ケイの旅 ーLife is a Journeyー 作:黒猫冬夜
若干アニメ沿い
原作国、キャラクター注意報
降り注ぐ日差しの下、華やかに着飾った国民達が広場に集まる。広場と言うよりは、闘技場と呼んだ方が近いか。地面丸出しの楕円形の闘技場には、ガラクタの山が幾つも聳えている。観客席は満席だが、未だに席を見つけようと彷徨う人がちらほら見える。
急に、何千人もいそうな観客が一斉に歓喜の声を挙げる。全員の目は、闘技場に入場した二人の姿を捉えていた。
「降参させてくれますか?」
「断る。」
片側から入場した金髪の剣士は、反対側から入場した黒髪のパースエイダー使いの質問に答える。やっぱりか、と言う青年の呟きは開始の合図で消された。
青年は右のパースエイダーを瞬時に構え、剣士の膝を狙い打つ。しかし、弾は鋼に当たり、彼方へと弾かれる。青年は素早く腹、頭、腕を狙い打つが、どれも剣で弾かれる。ピューッ、と青年は口笛を鳴らす。
「銃口の向きを読んでるのか。すごいな。」
「修行の結果だ。お前の読みやすい銃弾じゃ、俺は倒せない。」
「随分な余裕だな。」
「本当の事だ。」
剣士はゆっくりと青年へと向かう。青年は足、腹、肩を正確に狙い打つが、また弾かれる。
「さて、どこを刺されたいか?腹か、胸か、首か?それとも、逃げれないように足からやるか?」
青年は打つのを止め、死を覚悟してかのように銃を下ろす。剣士はもう、あと数秒でその武器を突き刺すだろう。
「ふっ、諦めたか。なら、一思いで逝かせてやろう。」
残り数メートルで、青年は素早くパースエイダーを構え直し、撃つ。しかし焦ったのか弾は剣士を大きく外れ、カンッて音と共に剣士の斜め後ろのガラクタの山に当たる。
カンッカンッカンッカンッカンッ
「う・・・あっ・・・」
剣士は突如崩れ落ちそうになるが、地面に剣を刺しなんとか抑える。その右膝には小さな穴が貫通し、血を流している。もう、普通に歩けないことは明らかだろう。
観客は何が起きたのか分析しようとする。青年が撃った弾は後ろのガラクタに当たり、弾かれる。そして、少し離れた場所の山に当たり、また弾かれる。弾は何度も跳飛し、奇跡的に剣士の膝を打ち抜いた。馬鹿げた運か、神業か。何方でも常識的にありえないと、全員が唖然とする。
青年は弾の切れたパースエイダーを戻し、もう一丁を左手で構える。剣士が決して届かない距離から頭を狙い、薄く笑う。
「降参、するか?」
「見事予選を突破した諸君、おめでとう。諸君ら16名は明日と明後日の二日間、永久市民の座をかけて戦ってもらう。明日からは、いよいよ国王陛下もご観戦遊ばされる。明日一回戦と二回戦が行われ、ここに戻ってこられるのはたったの4名だ。そして明後日には準決勝、決勝が行われる。
他人の試合を見ることは出来ないが、降参した相手から試合内容を聞き出すことは許される。降参していき残ってればの話だがな。」
闘技場の薄暗い地下道で勝者16名と闘技場の警備の頭だろう、ガタイの良い男性が集まる。緊張している者、余裕そうな者、退屈そうな者と表情は様々だ。
「ん?この中には相手の降参を認めて勝ち上がった奴が三人もいる。」
「一人はキノだね。あとの二人は誰だろう?」
「さぁ。」
青年は、モトラドに「キノ」と呼ばれた少年・・・否、少女を一瞬見る。そして紛らわすかのように、反対側も伺う。一人の青年と一緒にいる白い犬が、目に入る。犬は利口そうに、吠えずに主人の足元で座っている。
「見学する人間は全て、勝負中に流れ弾などに当たって怪我を負っても、もしくは死んでしまっても一切の文句は言えない。
最後に残った一人には、国王から直々に市民権を示すメダルが渡される。その時に、何か一つ、この国に新しいルールを足すことができる。それは既存のものに矛盾していなければ、なんでもいい。」
誰かが口笛を鳴らす。それを無視し、警備頭は説明を終わらせる。
「それでは、諸君の健闘を祈る。」
集まった16人は、それぞれ散るなりナンパするなりと別れる。青年は、ここにいる誰よりも幼いキノの背中を心配そうに見届けた後、白い犬の飼い主へと近づく。
「触っても良いか?」
「あぁ。」
「よしよし、フワフワだなぁ。」
青年は楽しそうに、白い犬を撫でる。犬も、嬉しそうに笑っている。
「名前は?」
「リクだ。」
「へー、リク君か。」
青年は静かにリクを撫で続ける。
「・・・君と鉢合わせにならないと良いが。」
「ん?」
「こんな利口な犬を、独りにするのは胸が痛む。」
犬はまるで「バカにするな」と言う様に鼻を鳴らす。
「何、お前のご主人が負ける訳無いってか?」
「ワンッ!」
「へぇ、賢いな。」
「質問してもいいか?」
「あ?」
「君は、ここにいる他の人たちと同じだと思えない。」
青年は立ち上がり、飼い主へ向き直る。
「君は、何故市民権が欲しいんだ?」
「別に、市民権が欲しい訳じゃない。出来れば、早く降参して此処を出たい。けど、俺よりも弱い相手に降参する気は無いな。まぁ、もし勝ったら、国を出た者は市民権剥奪とか言って国を出るかな。」
「そうか。」
青年は、飼い主へと手を突き出す。
「俺はケイ。お前は訳ありの様だけど、リク君に免じて聞かないでおく。」
「ありがとう。私はシズだ。」
二人の青年は、握手を交わす。それは挨拶には少し重く、祈りには若干軽いものだった。
後書き:
銃の扱いを教えてくれたJさん、クトゥルフ神話中ありえないダイスロールでこの話のアイディアをくれたRさん、ありがとうございました。
やっと主人公の名前が出ました!もう、青年と書き慣れすぎて、ケイと書くのが凄く変な感んじです。
作者は戦闘シーンを書くのが大変苦手です。無理です。
今回は練習の為、下手な戦闘シーンを多めに書きました。次回も、戦闘多めです。
コロシアム・下は30分後に投稿します。
そちらも、もし良ければ読んでみてください。