ケイの旅 ーLife is a Journeyー   作:黒猫冬夜

4 / 7
グロ注意
若干アニメ沿い
原作国、キャラクター注意報
若干後書きネタバレ


コロシアム・下

闘技場に、二人の姿が現れる。

 

一人は茶色いベストの中年男性。手には、ポンプアクションの散弾式パースエイダーらしき物体が持たれている。しかし、その口はどんな弾を打とうにも大きすぎる。そのパースエイダーの後ろ側は、男性の背中に背負われている大きな袋にパイプで繋がっている。

 

反対側から入場したのは、白いシャツ姿の青年ケイ。腰のベルトの両側のホルスターには、ハンドパースエイダーが収められている。

 

「降参したいんだが、認めてくれるか?」

 

ケイが発した質問を、中年は嘲笑いで返す。観客も釣られるように、笑い声を放つ。ケイは小さなため息を漏らし、わかりましたよ、と答える。

 

ぷわわわわーん、と間抜けな開始の合図が響き、二人の男性は後ろへ飛ぶ。

 

ケイがハンドパースエイダーに手を付けると同時に、中年は引き金を引く。銃口から、黄緑色の半透明な玉が吐き出される。それは銃弾よりは遅いが、まだ十分早い速度でケイへと飛ぶ。

 

ケイはパースエイダーから手を離し、右にあるガラクタの山の後ろへと飛び込む。玉は先ほどまで腹があったと所を通り過ぎ、後ろの地面へと当たるのを目で追う。そして、目を少し見開く。

 

玉は地面に当たった瞬間、水風船のように破裂する。半透明な膜が破れ、黄緑色の液体が辺りに飛び散る。液体が当たるところはシューッという音を立て、煙を上げる。

 

「チッ、酸か。厄介だな。」

 

パースエイダーを取り出し、狙う様に瓦礫の山に身を隠しながら中年を伺う。そして、銃口から二発目が空高く打たれるのを運良く見る。勢いよく後ろへ避けると、跳ねた酸が丁度目の前を通る。

 

カチッカチッて音とともに玉は打たれていく。それを後ろや左右へと避けていく。その動きは、送り出されていく玉のリズムに慣れてきた様だ。

 

銃の性能はあまり良くないのか、玉はケイが立っていた位置をギリギリ外している。否、外しているのではない。中年の余裕な表情を見れば、外させているのだと気付くだろう。まるで、何処かへ誘導するかのように。

 

ケイもそれに気づいたようだ。玉の曖昧に素早く周りを見渡す。どうやら、どうにか残っている建物の角へと追い込もうとしているようだ。忌々しく舌打ちをし、神速でパースエイダーを構い、打つ。

 

等間隔で撃たれていれば、次の玉を予測するのは容易い。撃たれた弾は、丁度中年の銃口を出た酸の玉を撃ち抜く。卵の殻よりも脆いだろう膜はその役目を止め、銃弾の勢いで中の酸は後ろへと飛び散る。

 

「グアァァァァアアァアァァァア!」

 

男性の絶叫が響き、皮膚と肉が焼かれる匂いが充満する。それは決して食欲を唆るようなものでは無く、胃を空にしようとする観客も多数出る。よっぽど強い酸だったのだろうか、中年のベストの穴からは所々骨が現れる。

 

殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!

 

観客はコールを熱唱する。ケイは手を振り、腹を抱え怯える中年へと歩み寄る。

 

「降参を認めてくれれば、こうはならなかったんだがな。生憎、俺よりも弱い相手に再度申し込もうとは思わない。」

 

近寄る青年を遠のけようと、中年はまた銃を構える。トリガーの音が二重に鳴る。

 

「ああああああぁあぁああぁあああああ!」

「まだ、わからないのか。」

 

再度自分の酸をかぶり、断末魔の様な声を上げる。運悪く顔にかかった様で、穴の空き始めた手で顔を庇っている。

 

観客の殺せコールは、何時の間にか止んでいる。男性の叫び声に竦んだのか、怯えるようにケイを見つめる人が多くいる。それに対し、嬉しそうに青年の行動を見守る人もいる。それを見た青年は短く、腐ってるなと呟く。

 

「さて、ここで殺したほうが楽だろうが・・・俺はそれ程優しく無いんでね。」

 

ケイはパースエイダーのグリップを勢いよく中年の首へ叩き込む。男性は叫びを止め、ドサッと崩れた。

 

 

 

 

 

「同じパースエイダー使いのよしみで、降参させてくれるか?」

「あげないな。」

「左様で。」

 

二人は手を腰に吊られているパースエイダーの上に待機し、構える。どうやら、抜き打ちで勝負になるようだ。緊迫する空気と裏腹に、緊迫感が全くない合図が鳴る。

 

バンッカンッ

 

銃声が一つだけ響く。若干早く構えた方が、当たり前だが早く撃てた。撃たれた弾は相手のパースエイダーに当たり、弾を撃たせる機会も与えなかった。カラカラッ、と音と共にリボルバー式ハンドパースエイダーは地面の上を滑る。

 

「降参・・・」

「します。」

 

今試合、多分最速であろう戦いが幕を閉じる。

 

 

 

 

 

「これまでに無いハイレベルな勝負に、王は特別に諸君らを労いたいと仰せになられ・・・」

「もう良い。」

 

眩しい朝日がステンドグラスをすり抜け、城の応接間に居る人達を様々な色に染める。王座に座っているのは、色取り取りの宝石を身にまとった王。その前に設けられた椅子に座っているのは、勝ち残った四人の選手達。正確にはケイ、シズ、キノ、そして若い女性が一人。リクは主人の隣に大人しく座っていて、キノの隣にはモトラドが停めてある。

 

「勝ち残った褒美に、ちょっとした余興を見せてやろうと言うのだ。予のお気に入りの芝居よ。やれ。」

 

道化師が数人部屋に走り込み、劇を始める。内容は、お気に入りと呼ぶには薄っぺらいものだった。笑うことを知らない王子は憎き前王を殺し、笑うことを覚える。王を恐れた妃は息子二人を国外へ逃す間に、愛したはずの王に殺される。

 

ケイはつまらなそうに欠伸を漏らすが、隣のシズの表情は対照的に、思い詰めているように暗い。その拳は裾を掴み、何かを抑えようとしている様だった。低く唸り、笑う王を睨み始めたシズの手に、温もりが重なる。

 

安心させるようにシズの手を数回叩いたケイは、おもむろに立ち上がる。

 

「ふぁー。すまんが、俺はあまり芸術に目が無くてな。シズ君よ、リク君の散歩に行こうか。あと、そこのお嬢さんも。余り、教育に良い内容とは言えなさそうだしな。」

「あ、あぁ。失礼する。」

「ワンッ!」

「んー。では、ご一緒させて貰います。」

「キノー、置いてかないでよ!」

「貴様ら!折角の王のお心使いを!」

「まぁ、良い。」

 

三人と一匹と一台は王に背を向け歩き始める。

 

「おい待て。お前、何処かで会ったことは無いか。」

 

王は、誰かを呼び止める。表情からして、シズで間違い無いだろう。

 

「人違いでしょう。」

「そうか、そうだろうな。」

「では今度こそ、失礼します。」

 

バタンッ、と重い音と共に、応接間の扉は閉じる。

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?」

「あぁ。すまない、気を遣わせた。」

「嫌、本当につまらなかっただけだ。お嬢さん、一緒に引っ張り出してゴメンな。」

「いえ、大丈夫です。それに、お嬢さんは止めて下さい。キノです。」

「そうか。俺はケイだ、よろしく。」

「よろしくも何も、今日殺しあうかもしれないのに。」

「エルメス。」

「エルメス君の言う通りだな。でも、今は殺しあっていない。だから、良いじゃないか。」

 

さて、散歩に行こうか、とケイは肝心なリクを置いて歩き出す。シズとキノはお互いを一度見合わせ、ケイの下手な気遣いに一緒に吹き出した。

 

 

 

 

 

「いや、君かキノさんに何時か当たるのは知ってたが・・・嫌な事程すぐに起きるな。」

 

準決勝第一試合、ケイの相手は先程まで仲良く話していたシズだ。観客は、早く始めろと声をあげる。

 

「降参、してくれないか。」

「それは、俺のセリフだな。あんなに動揺してて、決勝勝てるのかよ。」

「勝たなきゃいけないんだ。これだけは譲れない。」

 

ケイは怪訝そうに眉をひそめる。

 

「傷つけず降参させる術を、俺は多分持って無い。」

「傷ついてでも、私は決勝へ進む。」

「それじゃ本末転倒だろ。」

 

諦めたように、一つため息をする。

 

「死ぬなよ。」

「ああ。」

「「また、何時か。」」

 




後書き:

戦闘、上手く書けたでしょうか?心配です。
もっと心配なのは、戦闘中のケイのえげつなさ。怖ッ・・・
敵じゃなければ、基本優しいです。多分。

作者は、シズが大好きです。ケイとシズは、友になってくれると嬉しいです。
これからも、偶にバッタリ会わせる予定です。

ケイが使うパースエイダーのイメージは、二丁ともデザートイーグルです。
.44マグナム弾八発です。もし明らかに間違った事を書いていたら、教えて下さい。

読んでくださり、ありがとうございました。
現実逃避で、またすぐに投稿すると思います。その時はよろしくお願いします。
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