遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる! 作:v!sion
◐月下-
「...という訳だ」
低い声が部屋中に通った
7名の男女が長く重々しいテーブルを囲い、奥の上座に座る知樹とで席が差別化されている
5名が白いスーツを着用しているのに対し、二人の若者は違う服装だった。知樹はピシッとしたジャケット、バシュはあいかわらずゆったりとした黒いパーカー。白が目立つその空間では悪目立ちしている
「引き続き
「承知しました」
「おーう」
「まだ
「分かったわ」
「ガンリとバシュは待機だ、必要になったらまた連絡する」
「はいはい」
「...」
「.....以上だ、何かあるか?」
間を持て余した知樹が全員に問うた
それを待っていたかのようにグラスが右手を主張させる。爪先まで汚れ1つない綺麗な手だった
「ボス、いいかしら?」
「なんだ?」
「シッドが捕まえた
そのシッドは大きく口をひらいて欠伸を見せた。
知樹はそれを一瞥すると、自身の考えを明らかにする。捕縛した捕虜達の処遇について
「何もしない」
「何も?」
知樹が席を立った
床をいたわったのか慎重に椅子を戻すと、幹部達を見下ろす形をとった
グラスはまだ解せない様子だ
「彼らには何もしない。客として扱うんだ、いいな?」
「え、えぇ...じゃあ詩織ちゃんは?」
「同じだ、丁重に扱え。必要なら心のケアもだ」
そう言い残すと知樹は1人歩き出してしまった。しかし、出口まで歩み寄った所で突如振り返った。まだ命令を与えていない人物がいたからだ
当人もそれを待っていたかのように糸目で笑っている。知樹はカムイに向かい短く放った
「カムイは念の為例の補給地点を見てきてくれ。本当に破壊出来たのかをな」
「うんっ、了解!」
「なんだよボス、俺は上手くやったんだぜ?」
カムイと知樹の会話にシッドが横槍を入れてきた
シッドは声でこそ不服を示していたが、態度は相変わらずだった。冗談交じりで噛み付いたのだろうが、知樹は真面目な顔で是非を語り出した
「あぁ、お前はよくやってくれた。だが一応確認したい。未だ他の
「ふぅん。ハリケーンのせいじゃねぇか?なぁ、グラスの姉ちゃん?」
「えぇ、随分荒れてるみたいよ。帰還が遅れるのも仕方ないんじゃないかしら?」
グラスとシッドがやや否定的な意見を提示した。
シッドは己が実際にその現場に行ったことから、グラスはその付近の天候状況を加味したことからの考えだった。
その二人の後押しに決定が揺らいだのか、知樹も少し考える素振りを見せた。だが、これらはカムイによってまとめられた
「ちょっと、ボクの仕事無くなっちゃうでしょっ!いいよボス、行ってくるよっ。万が一ってこともあるしねっ!」
「...そうだな、頼む」
「了解っ!」
既に立ち上がっている知樹よりも先にカムイが退出しようとした。良質な靴の音を鳴らしながらそのまま去るのかと思えたが、知樹の元まで来ると歩を止めた
視線はドアノブのまま、いつもとは違う雰囲気で語り出す
「...ボス、
「構わないが、どうしてだ?」
知樹が疑問をぶつけるが、カムイは目を合わせなかった。俯いたままなにか思いふけった様子だ。
暫く沈黙を経ると、いつもの糸目を見せた
「決まってるじゃん、戦うんだよ」
理由を聞かれて理由を答えた
おかしな点は何一つ無い普通の会話のはずだった。だが、カムイが命じられたのは現場の確認のみ。戦闘のために兵を連れていくのは解せない
「...そうか、無理はするなよ」
微かに開いた鋭い瞳を見ると、知樹にはこれ以上何も聞く必要は無かった。その場にいる全員がカムイを見据えたが、誰も何も言わない
知樹には伝わった様子だ、カムイがなんの目的で
そのカムイは表現しがたい何かを纏うと、最後に一言残して部屋を去った
「...希望、絶対月下に来てるよ」
「.....あぁ、俺もそう思う」
カムイの背中は頼りがいのある物と言うよりは、修羅を背負っているそれに見えた。彼は何に憤りを憶えているのだろうか、そして何と戦うつもりなのだろうか
大凡の推測が立っているのは知樹だけなのだろう
▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽
◑日本-聖帝大学 / 斎藤side
何か前にも似たような経験をした気がしていた
同じ大学の友と、未知の相手と戦う事
日常生活で体験するとは思えないそれだが、斎藤はデジャヴュの様なものを確かに覚えていた
いつの事だったか、何故そうなったかも覚えていない
「俺の先攻だな」
そんな事よりも今は
気を引き締めて臨もう
さぁ、相手は何を操る?
斎藤は花札の戦士達だ
相手のメインフェイズが始まったが、それは分からなかった
「俺はこいつを召喚する!」
「うん?」
«цпкпошп» ATK ?
「何これ?」
「UNKNOWNだ...そして«цпкпошп»を発動して、カードを1枚セットする。俺はターンエンドだ!」
«цпкпошп» 手札:2枚 LP 8000
モンスター/ «цпкпошп» ATK ?
魔法・罠 / リバース1枚
スケール / «цпкпошп»
「...改造」
「ケケケッ...さぁ、とっとと始めな!」
ディスクの改造も初めて見た気がしなかった。
何故だ、既視感がどうしても拭いきれない
先程から何とか思い出そうとしてみるが、どうしても叶わない。記憶を探ろうとすると、耳たぶの部位が熱くなる
触れてみたが何も無かった
ただの気のせいなのだろうか
きっとそうなのだろう、この既視感も全て
1人静かに納得するとディスクがドローフェイズを催促してきた。早く引けとデッキトップを主張させている
さぁ、己のターンが始まる
「オレのターン、ドロー!」
6枚のカード達は非常にかみ合っていた
相手のカードは分からないが、これならなんとかなるだろう。早速与えられた召喚の権利を使用する事にした
「オレは[
[
「効果発動!1枚ドローするよ」
「ならば俺は«цпкпошп»を発動する!その発動を無効にして破壊だ!」
「くっ!」
魔法・罠ゾーンのカードが1枚減った
リバースカードを発動したのならおかしな点は無いが、初めて«цпкпошп»を目の当たりにした斎藤は理解が遅れてしまった
そして斎藤が召喚権を使ったのに対し、相手はリバースカードを使用した。これは一見等価交換にも見えなくも無いが、まだ相手のカードには処理が残っているようだ
«цпкпошп» ATK ?
「うん...モンスターが増えた...?」
「あぁ、そして«цпкпошп»の効果だ!デッキから«цпкпошп»をサーチするぜ」
フィールドと手札に新たなカードが増えた。無論それはは«цпкпошп»によって非公開情報と化し、情報面でもアトバンテージを取られてしまっている
相手のカードを無効にし、モンスターと手札が増える。それだけ聞くととんでもない効果処理に思えるが、ディスクに発動を拒まれてしまった以上斎藤にはどうしようもできない
「仕方ない...なら手札の[桜に幕]の効果を発動!ドローし、それが
「それもダメだな!手札の«цпкпошп»の効果を発動!その発動を無効にする!」
「く、くっ!」
またも発動を無効化された
先程何かカードをサーチしていたが、それがモンスターなのか今発動したカードと同じものなのかは分からない
そしてまた、別ブロックでなにか効果が発動するようだ
「«цпкпошп»の効果だ、デッキから«цпкпошп»をサーチする」
「またか!」
相手の効果を無効にし、また別のカードを補給した
斎藤は一先ず、相手の効果を無効にすれば新たにカードが補給される、永久的な補給機関だと推測を立てた
しかし、今日でターン1制限の無いそれはあまり考えられない。何か見えないカラクリがあるはずだ
早くも«цпкпошп»に順応し始めた斎藤はさらに睨みを利かせ始めた
しかし状況は悪い
斎藤の2枚のカードに対し、敵も2枚消費している
が、敵は新たに2枚のカードをサーチし、加えてフィールドに1体モンスターが増えている。アドバンテージは明らかに取られてしまった
斎藤は生唾を飲み込むと、改めて危機を悟った
「くっ...じゃあ[花積み]を発動!デッキから好きな
「...いいだろう」
「.....なるほどね」
これは何も反応を見せなかった
ただデッキトップを固定化するだけの効果を無効にするのは割に合わないとの判断だろうか。
これで斎藤は確信した
サーチ効果には限りがある。未だカード名は1つも分かっていないが、ターン1制限のあるパーミッションの様なものだと仮定できた。
だが、肝心の[花積み]の処理に悩んだ。
セットカードを破壊できる[紅葉に鹿]を持ってくるか、それとも次のために[松]を用意するか。さらに先を見据えチューナーを用意するか、それとも...
悩んだ末、妥当な3枚を選んでデッキトップに座らせておいた。またすぐに顔が見えるといいが
「...[超こいこい]を発動!デッキトップ3枚めくって、その中の
「なら«цпкпошп»の効果だ、その発動を無効にして破壊する!」
「また無効...?」
何も出来ない。4枚ものカードを使い、結果デッキトップの操作しか叶わなかった。だが、敵にも疲弊が見えたてきた。
何度かサーチを繰り返していたものの、今は1枚もカードを握っていない。確かこちらにターンを渡した時には2枚手札が残っていたはずだ
斎藤は暗算を始めていた
サーチが2回、手札誘発が2回。
元々あった手札2枚と合わせると手札は4枚で、使用したカードは2枚と本来ならば手札は2枚余るはず。闇に消えた2枚を考慮すると答えは1つしかない。コストとして消えたのだ
「なるほどね、分かってきたよ」
「知らねぇよ、終わりか?」
「...ターンエンドしよう」
斎藤 手札:2枚 LP 8000
モンスター/ なし
魔法・罠 / なし
頼りないフィールドだ
ライフを守る壁モンスターもいなければ手札も心持たない。だが手札に関しては相手も同じだ、次のドローを加味してもたったの1枚
あれだけ無効にされたものの、息切れは相手の方に見える。まだ何とか挽回は可能だろうと斎藤は1度ターンを諦めた
だが斎藤の内心とは裏腹に、敵は勢いよくカードを引いて見せた
「ドロー、ケケッ...バトルだ!«цпкпошп»でダイレクトアタック!」
「ぐうっ!」
斎藤 LP 8000→5200
「くっ...なんだこれは...っ?」
「余所見すんなよ!«цпкпошп»の効果だ、デッキから«цпкпошп»をサーチする!」
斎藤は頭を抑え、苦しみの表情を作っていた。それはディスクが表した戦闘ダメージに伴い、気のせいではない確かな痛みによるものだった
痛い
思わず手を抑え紛らわそうとしてしまうほどに鼓膜を劈くよな痛みが響いている。気づけば抑えていたのは耳だった。この理不尽な痛みもそうだが、やはり何子を忘れている気がしてならない。耳にそんな思い出は無いはずなのだが
「おら、«цпкпошп»でもダイレクトアタック!」
「ぐっ!」
斎藤 LP 5200→4400
「ケケケ...随分苦しそうじゃねぇか?俺はカードを2枚セットしてターンエンドだ!」
«цпкпошп» 手札:0枚 LP 8000
モンスター/ «цпкпошп» ATK ?
/ «цпкпошп» ATK ?
魔法・罠 / リバース2枚
スケール / «цпкпошп»
「オ、オレのターン!」
またリバースカードが用意されている
恐らくそれも無効効果を持つのだろう
嫌に客観的にそれを観察しながら迎えたドローフェイズには、先程顔を合わせたばかりのカードがいた
やはり、無効にされる前提で次のドローフェイズに引ければいいカードを用意しておいて良かった。少し前のプレイングに胸をなでおろすと、すぐにフェイズを移ろった
「俺は[
[
「効果は...」
場に1体でも
だが、手札は残り1枚。効果を使わなければ結局の所
熟考の末、斎藤は発動を放棄出来なかった
「使う...」
「なら«цпкпошп»を発動!その発動を無効にして破壊する!」
「くっ...!」
予想はついていた事だが、目の前の花札が散る様は内心いい気持では無い。無残に塵と化した[松]を呆然と見届けるていると、優先権も回らずまた相手が効果を使用した
「«цпкпошп»の効果だ、デッキから«цпкпошп»をサーチする」
リバースカードはあと1枚
最早それを発動させるしかない。己と相手での持久力での勝負になっている。恐れるな、まだ自分には手段が残っている
「まだだよ...墓地の[花積み]の効果発動!墓地の[桜に幕]を手札に加える!」
「チッ...」
次に効果の発動を試してみた
カードの発動では無く、効果の発動ならどうなのか知る為でもあった。今残っているリバースカードがそれすらにも対応するのなら何も得るものはないが、せめてコストだけでも分かればとすがる気持ちだった
そして、チェーンは無かった
無事[桜に幕]は手札へと帰還を果たした
「手札の[桜に幕]の効果発動!」
デッキトップは操作済み
間違いなくこの効果は適用される、それはお互いに分かっていることだ。しかし、迷うこと無く発動した斎藤だったが、あちらも考える様子なく残りのリバースカードを発動させていた
「«цпкпошп»を発動!無効にして破壊だ!」
«цпкпошп» ATK ?
「やっぱりね...」
[花積み]を無効にしなかった事から、あのカードは発動に対してのみ有効で、モンスターの特殊召喚まで処理に含むカードだと判明した。そしてこれは初ターンでも同じものを見た。
前のターンでサーチを行っていたが、それも含めて全ての手札をセットしていた。そうなるとサーチ可能なカウンター罠となる。それは決して多くない、知っている者ならすぐに検討がつくそれだ
斎藤もようやく理解が追いついた様子だった。この動きはあのデッキしかないと
「ケケケ...さぁどうする?」
「使うしかないよ」
残り少ない手札の事だ
敵のリバースカードと自身のフィールドにカードが無くなった今、使用しないという選択肢等あるはずがなかった
「[札再生]を発動!墓地の
「チッ...好きにしろ」
「[桜に幕]を手札に加えるよ、特殊召喚はしない」
斎藤は墓地の[桜に幕]を再び選択した
今は[松]かそれしかなく、召喚権を使用した今後者にしかこのターンは託せない
[札再生]の後の処理を放棄すると、[桜に幕]自らの効果を使用した。それで無ければ意味は無いからだ
「手札の[桜に幕]の効果発動!」
「なに...ターン1じゃないのか...」
「
[
[
やっと特殊召喚が叶った
まだ[花積み]の操作圏内であり、次のデッキトップも
ここからは
「[桜に幕]をリリースし、[萩に猪]を特殊召喚!」
[
「効果発動!ドロー、カードは[紅葉に鹿]、そのモンスターを破壊するよ!」
「チィ...っ!」
ドローしたカードが
後続を用意しつつ、除去までこなせる万能な
斎藤は一先ず後から召喚された«цпкпошп»を破壊し、また花札を再開させた
「今度は[萩に猪]をリリースして[紅葉に鹿]を特殊召喚!効果発動だ、ドロー!カードは[牡丹に蝶]、そのカードを破壊する!」
[紅葉に鹿]は相手の魔法・罠を破壊する効果。[萩に猪]と合わせ、着々と相手のカードを減らすことに成している
そしてまだ次の
しかしカードを引いてはすぐにフィールドに出すの繰り返しのため、依然として手札は増えない。1度でも
命懸けの博打なのだ
「[柳]の効果発動!墓地の[桜に幕]をデッキに戻して1枚ドロー!さらに[柳]をリリースして[牡丹に蝶]を特殊召喚!」
[
「[牡丹に蝶]の効果発動、ドローしたカードは[芒]だ、相手のデッキトップ3枚を操作する...」
「ほら、見てみろよ」
恐る恐るディスクの画面をのぞき込んだが、3枚のカードは«цпкпошп»と«цпкпошп»と«цпкпошп»だった。最早考えるの馬鹿馬鹿しくなる表記を前に処理は諦めた
そのままも癪なので、取り敢えずデッキボトムに追いやっておいた。だが、肝心のドローは叶った。カードが分からなくとも関係無い
「フィールドにレベル7以下の
[
「効果発動、手札の[桐に鳳凰]をデッキに戻して、その分のドローするよ」
召喚出来なかった
1体何を求めてこのまでドローを繰り返しているのだろうか
「[芒]をリリースし、[芒に月]を特殊召喚!効果発動、ドロー、カードは[柳]だ、特殊召喚する!」
[
[
「オレは[牡丹に蝶]の効果で
[
「[月花見]の効果発動、次のドローフェイズをスキップする代わりにデッキから1枚ドローする。それが
「ふん、いつまでも続くと思うな!」
「だったら続くまで引くよ...」
残りデッキは28枚、
斎藤のデッキ構築にもよるが、確率はどんどんと下がっているのには変わりない
「カードは...[松に鶴]、特殊召喚するよ」
「チッ...」
[
「[松に鶴]の効果発動、ドローしたカードは[柳に小野道風]、だけど特殊召喚はできないね」
だが、本来の召喚条件はすぐに満たせるため、すぐに姿を現した
「[柳]の効果で墓地の[萩に猪]をデッキに戻してドロー.....よし、そして[柳]をリリースして[柳に小野道風]を特殊召喚!」
[
「効果発動、ドロー!カードは[松]、特殊召喚!」
[
「まだだ、オレはレベル2の[
[
「何...まさかそいつも?」
「ターン1なんか無いよ、効果発動!ドロー、カードは[萩に猪]だ、特殊召喚!」
[
「効果発動!」
「いつまで続けるつもりだ...っ!」
「続けられるまでだよ...」
何度目のドローだろうか、お互いに数える事などしていなかった。しかし、相手もいい加減苛立ちを覚え始めた頃、斎藤のドローに変化が現れた。
当然と言ってしまえばそうなのだが、等々
「カードは[札再生]、墓地に送られる」
「ふん...」
「だけど墓地に送られた[札再生]の効果発動!デッキトップ5枚を捲り、その中の魔法・罠カード1枚を手札に加え、残りは好きな順番でデッキトップに戻す!」
「グゥ...ッ!」
まだターンは続くだろう
[月花見]もそうだが、
[札再生]の処理で斎藤は自身のディスクに映る5枚のカードを吟味する。2枚存在した緑色のカードの内、1枚を手札に加えると、残りのカードを順番を変えてもどした。
そし今加えたカードはその後すぐにディスクに預けた
「[超こいこい]を発動!デッキトップを捲り、その中の
デッキトップ3枚は
[桐に鳳凰]、[松に鶴]、[超こいこい]
フィールドの空きと
[
[
「
斎藤 LP 4400→3400
「...自分でデッキトップを弄っておいて...何がしたい?」
「ぐっ...ど、どうしても引きたいカードがあってね...」
自傷気味に笑ってみせると唯一の手札を睨んだ。だが斎藤にこれを使うわけにはいかない理由があった。相手のデッキが彼の睨んだとおりなら、これは絶対に手札に必要になるはずだからだ
賭博師はライフが減る様を見届けると、再びフィールドに触れた。またもシンクロ召喚だ
「オレはレベル2の[
[
「そしてレベル2の[
[
「またそいつか...」
「あぁ、効果発動!ドロー!」
デメリットである次のドローフェイズの放棄も3度重なっていた。どうせ次にドローは望めない、なら今引けるだけ引くだけの話だ
残りデッキは半分をきっている
ここまで引いてきたが、まだ目当てのカードは引けていないらしい
「カードは[柳]、特殊召喚!」
[
「効果発動、墓地の[月花見]をデッキに戻してドロー!」
「貴様...っ!」
非常に長い
「墓地の[超こいこい]の効果発動、オレの[柳]をリリースし、手札の[桐に鳳凰]を召喚条件を無視して特殊召喚する!」
[
「効果発動、ドローしたカードは[芒に月]だ!特殊召喚!」
[
「まだまだ効果発動!カードは[松に鶴]さらに特殊召喚!」
[
「効果発動、ドローしたカードは[萩に猪]、特殊召喚!」
[
「効果...発動!」
連続して特殊召喚を繰り返している
そしてお互いのプレイヤーに焦りが見え始めてきた。敵は止まらぬ
何故だろうか
前にもこんなことがあった気がした
「...れは...自分.........に使...て...」
「...さん...」「.........」
「なん...、何も......ならダメージ...くら......っ!」
いつの記憶だろうか
確かあの時も理不尽な状況下に追いやられ、誰かと共にそれに立ち向かった気がする
「...ご...んね...せっ......準備...たカードが......なか...た...」
「...郎...先...、何も出来ず...すみ......ん...あと......願...しま......」
あの時は守れなかった
相手が悪かったのか、自分の力不足だったのかよく思い出せない。だが思い出したく無いそれが蘇りつつあった。
そうだ、オレは前にもこんな戦いを強いられたことがあった。あの時も改造
「...っ!」
記憶のピースがすべて繋がった
休日の大学、未知の急襲者、改造ディスク
高城と古賀と東野で暁星大学の...一樹とかいう男と
あの時斎藤は[未来融合]を破壊するためには[紅葉に鹿]が必要で、それを呼び込むため[萩に猪]に託したのだった。結果は引けなかった。後輩に全て任せて自分は先に敗れてしまったのだ
「なんだ急に...早くドローしろ」
「...ドロー」
だが今回はどうだ
引いたカードは[桜に幕]。今求めていた
「カードは[桜に幕]、その最後のモンスターを破壊する!」
「くっ!」
「そしてオレはレベル2の[
[
斎藤は一先ず胸をなでおろした
ここまで不安定且つ無謀な博打を続けてきたが、それももうすぐ終わりを迎えるからだ
後はこのカードであのカードが引ければいい
無論これも賭けだ
命を掛けた博打も、結局最後まで続くようだ
「さぁ、満を持して[貪欲な壺]を発動!墓地の[月花見]2体と[猪鹿蝶]、[柳]2体をデッキに戻して2枚ドロー!」
デッキは既に薄い
散々カードを動かし続けたが、まだデッキに2枚ある事は分かっている。さぁ、引け。ここで引かなければいつ引くのだ
あの時は引けなかったが、今ならできる気がしてならなかった。もう、あの時とは違うのだ。託す後輩はいない、自らが戦うしか無い。そして負ける気など毛頭無い。
ならばやることはひとつのみ
欲しいカードを、勝利するためのカードを引くだけだ
「ドロー...」
手札は3枚、見覚えのある面々だった
「.....バトル、[五光]でダイレクトアタック!」
「ぐぉっ!?」
«цпкпошп» LP 8000→3000
「オレはターンエンドだ」
斎藤 手札:3枚 LP 3400
モンスター/ [
魔法・罠 / なし
あれだけ猛威を振るってプレイし続けた斎藤だが、[五光]の召喚と同時にその手はピタリと止まった。だがダメージは充分に与えられた
制圧力もある。相手の手札も少ない今、逆転したと言える状況だろう
「くっ...やっと俺のターンか.....ドロー!」
敵は今引いたカードを凝視した。前のターンでサーチしていたカードと照らし合わせ、そして短く笑い出した。対照的に斎藤の頬を冷や汗が伝った
[五光]で無効にできるカードだろうか、«цпкпошп»というよく分からないもののせいで何を無効にしていいか判断しかねる。静かに相手の動きを待っていると、シンプルなカードのプレイが見られた
「«цпкпошп»を召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「そして...バトルだ!」
「何!?」
[五光]の攻撃力は5000。まさかリリース無しでそれを超えるようなステータスを持つモンスター等召喚出来るはずがない。そこで斎藤は確信した。やはりあの最後の手札はあの時モンスターだと
「ダメステに手札の«цпкпошп»の効果発動!」
«цпкпошп» ATK ?→?
「やっぱりそのカードは...」
「ケケケッ...さぁ死にな!」
ディスクの右端には「ダメージステップ開始時」とあった。そして中央には«цпкпошп»の文字が存在を主張している。«цпкпошп»によって何のカードが分からないが、相手がどのタイミングでカードを発動したかは分かる
斎藤は1度だけ確認ボタンを押すと、ダメージステップ計算前に移行した。だが、ダメージを受けるつもりは無い、そのステップに留まりカードを発動させた
「オレはダメージステップ計算前に手札の[桜に幕]の効果を発動!オレの
[
「ハッ!そんなんじゃな届か...っ!?」
斎藤の指先には、展開に大きく貢献してきた[桜に幕]がいた。手札にいる時に2つの効果を持ち、今回は後者の方を選択した。効果は説明ど通り、戦闘の補助効果だ。
その説明を聞いても依然として態度を変えなかった黒服の男だったが、斎藤が指先を滑らせると言葉を失った。
斎藤の指先には、2枚の[桜に幕]が存在していた
「チェーンして[桜に幕]の効果発動!」
「タ、ターン1じゃない...だと!?」
「散々言ったはずだよ、
[
恐らくこれで相手モンスターの攻撃力を超えられただろう。敵の反応が物語っている。[五光]は長身の刀を天高く掲げると、«цпкпошп»に切っ先を下ろした
轟音と共に風を切る音が鳴らす傍ら、斎藤はさらに指先を滑らせ、もう1枚のカードを見せつけた
3枚目の[桜に幕]だった
「チェーン3だよ、[桜に幕]の効果発動!さらに攻撃力を1000ポイントアップさせる!」
「くっ...くそぉ!!」
[
«цпкпошп»と書かれた白黒のカードが粉砕し、[五光]がフィールドに残った。次に相手のライフポイントが減る効果音が鳴り響き、無事戦闘に勝利した事が分かった
«цпкпошп» LP 3000→1800
「くっ...く、くそ...」
手札、フィールドに一切カードが無くなった
それでも墓地に干渉し、再度動き出すデッキもあるが、斎藤にはその男にはそれが出来ない事を察していた
ここまで独特な動きを見せられては«цпкпошп»だろうと中身が分かってしまう。その上でのプレイングであり、その上での博打だったのだ
相手が唸るばかりでいると、斎藤のディスクにランプが灯った。ドローフェイズは無い、手札は無いが必要も無い
早くこの忌々しい
[五光]がそれを担ってくれる
博打も終いだ
「[五光]でダイレクトアタック!”
今回は成功できた
賭け癖は治らないが、今回ばかりは非常に上手くいった
ずっと頭を悩めていた、失っていた記憶を取り戻したお陰なのだろうか。だがやはり解せない。
自分は何故忘れていたのだろうか
あんなに大きな出来事を、仲間と共に戦った大事な記憶のはずなのに
LP 1800→0
«цпкпошп»LOSE
[五光]の強大な光の中で、思うことはそればかりだった。蘇った記憶よりも、失ってしまった原因ばかりが気になって仕方ない
いつの間にか触れていた右の耳たぶも何も無いだけだった
ぶっちゃけどうですか?
-
読みたいからやめて欲しくない
-
読みたいけど無くなったら読まない
-
普通
-
無くてもいい
-
読むのが億劫