は綺麗だった。この店が汚い訳では無いが、使用感が感じられなかった
蛭谷家も手厚く歓迎してくれた。だが、やはりどこか気を使ってしまっていた
「嬢ちゃんはいつものでいいのかい!?」
「はい、お願いします!」
「彼氏さんはどうするんだい!?」
「お、おじさん...彼氏じゃないですよぉ///」
「...」
壁に並んだメニューを見た
一番端っこにある麺の硬さ、油、スープ濃さなどの項目を見ると、もう注文は定まった
「...あのチャーシューこってりとんこつを」
「はいよ!お好みは!?」
「...粉落とし濃いめ油ニンニクマシマシマシ野菜マシマシで!」
「っ!?」
男は察した
あぁ、この人もかと
注文を終えると、厨房を振り返り、力一杯叫んだ
「皆木スペシャル二つ!お前ら本気で行くぞ!!」
「「「はい!!」」」
店内が騒がしくなった
厨房は勿論。客席の方もざわめき出した
慎也が辛うじて聞こえたのは「あの皆木スペシャルを...?」だ。メニュー名になるほど常連なのかと詩織を見ると、頬を赤らめながら微笑んでいた
「ん?そう言えば皆木スペシャル2つって...」
「私がいつも頼むのでそういう名前に...村上さんが頼んだのがたまたま同じだったんですよ!」
「へぇ...すごい偶然だね」
「本当ですね!」
ーーー
ーー
ー
1週間後-聖帝大学
「おはよー」
「おはようございます!」
「おはよ! 」
「あぁ、おはよう」
「あら?詩織に村上君。今朝は一緒だったのね」
「おはようございます」
「よぉ」
その日はいつものメンバーが集まる講義だった
各々他愛の無い話をしていたが、西条が慎也と詩織に対し、疑問だったことを切り出した
「あの、皆木さん村上さん」
「うん?」「なんですか?」
「その...お二人はあのあと本当に行ったんですか?」
「ラーメン屋さん?」「いきましたよ?」
「そ、そうですか...」
「なんの話をしている?」
解せない知樹が横槍を入れた
西条も黒川から聞いた情報しか持たないため、言った本人に詳細をもとめた
「そのお店、量が特に凄いとお聞きしましたが...?」
「そう?」「そうでしたかね?」
「成程な、慎也も皆木も見た目の割りによく食べるからな」
西条は慎也達の胃の容量を知ら無かったようだ。
蛭谷に促され、慎也達はその日何を食べたか語り出した
「えとね、すんごく濃い豚骨ラーメン。俺が求めてたのはアレだったんだよ!」
「成程ね、村上君はこってりしたのが食べたかったのね」
「確かに俺と行ったの結構あっさりしてたもんね!」
「なんだよ、言ってくれりゃーもっと濃いの作ったのによぉ」
「いやー食べてみてやっと分かったんだよね」
慎也は非常に満足そうだ
求めていたものに気が付き、さらに食すことも出来た
詩織に改めて感謝すると、話は味の話に変わった
「それで美味しかったの?」
「「そうでもなかった(です)」」
「え?」
慎也はともかく、常連の詩織でさえ消極的だった
言葉がハモるほど一致する意見らしく、ならば何故そこまで満足出来たのが新たに疑問を抱いた
「凄いんだよねー野菜マシマシだからそれはそうなんだど、スープの上に浮いてるんだよ!野菜食べ終わってから気がついたね!」
「凄くこってりしててレンゲが刺さるんですよ!」
「そ、そう...」
「ニンニクも油もたまんないね!でもあのスープ飲み切ったら一生ラーメン食べられない体になりそうだから辞めといたんだ」
「おじさん本人がやめるように言ってたので懸命ですね!」
「...また行きたい?」
「「そうだね(ですね)!」」
「......美味しくは?」
「「無い(です)!!」」
ぶっちゃけどうですか?
-
読みたいからやめて欲しくない
-
読みたいけど無くなったら読まない
-
普通
-
無くてもいい
-
読むのが億劫