ストーリー自体は『超次元の騎士』と世界観はつながっていません。
別物のストーリーとして読んでいただければ幸いです。
「お疲れ様です、アイエフさん…あら、その方は?」
プラネテューヌの教祖、イストワールはクエストに出かけたアイエフ、コンパ、ネプギアの後ろに見慣れない青年が立っているのに気づいた。
『あら、この子がプラネテューヌの教祖?見た目はずいぶんと幼いのね』
青年の首に掛けてあったネックレス…『シルヴァ』が喋り、イストワールは驚愕するが、青年はシルヴァを窘める。
「シルヴァ。そういうことはっきり言わないの」
『はいはい。分かってるわよ』
拗ねたように返事をするシルヴァに青年は苦笑いを浮かべると、イストワールに挨拶をする。
「初めまして、プラネテューヌの教祖、イストワール様。私の名は、轟雷零夜と申します」
この時だけ、零夜はやけに丁寧な挨拶をした。
――――――――――
「つまり…零夜さんは別の世界から、ゲイムギョウ界に渡った敵を追ってきたということですか?」
「まあ、ざっくり言えばそういうことかな?あと、イストワールさんには俺の師匠から連絡が届いてるはずですけど…」
「え?………あ」
イストワールさんは何やらメールボックスのような物を空間に出現させると、どうやらそれらしき物を見つけたようだ。
「たしかに見つけました…なるほど、そういうことでしたか」
「そういうこととは…どういう意味ですか?」
アイエフがイストワールに質問してくる。
「私は、以前から気になっていたことがあります。それは、マジェコンヌを信仰している人々の何人かが消息を絶っているというものでした」
「信仰…とは?」
イストワールが説明する。
「この世界を統べる守護女神は、人々の信仰心がそのまま己の力となります。我々はその力を、『シェアエナジー』と呼んでいます」
「シェア…エナジー…」
「はい。ですが、今のネプギアさん達は力を十分に発揮できません。女神達がマジェコンヌ達犯罪組織に敗れて2年経過してます。その結果がこの世界の現状です…」
イストワールは俯いて話す。
「ゲイムギョウ界のシェアの凡そ80%がマジェコンヌのものになりました。そのせいで、犯罪組織はますます力をつけてしまい、先ほどのような事件も発生するようになってしまいました」
「なるほどね………犯罪組織を信仰することで人々のモラルを低下させ、堕落した人間達の心が陰我を呼び寄せ、ホラーが現れる。例えホラーを1体2体倒しても、犯罪組織が存在する限り同じようなことが繰り返されるってことか…」
複雑そうな表情の零夜。
「確かに、犯罪組織の裏にホラーと通じる奴等がいるって師匠の話に信憑性が増してきたよ。ホラーの力を利用する奴等なら、この状況に関わっていないはずがない」
『なら、決まりじゃないの?ゼロ』
シルヴァの声に俺はうなずいた。
「もし良ければ、貴女達の旅に同行してもよろしいですか?」
「「「「え?」」」」
ネプギアたちは、零夜の提案に驚く。
『言っておくけど、ホラーは貴女達では倒せない。ホラーを倒せるのは、ここにいるゼロだけよ』
「そ、そうなんですか?」
コンパが質問するが、零夜は頷く。
「ああ。ホラーを倒すには、有効な武器を使うしかない。それを使えるのは…この俺だけだ」
零夜は双剣…『魔戒剣』を取り出す。
「この剣が、現状この世界でホラーに対処できる唯一の武器だ」
「だったら、この剣を調べて複製できれば良いんじゃないの?」
アイエフが聞いたが、零夜は首を振る。
「無理だね。魔戒剣は魔戒騎士にしか扱えない。さらに言えば、剣を操れるのは騎士としての力をつけた男に限定される」
『魔戒剣の材質、ソウルメタルの特性ね。鎧や剣といった武具に加工した場合、加工されたソウルメタルは女を拒絶するの。尤も、女でも魔戒剣を使う方法はあるにはあるけど、お勧めしないわ。負担が大きいけど大して使いこなせるわけじゃない。ほんの少し振ることができるだけ』
シルヴァが淡々と説明する。
「ということは…仮に私たちがそのソウルメタルとやらを手に入れても、どうしようもないってこと?」
「そうだな。それと、ソウルメタルは簡単には採れないぜ。何せあれは…」
零夜は魔戒剣を見せながら説明する。
「元はホラーの死骸だからな」
「「「「えええ!?」」」」
顔を青くするネプギア、コンパ、アイエフ、イストワール。
「と、ということはつまり…」
「零夜君は、ホラーの力を使っているということですか!?」
「そういうこと。後、シルヴァだってそうだぜ?」
「同じ…ということは、シルヴァさんもホラー…なんですか?」
『そうよ。尤も、私はゼロと契約している上に、人を襲う趣味はないわ』
「それに、ここに収められているのはシルヴァの魂だけだ。シルヴァは特殊なホラーでな、人との共存を望むホラーで、このネックレスに魂を移して俺のサポートをしてくれる」
で、と言葉を切る零夜。
「もし今後、犯罪組織がホラーを使ってきたら、奴らは俺が倒す。対ホラーの用心棒としては役不足かな?」
おどけた様に聞く零夜。
「…そうですね。私からお願いしてもよろしいでしょうか?」
イストワールが質問する。
「良いんですか、イストワール様?」
アイエフがイストワールに聞く。
「実際、アイエフさんはご覧になったのですよね?彼の力を」
「ええ。確かに強さだけなら私たちよりも上かもしれません。ですが…」
どうやら、アイエフはまだ零夜を信用できていないらしい。
まあ、いきなり現れた見知らぬ男を信用するなど、簡単な話ではない。
「ま、じっくり考えておくのも大事だよね」
零夜は扉に向かって歩き出す。
『お嬢ちゃん達。今夜、プラネテューヌの中央広場に来てみなさい。零夜のことをはっきりと知りたければね』
「シルヴァ!」
いつになく強い声でシルヴァを窘める零夜。
そのまま、零夜は姿を消した。
―――――――――――
その夜、ネプギア、コンパ、アイエフはシルヴァの言っていた中央広場に訪れていた。
「本当に来るんですか?」
「多分ね。あいつの言葉が本当なら、ここにホラーとかいうのが現れるはずよ」
物陰に隠れながら周囲を見回す3人。しかし、ネプギアは違和感を感じていた。
「アイエフさん。なんか、妙じゃないですか?」
「妙…って?」
ネプギアは周囲を見て呟く。
「プラネテューヌって、この時間でも外に人はいましたよね…?」
その言葉にアイエフは気づく。
そう。さっきから人一人見かけない。
今は夜の11時。
確かに人が少なくなる時間だが、ゲイムギョウ界の先進国家であるプラネテューヌにしてはおかしい。
まるで、人が消えたようだ。
すると、上空から何かが降ってくる。
「あれって………人!?」
落ちてきた人は、広場の樹木をクッションにして落ちる。
「ぐ………うああ…」
ボロボロになっていたのは、立派なスーツを着た成人男性。
ネプギアは男性の元に駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ…」
ボロボロの男性の容態を確認しようとするネプギア。
しかし…
「ちょっとそこ退いてくれない?ネプギアちゃん」
昼間に聞いた声。
振り返ると、そこに立っていたのは轟雷零夜。
その手には、二振りの魔戒剣が握られている。
「れ、零夜さん!?何をしてるんですか!?」
慌てるネプギア。
目の前の零夜の目には殺気が満ちている。
おどけた様な口調でも殺気が隠せていない。
「見てわかんないかな?ホラー狩りだよ、ホラー狩り」
「ホラーって…この人がホラー…?」
ネプギアは後ろの男を見るが、どう見ても人間にしか見えない。
「ネプギア!」
「ギアちゃん!」
アイエフとコンパがネプギアの前に立つ。
「あんた、何するの!?ホラーを狩るとか言ってたけど、あんたが襲ってるのは人間じゃない!」
確かに、ボロボロになっている男と、それを剣を持ちながら迫る零夜。
はたから見たら、零夜の方が危険に見える。
アイエフが叫ぶが、零夜は鋭く睨み、警告する。
「早く退け。じゃないと…
お前らが殺されるぞ」
その瞬間、ネプギアは何者かに首を絞められる。
首を絞めたのは、先ほどまで後ろにいた男性。
「な…なん…で…!?」
零夜はポケットから銀色のライターを取り出し、青い炎を飛ばす。
青い炎は男性の目の前でとまると、男性の目に不思議な模様が浮かび上がる。
「貴様…魔戒騎士か…」
「そ。だからその子を返してくれる?返してくれれば痛みを感じる間もなく送り返してやるから」
穏やかに話しかけるが、零夜は魔戒剣を構える。
「悪いが…そういうわけにはいかないんだよ!」
男は体を変異させ、異形の怪物となる。
「ひっ…!?」
「何よ…あれ?」
コンパは目の前の怪物に怯え、アイエフも驚きを隠せない。
ネプギアを捕らえていたのは、全身が赤い鱗に包まれ、1本の鋭い角が目立つ怪物。
『ゼロ。あのホラーはグリムゾーラ。厄介なのはあの巨体よ』
「サンキューシルヴァ。後は大丈夫だ」
零夜はポケットから何かを取り出す。
「ふっ!」
零夜はポケットから取り出した物…小さなナイフを投げつける。
「ちっ!」
グリムゾーラは投げつけてきた物が何なのかを察し、とっさにネプギアをつかんだままよける。
「きゃっ!?」
しかし、グリムゾーラの右腕が切り裂かれる。
「何だと!?」
右腕が切り裂かれ、ネプギアが解放される。
「ネプギアちゃん!」
零夜はネプギアの手をつかみ、引き寄せる。
「大丈夫か?」
「は、はい…」
零夜はネプギアをゆっくりと地面に降ろす。
『安心しなさいゼロ。この子はホラーの血を浴びてないわ』
「そうか。なら安心だ」
アイエフとコンパが走ってきた。
「ネプギア!大丈夫!?」
「ギアちゃん!」
二人にネプギアを預け、零夜は一言だけ告げる。
「2人とも、ネプギアちゃんのこと、頼んだよ」
零夜はグリムゾーラと向き合う。
「殺す…魔戒騎士、殺してやる!」
「………ちょっと黙ってろ」
小さく呟いた言葉だが、その威圧感にグリムゾーラだけでなく全員が怯んだ。
(何…あの威圧感…?)
アイエフは先ほどまでとはまるで違う零夜に震えていた。
零夜は、2本の魔戒剣を取り出すと、頭上に構える。
「あれは…?」
零夜はすばやく2本の剣で頭上に円を描いた。
すると、零夜に変化が訪れる。
描いた円から、青みがかった銀色の装甲が出現し、零夜の周囲を旋回する。
装甲はやがて、零夜の体に装着され、狼を模したマスクが零夜の顔を覆った。
「銀色の…狼?」
零夜の持っていた2本の魔戒剣は大きく変化し、切っ先が曲がった『銀狼剣』へと変化した。
「何だ貴様………その鎧はいったい!?」
鎧を見た瞬間狼狽するグリムゾーラ。
「教えてやるよ…『銀牙騎士・絶狼』、参る!」
零夜…絶狼は鎧を装着する前よりも素早く走り、グリムゾーラに剣を振り下ろす。
「ぐううっ!?」
咄嗟にグリムゾーラは受け止めるが、絶狼はグリムゾーラの角を蹴り、ジャンプする。
空中で絶狼は2本の銀狼剣の持ち手を繋ぎ、ブーメランのような『銀牙銀狼剣』にする。
「ハアッ!」
空中で絶狼は銀牙銀狼剣を振り、グリムゾーラの角を叩き切る。
「グウウウオオオオ!?」
角を折られ、悲鳴を上げるグリムゾーラ。
「これで…」
絶狼はグリムゾーラの首に剣を振り下ろした。
「終わりだ!」
銀牙騎士の剣は、グリムゾーラの首を切り落とした。
首を切り落とされたグリムゾーラは、ゆっくりと体が朽ちていき、消滅する。
グリムゾーラの首も、腐るように溶けて消滅した。
―――――――――
アイエフ、コンパ、ネプギアの前には鎧を纏った零夜…絶狼が立っていた。
しかし、一瞬絶狼の体が輝くと、鎧が光となって消え、零夜の姿に戻っていた。
「ねえ…あの姿は…?」
「あれは絶狼。俺が師匠から継いだ、魔戒騎士の鎧だ」
零夜は魔戒剣を回転させながら鞘に戻す。
「それとわかっただろ?あれがホラーだ」
その言葉にネプギア達は俯く。
もし零夜がいなかったら…自分達はあのホラーに食われていたかもしれない。
「ホラーは人に化け、人を食らう。よく分かっただろ」
人に化ける。そんな怪物がすでにゲイムギョウ界にも存在している。
「そしてホラーを倒せるのは…魔戒騎士だけだ」
零夜はコートの内側に剣を仕舞い、去ろうとする。
「ま、待ってください!」
ネプギアの言葉に零夜は立ち止まる。
「さっきは…ありがとうございました!」
零夜は背を向けたまま、手を振る。
いつの間にか、黒いコートの騎士は闇夜へと消えていった。
――――――――――
翌朝、再び教会を訪れた零夜だったが…
「おはよう、『零夜』」
旅支度を整えたのか、大きな鞄を持ったアイエフが立っていた。
「お、おはよう…」
「あ、零夜さん!おはようございます!」
笑顔で挨拶をするコンパ。
「これから、よろしくお願いします!」
と頭を下げるネプギア。
「え?これからって、どういうこと?」
「勿論、昨日の返事ですよ!」
昨日の……あ。
「私達の旅に着いて来てください!」
どうやら、これからの旅の同行をしてほしいらしい。
「本当に良いのか?」
「はいです!ギアちゃんもあいちゃんも私も、歓迎しますよ!」
本当に?という視線をアイエフに向ける。
「ええ。確かに私達じゃホラーには勝てないかもしれない。昨日のことでそれがはっきり分かったわ」
だけど…と続ける。
「それでも私はあきらめたくない。私は大事な友達を…ネプギアの姉であるねぷ子を助けたいし、今のゲイムギョウ界を変えたいの。そのためにはあなたの力が必要。だから…力を貸して」
キョトンとする零夜だったが、すぐに微笑む。
「喜んで受けますよ。麗しのレディ達」
『全く、照れくさいときにカッコつける癖は治ってないのね』
「一言余計だよ、シルヴァ!」
こうして、女神候補生(ネプギア)、プラネテューヌ諜報員(アイエフ)、新米看護師(コンパ)、魔戒騎士(零夜)という新たなパーティーが完成した。
―――――ZERO―――――
次回予告(ナレーション シルヴァ)
世界を救うために彼女達に力を貸すなんて…ゼロらしいわね。
でも、忘れてないわよね?魔戒騎士のタブーを…
いくら魔戒騎士でも、越えちゃならない一線があるのよ?
Next ZERO『掟―RULE-』