「いらっしゃいませー!」
今日、俺はこの遊園地、トロピカルランドにある売店でバイトをしている。
ジュースを渡したり、ポップコーンを渡したりと朝からせわしく動いている。
「すみませーん!」
「はい!お待たせしました!」
客に呼ばれ、レジに出るとそこには新一と蘭がいた。
「恭介!お前何やってんだよ?」
「何ってバイトだよ。そっちこそ、二人でデートか?」
「違ぇよ。蘭の空手の都大会の優勝の記念。それで、遊園地に連れてきたんだよ」
「そう言えばそうだったな、蘭、遅くなったがおめでとさん」
「うん。ありがと」
「ほらよ、このジュースは俺からの驕りだ。しょぼい都大会祝いで悪いな」
オレンジジュースのカップを渡し、新一にも渡す。
「俺もいいのか?」
「ついでだよ。いいからもう行け。せっかくの休日だし、楽しめよ」
二人を見送り、俺は再び売店の仕事に励む。
昼のピークも過ぎ、若干楽になり始めたぐらいに、外がずいぶん騒がしくなって来た。
「どうしたんだ?」
「すみません!」
するといきなり店に制服を着た警官が現れる。
「神埼恭介さんですね!」
「は、はい……」
「少しお時間いただけますでしょうか?」
「えっと……チーフ。行っても大丈夫ですか?」
「え?う~ん……まぁ、いいよ」
バイトチーフの許可ももらい、制服から私服に着替え、警官の後について行く。
そこはトロピカルランドで人気が高いジェットコースターだった。
すでに何人の警官が配置され、立ち入り禁止を示す黄色のテープが張られている。
なるほど。
そう言うことか。
で、俺が呼ばれたってことは、おそらくこの事件の担当は目暮警部だ。
そしてこう言う事件に首を突っ込み、尚且つ俺がこの遊園地内にいることを知ってる奴。
つまり、アイツもいるはずだ。
「やっぱお前か。俺を呼んだのは………新一」
「よう、恭介。早速だが、頼むぜ。相棒」
「はいよ」
眼鏡ケースを取り出し眼鏡を掛ける。
そして、新一が事件を解くということもあり、野次馬が多いのでパーカーをかぶり顔を隠す。
「で、事件の内容は?」
「被害者の男性は即死。そして、現状から考えて自殺の線は薄く、コースターの故障や事故の痕跡もない。つまり、この事件は」
「殺人か」
そう言い、俺は遺体を見る。
首が切り落とされてるな。
そうなるとかなりの力が必要になるはず。
それに凶器も包丁やナイフなんかじゃ駄目だ。
「で、コースターの席順は?」
「一列目が被害者の友人の女性二名、二列目は俺と蘭、三列目に被害者とその彼女、四列目は黒ずくめの男二人だ」
「お前と蘭を除けば容疑者は五人か」
「おい、早くしてくれ!!オレ達ゃ、探偵ゴッコにつきあってるヒマなんかないんだぜ…」
すると、容疑者の一人、長髪で全身黒ずくめの男は、痺れを切らしたのか苛立ちながら言う。
その男の目に、俺は思わず全身が凍りつくかのような気分になった。
こいつは一体…………
「警部!!この女性のバッグからこんな物が!!」
荷物検査をしていた警官が被害者の恋人のバックから血まみれの包丁を見つけ出し、警部に報告する。
「う、うそ…。わたし、知らないわよ!!こんな物!!わたし、わたし…」
「あ、愛子…なんでそんな事しちゃったのよ…」
他の容疑者や野次馬まで犯人は恋人の女だと決め付けんばかりに騒ぎ出す。
「新一。お前の推理を聞かせろ」
「犯人は彼女じゃない。包丁なんかで人間の首を切り落とすなんて無理だ。特に女性一人の力じゃな」
「同感だ」
「犯人の目星は付いてる。トリックもわかった。後は、証拠だ。今ある証拠じゃ不十分だが、俺の推理通りなら、きっともう一つの証拠はトンネルの中だ」
「実際の犯行現場はトンネルの中だっけか。OK、探してくる」
「ああ、頼むぜ」
新一にこの場を任せ、俺はトンネルの中に入る。
いつも持っているペンライトでトンネル内を照らし、証拠を捜索する。
「頼むぜ。新一の推理通り、あってくれよ」
まぁ、新一の推理なら心配はないけどな。
そして、トンネルの半分まで進むと、そこで俺はお目当てのものを見つける。
「見つけた」
それを指紋をつけずに回収し、新一のところに戻る。
「で、でらためよ!!何を証拠に!!」
戻ると犯人として新一が上げた女性を友人の女性が必死にかばおうとしていた。
「彼女の涙が動かぬ証拠だ。ジェットコースターにでも乗っていない限り、涙は横には流れないんですよ」
「それが証拠?そんなのが証拠になるわけないでしょ!」
「証拠ならもう一つある」
俺は全員に近づきながら、手にした物を見せる。
それはヒモがピアノ線になっている、血の付いた真珠が飛び散ったネックレス。
「新一の推理通り、トンネル内で見つけた。これを凶器代わりに使ったんだろ。売ってる店を探して購入者を調べればあんたの物かわかる事だ」
「み…みんな……みんな、あの人が悪いのよー!!あの人がわたしを捨てるから!!」
「ひ、ひとみ…あなた、岸田君とつき合っていたの…?」
「そうよ!!大学であなた達に会うずーっと前から私達は愛し合っていたわよ!!それを愛子に…こんな女に乗り換えから…だからだから…あの人と最初にデートしたこの場所で、あの人にもらったネックレスで、愛子に罪をかぶせて……殺してやりたかったのよーーーー!!!」
その後、彼女のバッグから大量の睡眠薬が出てきた…
どうやら、この後ここで死ぬつもりだったらしい。
証拠品ということでネックレスを警察の人に渡すと、ネックレスに残った真珠が夕日を浴びて淡い光を放っていた。
まるで大粒の涙のように……………
「ああ~…………疲れた」
事件の後、店に戻り、残りのバイトを片付けたりといろいろ忙しかった。
「帰ったら晩飯食って風呂だな」
実を言うと、俺は一人暮らしだ。
母さんは俺が生まれたまもなく死に、父さんは何処で何をしてるのか放浪の旅をしている。
家に帰ってくるのは一年に一回あるかないかだ。
最後に帰ってきたのは、俺が高校入学の時だったと思う。
「あ、ついでだしDVDでも借りて帰ろうかな…………」
そんなことを思ってると、新一が真剣な顔つきで走っているのが見えた。
「どうしたんだ?」
そう言えば、あいつやたらあの黒ずくめの男たちのこと気にしてたな。
「………………後つけるか」
新一が余計なことに首を突っ込んでると考え、後を追う。
「あれ?何処に行ったんだ?」
観覧車の周辺で新一を見失い、あたりを見渡す。
そのとき、何かを殴る音と何かが倒れる音が聞こえた。
「なんだ?」
気になり、そちらのほうに移動すると、そこで俺は見覚えのある人物を見つける。
「新一!」
駆け寄ると新一は頭から血を流し、意識が朦朧としていた。
「しっかりしろ!今救急車を!いや、まだ警官がいるはずだ!すぐに呼んでくる!」
応急処置だけしようと、鞄から包帯を出し、頭に巻こうとする。
「あ……きょ、恭介………」
「喋るな!おとなしくしてろ!」
「に、逃げ……」
「だから、喋るなって言ってるだろ!」
「お前もな!」
その瞬間、後ろから強い衝撃が俺を襲い、俺はそのまま新一同様倒れる。
「ふん!首を突っ込まなければ長生きできた者を」
「どうしやす!
「いや、
薄れていく意識の中、俺と新一は長髪の男にその毒薬を無理矢理飲まされ、放置される。
「アニキ、早く!」
「オウ……あばよ…名探偵とその相棒!」
そう言い残し、二人は俺たちの下を去っていく。
そして、俺の体に異変が起きた。
体が熱くなり、まるで体の骨が解けていくような感覚。
声一つ出せず、俺はそのまま薄れていく意識に身を任せ、そのまま気を失った。
「おーい、ちょっと来てくれ!!誰か死んでるぞ!」
「な!?」
「いや、まだ息はある!!」
「救急車だ!!救急車を呼べ!!」
男の声が三人分聞こえる。
目を開けると、薄らと警官の姿が見えた。
そうだ、確か俺は毒薬を飲まされて…………
何で生きてるんだ?
そう言えば試作品とか言ってたけど………どうやら運欲く助かったみたいだ。
ちょうどいい、この警官達に全部話して……
「大丈夫か!?」
「立てるか?ボウヤ達?」
………………え?ボウヤ?