ケイの旅 ーLife is a Journeyー 作:黒猫冬夜
若干アニメ沿い
原作国、キャラクター注意報
若干後書きネタバレ
闘技場に、二人の姿が現れる。
一人は茶色いベストの中年男性。手には、ポンプアクションの散弾式パースエイダーらしき物体が持たれている。しかし、その口はどんな弾を打とうにも大きすぎる。そのパースエイダーの後ろ側は、男性の背中に背負われている大きな袋にパイプで繋がっている。
反対側から入場したのは、白いシャツ姿の青年ケイ。腰のベルトの両側のホルスターには、ハンドパースエイダーが収められている。
「降参したいんだが、認めてくれるか?」
ケイが発した質問を、中年は嘲笑いで返す。観客も釣られるように、笑い声を放つ。ケイは小さなため息を漏らし、わかりましたよ、と答える。
ぷわわわわーん、と間抜けな開始の合図が響き、二人の男性は後ろへ飛ぶ。
ケイがハンドパースエイダーに手を付けると同時に、中年は引き金を引く。銃口から、黄緑色の半透明な玉が吐き出される。それは銃弾よりは遅いが、まだ十分早い速度でケイへと飛ぶ。
ケイはパースエイダーから手を離し、右にあるガラクタの山の後ろへと飛び込む。玉は先ほどまで腹があったと所を通り過ぎ、後ろの地面へと当たるのを目で追う。そして、目を少し見開く。
玉は地面に当たった瞬間、水風船のように破裂する。半透明な膜が破れ、黄緑色の液体が辺りに飛び散る。液体が当たるところはシューッという音を立て、煙を上げる。
「チッ、酸か。厄介だな。」
パースエイダーを取り出し、狙う様に瓦礫の山に身を隠しながら中年を伺う。そして、銃口から二発目が空高く打たれるのを運良く見る。勢いよく後ろへ避けると、跳ねた酸が丁度目の前を通る。
カチッカチッて音とともに玉は打たれていく。それを後ろや左右へと避けていく。その動きは、送り出されていく玉のリズムに慣れてきた様だ。
銃の性能はあまり良くないのか、玉はケイが立っていた位置をギリギリ外している。否、外しているのではない。中年の余裕な表情を見れば、外させているのだと気付くだろう。まるで、何処かへ誘導するかのように。
ケイもそれに気づいたようだ。玉の曖昧に素早く周りを見渡す。どうやら、どうにか残っている建物の角へと追い込もうとしているようだ。忌々しく舌打ちをし、神速でパースエイダーを構い、打つ。
等間隔で撃たれていれば、次の玉を予測するのは容易い。撃たれた弾は、丁度中年の銃口を出た酸の玉を撃ち抜く。卵の殻よりも脆いだろう膜はその役目を止め、銃弾の勢いで中の酸は後ろへと飛び散る。
「グアァァァァアアァアァァァア!」
男性の絶叫が響き、皮膚と肉が焼かれる匂いが充満する。それは決して食欲を唆るようなものでは無く、胃を空にしようとする観客も多数出る。よっぽど強い酸だったのだろうか、中年のベストの穴からは所々骨が現れる。
殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!
観客はコールを熱唱する。ケイは手を振り、腹を抱え怯える中年へと歩み寄る。
「降参を認めてくれれば、こうはならなかったんだがな。生憎、俺よりも弱い相手に再度申し込もうとは思わない。」
近寄る青年を遠のけようと、中年はまた銃を構える。トリガーの音が二重に鳴る。
「ああああああぁあぁああぁあああああ!」
「まだ、わからないのか。」
再度自分の酸をかぶり、断末魔の様な声を上げる。運悪く顔にかかった様で、穴の空き始めた手で顔を庇っている。
観客の殺せコールは、何時の間にか止んでいる。男性の叫び声に竦んだのか、怯えるようにケイを見つめる人が多くいる。それに対し、嬉しそうに青年の行動を見守る人もいる。それを見た青年は短く、腐ってるなと呟く。
「さて、ここで殺したほうが楽だろうが・・・俺はそれ程優しく無いんでね。」
ケイはパースエイダーのグリップを勢いよく中年の首へ叩き込む。男性は叫びを止め、ドサッと崩れた。
「同じパースエイダー使いのよしみで、降参させてくれるか?」
「あげないな。」
「左様で。」
二人は手を腰に吊られているパースエイダーの上に待機し、構える。どうやら、抜き打ちで勝負になるようだ。緊迫する空気と裏腹に、緊迫感が全くない合図が鳴る。
バンッカンッ
銃声が一つだけ響く。若干早く構えた方が、当たり前だが早く撃てた。撃たれた弾は相手のパースエイダーに当たり、弾を撃たせる機会も与えなかった。カラカラッ、と音と共にリボルバー式ハンドパースエイダーは地面の上を滑る。
「降参・・・」
「します。」
今試合、多分最速であろう戦いが幕を閉じる。
「これまでに無いハイレベルな勝負に、王は特別に諸君らを労いたいと仰せになられ・・・」
「もう良い。」
眩しい朝日がステンドグラスをすり抜け、城の応接間に居る人達を様々な色に染める。王座に座っているのは、色取り取りの宝石を身にまとった王。その前に設けられた椅子に座っているのは、勝ち残った四人の選手達。正確にはケイ、シズ、キノ、そして若い女性が一人。リクは主人の隣に大人しく座っていて、キノの隣にはモトラドが停めてある。
「勝ち残った褒美に、ちょっとした余興を見せてやろうと言うのだ。予のお気に入りの芝居よ。やれ。」
道化師が数人部屋に走り込み、劇を始める。内容は、お気に入りと呼ぶには薄っぺらいものだった。笑うことを知らない王子は憎き前王を殺し、笑うことを覚える。王を恐れた妃は息子二人を国外へ逃す間に、愛したはずの王に殺される。
ケイはつまらなそうに欠伸を漏らすが、隣のシズの表情は対照的に、思い詰めているように暗い。その拳は裾を掴み、何かを抑えようとしている様だった。低く唸り、笑う王を睨み始めたシズの手に、温もりが重なる。
安心させるようにシズの手を数回叩いたケイは、おもむろに立ち上がる。
「ふぁー。すまんが、俺はあまり芸術に目が無くてな。シズ君よ、リク君の散歩に行こうか。あと、そこのお嬢さんも。余り、教育に良い内容とは言えなさそうだしな。」
「あ、あぁ。失礼する。」
「ワンッ!」
「んー。では、ご一緒させて貰います。」
「キノー、置いてかないでよ!」
「貴様ら!折角の王のお心使いを!」
「まぁ、良い。」
三人と一匹と一台は王に背を向け歩き始める。
「おい待て。お前、何処かで会ったことは無いか。」
王は、誰かを呼び止める。表情からして、シズで間違い無いだろう。
「人違いでしょう。」
「そうか、そうだろうな。」
「では今度こそ、失礼します。」
バタンッ、と重い音と共に、応接間の扉は閉じる。
「大丈夫ですか?」
「あぁ。すまない、気を遣わせた。」
「嫌、本当につまらなかっただけだ。お嬢さん、一緒に引っ張り出してゴメンな。」
「いえ、大丈夫です。それに、お嬢さんは止めて下さい。キノです。」
「そうか。俺はケイだ、よろしく。」
「よろしくも何も、今日殺しあうかもしれないのに。」
「エルメス。」
「エルメス君の言う通りだな。でも、今は殺しあっていない。だから、良いじゃないか。」
さて、散歩に行こうか、とケイは肝心なリクを置いて歩き出す。シズとキノはお互いを一度見合わせ、ケイの下手な気遣いに一緒に吹き出した。
「いや、君かキノさんに何時か当たるのは知ってたが・・・嫌な事程すぐに起きるな。」
準決勝第一試合、ケイの相手は先程まで仲良く話していたシズだ。観客は、早く始めろと声をあげる。
「降参、してくれないか。」
「それは、俺のセリフだな。あんなに動揺してて、決勝勝てるのかよ。」
「勝たなきゃいけないんだ。これだけは譲れない。」
ケイは怪訝そうに眉をひそめる。
「傷つけず降参させる術を、俺は多分持って無い。」
「傷ついてでも、私は決勝へ進む。」
「それじゃ本末転倒だろ。」
諦めたように、一つため息をする。
「死ぬなよ。」
「ああ。」
「「また、何時か。」」
後書き:
戦闘、上手く書けたでしょうか?心配です。
もっと心配なのは、戦闘中のケイのえげつなさ。怖ッ・・・
敵じゃなければ、基本優しいです。多分。
作者は、シズが大好きです。ケイとシズは、友になってくれると嬉しいです。
これからも、偶にバッタリ会わせる予定です。
ケイが使うパースエイダーのイメージは、二丁ともデザートイーグルです。
.44マグナム弾八発です。もし明らかに間違った事を書いていたら、教えて下さい。
読んでくださり、ありがとうございました。
現実逃避で、またすぐに投稿すると思います。その時はよろしくお願いします。