混沌を受け継ぎし者の外伝   作:鎌鼬

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無貌の王&太陽を落とした女

 

クー・フーリンと赤のライダーがぶつかり合っていたのと同時刻、彼らが戦っている戦場とは反対にあたる場所で赤のアーチャーは()()()()()()()()()

 

 

何故なら、敵の姿が見え無いのだ。矢が飛んでくる事から敵は赤のアーチャーの事を間違いなく捉えている。だと言うのに赤のアーチャーが狩人として磨いた気配察知の中に敵の存在を捉えられなかった。姿どころか気配、臭いまでも察知する事ができないのは赤のアーチャーからしてみれば初めての経験だった。

 

 

赤のアーチャーの真名はアタランテ、ギリシャ神話に登場する純潔の狩人と呼ばれた女狩人のアタランテはカリュドンの猪狩りやアルゴナイタイに参加するなどの数多くの冒険を成し遂げたまごう事無き大英雄である。男子では無いという理由で親から捨てられ、その事を哀れに思った女神アルテミスによって雌熊から乳を与えられて彼女は森で育った。つまり、森というのはアタランテにとって我が家同然の存在である。育った森では無いとはいえ、彼女の実力を十二分に発揮する事ができるフィールド。

 

 

だと言うのに、アタランテは初めて森に対して不気味という感情を抱いた。

 

 

森が敵の味方をしているような状況にもなればそう考えるのは当たり前の事だろう。初めての感情に僅かながらに動きが鈍ったアタランテに矢が襲い掛かる。

 

 

 

矢自体は脅威では無い。速度は遅くアタランテの素の反射でも反応出来るし、固有スキルである【追い込みの美学】により相手に先手を取らせその行動を確認してから自分が先回りして行動出来るという破格のスキルでも対処が出来る。

 

 

問題があるとすれば、やはり敵の存在を捉えられないということだろう。赤のライダー辺りなら卑怯者だと憤慨するかもしれないが自身の存在を欠片も漏らさない隠密にアタランテは狩人として尊敬の念を抱いていた。狩人というのは獲物を追いかけるだけでは無く、気配を殺して待ち伏せる事もする。これ程の隠密なら射る瞬間まで獲物に悟られないだろうとアタランテは矢を矢で弾きながら考えていた。

 

 

そして数度矢を弾けば足元に魔力が集まるのが感じられ、アタランテは迷うこと無くその場から飛び退いた。そうして現れるのは赤のライダーとアタランテを分断した棘。それだけなら避ければ良いのだがその棘から散布される毒がアタランテに移動を強いらせる。そうしてクー・フーリンと赤のライダーの戦場から徐々に引き離されていく。

 

 

「ーーー埒があかんな」

 

 

アタランテは敵の姿を捉えられず、敵はアタランテを仕留められない。このままでは手詰まりになると考えたアタランテはーーー目を閉じ、全身を弛緩させた。身体から力を抜き、全神経を集中させる。

 

 

そして敵の矢が放たれた。

 

 

そして矢の風切羽が木の葉を風圧で揺らした音を聞き取り、即座に音のした方向目掛けて矢を射る。残像が見えるほどの早撃ち(クイックドロー)は放たれた矢を砕いて真っ直ぐに飛ぶ。

 

 

「ーーーぐぅっ!?」

 

 

当たったと、矢が飛んだ方向から聞こえた呻き声にアタランテは微笑む。敵の姿が見えない状況で反射的に射った為にどこに当たったか分からない。だが敵の場所を知ることが出来た。

 

 

見事な隠密をしてくれた敵の顔でも見に行くかとアタランテは足に力を入れーーーその場で崩れ落ちた。

 

 

「なーーーガハッ!?」

 

 

身体から力が抜けて動かなくなるのに驚愕するのと同時にアタランテの口から鮮血が吐き出された。手足はまるで自分のものでは無いものになったかの様に動かなくなり、全身を凍える様な寒気と燃える様な熱が襲う。

 

 

「毒、か!?」

「ーーーヤレヤレ、やっと効いてくれたか。擦り傷でも十分な特別製の毒なのにあそこまで動けるなんて流石は英雄様ですかね」

 

 

立ち上がろうとするアタランテの目の前に緑衣の優男ーーー白のアーチャーであるロビンフットが現れる。左肩には矢が突き刺さっていて押さえているものの、今のアタランテに比べたら軽傷と呼べる程度の傷だった。

 

 

「き、さまーーー」

「悪いがこちらも仕事なんでね、恨み辛みは死んでからどうぞ」

 

 

自分を睨みつけるアタランテに淡々とそう言うと腰から短剣を引き抜いて振りかざす。これで短剣を振り下ろせばアタランテは死ぬ。

 

 

この結末はある意味必然であったとも言える。アタランテとロビンフット、この両者を比較するなら英霊としての格も力量も、アタランテに軍配が上がる。だがアタランテは神代の魔物が蠢く時代に魔物相手に戦っていたのに対して、ロビンフットはひたすらに人間相手に戦ってきた英霊なのだ。なら、対人の経験を積んでいるロビンフットが勝つのは当然のことだ。

 

 

ーーー相手が、アタランテ一人ならば。

 

 

「ーーーっ!?」

 

 

振り下ろそうとしていた短剣を止めて、ロビンフットは顔を顰めながら全力で後退した。その直後、ロビンフットがいた場所に槍が落ちる。

 

 

「はぁ……折角一騎脱落させられると思ったのに横槍かよ」

「ーーーそれは済まなかったな。だが、こちらにも事情があるのだ。ここでアーチャーを落とさせる訳にはいかない」

 

 

現れたのは肉体と同化している黄金の鎧を身に纏ったサーヴァントーーー赤のランサーだった。ロビンフットが溜息を吐きたくなるもの頷ける。片腕を犠牲にしてアタランテを殺せるチャンスを得たというのに赤のランサーの乱入によってそれは出来なくなったからだ。

 

 

「白のアーチャーとお見受けするが」

「そういう御宅は施しの英雄様だっけか?」

「ーーーほぅ」

 

 

施しの英雄、その言葉を聞いて赤のランサーは目を僅かに開いた。それは不快に思ったからではなく驚きから。戦場に出たのは黒のセイバーとの戦いの一度だけだと言うのに相手は自分の真名を確信している様なのだ。

 

 

普通ならはったりの可能性を考えるだろうが、赤のランサーには相手の性格・属性を見抜く固有スキル【貧者の見識】がある。それにより、ロビンフットがはったりを言っていないことを見抜いた。

 

 

「ったく……スーリヤの息子だなんて俺なんかが相手出来るわけ無いってーの。いや、他の英霊らも倒せって言われても困りますけどね?」

「……そうは言っているが負けると考えていない様だな」

「は?……まぁ折角呼び出されたからにはあの箱入り娘で世間知らずなマスターに良いところ見せたいとは考えてますよ?ってやべ、マスターの旦那に聞かれたら殺されるわこれ。今のは無かったことにしてくれ、頼むから」

「何故隠す必要があるのだ?マスターの美点を褒めただけなのだろう」

「……うわーこの人ガチで言ってやがりますわ。これ天然かよ、施しの英雄様って天然なのかよ」

 

 

スーリヤの息子、施しの英雄というワードで該当する英雄などたった一人しか居ない。マハーバーラタに登場する半神半人の英雄、カルナ。施しの英雄とは何かを乞われたり頼まれた時に絶対に断らないことを信条とした事から呼ばれている。

 

 

その霊格は語るまでもなく最上級に位置する。カルナの相手を出来るのは白の陣営ではアルトリアくらいなものだろう。それでも、正攻法で挑めば必ず負けるというのがアルトリアと白の陣営マスター全員の見解だった。

 

 

カルナの強みは剣、槍、弓、戦車などの武芸、そして肉体と同化している黄金の鎧にある。産まれた時から来ていた黄金の鎧は太陽神スーリヤが息子の証として与えたものであり、これを着ているカルナは不死身となり誰も殺せなくなる。これをカルナのライバルであったアルジュナの父であるインドラが奪ったことでカルナは不死身では無くなったが、肉体と同化していた鎧を引き剥がして与えたカルナの潔さにインドラは自身の行為を深く恥じ入り、黄金の鎧の代わりに一つの槍を差し出した。

 

 

これによりカルナは不死身では無くなり、アルジュナとの戦いに破れて死ぬ事になるのだが、サーヴァントとして召喚されたカルナはその鎧を纏っている。しかも手にしている槍……あれは間違いなくインドラから与えられた槍だろう。

 

 

ロビンフットはカルナに勝てる気など全くしなかった。黒のセイバーとの戦いの光景を見せられた時からそう思っていたし、こうして実際に目の前に立たれて改めて思い知らされる。アタランテを瀕死にまで追い込んだ事自体が彼からしてみれば奇跡に等しかったりする。

 

 

ロビンフットはアタランテの矢を肩に受けて手負い、カルナは先日黒のセイバーと戦ったはずなのに無傷。魔術協会から派遣されたマスターの腕が良い事を知らされる。ロビンフットのマスターであるアイリスフィールも肩の傷くらいなら簡単に癒す事が出来るだろう。だがそれは近くにいた時の場合だ。少なくともロビンフットから100m以内の距離にいなければ効果は望めない。アイリスフィールがいる場所とこの場所とでは直線距離にして数十Kmは離れている。

 

 

改めて整理してみればなんと絶望的な状況だろうか。それでも、ロビンフットはカルナを前にしていつも通りのおちゃらけた態度を崩さなかった。

 

 

絶望的な状況で気が狂った?実力に差があり過ぎて開き直った?どんな絶望的な状況でも自分だけは生き残ると確信している?

 

 

どれも違う。確かにロビンフット一人ならば、この状況は絶望的であろうーーーそう、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ーーー砲ぉ撃用ぉ意ッ!!」

「何?」

 

 

威勢の良い掛け声と共にカルナとアタランテの周りの景色が歪み、そこから旧式のカノン砲が現れた。そしてカルナの察知圏内に新たなサーヴァントの反応が現れる。さっきまでそこには何も無かった、だというのにそこに突如として現れた。それは現代の魔術師では誰も成し得ない空間転移の法。魔術を極めたキャスターであっても陣地の中だけしか使う事が出来ないそれをやってのけた。

 

 

「令呪か」

 

 

カルナは冷静にそのトリックを見抜く。それはマスターに与えられた三度限りの命令権。如何に理不尽な命令であってもマスターとサーヴァントの意向が一致していれば擬似的に奇跡の法である魔法の真似事すら出来る。それを使って新たなサーヴァントのマスターはこの場に送り込んできたのだろう。

 

 

随分と景気の良い事だとカルナは思った。三度限りの命令権である令呪はこの聖杯戦争の参加者の証でもあり、無くなればサーヴァントとの繋がりが断たれて聖杯戦争への参加権を失う事になる。故に実質的に使えるのは二度だけ。二度しか無い令呪をここで切り出したマスターに尊敬した。

 

 

「藻屑と消えなーーーッ!!」

 

 

そしてカノン砲が火を噴く。全方向から僅かな時間差とともに放たれた砲弾は真っ直ぐにカルナとアタランテに向かって飛んで行くーーーだが、カルナにとってはこの程度の状況は窮地の内にも入らない。手にしている槍を一振りする。それだけで迫っていた砲弾は砕け散った。

 

 

「ヒュ〜♪やるねぇアンタ」

「……お前は白のサーヴァントだな」

 

 

口笛を吹きながら上機嫌な様子で現れたのは酒瓶を持った顔に大きな傷を付けた美女。カルナは彼女を見てどこか赤のライダーに似ているように感じられた。

 

 

「そうさ、アタシが白のライダーさ。にしてもアタシの船の大砲を砕くだなんてやってくれたねぇ」

「成る程、お前の宝具は船に関わる物なのだな」

「ありゃ、バレちまったかい?まぁ良いさ、ウチの雇い主からも勝てるのなら過程はどうでも良いって言われてるからね」

 

 

そう言って白のライダー……フランシス・ドレイクは酒酒を煽り、空になった瓶を投げ捨てて腰に差していたクラシカルな二丁拳銃を抜いた。

 

 

この場にはカルナとフランシス・ドレイクの二人のみ、ロビンフットとアタランテの姿は見えなくなっている。アタランテは令呪を使って撤退させると彼女のマスターから念話で伝えられているから気にしては居ない。ロビンフットは自分の足で逃げたのだろう、地面には彼の物だと思わしき血の跡が森の奥にへと続いている。

 

 

「さぁて、破産する覚悟は良いかい?一切合財、派手に使い切ろうじゃないか!!」

 

 

そう言ってフランシス・ドレイクはカルナに真正面から突っ込んでいった。彼女の敏捷はアタランテには劣るもののBと平均的なサーヴァントに比べれば速い。だがカルナほどの大英雄相手に真正面から突っ込むのは愚策としか言えない。それにカルナの敏捷はフランシス・ドレイクのそれを上回るA。

 

 

真正面から突っ込んでくるフランシス・ドレイクの一挙一動をカルナは捉え、殺傷範囲内に踏み込んできた瞬間に心臓目掛けて槍を放った。加減無しの神速の一撃は全力で向かってきたフランシス・ドレイクには回避不可能、この一撃で霊格を砕いてフランシス・ドレイクは敗退する。

 

 

だが、忘れてはいけない。彼女はフランシス・ドレイク、当時不可能と言われた世界一周を成し遂げた海賊にして冒険家である。

 

 

彼女はーーー()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ーーーいよっと!!」

「何ーーー」

 

 

放たれた神速の突きを、フランシス・ドレイクはなんと()()()()()()()()()()()。それには流石のカルナも目を見開く。そしてそのままカルナを飛び越え、重力に従って落下しながら二丁拳銃の引き金をカルナの背中目掛けて引く。

 

 

カルナの【日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)】はスーリヤから与えられた物。太陽そのものの輝きを放つ、強力な防御型宝具。光そのものが形になっている為に神々であろうと破壊は困難である。自動展開な為に魔力の消費こそ激しいがこれを纏っているカルナは誰にも殺せないとインド神話の中でも語られている。

 

 

そしてフランシス・ドレイクの二丁拳銃から放たれた弾丸はーーー()()()()()()()()()()()()()()()穿()()()

 

 

「ガァーーーッ!?」

 

 

カルナの上げた声は痛みに対してでは無く鎧の防御を貫かれた事に対してだった。黒のセイバーでも浅くしか傷を付けることが出来なかったというのに、黒のセイバーよりも霊格が下であるフランシス・ドレイクがまともなダメージを与えたのだ。驚かない方がおかしい。

 

 

まともなダメージであっても致命傷とは言えない傷はすぐに鎧によって癒える。そしてカルナは【貧者の見識】によってフランシス・ドレイクの本質を見抜いて何故鎧の防御を貫かれたのかを悟った。

 

 

「貴様ッ!!()()()()()()()()!?」

 

 

フランシス・ドレイクは太陽を落とした。無論それは天に輝く恒星のことでは無く、彼女が生きていた当時の世界の覇者スペインを落としたことに由来する。当時のスペインは〝太陽の沈まぬ王国〟と称され、それを支えていたのが千トン級以上の大型艦100隻以上を主軸とし、合計6万5千人からなる対英国の征服艦隊。スペインの無敵艦隊である。

 

 

その無敵艦隊との決戦にフランシス・ドレイクは英国艦隊の副司令として参戦した。〝火船〟と呼ばれる特殊な戦法を使い、フランシス・ドレイクは無敵艦隊を英国に上陸させること無く大敗させた。それによってフランシス・ドレイクはスペイン人からこう呼ばれる事になる。

 

 

エルドラゴ(悪魔)〟と。

 

 

〝太陽の沈まぬ王国〟を歴史の盟主から引きずり下ろした太陽を落とした女であると。

 

 

だからフランシス・ドレイクは【日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)】の守りを抜くことが出来た。太陽など、彼女にとってもはや引きずり下ろした存在でしか無いから。

 

 

「貴様ーーー」

 

 

傷は癒えたがカルナは激昂していた。カルナにとって太陽とは太陽神、つまり彼の父であるスーリヤに他ならない。父の威光を穢されたと怒っているのだ。

 

 

だが、その怒りの矛先はフランシス・ドレイクでは無くカルナ自身に向けられていた。フランシス・ドレイクが父の威光を汚したのでは無く、自分が父の威光を汚してしまったと、カルナはそう捉えている。

 

 

インドラから与えられた槍を握り、フランシス・ドレイクに向き合う。それに応えるように、フランシス・ドレイクも二丁拳銃をカルナに向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてーーースパルタクスが向かっていった方向に、雷が落ちた。

 




緑茶Vsアタランテ
ライダーと分断された時に傷をつけられた時点で勝敗が決まってました。緑茶からすればあとは毒に気づかせずに毒が回るのを待っていれば良いだけでした。

もし毒を入れられなかったら、どう足掻いても緑茶はアタランテにハンティングされてました。

BBA!!Vsカルナ
BBA!!大強化。元々【星の開拓者】とかいうチートスキルを持っていたのに実話から太陽神やその眷属に対してのダメージ判定が増加されるようになりました。BBA!!の功績を考えればこれくらいやってくれるはず。やったね!!これで白の陣営もカルナの相手が出来るようになったよ!!

BBA!!呼びか……黒ヒゲのBBA!!リスペクトが面白かったのがいけないんだ。

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