意識が覚醒する。
太陽の光がまぶしい。
なぜか自分は寝袋に寝かせられていた。
「あ、起きたんだね」
声がした方向を向くと、白く美しい肌の黒髪の少女が木の幹に座っていた。
「君は森で倒れていたんだけど、体はどう?」
森で倒れていた?・・・森に入った記憶は自分にはなかった。
それどころか最後の記憶はベッドの上だ。
本当に森で倒れていたのかと聞いて見るが。
「うん、立派な剣を持っているみたいだけど、それじゃあ盗賊や山賊にとっては恰好のまとだよ?」
立派な剣。
確かに自分の背中にはしまっておいたはずの剣が背負ってある。
装備も寝る前にきていた服装とは違い軽装ながらもしっかりと武装していた。
「元気になったなら良かったけど、これからは気をつけなよ?」
色々と分からないことだらけだったが、少女のことを聞いてみる。
「僕?僕はアレクサンドラ、長いからアレクで良いよ、でも・・・君こそ何者なんだい?」
自分のこと・・・とりあえず冒険者であるとだけ名乗っておいた。
「ふーん、それじゃあ冒険者が森で倒れてたんだ、・・・ちゃんと準備をしていなったのかい?」
・・・少し無理やりないいわけだったからもしれない。
「まあ、悪い人じゃなさそうだけど・・・少なくともジスタート出身じゃなさそうだね」
ジスタート、聞いたことのない名前だった。
世界地図は読んだことがあるが一度もそんな名前の国も地名も大陸も見たことがない。
そして自分がネス公国の人間だと言うと。
「ネス公国?・・・聞いたことない国だけど」
彼女も似たような反応をしていた。
しかしそれは自分も同じで、ジスタートという国は聞いたことがないと言うが。
「・・・君、本当に冒険者なの?、さっきから言っていることがおかしいよ?」
ますます疑われてしまった。
「怪しいけど・・・嘘をついているようには見えないし・・・うーん・・・」
一体これはどういうことなのか。
目が覚めてみれば見知らぬ森の中で見知らぬ少女に助けられる。
そして知らない国の名前が出てくる。
かつて似たような体験はしたが・・・それ以上に奇妙だ。
とりあえず隠しておいたらさらにややこしくなるとこれまでの経歴を話す。
「・・・ふーん、つまり君は突然目が覚めたら知らない国にいた・・・と、それを信じろっていうのかい?」
彼女の言うとおりだ。
自分でも信じろといわれて信じられるものではない。
「良いよ、信じる」
なんと、彼女は自分の言葉を信じると言った。
「嘘をついてるようには聞こえないし、君の言っていることは真実な気がしたのさ、自分でもおかしいとは思うけどね」
ともかく、信じてもらえてよかった。
だが、それで何かが解決したかというとそうでもなく・・・というより何も解決していなかった。
ここがどこなのか、どうしてここにいるのか、全く持って解決していない。
「それで・・・君はこれからどうするの?」
・・・どうするか。
かつて似たような体験をしたときは一応人が住んでいるところだったのでどうにかなったが。
しかし今は森の中、さすがにどうしようもない。
そう悩んでいると・・・。
「・・・もしよければ、・・・僕と一緒に来ないか?」
その言葉を聞いて二つ返事で快諾した。
「・・・ん、良かった、けど疑ったりはしないの?、さすがに初対面でこういうと断られると思ったんだけど」
前に似たようなことがあったから問題はなかった。
「それなら良かったよ、・・・それじゃあよろしくね」
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道中、アレクに国のことを教えてもらった。
今自分がいる国はジスタート王国と言う名前らしい。
王都シレジアを首都とする国でその中に複数の公国が存在する。
今自分たちがいるのはルヴーシュ公国という場所だ。
またジスタート公国には王に仕える7人の戦姫が存在しルヴーシュ公国はその戦姫の一人が治めている。
戦姫と聞いて、かつて戦った一人の女将軍を思い出した。
彼女はとても強く、本気を出してなんとか辛勝できたほどだ。
アレクにはお返しとばかりに自分の国のことを話す。
自分が住んでいた国はネス公国と言う名前の封建制国家だ。
そして自分はネス公国の「ホルム」という町に住んでいる。
「ふーん・・・やっぱり聞いたことがないなぁ、でもこれだけ詳しく言えるってことは、やっぱり嘘じゃないんだね」
どうしてかは分からないが、彼女は自分のいった事を信じてくれた。
さらに驚愕のことが判明する。
アレクはなんとまだ14歳だというのだ。
11歳の時に旅に出たらしい。
「やっぱ、君のいたところでもそういうことはなかったんだ?」
少なくとも自分の身の回りでは11歳で旅に出た人はいない。
生まれたばかりで戦っていた存在はいるが、あれは特殊なパターンだ。
「でも、そういう君は何歳なのさ」
アレクは自分の年齢を聞いてきた。
自分の年齢を言うと「そうなんだ、意外だなぁ」と答えた。
自分の年齢は意外らしいが、何が意外なのだろうか・・・。
途中、山賊に襲われたが・・・。
「うぐぁぁぁぁ・・・」
「こ、こいつらつぇぇ・・・ぐぇっ!」
思いのほか楽勝だった。
自分やアレクの攻撃でいとも簡単に倒れていく。
自分自身それなりの強さは持っているつもりだったが、アレクもとても強い。
文字通り一振りでやられていく山賊たち。
それは戦うという感覚を思い出させていた。
自分の一閃は容赦なく敵の命を刈り取り・・・。
そして、ついに最後の山賊を斬りおえた。
「・・・君、強かったんだね」
戦いが終わった後にアレクが賞賛する。
アレクもとても強かったと伝える。
「・・・ありがとう、でも、君のほうが強かったよ」
そんな事はないと思うが、それ以上言うとめんどくさいことになりそうなのでやめておいた。
アレクの戦い方は自分がかつて一緒に冒険した二人の仲間と同じように二刀流で戦う。
その動きは二人の中でもNINJAメイドの少女に近いものを感じる。
すばやく的確に敵を仕留めていた。
曰く、生きるために覚えた技術らしい。
生きるためにここまで強くなる必要があるとは、なんとも恐ろしい世界に来てしまったようだった。
・・・いや、恐らく自分が居た場所が安全だっただけで、同じなのかもしれない。
人間が一番恐ろしいというが、その通りだと思った。
「うん・・・でも良い人もたくさんいるよ」
良い人もたくさんいる、その通りだ。
自分の周りにも「良い人」は大勢いたし、なんどもお世話になった。
「でしょ?だから悪い人間ばかりじゃないよ」
アレクはそういって微笑んだ。
その微笑みにドキリとしたのは内緒だ。
そして夜。
二人は野宿の準備をした。
ここまでの道中でそれなりに仲は良くなってきたと思うが、それでも14歳の少女と一緒に寝るのは少し憚られる。
とはいえ言っててもどうにもならないので自分もちゃんと準備を行う。
焚き火をしている周り以外は既に暗闇に包まれており、洞窟とは違う怖さがある。
その怖さを紛らわせるためにも、料理をすることにした。
なぜか持ち物にはいっていた生肉を調理し、肉団子のスープを作った。
「うん、これはおいしいよ!」
アレクは気に入ってくれたようだ。
失敗するとこげた石やどうみても毒なシチューが出来てしまうが、今回は成功できた。
「料理が上手なんだね、これからは君にまかせようかな」
上手ってほどでもない、食材を加工して簡単に作れる程度だ。
かつての冒険者仲間の弓使いの少女は上手に作れるが。
「・・・良く分からないけど、その人はもっと上手ってこと?」
そういうことだ。
「君の仲間には色々な人がいたんだね、・・・さて、それじゃあ・・・そろそろ寝ようかな」
気づけばかなり遅い時間になっていた。
色々なことがありいまだに頭の中で整理しきれてはいないが。
とりあえず今日はもう寝ることにしよう。
それにあの時と同じように、寝れば元に戻るかもしれない。