遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる! 作:v!sion
◑聖帝大学入口 / 午後15時50分
「到着しました。ご武運を」
「あぁ」
黒塗りのワゴン車から5名の男女が降りた
若い男性から初老の女性。髭が特徴のいかにも働き盛りの男性と多種多様な人物達だった
その内の髭が特徴の男性は第二次月下潜入作戦待機中だった鬼禅だ。鬼禅は全員の顔を見渡すと若い者へ順番に命令を与えた
「よし、近藤は他の出入口まで走ってくれ。必要に応じて生徒の保護と戦闘だ。お前もついて行ってくれ」
「「はい!」」
若々しい返事を残して、2名の若い精鋭を送り出した
残るは2名の初老の男女と警官姿の男性
その警察服を纏う男には待機を命ずると、鬼禅は自分よりも年上であろう女性と向き合った
その女性は悲しげな表情でいた
「
「構いません。次の世代を守るのは老輩らの役目でもありますから」
「助かります。それで...」
鬼禅は一言も喋らない残りの男性の目を見た
酷く闘志に燃えており、余計な言葉はいらないようだ
だが確認の必要もある
まるでこちらの声が聞こえていない様子のその男の名を呼ぶと、微かに反応がみえた
「大神さん、あくまでも私情は無しだぜ」
「.....分かっているよ」
聖帝の学園長でもあり、
いま彼が聖帝にいるのは、後者の人間としてだ
私情がないと言えば嘘になる
だが生徒を助けるという目的は全くぶれて等いない
鬼禅の横を通り過ぎると、1人先に聖帝へと侵入していった
毎日の様に通ってきた正門だった
ーーー
ーー
ー
◑
/ 午後16時
「...よし、これで大丈夫です」
「ご苦労」
今も尚忙しいそうな
凝り固まった首を回して音を鳴らすと、そのパソコンの画面を安山に向けた。安山が目を細めてそれを眺めると、画面には青い背景にいくつか光る球体が映されている
それについては、大泉からおって説明かあった
「村上がいる付近の地図です。あまり正確ではありませんが、リアルタイムで位置情報が分かるようになりました」
「...GPSのようなものか?」
「そうです。
輝元がその画面を覗き込みながら質問すると、大泉はそれについてはさらなる補足を加え始めた
慎也が月下に持って行った端末が十分に充電され、補給地点を特定出来たからこそかなった物らしい
「色で
「上々だ」
安山はやっと空いた手で葉巻を持つと、少し勿体ぶって火を灯した。化野の煙の匂いと混ざりだし、なんとも言えない香りがその部屋を満たし始めた
「大泉玄、君は引き続き村上慎也のサポートに徹してくれ給え。他の大学はどうなっている?」
「はい、聖帝にはプロ数名と協力者達が
やはり聖帝だけは遅れが目立つ
秀皇が異例の速さで片付いた事が大きく、少しだけ余裕を残す事が出来たと一先ず安山は安心できた
月下で単独行動中の慎也も今は無事だ
危険区域と危険分子の存在は否めないが、総じて順調と評価できるのではないだろうか
だがまだ報告を受けていない大学があった
「...暁星はどうなった、須藤余彦はなんと言っている?」
「そ、それが...」
悪い話なら先に聞きたかったものだと、安山は顔を顰めた。歯切れが悪い白衣の男を急かすように睨むと、その男は須藤からあった報告をそのまま告げた
「暁星に攻め入った
「なるほど、それで?」
意を決したように、白衣の男は一気に捲し立てた
自分だってそのような報告はしたくないのだろう
「皇は”ブラックボックス”を開けてしまったようです」
「...」
思わず安山も手で顔を覆ってしまった
何故だ
何故こんな状況下でそんな事をと
思わず近くにいた輝元、大泉までも苦い表情を浮かべてしまった。化野は代わりに舌打ちで怒りを表現している
*
◑聖帝大学 / 午後15時50分
「とどめよ、[アマテラス]でダイレクトアタック!」
「ぐわぁぁっ!」
LP 1200→0
«цпкпошп» LOSE
「やりますね、黒川さん」
「麗華もね」
聖帝に到着した新たな戦士達が戦場に慣れを感じ始めた時だ
黒川がまた敵を1人屠ると、側にいた西条が賞賛の言葉を送る。聖帝の戦士達は非常に優秀だ。未だ誰一人倒れること無く戦い続けている
ただし例外もいた
黒川が目をやった先には、まるで場違いのように紫煙を燻らす青年がいる。ここが喫煙所出ないからそうなのではない
彼は
「海堂君...って言ったわよね?貴方どうして戦わないのかしら?」
「苗字で呼ぶんじゃねーよ」
まるで会話もままならない状況だ
慎也のデッキ調整に2日間貢献した一樹は、あのあと黒川らと同様に聖帝へ送り出されていた。
なのにも関わらず戦おうとしない
黒川が一戦終えたあとの今も尚の話だ
「あら、じゃあ一樹君。貴方も
「...スゥ」
「.....皆必死に戦ってるのよ!」
「...」
声を荒らげた黒川に驚いたのか、それとも戦況が気になったのか一樹は辺りを見渡し始めた
相変わらずやる気の無さそうな表情でいるが、他の聖帝の戦士達を見て少しだけ気持ちが変わったかのように見える
だがしかし、とある箇所でその視線は止まった
その先では古賀、東野そして斎藤が今まさに
その内の古賀を捉えたまま、一樹の視線は動く事を辞めてしまった
「...何よ、古賀君に興味でもあるのかしら?」
「.....あぁ」
皮肉のつもりだった
思いもよらなかった一樹の肯定によって今度は黒川が言葉を失う番だった
まだ半分以上残っている煙草をその場に落とすと、一樹は古賀の方へ目掛けて一直線で歩いて行ってしまった
「...黒川さん、あの人まさか」
「冗談...だといいんだけど」
突拍子の無い誤解が生まれると同時に、一樹はやっと戦場へ身を預けだした。
彼自身にそのつもりは無く、ただ本当に古賀への興味が重い足腰を動かしているに過ぎない
なぜ興味があるのか、彼自身も分かってはいないようだ。だが、そんな私情が許される地ではない。
一樹の隙を見つけた1人の黒服の男が放ったアンカーが、その
「おい貴様、こんな状況で呑気に散歩気分か!?」
「なんだよ?邪魔するんじゃねーよ」
敵に目をつけられても尚歩を止める気は無かったが、アンカーがそれを余儀なくさせた。一樹がそのまま進もうとするが、敵のディスクと物理的に繋がれてしまいそれ以上動けないようだ
一樹は初めてそのアンカーを見るはずなのだが、引っ張ったり触ってみたりと少しだけ観察すると控えめに驚くに終わった
「強制開始...はーん、承諾信号辺りをいじったんだな」
「余裕だな、なら少し遊んでもらおうか!」
工業科だからか、謎の技術であるアンカーにばかり目がいっている。光のようにみえるが実際に触れることが出来る。強制開始もそうだ、こちらの承諾無しに勝手に開始できるのはどこをいじったのだろうか
1人静かに考えていると、また新たに興味を引くものが現れた
「«цпкпошп»を召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「...はー?」
「やっとこっちを見たな...俺はカードを3枚セットしてターンエンドだ!」
«цпкпошп» 手札:1枚 LP 8000
モンスター/ «цпкпошп» ATK ?
魔法・罠 / リバース3枚
先程から興味が湧いたところでそちらに集中できず、次から次へと未知なるものが現れては行く手を塞ぐ
光の糸も強制開始も«цпкпошп»も良く分からないが今は邪魔だ。最近はいつもそうだ、自分ばかり置いていかれ、周りはなんでも知っているかのように振る舞う
「...チッ、どいつもこいつもよー」
俺が場違いだって言うんなら、はなから巻き込むんじゃねーよ
一樹の中で何かが弾けた。
自分がなぜこの場に存在し、何故訳の分からない男と戦わなければならないのだと不条理の味を飲み込んだ
関係無い
邪魔なものは全て破壊し、興味のあるものだけ残そう
そして後でゆっくり説明してもらえばいい
もう自分だけ何も知らないのは我慢ならなかった
「...[パワー・ボンド]を発動、手札の[サイバー・ドラゴン]2体を融合!ぶっ潰せ、[サイバー・ツイン・ドラゴン]!」
[サイバー・ツイン・ドラゴン] ATK 2800→5600
「バトル、[サイバー・ツイン・ドラゴン]でそのよくわかんねーモンスターに攻撃だ!」
「甘い!«цпкпошп»を発動、その攻撃は無効だ!」
セットカードが表になるが、それもまた«цпкпошп»だった。攻撃が止められたことよりも、いつまでも使用デッキを明かさない事に苛立ちを抑えきれなかったらしい
一樹はその処理を見届けると、温存するか悩んでいた手札達を解放し出した
「もー知らねー![リミッター解除]を発動!」
「な、なんだと!?」
[サイバー・ツイン・ドラゴン] ATK 5600→11200
「まだこいつの攻撃は残ってる...死ねや![サイバー・ツイン・ドラゴン]でもう一度攻撃!」
「くっ....きs「さらに[オネスト]の効果を発動するぜ」
「なん...だと...?」
[サイバー・ツイン・ドラゴン] ATK 11200→13200
「く、くそぅ!」
「うるせー!時間取らせるなモブが!」
「うわぁぁっ!!」
LP 8000→0
«цпкпошп» LOSE
「チッ、悩んでんのも性にあわねーな」
道を塞いでいた先程の対戦相手を蹴飛ばすと、一樹は本来の目的である古賀らの元へまた歩き始めた
もうどうでもよかった
自分は何も知らないが、それでもいい
今はとにかくこの違和感を解消したいだけのなだ
丁度古賀が自身の相手を倒したその瞬間、一樹は彼らの元へとやっとたどり着く
古賀が気がついた時には、既に目と鼻の先まで近くにいた
格好から敵ではないとまでは分かったが、今この状況で何のようなのか、古賀は黙って一樹の言葉を待つ事にした
「あんた、どこかで俺と会ったか?」
「.....ん?」
*
◑闘叶大学 / 午後15時50分
「ぐわぁぁぁっ!!」
LP 600→0
«цпкпошп» LOSE
「やったぁ!また勝ったよ!」
「よし...これで全員だね!」
「そうね」
闘叶大学の代表、南がその
すると少し遅れて戦場に赴いた
けが人は居ないか、誰か欠けている者は居ないか
座り込んでいる生徒達から率先してそれを始めたが、誰しもが疲れによるものだった
この戦場の戦士達もまた、誰一人敗北すること無く戦いきったのだった
「君、この施設の出入口は全部でいくつあるか分かるかい?」
「あ、はい。通常の出入口は1つで、売店裏に業者用の出入口が1つ。後は非常口が1つあるだけです」
「もぅ疲れたぁ...っ!」
「南さん、ここで寝転がらないで」
優介は大の字で横になっている南を起こすと、警官の質問に流暢に答え出した
全部で合計3個あるとの事だが、祝日のため売店裏の出入口は相手いないはずだと後から情報を付け加えた
全員制服の警官達だが、少しだけ立場が上なのであろうその男は優介に軽く礼を言うと付近の警官を集めた
短く何かを告げると、大きな返事が重なってこだました
「まだ外に残っているかもしれない。君達は我々が戻るまでここで待機していてくれ、数名の警官は残すから。いいね?」
「はい、分かりました...」
闘叶の異常な戦場も、漸く終わりそうだった
警官達が二手に別れて走っていく様を見届けながら、優介達闘叶の戦士達はそう思った
相変わらず疲れを一切隠そうとしない南を見下ろしながら、優介はさらに奥に集められた黒服の男達の山を見据えた
良く分からない改造と、良く分からない集団だった
勝利こそ出来たものの、やはり消化不全のようだ
「...結局なんだったんだろう」
何も知らないままその地は凪と化した
不安定な心境なのは、優介ら戦士達だけなのだろう
*
◑聖帝大学 / 午後15時50分
1人の青年が膝を抱えて怯えていた
明かりが点ってない暗い一室の隅っこで、ただ小さく纏まり震えている
それは祝日の聖帝を襲った謎の集団への恐怖だった
ごく自然な感情とも言えるが、彼の腕には
戦うことは可能だった
でもそれが出来ないのは、人並みの恐怖心があったからだろうか
「うぅ...まだ変なのいる...」
傍らには背表紙にラベルが貼り付けられている数冊の本があった。恐らく返却期限が近づいたいた物であり、祝日の中わざわざその為だけに赴いたのだろう
それが今はどうしてこんな状況になっているのだろうか
彼自身も不条理に対して怯えて隠れる事しか出来ていない
「まだ...っ!?」
カーテンを恐る恐る開いて、外の状況を見ようと中腰で覗くと、戦況は前に見た時と変化していた
戦っている者達がいた
その殆どの戦士達は見覚えのある者ばかりだった
先輩にあたる早乙女、斎藤、秋天堂
そして同級生にあたる灰田もいた
1人だけ顔すら見たことの無い人物が、古賀と、何か話しているようだが、それよりも目を引いたのは黒川だった
「あの子は...確か皆木さんといつも一緒にいる.....」
ここで初めて自分以外の生徒の事を考え始めた
自分は一先ずは安全だが、他の生徒はどうなっているのだろうかと新たな不安要素が生まれた
中央通りにいる彼らは恐らく大丈夫だろう
誰もが構内大会にも参加した、実力者である事は間違いない
だが祝日にも関わらず今この地には他の生徒も数名いた。その中には戦えない者もいるかもしれない
そして1人だけ、今の条件に当てはまらないが心配な人物が思い浮かんでいた
皆木詩織の事だ
「もしかして皆木さんも...」
彼は詩織の実力をその身で味わった事のある人間だ。故に彼女の実力はよく知っている
それでも心配する対象に含んだのは、彼自身の個人的な恋愛感情に基づいた結果だろうか
「...」
すぐにでも出ていって確かめたかった
しかし、立ち上がる事すらも難しい
恐怖心は拭いきれていない
震えている膝は、物理的にも精神的にも上手く立たせることが出来ないようだ
「......」
諦めた
結果この青年は戦場に足を踏み得れることを躊躇し続ける事を選んでしまった
自分の実力は自分が最もよく知る
弱いつもりは無いが、強い自信もなかった
ならこの場で1人時を過ごそう
いつか来るであろう静寂を、ただただ膝を抱えて待とう
そう決め込んだはずだった
「.........お前は戦いたいのか?」
その部屋には彼一人しかいない
誰もいない部屋で小さく語りかけたのは、彼の魂とも言える彼のデッキだった
前にシャッフルしたままのデッキトップを引き抜くと、彼が最も頼っているエースモンスターがいた
そのデザインと目が合うと、どうも居心地が悪くなった。自分は、ここで今何をしているのだろうかと
「...わかったよ」
結果として彼は恐怖を乗り越える事は叶わなかった
だが、戦うこと選択肢を選んでいた
戦いたいわけでも怖くない訳でもない
何となく、想い人とあいたくなっただけだった
「....っ!」
開きかけていたカーテンを勢いよく開くと、次は窓を全開させた。行儀よく入口まで戻っていれば、決意が揺らいでしまうような気がしたからだ
彼は窓からその戦場へと足を踏み入れた
距離はさほどなかった
「あん?またお仲間の登場か?」
「えっ!?...お前は!」
一番初めに彼に気がついたのは敵だった
次にその対戦相手の灰田だったが、彼と目が合うと驚きを隠さなかった
他に生徒がいた事に驚いたのだろうが、加えて彼がそんな思い切った事をする人間だと思っていなかったのもある
灰田が彼の名前を呼ぶよりも早く、手持ちぶたさだった他の黒服の男が彼を戦場へと誘った
「まだいやがったか...俺が相手になってやる!」
「...いいよ、やってやるよ!」
張り詰めた声に、少し離れた位置にいた黒川も彼の登場に気がついたようだ。
驚いた様子の黒川と目が合うと、彼の方から声をかけだした
「黒川さん、皆木さんは無事?」
「えっと...そ、そうね」
歯切れの悪い様子だが、一先ずは肯定された
それで一時的な安心を得ると、今度は黒川の方から語りかけられた
なぜここにいるのかと
「それにしても...松...松田君?貴方もいたのね」
「松橋だよ!」
歓迎とは程遠い言葉だった
ぶっちゃけどうですか?
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読みたいからやめて欲しくない
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読みたいけど無くなったら読まない
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普通
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無くてもいい
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読むのが億劫