ケイの旅 ーLife is a Journeyー   作:黒猫冬夜

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後書きはネタバレ注意


巫女の国

「待っていましたよ、旅人さん。」

 

城壁の入り口の隣、小さな窓から制服姿の青年が顔を出す。

 

「待っていた、とは?」

 

モトラドのエンジンを切り、旅人さんと呼ばれた青年が降りる。ゴーグルを外しながら、長身な旅人は青年へと向かう。

 

「そのままです!我が巫女が貴方の到着を教えて下さったので、待ってたのですよ。」

「はぁ。」

「やはり、巫女様が言った通りだ。モトラド一台、旅人一人。あっ、パースエーダーは持ち込んでよろしいですよ。必要ないでしょうけど。」

 

興奮気味に審査官は喋りながら、入国審査室の裏へと消えていく。奥から鉦の音がし、ギギギと木製の城門が開く。

 

「中の人たちに旅人さんの到着を知らせました。ようこそ、巫女様の国へ!」

 

青年は軽くお辞儀をし、モトラドに戻り城門をくぐる。まっすぐ伸びる、舗装されていない道の両側には畑が広がっている。しばらく走ると、建物が見えてくる。木造建築の家々が集まっているそこは、どうやら村の様だ。モトラドのエンジン音を聞き、家から畑から人が集まってくる。

 

村の中心まで、人をひかぬよう気をつけて走る。中央広場らしき場所に着き、ようやく青年はエンジンを切る。

 

「旅人さん、ようこそ来てくださった。」

 

初老の男性が集まった人々の前へ出る。

 

「わしはこの村の村長であり、巫女様の補佐も務めておる。」

「こんにちは。国は・・・」

「この村だけです。小さいですが、だからこそ人の温かみが感じれるってものです。」

「ああ、そうかもしれんな。」

「村長、巫女様が旅人さんに挨拶したいと言っています!」

「巫女様が・・・そうか。旅人さんは運がいいですな。巫女様は付き添いの方々以外には滅多に顔を出さないんですぞ。」

「運が良い、ですか。」

 

青年は少し曖昧な笑みをし、付いて来て下さいと言った村長の後をモトラドを押しながら着いていく。

 

「しかし、それが噂のモトラドと言う物かの?」

「これか?そうですが・・・」

「ここでは昔ながらの生き方をしておる。機械と言う物を誰も余り見た事無くて。」

「だからか、ここの空気はとても綺麗で美味しいな。」

「そう言って貰えると嬉しいですな。巫女様も、空気を気に入ってここに住むことを決めたと仰ってました。」

「その巫女様って人は、外から来たんですか?」

「はい。巫女様が連れ添い五人と共にこの国へ参りました。ここに来て下さってとても助かっております。巫女様は天気を当てたり、不作を防ぐ為の予言をするなど我々の生活をとても助けて貰っています。」

 

村長の話を聞きながら歩いていると、柱が彫られたりと装飾のされた大きめな家に着く。村長は迷う事なく扉へ向かい、軽く三階ほど叩く。

 

「巫女様、旅人さんを連れてきました。」

「ご苦労様です。皆の元へ戻って、村の秩序をまた守ってください。」

「仰せのままに。」

 

村長は扉へ一礼し、青年へ一礼し、来た方向へ戻っていく。青年はモトラドのスタンドを立て、どうしようかと扉を見ながら立ち尽くす。

 

「旅人さん、どうか中へ。」

 

失礼します、と青年は扉をゆっくりと開ける。

 

中は余り装飾が無く、普通の小屋と言われても疑う者はいないだろう。部屋の中央の椅子に座っている若い女性と、女性の後ろに立っている付き添いらしき女性と男性以外は誰もいなかった。青年は一瞬怪訝な表情をするが、すぐに表情を戻しお辞儀する。

 

「こんにちは、巫女さん。」

「ようこそ御出でなさいました、旅人さん。待っていましたよ。」

 

巫女は微笑み挨拶をするが、付き添いは青年を警戒しているのかのように真剣な表情で黙っている。お座りください、と巫女は一つの椅子を示す。青年は礼を言い、腰を下ろす。

 

「急にお呼びしてすみません。私たちが此処に羽を休めた以来、初めての旅人さんですので少しお話がしたくて。」

「心配なさらず。巫女さんは、何方からで?」

「北の彼方の小さな国からです。神様の御言葉を広める為に旅をしていました。」

「何故、その旅をやめたのですか。」

「神様が、この地の方々に御言葉の恵みを広める様にと仰いましたので。」

「神様、とは?」

「全知全能の我が主です。死後、その方のお側に仕えれるよう我々を導いてくれています。」

 

興味深い、と青年は相槌う打ちながら聞く。

 

「私の話ばかりしてしまいましたね。旅人さんの事もお聞かせください。」

「俺の、ですか。聞いても面白くないと思いますがね。」

「いえ、そんなのことありません。旅人さんの旅の理由をお教えください。」

「旅の理由、ですか。」

 

青年は考えるように黙り込み、やがて口を開く。

 

「別に巫女さんほど大した理由はありませんよ。ただ、他の国々を見てみたかっただけです。」

「では、何時かはお国に戻るおつもりで?」

「さぁ、それはどうか。」

 

今は言えませんね、と静かに青年は口を閉じる。

 

「では、此処に住むのはどうでしょうか。旅人さんのような、様々な国や文化を見てきた方が私を補佐してくだされば、どれほどこの国が発展する事か。神様も喜ぶことでしょう。」

 

巫女は興奮気味に一気に言う。付き添いたちは驚いたように自分の主を見ている。

 

「ありがたいけど、お断りします。俺は、旅を続けたいので。」

 

そうですか、と巫女は小さく呟き、俯く。やがて顔を上げ、微笑む。

 

「今日は来てくださってありがとうございました。どうか、この国でゆっくりして行って下さい。」

 

青年は礼を言い、巫女の家を出る。もう一度、耳を傾けながら。

 

 

 

 

 

旅立ちの朝。青年は村の中心で別れを言う村人達に礼をする。村人達は野菜など果物などをカゴに積み、青年に渡そうと殺到していた。しかし、次々と上がる驚きの声に皆静まる。良く聞くと、村人の集団の端の方から、巫女様だ、と言う声が聞こえる。

 

集団は割れ、付き添い二人と歩いてくる巫女と青年の間に道が出来る。

 

「これはこれは。巫女さん直々に別れの挨拶なんて、光栄ですね。」

「別れの挨拶ではありません。旅人さん、貴方を旅に出す訳にはいかなくなりました。」

 

村人達は驚き、青年は軽く嫌そうな顔をする。

 

「どうゆう事ですか。」

「あなたはこれから、不幸に見舞われます。それはもう、私の口では言えぬほど辛い事です。しかし、私なら守れるかもしれません。神様のお許しも下りました。どうか、此処で身を固めてください。」

「なんと、神様が!」

「巫女様がご結婚を!」

「何と健気な方だ!」

 

村人達は驚きと喜びの声を上げる。一部の青年達は、旅人へ憎いと言わんばかりの視線を向ける。

 

「祭りの準備を!」

「あぁ、婚儀の用意をしないと!」

 

集団は、忙しなく散ろうとする。

 

「全員静止!」

 

青年の声が騒ぎの中響く。その言葉通り、全員が動きを止める。青年はそれを確認し、巫女にお辞儀する。

 

「心配はありがたいが、俺は旅人です。何があろうと、このまま旅人でいます。心配、感謝する。」

 

青年はモトラドに跨り、首にかかっていたゴーグルを正しい位置に戻す。軽く手を振り、集団の反対を無視しながら発車する。

 

 

 

 

 

国を囲む森の奥地。一本しかない道の上で青年は軽く煙を上げる拳銃をホルスターに戻す。三体の追っ手だったモノを避け、耳を傾けながら道沿いの茂みへと向かう。

 

枝葉を分けると、カシャカシャと言う機械音を鳴らす、レンズ付きの小さな箱が。その箱とコードで繋がれた一回り大きな箱には、アンテナらしきワイヤーが立っている。

 

「気付かなかったのは、エンジンの所為か・・・」

 

青年はレンズを枝木で隠し、モトラドに戻る。ため息をし一つ零し、自分の手を開いたり拳にしたりを繰り返すのを静かに見つめる。

 

「泥濘で鈍ったか。」

 

答えるかのような静寂の後、モトラドのエンジン音が森の中を煩く響く。それを見届ける瞳にも答える事は無く。

 




後書き:

ネタバレ注意

今回は作者の「もうちょっと明るい話が書きたい」願望で誕生しました。
丁度友達と宗教について話していたので、こんな話になりました。

国の外で見つけたレンズ付きの箱、お分かりかと思いますがカメラです。
もう一つの機械で巫女へ送信し、巫女は旅人が来ると「予言」します。
旅人が巫女の家で聞いた音は、多分モニターの機械音です。
巫女さんは旅人へ一目惚れしたので、結婚したいと思いました(笑)。
しかし旅人は出て行ってしまったので、自分の名誉を守る為付き添いの残り三人を追わせました。

最初は付き添いとの戦闘シーンを書く予定でしたが、長くなってきたのでやめました。
またの機会に頑張ります。
あと、電力源云々の質問は受けてけていません。そこまで考えていません。

お付合い、ありがとうございます。
何時になるか判りませんが、次もよろしくお願いします。
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