「「はぁ!?小学校!?」」
あれから一週間。
今日、新一が阿笠博士の家、つまり現在、俺が居候してる家にやってくるなり、博士はそう言って来た。
「そうじゃ、中身は高校生と言えども外見は小学生。小学校に通わんと怪しまれる。転校手続きはワシがしといた」
「でもよー」
「今更また小学校に通うのは………」
いくら例の組織を探るためとは言え、小学生の真似事をするのは俺も新一も嫌だ。
「おお、そうじゃった!新一に頼まれていたメカが完成しとるぞ!」
そう言って博士は靴を取り出す。
「ほれ!“キック力増強シューズ”!電気と磁力で腕のツボを刺激し、筋力を極限まで高める道具じゃ!!このシューズでボールを蹴れば犯人はひとたまりもないぞ!サッカーが得意な新一なら使いこなせるじゃろ!」
「ありがとう博士!」
「辛いこともあるじゃろうが、もう少しの辛抱じゃ。元の身体に戻るまでのな!」
「ああ!参観日には来てくれよ!」
「おう!」
新一はうきうきとシューズとランドセルを受け取り、蘭の家に帰る。
「あいつ………嬉しそうにしやがって」
「まぁまぁ。そうじゃ、恭介用にもメカを作っといたぞ」
そう言って博士は白衣の上着から一冊のノートと手帳を取り出す。
「ほれ。“ノート型極薄ノートパソコン”じゃ。タッチパネル式で画面の拡大も出来るし、高画質。容量は最大800GB。そして、こっちが“万年筆型ICレコーダー”。普通のICレコーダーとしても使えるし、このノートパソコンのタッチパネル対応のペンとしても使える。捜査を進めるには打って付けじゃろ」
「ああ、ありがとな。博士」
パソコンとICレコーダーを受け取り、家の中に戻る。
明日から小学校か…………………
「は、はじめまして…今日からこの学校に通うことになった…江戸川コナンです…。ヨ、ヨロシク……」
「えどがわ…こなん?」
「変な名前〜!!!」
新一の偽名、江戸川コナンと言う名に子供たちは変な名前と笑う。
「輪島尊です。よろしくお願いします」
俺は変な名前じゃないので普通に受け入れられた。
「てか、日本警察の救世主と呼ばれた子供に混じってお勉強とはな………」
「そう言うなって。小学校の勉強も侮れねぇぞ。算数は兎も角、国語や社会は俺達の時と比べて随分内容が変わってるし、中々に楽しいもんだぞ」
体操服に着替えながら、俺と新一は話す。
「てか、恭介。お前、なんか楽しそうだな」
「郷に入っては郷に従えって言うだろ。今の俺は高校生名探偵の助手、神崎恭介じゃなくて、小学一年生の輪島尊なんだから。ま、二度目の小学校生活を暫く謳歌するのも悪くねぇさ」
俺は、はっはっはっと笑い、校庭に出る。
体育の内容はサッカーだ。
小学生に戻り、体力や筋力が落ちた新一だったが、そこは元サッカー部にしてエース。
同年代になった小学生など敵ではなく、新一の独壇場だった。
「コナン君すごーい!」
そんな新一は女の子たちの注目の的だった。
小学生の内はスポーツできれば無条件で女の子にモテるからな。
「よう、色男。女の子に注目されるのはどんな気分だ?」
「ま、悪くはねぇな」
そう言って新一は俺にパスをする。
「ちょっとボール頼む。折角だし、博士から貰ったメカを試してみる」
「あいよ」
ボールを保持しながら、奪おうとして来る男の子を躱し続ける。
ま、これぐらいなら俺でも楽勝だ。
「よし!きょ……尊!こっちにパスだ!」
「受け取れ!」
新一にボールを再度パスし、受け取る。
ゴール前はノーマーク。
「もらっ―――」
放課後、俺と新一は一緒に帰っていた。
「………なぁ、新一」
「……なんだ?」
「………そのメカ、本当に大丈夫か?」
「………不安しかねぇ」
あの後、何が起こったかと言うと、新一が蹴ったボールは物凄いスピードで跳んだ。
そして、キーパーをしていた男の子の顔の横を掠る様に飛び、ゴールネットを突き破り、背後の木をへし折った。
ちなみに強さの目盛りは中。
博士……………なんちゅうモノ発明してんだよ。
「じゃ、俺こっちだから」
「おう、またな」
途中の分かれ道で新一と別れ、俺は阿笠邸へと帰る。
渡された鍵を使い、家の扉を開ける。
「ただいまー」
「おお、恭介か。お帰り」
俺を出迎えた博士はいつもの白衣ではなく、私服姿だった。
「あれ?博士、出掛けるのか?」
「ああ、親友の博士の所にな」
「へー………なぁ、博士。付いてってもいいか?」
「へっ?ま、まぁ、構わんが何故じゃ?」
「博士………最近、腹回りヤバいんじゃねぇの?」
「へっ?」
「買い食いしないように見張らねぇとな」
ジト目気味に博士を見ると、ギクッとした表情になっていた。
する気だったな……買い食い。
博士の運転する車に乗り一時間後、博士の友人の家に着いた。
「おお、阿笠!久しぶりだな!」
「沼田君も、変わらない様でなによりじゃ!」
現れた温和な笑みを浮かべ、ふさふさと口ひげを生やした初老の男性が現れ、博士と握手する。
「おや、この子は?」
「ああ、ワシの親戚の子でな。今ちょっと預かってる子じゃ」
「輪島尊です。初めまして」
「ああ、初めまして。私は沼田喜一郎。よく来たね」
男性は家の中へ俺達を招くと、今へと案内する。
「しかし、本当に久しぶりだ。五年ぶりだろうか」
「そうじゃの。五年前の山村教授の葬式以来じゃな」
「…………ああ、そうだな」
すると、急に沼田博士が暗い表情になる。
「実はな、阿笠。お前に見てもらいたいものがあるんだ」
「見てもらいたいもの?」
「ああ、少し待っててくれ」
そう言って沼田教授は席を外す。
「見せたいものってなんだろ?」
「さぁ?」
「うわああああああああああ!!?」
その時、急に沼田教授の悲鳴が聞こえた。
「今のは!?」
「二階からだ!!」
博士と共に、慌てて上に向かう。
「沼田君!どうしたんじゃ!?」
「あ、阿笠……あ、あれを………」
沼田教授が指さしたその先には、一人の男が倒れていた。
俺は部屋の中に入り、脈を確かめる。
「と、とにかく救急車を!」
博士が携帯を出し、救急車を呼ぼうとする。
「いや、博士。呼ぶのは救急車じゃない………警察だ」
「え?」
「亡くなってるよ。この人」
新一の助手なのに、小さくなっての最初の事件は恭介の推理となります。
一応、彼は助手であると同時に探偵なので