遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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本当にすみません...

様々な事が重なり今夏はかなり忙しくなってしまいました...


第八十七話 凱旋と新たな謎

◑聖帝大学 / 午後16時30分

 

 

「こ、これで...僕達の勝ちだよね!?」

 

「そうだ!俺達の勝ちだ!」

 

 

祝日の聖帝を闊歩していた謎の集団達は、たまたま居合わせた生徒、派遣された戦士達によって制圧を成された

 

あるものは疲れを隠さず

あるものは喜びを顕に

そしてあるものは大地に広がる黒の色を眺めていた

 

ざっと100名はいるのだろうか

数時間でよく対処できたものだと胸をなで下ろすのも今は許される

 

しかし未だ解せない人間もいた

疲弊と安堵、そして何か疑問を抱く3種類の人間達でその場はカテゴライズできるだろう

 

そのカテゴリーの中に該当する秋天堂の元に、同じく疑問を拭えない黒川が耳打ちをするように小声で話かけた

 

 

「あの、秋天堂さん?」

 

「...ん、なんだい」

 

 

返答はあったが意識は他に向いている様子だった。現に視線はずっと虚空を捉えたまま黒川の方へ向かないでいる

 

そこで黒川は湾曲な言い回しを避け、自身が抱いていた疑問を直接秋天堂にぶつけることにしたのだった

戦いの最中で見てしまった異常について

 

 

「私達はS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の支持でここに来て戦ったわ。でも偶然居合わせた秋天堂さんがなんで”アンカー”を持っているのか気になるわ」

 

「...」

 

「.....鳴ってますよ」

 

 

黒川の疑問に秋天堂が答える代わりに、秋天堂のズボンの中で篭った音楽が鳴った

黒川を一瞥して画面を確認すると、秋天堂は何か含むような小さな笑みで「もう隠す必要も無いね」とだけ呟き通話に応じだした

 

 

「...はい安山総帥、秋天堂光です」

 

「安山さんってやっぱり...」

 

 

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の総帥の名

その人物とコンタクトが可能であり、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の技術ともなった”アンカー”の所持

 

それを否定する訳でもなく肯定にも取れる行動を前に最早黒川の疑問は確信にもなっていた

やはりこの先輩もS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の人間だったのだと

 

 

「...はい、灰田光明、古賀拓郎、東野圭介、海堂一樹、西条麗華、草薙花音そして黒川美姫らの応援もあって制圧は完了しました」

 

 

 

任務の報告だろう

自分の名前もあった事からそれは繋がる

 

本当なら今すぐにでも端末を奪って詳しく話でも聞きたい所だったが、それは理性が抑えてくれた

分からない事ばかりなのだ

 

なぜ一般の学生である秋天堂がS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の中でも総帥と繋がる程にS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)に身を預けているのか

今回の事件の詳細など上げだしたらきりがない

 

それでも黙って秋天堂の横顔を眺めていると、会話の雲行きは怪しくなっていた

 

 

「はい?いえ、それは...」

 

「何かあったんですか」

 

「...静かに」

 

 

思わず入れてしまった横槍は秋天堂に制された

簡易的な静寂を作ると、秋天堂は何かの音を求めるように耳をすませる

 

やがてそれだけでは判断材料にならないと至ると、また別の端末を取り出し何かを操作しだした

数分も経たないうちに何かに納得した様子を見せ、通話中の端末に向かって確認しますとだけ残すと1人駆け出して行った

 

その瞬間、呆気に取られた黒川よりも早く少し離れた位置にいた灰田が声を上げ同じく走り出した

 

 

「あ!秋天堂さんどこに行くの!?」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 

秋天堂を追う形で灰田と黒川の3名が静かな聖帝構内を走り出した

 

どこに向かうのかは疑問だったが、聖帝学生だからこそ少し進めば目的地は見える

聖皇館と呼ばれる建物だ

 

主に職員の部屋や資料を保管するためにある建物であり、通常であれば生徒はあまり縁のない場所

学園長室もそこにはあるが、黒川の知る人物の中では慎也ぐらいしかこの建物に訪れた事のある人物はいない

 

何故そこへ急ぐ必要があるのだろうか

何も考えていない灰田は兎も角、黒川は頭を働かせながら不安定に大地を蹴っている

 

するとやがて答えは見えた

決闘(デュエル)終了のブザーだ

建物の方からそれらの音が次第に大きく聞こえてくる

 

それも連続してだ

未だ誰かが戦っているという事か、そう理解した黒川の速度は増していくばかりだった

 

 

やがてあまり見慣れない造りのそこに辿り着くと、大きめの扉は開けっ放しにされていた

 

先に突入した秋天堂の背中目掛けて走り混むと、信じられない光景を目の当たりにした

 

 

「なっ...し、秋天堂さん...これは...」

 

「.....僕も驚いている所だよ」

 

「なになに!何があるの!?」

 

 

いつの間にか追い越していた灰田の声を背中で受けながらも、黒川達の視線は床に広がるあるものから離せないでいた

 

それは黒

正確には黒の衣を纏った人間の数々だ

 

先程まで彼女立ちが戦っていた者達と恐らく同じ集団だろう。数はあの戦場にいた人数より少し多い程か

あの大通り以外にも戦場とかした場所があり、それがこの聖皇館という事だ

 

それは考えなくとも分かる

だが問題は誰がこれほどの人数を相手に戦ったのかだ

 

他にも生徒はいたのだろうが、これほどの実力を持った決闘者(デュエリスト)は誰なのだろうと新たな疑問で頭は一杯だった

 

聖帝の誇る最強小鳥遊有栖か

彼女が祝日にいるとは考えられないが、他に聖帝側でこれ程の実力者は思い浮かばなかった

 

秋天堂と黒川、そして灰田すら言葉を忘れていると、答え合わせの様に奥からこだます革靴の音が聞こえてきた

 

 

「だ、誰なの...?」

 

 

いつの間にかブサーは沈黙している

やがて姿を見せた人物はどう見ても小鳥遊では無かった

 

共通点は聖帝の人間であることぐらいか

あとは肺呼吸と二足歩行、生物上当たり前のものしか思い浮かばない

 

 

「...無事のようだね」

 

「あ、あなたは...」

「えっ!あ、俺知ってるよ!」

 

 

秋天堂は黙っている

しかしこの3名誰もがその人物の名前も顔も知っていた

 

それでも黒川が名を呼べないでいるのは信じられないからだ。その人物がS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の関係者となると秋天堂についても合点はつく。だが、一般の学生である黒川には信じられない繋がりだった

 

呆然としている黒川を他所に、灰田構わず自身の知識を披露しようと声を張り上げた

その人物の名を

 

 

「学園長だよ!大神さんだよ!」

 

「....」

 

 

聖帝大学学園長の大神は、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の人間として聖帝の生徒の前に姿を晒した

 

その表情は酷く悲しげなものだった

 

 

 

 

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◐月下-S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)第二補給地点

 

午後16時5分

 

 

《...村上か?》

 

「はい、大泉さん?」

 

《そうだ》

 

 

消えた奇抜の男は気になるが、慎也はそれよりも繋がった通信を優先させた。気がつけば携帯用の端末の充電も済んでおり、本部との通信も良好

 

しかしその本部の命令で捕縛した男には逃げられてしまった。それから話そうかとも考えたが、先に口を開いたのは大泉の方だった

 

 

《安心しろ、今回はいいニュースだけだ。後は大神から伝言を頼まれているが》

 

「順番にお願いします」

 

《ではS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の報告からだ。午後13時31分に秀皇大学の鎮圧完了。並びに午後15時20分に暁星大学、午後16時2分に闘叶大学の鎮圧が完全に完了したとの事だ》

 

「...随分時間差がありましたね」

 

《元々いあわせた生徒の数と派遣できたS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)決闘者(デュエリスト)の差が大きかった。こればかりは駐屯地の見直しが必要だろうな》

 

「聖帝は?」

 

《安心しろ、それは大神からの伝言と繋がるが》

 

 

一呼吸置いて大泉は短く述べた

恐らく大神から告げられた事をそのまま放ったのだろう

 

 

《任せて貰おう》

 

「...それだけですか」

 

《あぁ、それだけで通じるとまで言っていたな》

 

「じゃあ...聖帝には大神さんが?」

 

《分かるか、数分前に到着し戦闘を始めたとの報告を受けた。他にも月下潜入任務待機中のプロもいる。時間の問題だろう》

 

 

それが聞こえ少しだけ安心できた

一先ずは日本は大丈夫だろう

 

問題はこれからだ

これからの慎也の行動と、日本国内のメディアの問題

後者は無論、前者についても慎也はS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)に一任するしかなく、こちらから出来ることと言えば先程の謎の男についての報告ぐらいか

 

恐る恐る逃亡を告げようと、今度は慎也の方から口を開いた

 

 

《...大泉さん、俺からは悪いニュースです》

 

 

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◑聖帝大学 / 午後16時30分

 

 

「...」

 

 

一樹は1人頭を悩ませていた

 

それは右肩に背負う齋藤の重みにでは無く

辺りに犇めく黒服の男たちでにでも無く

突然走り去りどこかへ行ってしまった者達についてでもない

 

それらについて疑問に思わなかった訳では無い

だがそれよりもまず、何故齋藤の意識は無いのかだ

 

突然この男は倒れた

決闘(デュエル)でライフが0を刻んだのがトリガーなのだとは分かっているが、何故身体に影響が及んでいるのか彼はまだ分かっていない

 

真面目に話を聞いていなかったから

それが大筋の理由だった

現に同時に共に送り出された灰田や黒川はS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の人間の話から凡その話を理解している

 

自分だけが

自分だけが«цпкпошп»についても、この謎の集団についても、齋藤の意識が無いことについても何もわかっていない

 

少し前ならそれ苛立ちを覚え劣等感を誤魔化していたかもしれない。だが今の彼はそれから必死に脱却しようと試みている最中だった

 

その時、自ら問い出す前に、東野が俯く一樹に声を放った。灰田を見送った古賀もまた近くにいる

 

 

「どうしたの、一樹君?」

 

「...なんで決闘(デュエル)で負けただけで意識まで失うんだ?」

 

「おいおい...本当に話聞いてなったのかよ」

 

 

古賀と東野は代わる代わるS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の話を語りだした。

 

アンカーについて

«цпкпошп»について

決闘撃痛(デュエルショック)について

そして月下について

 

月下に関してはまだ詳しく分かっていない事が多く、端折る所もあったが兎に角一樹は欲しかった情報を得た

元々聞かされていたはずのそれに、一樹は動揺よりも解せない様子で答えた

 

 

決闘撃痛(デュエルショック)ってなんだよ?ライフ減少警告機能とはちげーのか?」

 

「いやいや...」

「一樹君...」

 

 

一樹の率直な疑問に古賀達は苦笑いすら浮かべた。そこまで知らないのか、これから戦いに行くというのに説明をそこまで無視してたのか

 

そういった感想もあったが、何よりも指摘すべき所は他にあった。先程まで共に戦ったばかりという事だ

 

 

「さっきの決闘(デュエル)でバーンダメージ受けてたじゃん!何も感じなかったの?」

 

「...あ?」

 

 

古賀の言う通りだった

あの乱戦において聖帝側も少なからずダメージを受けていた。一樹の熟考も彼らの短い悲鳴で中断したのもまだ記憶に新しい。

 

小馬鹿にするような口調を他所に、一樹は重い一言を放った。自身の体験したことだ

 

 

「...痛みなんかなんもなかったぜ」

 

 

決闘撃痛(デュエルショック)の存在を否定するかの様な一言だった。

 

 

 

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◐月下-??? / 午後16時30分

 

 

「酷いメにあったもンだ」

 

 

奇抜のファッションの男が荒廃した大地を踏み締め、一歩一歩進んでいる

しきりに肩を気にする様子から、慎也の拘束から逃れるに随分荒い方法を取ったことが分かる。

 

 

「それにしても」

 

 

男は歩むのを辞めた

すぐ目の前に思いがけない物を発見したからだ。

 

それは2台の二輪車と恐らくこれに乗っていたであろう操縦者の2名。試しに跨り、何度か煽ると問題なくエンジンは轟き始めた。それに満足なのか男は口角を上げると、一度車両から離れた

 

 

「あのシンヤとか言うヤツは予想外だったが、やっぱリ俺様はツイてやがる」

 

 

男はその場に転がる意識の無い黒服を蹴り退かすと、もう一度二輪車に跨った。最後に慎也と出会ったあの補給地点の方へ目を向けると、なにか含むような笑を繕った

 

 

「アの危険分子も勝手に自滅するシな」

 

 

大袈裟にエンジンを吹かすと、男は反対の方向へ全速力で走り出した。

迷うこと無く進むその様は、地図など不要かのように思えるものだった

 

 

 

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S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)本部 / 午後16時50分

 

 

「安山総帥、聖帝に派遣した決闘者(デュエリスト)も帰還しました」

 

「ご苦労。大神忍、秋天堂光2名はそのままこの部屋に呼び給え。他のプロ達はそのまま待機させ、聖帝の生徒達は念の為決闘力(デュエルエナジ-)の再確認させ給え」

 

「はっ...ですが秋天堂から連絡があり...実は」

 

「...」

 

 

この部屋の中では比較的若いスーツの男が控えめに何かの報告を成した。

安山にとったは本日何度目かの頭を抱えるような内容であり、最早疲れた顔を隠す事も辞めて促している

 

 

「流石にうんざりしてしまうな」

 

「お察しします」

 

 

すると数分後

報告に来たであろう大神と秋天堂が姿を見せる

 

傍らには黒川と灰田の姿もあった。

気まずい沈黙がしばし生まれると、大神が帰還した戦士としての報告でそれを破る

その間は誰もが黙って聞いていた

 

 

「...以上です。聖帝も無事鎮圧が完了しました」

 

「ご苦労...それで」

 

 

安山は秋天堂を捉えやすくするために目の前のパソコンをどかした。

その表情からは憤怒や疑問等と色々な感情が予想できる。秋天堂が何か言いかけた所で黒川が横槍とも取れる発言で割り込み出した

 

 

「私が勝手に秋天堂さんの通話を盗み聞きしたの。彼女に非はないはずです」

 

「黒川美姫、今は発言を慎み給え。後でその事について聞こう」

 

「...」

 

 

秋天堂は再び注目の視線を集めると、彼女は一蹴されてしまった黒川をチラッと確認した。

 

何かを不安に思うような仕草

それをいち早く読み取った安山は宥めるように一言付け加える

 

 

「黒川美姫を始めとした聖帝の生徒達には記憶操作を行わない。この場で話し給え」

 

「...分かりました」

 

 

意を決した様に秋天堂は前に出た

すると何処から手にしたのか黒い何かが入っている透明のビニールを安山へ丁寧に手渡した

 

安山は同じく慎重に受け取ると裏表を確認する

数秒にもみたない間それを続けると今度は近くにいた白衣の男性に提示してみる

 

するとその男は直ぐにそれがなんなのかを理解し、安山の方へ向きながらも室内全員に聞こえる様に説明を始めた

 

 

「断絶金です。それもかなり精密な加工が施されていますね...」

 

「大泉玄、これは何に使うものだと考える?」

 

「何かの部品と考えるのが自然ですが...秋天堂、これを何処で?」

 

「今回聖帝大学に攻め入った集団の内全員が同じ物を首からぶら下げていました。それも大量に」

 

「なんだと...全て同じ形か?」

 

「全員を確認してはいませんが、少なくとも見た限りでは同じ物でした」

 

 

お預けを食らったまま黒川はいい加減に頭がパンクしそうになっていた。自分の疑問を解消する為にもこの場にいるはずなのだが、また新たに疑問の種が植えられてしまっているからだ

 

それを察したのか、傍またこれ以上の話を黒川達に聞かれたくないのか安山は秋天堂に下がるように命じた

そして大泉と呼ばれた男に何か短く告げると、大泉の退出と同時のタイミングで黒川に向き直った

 

 

「待たせたな。黒川美姫、君の話を聞こうか」

 

「それはとても有難いわね」

 

 

やや傷が痛むような口調で黒川は放つと、直ぐに本題に移ろう

 

疑問は尽きない

今回の件についても、詩織の現在についても、秋天堂の処遇についても

 

 

「そもそも失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)って言うのはなんなの?月下だとか«цпкпошп»だとかもっとちゃんと話して欲しいのだけれど」

 

「聖帝に派遣する前に聞かなかったのかね?」

 

「月下から«цпкпошп»を持った失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)が聖帝に来た、戦えで納得すると思うわけ?」

 

「それもそうだな」

 

 

安山は手元のパソコンの操作を辞めずに黒川の問答を受け続けている。自分よりもずっと年下の無礼とも取れる態度には反応を見せず、ただ若い意見を尊重するかのように反芻している様子だった

 

エンターキーを叩いた時、安山は悠長に声を続けだした

 

 

「それについては一人一人細かく話す時間が無い。それに先程考え直さなければならない材料も増えてしまった。整理してからしっかりと説明しよう」

 

「それは何時になるの?もうこれ以上分からない事ばかりなのも無理よ」

 

 

黒川の態度に不安を覚えたのは秋天堂が先だった。この辺りで止めておくべきかとも考え、控えめに口を開こうとした刹那、安山が気にする様子もなく国家の機密情報を述べたのだった

 

 

「明日だ」

 

「明日?」

 

「明日関係者を集めそこで全てを話す。君たちも同席するといい」

 

「..聞いといてなんだけど私なんかが聞いていい話なの?」

 

「通常なら既に記憶操作の処置を取っている所だが、今回ばかりはそうはいかないのでね。先程も言ったが君たちには記憶操作を行わない。安心して聞き給え」

 

「...それはどうも」

 

 

黒川の言の葉から勢いが抜けると、訪れたのは安山のターンだった。

それは彼女と同じように質問。

 

安山にも彼女への疑問は残っていたのだ

 

 

「黒川美姫、君も我々に黙っている事があるだろう?」

 

「私?なんのことかしら...」

 

「精霊だ。君にも宿っているのだろ?」

 

 

これに驚いた表情を見せたのは秋天堂だった

まさか彼女にも?真意を確かめる為にも黒川目を向け発言を待とうとしたが、当の本人の表情は全く異なるものだった

 

何を言っているのだ?

そう言いたげたあっけに取られた表情だった

 

 

「精霊...ってまさかアニメとかにでるカードの?」

 

「隠さなくてもいい。あのビルでの出来事から大体想像はつくのだ」

 

 

安山にとって黒川の態度は隠蔽に見えたのだろう

机に手を付き椅子を引き立ち上がると、安山は黒川らに背を向けた。

 

そのまま何かを探るような仕草を見せると、ジッポライターの摩擦音が聞こえ、次に紫煙が昇り出した

 

 

「黒川美姫、君の話ではあのビルで数名の失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)と戦闘後、(フロ-)の男との決闘(デュエル)において敗北した」

 

「え、えぇ...」

 

「その後現れた村上慎也と合流後、皆木詩織の危機を知らせた後、また別行動したとの事だったな?」

 

「間違いないわ」

 

 

1枚1枚ページを捲るように、あの時の出来事を振り返りだした。依然解せない黒川の姿も、背中を向けている安山には見えていない

 

それでも構わず安山は己の見解を続けている

 

 

「ではどのようにしてあのビルから脱出したのだね?君の証言とディスクのログから誰とも戦わずに非常玄関まで辿り着いたようだがどうやってだ?」

 

「そ、それは...」

 

 

黒川の歯切れが悪くなった

言葉を探しているのか、それとも本当に話す事の出来ない内容なのか

 

安山には後者に見えたようだ

 

 

「精霊がいるのだろ?それに導かれたのなら納得出来ないことも無い」

 

「い、いいえ...精霊って言うのはよく分からないわ」

 

「まだ隠すつもりか?」

 

「本当に分からないのよ!あの時は村上君の言う通りこっちだと思う方に進んだだけなの...」

 

「何?」

 

 

会話の雲行きが怪しい

お互い噛み合わない様子だが、お互い間違ったことを述べているつもりも無い

 

声を荒らげるように告げた黒川の言葉は、安山をさらに混乱させるだけに終わり、このままでは平行線のままだ

 

 

「村上君に詩織が危ない事を伝えた後、彼に言われたの。先に外に避難しろって、道は思うがままに歩けばなんとかなるって...意味がわからないって言っても彼は走って行ってしまって...」

 

「...村上慎也が?」

 

「えぇ」

 

 

安山の頭にとある仮説が過った

それは黒川が精霊を宿しているのではなく、慎也の精霊が黒川を導いたというもの

 

考えてみればそれはごく自然な事だ

複数体の精霊を宿している慎也なら友人を助けるために自らの精霊を預ける事など不自由無く、精霊の見えない黒川に対しての説明だと納得もできる

 

何故そのように考えず、黒川が精霊持ちだと断定してしまったのだろうか。これにより黒川に対し不必要な感情を与えてしまった。

 

 

「...そうか、そう考えるべきだったか」

 

「?」

 

 

安山はまだ火をつけたばかりの葉巻を捨てると、自称気味に呟いた

 

ただと早とちりだった

再び席に着いた安山の表情が少しだけ赤めいているように見えたのは秋天堂だけだったが

 

 

「...すまないな。私の早とちりだったようだ」

 

「え、えぇ...?」

 

「兎に角、詳しい話は全て約8時間後に場を設ける。それまで体を休めるといい」

 

 

黒川は時計を眺めると、既に針は17時を示そうとしている所だった。明日とは言っていたが、深夜だとは思わなかった。

 

時間が無いと言うのは本当らしい

ここは言う通り引くべきだと納得した黒川は、一言述べその場を去ろうと振り返った

 

が、灰田が固まったままだ

何かと思いそちらに目をやると、先に安山が問いかけた

 

 

「灰田光明、どうかしたのかね?」

 

「あ、あの!」

 

 

発言タイミングを伺っていたらしい

安山が右手で発言を促すと、灰田は遠慮などせず自身の疑問を提示した

 

 

「分からない事があって...」

 

「明日話すと言ったはずだが、一応聞こうか」

 

 

非常に難解な話が続いてきている

灰田でなくとも理解しきれない者がいても不自然ではないが、問題はどれについてかだ

 

月下や決闘力(デュエルエナジ-)についてなら恐らくこの場では聞くことは出来ない

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)についてもそうだろう

 

しかし、灰田が理解出来ていなかったそれは、通常ではありえないそれだった。

彼は既に何度も体験しているはずのものだったからだ

 

 

「あ、アンノ...«цпкпошп»?ってなんですか!?」

 

 

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