遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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第八十五話 命懸けの爆竹

◑聖帝大学 / 午後16時0分

 

 

時は松橋のライフが100を刻んた頃

いよいよ敵の数も数えられる程まで減少していた。灰田らの参戦もあり、この地に平穏が訪れるのも時間の問題だろう

 

焦らず、着々と倒せばいい

だが、ここに1人どうしても急がなければならない人物がいる。

 

一樹だ

聖帝大学に力を貸すために現れたはずの一樹は、その聖帝の戦士と少し揉めていた

 

斎藤の横槍により、一先ずはこの場を片付けるのが先決だと収まった。そして反対に一樹は、自身の作戦を用いた決闘(デュエル)によりそれを早急に終わらせる事を提案した

 

しかし、その作戦というのは...

 

 

«цпкпошп» LP 8000 一樹 LP 8000

«цпкпошп» LP 8000 東野 LP 8000

«цпкпошп» LP 8000 古賀 LP 8000

«цпкпошп» LP 8000 斎藤 LP 4000

 

 

近くにいた聖帝の戦力をありったけぶつけるという大胆且つ突飛で異端な作戦だった

 

寧ろこちらの方が時間がかかるのではないか、プレイヤーが多い分戦場は混乱するだろうと言う声もあった。

それでも一樹がこの作戦を決意したのは、彼が発動したカードにある

 

先攻を獲得し、さらにその目当てのカードを発動させただけでどんな目的かなど聞かなくてもわかる。シンプルな多勢への戦い方だった

 

 

一樹 手札:3枚 LP 8000

 

モンスター/ [サイバー・ドラゴン・コア] ATK 500

 

魔法・罠 / [未来融合-フューチャー・フュージョン]

     / リバース1枚

 

 

古賀と東野が告げられた作戦の概要は

 

「俺の[フューチャー・フュージョン]を守れ」

 

と短くそれだけだった

人も時間も使うのに加え運も大きく絡むまさにハイリスク・ハイリターン

 

単純に今日初めてであったそのよく分からない男と協力するのにも抵抗があった

 

実際は前に戦っているため、古賀と東野が思っている以上に彼らの関係は悪いのだが、一樹にとってはこの作戦を強要する事は信頼の証でもあった

 

「俺は一切攻撃の事しか考えねー。だからあんたらに守ってもらわねーと勝てねぇ」

 

当たり前の事を言っていた

だがその瞳と気迫を前に古賀と東野は、何故か上手くいくように思えてしまった

 

そこからS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)から支給された決闘(デュエル)ディスクを持つ、彼ら3人と«цпкпошп»数名のディスク間の通信はスムーズに済んだ

 

アンカーについて簡単にだが概要を学んでおいたのが吉と出た。

だが、そのまさか使うとは思ってもいなかった多勢戦のアンカーにも問題もあった

 

1つは秋天堂と早乙女の不参加

タイミング悪く零れた他の«цпкпошп»との決闘(デュエル)を強いられた彼らはこの作戦に参加出来なかった。単純な人員不足となる

 

2つ目は斎藤の決闘(デュエル)ディスクにアンカー機能が整備されていない事。つまり彼は乱入扱いでこの決闘(デュエル)に参加することとなり、ライフハンディが解こされてしまった

 

奇しくもあの時の状況と重なった

あの時は斎藤が唯一8000のライフポイントを持っており、今はその逆。一樹の未来オーバーを相手に苦しんだのも、今はそれを成功させるために尽くさなければならない

 

皮肉な程に対比していた

その記憶が戻っている斎藤は思わず苦笑いを浮かべていた。思い出してすぐの出来事だ。ふと一樹と目が合うと、一樹はすぐに目をそらして舌打ちをした

 

彼も同じ思いなのだろう

斎藤もまた視線を決闘(デュエル)に戻すと、いよいよ相手のターンが始まった

 

 

「未来オーバーか...そうはさせん!俺は«цпкпошп»を召喚!効果で手札から«цпкпошп»を特殊召喚する!そして«цпкпошп»に«цпкпошп»をチューニング、«цпкпошп»をシンクロ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「効果発動!手札を1枚捨て、[フューチャー・フュージョン]を破壊する!」

 

「チッ...いきなりかよ。おい、誰か!」

 

「僕がやるよ...手札の[エフェクト・ヴェーラー]の効果を発動し、その効果を無効にするよ!」

 

 

2ターン目にして[未来融合]の破壊が過ぎったが、乱戦が幸をなして一樹の作戦は何とか守られた

 

やはり不安定な作戦だ

だからこその4対4なのだが、一樹の冷や汗が物語っているように常に危険を隣り合わせなのだ

 

 

「チッ...俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

「僕のターンだね」

 

「しっかり守ってくれや」

 

 

一樹の永続魔法を守るために手札を使ってしまった東野は、手札4枚から自身のターンを始めることになった。

 

一樹は[未来融合]さえあれば勝てると豪語しており、巻き込まれた東野達はそれを信じるしかない状況だ。

自分のカードでは無く一樹のカードを守らなければならないため、通常よりも難易度は上がっている

 

慣れないプレイングを強いられたからか、東野は恐る恐るカードをディスクに通した

 

 

「...スタンバイフェイズ!僕は速攻魔法[おジャマッチング]を発動!手札の[おジャマジック]を捨てて、デッキから[おジャマ・レッド]と[アームド・ドラゴンLV3]を手札に加える!」

 

 

2枚のカードを使い、2枚のカードをサーチした。自らの[未来融合]を守らせるために手札を使わせた一樹は、どういう感情なのか横目で東野のプレイングを観戦していた

 

一樹は彼のデッキの中身を大体知っている

朧気な記憶だか確かにあの日戦った記憶は戻っていたからだ。確か獣の地縛神を使うおジャマデッキだ。答え合わせを求めるようなその瞳も、少なからず期待なのだろう。一樹のターンで1枚使った手札も、今払ったコストでまた増える

 

 

「その後、サーチしたモンスターを召喚できる!僕は[アームド・ドラゴンLV3]を通常召喚!」

 

 

[アームド・ドラゴンLV3] ATK 1200

 

 

「[おジャマジック]の効果にチェーンして[アームド・ドラゴンLV3]の効果発動!スタンバイフェイズにリリースすることでデッキからLV5を特殊召喚する!」

 

 

[アームド・ドラゴンLV5] ATK 2400

 

 

スタンバイフェイズに発動可能な速攻魔法故にサーチしたLVモンスターをそのターン中にレベルアップさせることに成功した

 

コストとして墓地に落ちた[おジャマジック]のサーチ効果も相まって手札は一気に7枚まで回復する。[おジャマッチング]の効果で召喚したため本来の召喚権も残している、と一樹はまるで自分のプレイングのように東野のターンを反芻していた

 

 

「僕は[おジャマ・レッド]を通常召喚、効果で手札からおジャマモンスターを4体まで特殊召喚するよ!」

 

 

[おジャマ・レッド] ATK 0

 

[おジャマ・イエロー] ATK 0

 

[おジャマ・ブラック] ATK 0

 

[おジャマ・グリーン] ATK 0

 

 

「僕はレベル2の[レッド]と[イエロー]、[ブラック]と[グリーン]でオーバレイ、エクシーズ召喚!お願いするよ[No.29 マネキン・キャット]、[No.64 古狸三太夫]!」

 

 

[No.29 マネキン・キャット] DEF 900

 

[No.64 古狸三太夫] DEF 1000

 

 

「[古狸三太夫]の効果を発動、フィールド上で1番攻撃力の高いモンスターと同じ攻撃力のトークンを特殊召喚する!」

 

 

影武者狸トークン ATK 2400

 

 

「フィールド魔法[おジャマ・カントリー]を発動し、カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

 

東野 手札:0枚 LP 8000

 

モンスター/ [アームド・ドラゴンLV5] ATK 2400

 

     / [No.29 マネキン・キャット] DEF 900

 

     / [No.64 古狸三太夫] DEF 1000

 

     / [影武者狸トークン] ATK 2400

 

魔法・罠 / リバース2枚

 

フィールド/ [おジャマ・カントリー]

 

 

比較的多めのカードを残してのエンド宣言だった

 

フィールド上のモンスターの攻撃力を参照する影武者狸トークンは2400という数字を示している。これは東野の[アームド・ウイング]の攻撃力と同じ数値だ。既にいる相手のモンスターの攻撃力は2400以下だと控えめな情報を得るに終わったことになる

 

とにかく相手ターンになるべく行動出来るように展開し終えた東野の次に、また敵のターンが続いた。

 

 

「俺は«цпкпошп»を発動!」

 

 

それを見た一樹は舌打ちをひとつした

何故«цпкпошп»何かな振り回されなければならない

カード情報の内公開情報なら見せろと、人間味溢れる怒りを抱えていた

 

本日何度目かの憤りだった

 

 

「...!」

「......、...!」

 

「...」

 

 

相手の行動を見ているようで見えず、聞こえているようで聞こえていなかった。

 

何かを発動し、何かを召喚したようだ。なにか思いふけるような表情で何もしない一樹を置いて、この決闘(デュエル)は進み続けている

 

だが一樹を守るべく必死に決闘(デュエル)をするプレイヤーは3名いる。一樹が惚けている間も彼らは戦い続けているのだ。

 

 

「そ、そのモンスターの召喚成功時、[マネキン・キャット]の効果発動!デッキから...[地縛神 cusilu(クシル)]を特殊召喚する!」

 

「甘い!俺はセットしていた«цпкпошп»を発動!」

 

「うっ...!」

 

 

何となく聞こえた会話で、一樹の仲間に当たる東野のモンスターが除外されてしまったことが分かった

 

遅れて見据えたフィールドには相手にモンスターが増え、東野のフィールドのモンスターの数は変化していなかった。微かに聞こえたが、[マネキン・キャット]の効果で出したモンスターが消滅したのだろう

 

仲間と共に戦っているとは思えない程に一樹は東野のプレイングに無関心だった

 

 

「«цпкпошп»の効果発動!」

 

「影武者狸トークンが!?」

 

「...」

 

 

一樹の頭の中は先程思い出した記憶でいっぱいだった。この男は前にも自分のモンスターが破壊され嘆く姿を見せていた。カードに思い入れのある決闘者(デュエリスト)なのだろう

 

前は東野と対面していたのに対し、今ではその横に位置している。何故こんなことになってしまったのか、思え返してみると果てしないものだった

 

 

「俺のターン!」

 

 

そもそもこの地に来たのは慎也らがS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)に不在だったからだと聞いた

 

人手が足りず、こんな自分みたいな者まで駆り出されるなど馬鹿げていると自傷じみた感想しかでない

 

1人自分の世界であれやこれや考えていても、彼が身を置いている決闘(デュエル)は彼を置いてどんどん進んでいた

現在は古賀のターンらしい

そこまで長い間空いたのか、気が付けば一通りの展開は済んでいた

 

 

「[ライキリ]の効果を発動!その3枚のカードを破壊する!」

 

「させん、俺はセットしていた«цпкпошп»を発動![ライキリ]の効果を無効にして破壊する!」

 

「くっ...っ!だけどまだだよ!俺はレベル4の[ブラスト]にレベル3の[ゲイル]をチューニング![ホーク・ジョー]をシンクロ召喚!」

 

 

一樹が身を少し傾けて古賀の手札を覗き込むと、[スワローズ・ネスト]が見えた

 

確か前の決闘(デュエル)ではその鳥獣族のコンボにより攻撃力5桁越えの熱戦になったのだった

 

しかし今回最後の攻撃を担うのは一樹であり、古賀のBFが戦闘に参加する事は考えられていない

なら[ネスト]で召喚するのはあのモンスターだろう

前回は苦労させられた立場なだけに、少しだけ期待感の含まれた感情で古賀の決闘(デュエル)を見ていた

 

 

「今度こそ[ライキリ]の効果を発動!」

 

「なら俺は«цпкпошп»を発動![ライキリ]の効果を無効にする!」

 

「それにチェーンして[スワローズ・ネスト]を発動![ライキリ]をリリースして、デッキから[霞の谷(ミスト・バレ-)の巨神鳥]を特殊召喚する!」

 

「何!?」

 

 

サクリファイスエスケープを兼ねたプレイングだ

確認はしていないが、恐らく対象にとる効果無効だったのだろう。古賀はあまり悩む様子無くチェーンを重ねる選択をしていた

 

結果制圧力の高いモンスターを召喚すると同時に、[ライキリ]による破壊効果が刺さった。非常にいい進展だ

 

 

「だが!俺は破壊された«цпкпошп»の効果により、エクストラデッキから«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

「え、エクストラデッキから!?...うぅん、仕方ない[巨神鳥]の効果発動!」

 

 

せっかく現れた[巨神鳥]もすぐにフィールドを離れてしまったようだ。無関心のように思えた一樹も、その様子を見ると舌打ちで軽い怒りを表して見せた

 

まだもう1人相手プレイヤーが残っている

こちらも斎藤のターンが残っているとはいえ、些か相手フィールドにカードが残りすぎているように見えた

 

一樹の[未来融合]が破壊される危険性も依然拭いきれていない。珍しく冷や汗をかいた一樹は煩わしそうにそれを拭う

 

 

ここであの時の事を思い出した

そう言えば自分は何故あの日聖帝に攻め入ったのだったか。今共に戦っている古賀らとあの時対立していたのは思い出せたが、そもそもの目的は何だったのか

 

 

(...)

 

 

自分はこんなにも忘れやすい頭だったのか、いい加減苛立ちも覚え始めた時やっと思い出すことが出来た

 

 

 

「...記憶操作」

 

「っ!?」

 

「やっぱりそれで脅されてるんでしょ?じゃあ協力してよ」

 

 

慎也の台詞だ

一樹があの日S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)に捕獲されてから時折耳にした記憶操作という技術を、あの時初めて出会った慎也は知っているような口振りでいた

 

そしてS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の三白眼の男は記憶操作を脅し文句のように使っており、それを回避するために一樹は慎也らに従ったのだ

 

だが、その記憶操作を一樹が既に受けているとしたらどうだろうか。忘れてたいたのではなく、忘れさせられていたのではないだろうか

 

何故今の今まで気が付かなかったのだろう

あれだけ恐れていた記憶操作は、既に施されていた事に

 

ピースが欠けたパズルは完成することは無い。一つ一つ組み込んで行く度に、当人はそれに気がつくだろう

 

しかしこれはパズルそのものが変えられているのだ

都合の悪いピースを撤去し、違和感を欠如させるために調整された別の記憶(パズル)

 

結果として一樹のパズルは完成し、足りないピースは存在しなかった。が、気が付けば...いや気付かぬうちにそれは全く別のものに変わっていた

 

奪われたピース(記憶)見つけ(思い)出す事は決して叶わ無い

 

不条理且つ理不尽なそれ(記憶操作)だった

 

 

「...あのやろーども」

 

 

脅しというものは選択肢を天秤にかけさせる事

 

提示するものはなんでもいい

痛み、人質、エトセトラ

 

例えば刃物(技術)を見せつけ、痛み(記憶操作)を伴わない代わりに何か強制させることがあげられる

 

しかし

傷をつけてから、痛みを与えてから、それから逃げる事が可能な選択肢を与えても意味合いは薄い。

 

あくまで天秤だ

一樹の場合は慎也の協力が記憶操作から逃れる手段のはずだった。そして協力へと皿は傾いたのだった

 

 

「...!」

「.....、...!」

 

 

現実は既に必要な記憶操作は済ませており、その上で更なる利用を重ねられた

 

そう、一樹はS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)に利用されていたのだ

 

本来であれば本人すら気がつくはずのなかった事実

 

 

「ふざけやがって...っ!」

 

 

憤慨が大半を閉めていたが、どこかまだ冷静な所もあった。それは何故自分がこのような立場に置かれているのかという疑問だ

 

慎也に協力したからか?

あの三白眼の男に歯向かったからか?

そもそもS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)に捕まったからか?

 

何故拘束されていたのか、それは一樹本人がディスクの改造を行ったからだ。法律でも定められているのは勿論知っていた

 

ではなぜ自分はそのような事をしたのか

 

 

「...」

 

 

思い出せない

全く引っかかることも無い

 

改造を施した事は覚えていた

それは慎也と出会う前から残っていた記憶だ

 

特殊なドライバーを用いてカバーを外したのも覚えている。そういえば道具が足りずに大学の技術室に場所を変えた事もあった

 

そこで気に食わない先輩に見つかったのも覚えている。テストプレイは程々にした

 

 

「...なんでだよ」

 

 

だが全く思い出せそうになかった

そもそもパズル(記憶)そのものがないかのように思え始めた程に

 

動機だけだ

あとは何故改造などしてしまったかという動機が思い出せれば全て繋がるはずなのだ

 

 

「...」

 

 

一樹は依然、真っ暗闇の中小さなピースを探し続けていた

 

 

「うわぁっ!?」「ぐぅっ!」「うぅ...っ!」

 

「...あ?」

 

 

東野LP 5700→4700

 

古賀LP 5700→4700

 

斎藤LP 1900→900

 

一樹LP 5700→4700

 

 

思考の中に割って入ったのは東野らの短い悲鳴だった。そういえば今は決闘(デュエル)の最中だった、どうやらあれから随分進んでいるようだ

 

自身のフィールドを眺めてみると、なんの変化は無い。

代わりに古賀達は随分と疲弊しているように見えた。ぼんやりと眺めていると、古賀が何か放った

 

 

「おい、お前いい加減にしろよ!」

 

「...どーいう状況だ?」

 

 

青筋を立てて争う古賀は、怒りを隠さず一樹に吠えた。対する一樹は見ていなかったと告白するかのように現在の情報を乞うた

 

その態度が気に食わなかったのか、古賀はさらに声を荒らげ答えた

 

 

「見てわかんないの...っ!ライフがもう少ないんだよ!カードも無いし、4人も«цпкпошп»を相手にしてたら幾ら覚えたってキリがないし!お前のいい加減な作戦のせいだよ!」

 

「...なるほどな」

 

「お前...っ!」

 

「止めるんだ古賀クン!...頼みます[五光]!」

 

 

斎藤のフィールドに目をやると、あの時戦ったように[五光]が現れる刹那だった

 

しかしフィールドのモンスターはそのシンクロモンスターが唯一。見渡してみると古賀も東野も似たような状況らしい

 

まだ攻撃が許されているプレイヤーはいないはずなのだが、ライフにも変化があった

乱入ハンデがあった斎藤は兎も角、東野は先程の悲鳴から分かるほどに削られている

 

肝心の一樹の[未来融合]は無事みたいだが、一樹本人もダメージが重んでいる。深く考え事をしていたが、ダメージにすら気が付かないとは自分でも驚きのようだ。

 

古賀の剣幕を無視して一樹は簡略的に状況を判断し終えると、ターンは最後のプレイヤーに移ろった

 

 

「仲間割れか?見苦しいものだな...ドロー」

 

 

一樹は未だ«цпкпошп»についてよく理解出来ていない。それは彼の使うデッキの性質上あまり考える必要が無いからか、彼自身思考向きの性格でないからかは定かではない

 

1巡目がもう間もなく終わる頃、やっと一樹は相手プレイヤーを見据えた。既に«цпкпошп»が存在する中、今更の確認とも言えるだろう

 

 

「まずは永続魔法«цпкпошп»を発動する」

 

 

聖帝側の決闘(デュエル)ディスクにチェーンの発動を問う確認画面が現れた

現在一樹以外のプレイヤーは何かしらのチェーン発動が可能という事になる

 

東野は今では無いと理解した上での放棄

斎藤も同じく今では効果が薄いとの判断

しかし古賀は違った

あからさまな一樹への疑心感により、彼を守る事自体に必要性が見いだせなくなっていた

 

 

「...おい、あんたチェーンは」

「無いよ!先輩も[五光]は温存してください!」

 

「ふっ...では甘んじて«цпкпошп»の効果を使わせてもらおうか、手札から«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「...あれ止めてれば展開も抑えられたかもな?」

「う、うるさい!」

 

 

一樹達に«цпкпошп»は見えないが、古賀のセットカードについては味方にあたる一樹ですら確認できない

 

だが一樹は何となく古賀が何かしらの妨害札を持っているとわかっていた様子だ。加えて発動しなかった事を小馬鹿にするような態度を見せ、古賀との仲は最悪にも見えた

 

表情には見せないが現在最も焦っているのは斎藤だろう。彼はこの作戦が失敗した時の決闘(デュエル)とその理由を把握しているからだ

 

単純な連携不足

そもそも今日初めて顔を合わせたようなメンバーでのそれは困難かつ無謀なものだ

 

 

「特殊召喚に成功した«цпкпошп»の効果に手札の«цпкпошп»の効果をチェーンする。デッキから«цпкпошп»を手札に加え、«цпкпошп»を特殊召喚し1枚ドローする」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「さらに«цпкпошп»の特殊召喚成功時に今サーチした«цпкпошп»の効果を発動だ、特殊召喚しドローだ!」

 

「...チッ、めんどーなデッキだな」

 

「無駄口叩いてる暇があるなちゃんと見てろよ」

 

「あ?俺はもう何デッキか分かってんだよ。あんたこそ無い頭使って観察してろや」

 

「なんだと!」「やんのか?」

 

「落ち着けよ二人とも!来るぞ!」

 

 

いい加減に嫌気がさしたのか斎藤が声を荒らげて荒れる若人を制したが、本人達は依然睨み合っている

仲間とは思えないほどの剣幕だが、敵は仲直りなど待ってはくれない。3体のモンスターが並んだ所で何かエクストラデッキからモンスターを選び出していた

 

 

「俺は3体の«цпкпошп»でオーバレイ!«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「«цпкпошп»の効果だ!貴様の[未来融合]を破壊する!」

 

「あ?おい誰か...」

 

「すまないモンスター効果みたいだ...オレは魔法・罠しか...」

 

「ぼ、僕もです...」

 

 

一樹が把握している中で2度目の[未来融合]への破壊の手だった。早急に諦めを示したのは斎藤と東野。双方モンスター効果への抑制は無いと両手を仰いだが、[未来融合]の維持は今作戦において絶対に妥協できない

 

苛立った様子で一樹は古賀を再び睨むと、吠えるように命令とも取れる言語を放った

 

 

「おい、メッシュ野郎!」

 

「...」

 

 

古賀は明らかに悩んでいる様子だ

しかし発動するか否かで悩むはずは無い。[未来融合]を守るためなら発動出来るものは温存する意味が無い

 

古賀が悩んでいたのはそれではなく発動の動機なのだろう。なぜこんなぱっと出てきて偉そうな訳の分からない人間に協力しなければならないのだと

 

答えが出るまで沈黙を貫き通すつもりだったが、痺れを切らした一樹の怒号がそれをかき消した

 

 

「.....」

 

「...おい、何かあんだろ!」

「うるさい!」

 

 

古賀の魔法・罠ゾーンには3枚ものカードがある。1枚くらい妨害札でもいいはずだが、当の本人が発動を拒んだ以上決闘(デュエル)ディスクは進めるしかなかった

 

一樹が言葉を失ったまま見ていると、チェーンの有無は無いと判断された

 

 

「なら[未来融合]を破壊する!」

 

「こ、古賀クン!?」

 

「...俺だって守るカードは使い切りましたよ」

 

「てめー、俺の話聞いてたのかよ!」

 

「聞いてたよ。でももう無理だろ、これ以上お前にカード使ってたらもたない!」

 

「ふざけんな、何かある反応だったじゃねーか!」

 

「...俺は«цпкпошп»の効果でドローする」

 

 

[未来融合]は一樹のスタンバイフェイズまで維持しなければなんの意味の無いカードであり、それは等々決壊してしまった

 

正体不明のカードに貫かれた永続魔法が一樹の墓地に新たにカウントされると、同時に古賀と一樹の間にあった亀裂も大きな裂け目と化けてしまった

 

ターンプレイヤーである敵は呆れてすらいる

だが[未来融合]を破壊した効果の処理として引いた1枚が余程合致した物だったのか、すぐに古賀らから視線をディスクに戻してプレイに戻っていた

 

 

「俺はフィールド魔法«цпкпошп»を発動する。さぁ、どうする?」

 

「くっ...」

 

 

古賀と一樹が未だ何か言いあっている姿を見たからか、敵は斎藤のみにチェーンの有無を問うように顎をしゃくった

対する斎藤には公開情報範囲内に[五光]という妨害効果を持つモンスターがいる

 

今日のフィールド魔法は非常に強力な効果を持つものが多い。テーマのサポートカードなら尚更、フィールド魔法が無ければ著しく行動力を損なう場合も十分に考えられる。

 

しかし斎藤が[五光]の発動で悩むのはフィールド魔法を無効に出来るか否かでは無く、その後に及ぶ影響を考えているからだった

 

 

「...何も無い」

 

「なら手札から«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「«цпкпошп»の効果を発動。デッキから«цпкпошп»を墓地に送り同じレベルになる。さらに«цпкпошп»を発動、墓地から«цпкпошп»を特殊召喚する」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

東野は敵の手札を見ていた

後攻に許されたドローと展開の途中に回復したものと合わせて未だ3枚の手札が残っている

 

加えて召喚権を行使していない

永続魔法とフィールド魔法に合わせて三体素材のエクシーズモンスターと2体のモンスターもいる

 

今までのプレイヤーとは一線を画すプレイングだ

 

 

「俺は2体の«цпкпошп»でオーバレイ、«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「...僕は[マネキンキャット]の効果を発動!そのモンスターを対象に、デッキから同じ種族か属性のモンスターを特殊...っ?」

 

 

東野が«цпкпошп»を相手取るのは初めてではない。敗北も勝利も経験済みな彼は、彼なりに«цпкпошп»対策としていくつか新たなギミックを導入している

 

そのうちの一つが[マネキンキャット]だ。

種族と属性を自身の決闘(デュエル)ディスクを介して間接的に知ることが可能になるため、あとは己の知識量との兼ね合いで相手モンスターの推測ができる

 

しかし、今回は難しかった

チェーンの有無は問われたものの、[マネキンキャット]の効果は発動することが出来ないようだ

 

 

(...入ってない属性と言えば)

 

 

光はメインギミックのおジャマ

闇は[地縛神cusilcu(クシル)]を初めとしたモンスターがいる

 

水は[マネキンキャット]を召喚するための素早いモンスターが存在し、風は[アームド・ドラゴン]が該当する

 

それでも何のモンスターも召喚出来ないとなると、唯一採用されていない炎属性であることがわかる

 

では炎属性のエクシーズとは一体何か

助けを求め古賀へ視線をやったが、未だ一樹と言い合っている最中だった

 

 

「なんでだよ!」

「だからちげーつってんだろ!共通点天使しかねーじゃねぇか!」

「じゃあ他に墓地コストでレベル変動のモンスターいるのかよ!?あれは[ウラヌス]で、光天使の方が間違ってるんだって!」

「それはねーよ!あんなに特徴的な動きそれこそ他にあんのかよ!この素人が!」

「なんだと!」

「やんのか?」

 

(...ん?)

 

 

どうやらどちらが相手の«цпкпошп»を理解出来ているかで言い合っているようだ

だがお互いに譲らず、双方一致する答えは導かれてはいない

 

しかし、聞こえてくる名称に何か引っかかるものがあった

 

 

「...ねぇ、拓郎![ウラヌス]ってコストで同名カード墓地におくれたっけ?」

 

「ん?...えっと...」

「[ウラヌス]の墓地送りはコストじゃねーよ、だから送れるんだよ!そんなのも知らねーのか?」

「う、うるさいよ!お前には聞いてなかっただろ!」

 

 

一樹が代わりに東野の問いに答えた

東野は一樹も古賀も、お互いに憎まれ口を叩きながらも、やはり確信に近いそれを放っているように感じた

 

古賀の言う通りあのモンスターが[死の代行者ウラヌス]だとすると、直前にフィールド魔法を貼ったのも頷ける

同名モンスターを墓地に落とし、別の蘇生カードで特殊召喚したのならランクは5だ

 

 

「...一樹君?」

 

「なんだようるせーな、やっぱりこんなメッシュ野郎より俺の方が頼りになんのか?」

 

「えと、炎属性でランク5のエクシーズモンスターって言ったら何思い浮かべる?」

 

「んなもん...っ!?」

 

 

一樹がいち早く現在の危機を察した

それは今まで否定してきた古賀の推測を認めた上でのものだが、それが本当ならとあるプレイヤーが危険だ

 

 

「おい、メッシュ野郎!あのエクシーズモンスター破壊しろ!」

 

「は?なんだよ急に、今更のお前の言うことなんか聞かないよ!」

 

「あの賭博師が死ぬ!」

 

「...賭博師ってオレの事かい?」

 

「もう遅い!」

 

 

一樹と古賀がまた言い合い始めようとした瞬間、東野のディスクにあったチェーンの確認画面がブラックアウトした

 

時間切れだ

優先権は失われ、再びターンプレイヤーに回ったのだ

あのエクシーズモンスターが起動効果を発動できるようになった

 

 

「俺は«цпкпошп»の効果を、貴様の[五光]を対象に発動!」

 

「メッシュ野郎!てめーのセットカードはお飾りか!?」

 

「な、何度よ急に!効果無効なんか無いんだって!」

 

「馬鹿野郎...っ!もういい!」

 

 

[未来融合]が破壊された今、一樹のフィールドには[コア]と1枚のセットカードしか存在しない

東野のヒントでいち早く何かを察した一樹は、謎の衝動に駆られそれら全てを賭して何かをしでかそうとディスクのボタンを叩いた

 

 

「[サイバネティック・オーバーフロー]を発動![コア]を除外して賭博師の[五光]を破壊する!」

 

「なにっ!」

 

「な、何やってんだよ!?」

 

 

これで発動にコストを要する罠カード

これにより一樹は一切の発動出来るカードを失う事となり、次の自ターンまで手出しは出来なくなった

 

だが破壊対象は相手モンスターでは無く形式上見方であるはずの斎藤のエースモンスターだった

あれだけ相手モンスターを破壊しろと命じておきながらも、何故か一樹は[五光]に破壊の切っ先を向けたのだ

 

 

「...チッ」

 

舌打ちをすると、液体が頬を伝った

その冷や汗にどのような感情が含まれているのかは、一樹本人にも分からなかった

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