次の日
あの世界とは違い元の世界に戻るということはなかった。
目を覚ませば昨日寝た場所と同じ光景が広がっていた。
そしてアレクの姿が見えないことに気づく。
大丈夫だとは思うが心配なので付近を捜すことにした。
そしてアレクの事ははすぐに見つけられたが・・・。
「・・・♪」
どうやら近くの川で水浴びをしていたようだ。
14歳としては発育の良い体でついつい見ほれてしまう。
「ん?・・・誰かいるの?・・・もしかして」
ハッと我に帰り元いた場所に戻った。
ばれたらせっかく信用してくれたアレクを裏切ってしまう。
いや、その理論だともう裏切っているかもしれないが・・・。
ばれていないといいが・・・。
数分後アレクが戻ってきた。
「あ、起きてたんだ、おはよう」
自分も挨拶を返す。
どうやらバレてはいないようだ。
ほっとしつつも後片付けと身支度を整える。
自分も少し水浴びがしたいが、さっきのことを思い出しそうなのでやめておいた。
そして支度が終わるとアレクが話しかけてきた。
「ねぇ、今日は、町に行って見ようと思うんだ。さすがに町くらいは行ったほうがいいし、どうかな?」
町に寄るのは良い考えだろう。
昨日は大丈夫だったがいつ食料や油などが切れるか分からない。
補給をし忘れてしまいひどい目にあったことがある。
「賛成みたいだね。それじゃあ出発しようか、今から出発すれば昼頃には着くし」
それならすぐに出発したほうが良い。
二人は出発した。
朝の森は安全で何事もなく森を抜ける事が出来た。
山賊も昨日と違い遭遇もしない。
森を抜けると見えた光景は・・・草原だった。
簡単に舗装された道を除けばなにもなく風に草が揺れていた。
その風は頬をなでて来て気持ちが良い。
「・・・ここも昔は戦争で荒れてたんだよ」
ふとアレクが呟く。
戦争、自分もかつて参加したことがある。
その光景はあまりにも凄惨で、綺麗だった牧地や草原が血と死体で埋め尽くされてしまったほどだ。
しかしあまりそういう風には見えないが・・・。
数年で元に戻るような状態ではなかった。
「うん、戦争が終わった後は敵味方関係なく埋葬したらしいから」
なるほど、それなら十年くらいたてばまた草原に戻るのかもしれない。
それにたとえ敵でも埋葬をすることは大事だ。
・・・とはいえ戦争をしないことがもっとも良いことだが。
そしてまた二人は道を歩く。
途中、なんどか人とすれ違うこともあった。
そのほとんどは商人でアレクのような旅人は珍しいらしい。
「危険を冒してまで旅をする必要なんてないからね。よっぽどの事ない限り仕事はあるから、・・・まあ僕はちょっと理由があって旅をしているんだけど」
理由とは一体なんなのか気になったので聞いてみるが。
「・・・ごめん、いつか話すよ」
断られてしまった。
もしかしたらアレクもあの少女のような理由があるのか。
・・・しかし性格はまるっきり違う。
アレクはどっちかといえば素直だがあの少女は素直じゃなかった。
しかしそう言っているとどこからから矢が飛んできそうなのでやめておこう。
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町には、数時間後 アレクが言ったとおり昼の時間帯に到着した。
そこはルヴーシュ公国にある港町だった。
水夫や商人などが所狭しと仕事をしており色々な物売りもいる。
「じゃあまずはご飯にしようか」
アレクに賛成し、酒場に行く事にした。
酒場では昼頃なのでたくさんの人がいたがなんとか席を確保する。
さて、何を食べようか・・・。
分からないのでアレクにまかせることにした。
「ここは港町だからね、やっぱり魚がおいしいよ」
と、言う訳で魚料理を頼むことにした。
そして運ばれてきたのは。
塩漬けにした魚を野菜と一緒に蒸し焼きにした物とパン、それに魚のスープだ。
さて、それじゃあ食べよう。
最初に蒸し焼きに手をつける。
程よく蒸された魚は身は柔らかく絶妙な塩加減がたまらない。
また一緒に蒸されている野菜もこれまた格別なうまさだ。
魚のスープも食べたことのない味だがとてもおいしい。
パンはネス公国の調理法とは違うもので食感や味が違ってるがこれもまた良い。
「どう、美味しいでしょ?」
うなづくことしか出来なかった。
食後
「満足した?」
勿論、大満足だった。
若干食べ過ぎたきもするがそれでも値段はアレク曰く安いらしい。
港町だから魚が安いのだろう。
ちなみに金は昨日襲ってきた山賊から奪った。
アレク曰く、因果応報だそうだ。
「さてと、それじゃあ一旦別行動にしよう、少し行きたい場所があるんだ」
アレクがそういったので一人で町を回ることにした。
町は平和そのもので、ホルムを思い出す。
とはいってもホルムは少し前まで平和とは無縁だったが・・・。
暇なので露店を見て回ることにした。
露店では食べ物から日用品、アクセサリーまで様々なものが売られていた。
その場で価格交渉をすることができとても活気がある。
「そこの人!」
自分を呼ぶ声が聞こえ、振り返る。
「お前さんだよお前さん、あんたの剣、ちょいとくたびれては居ないかい?」
何が言いたい?と聞くと。
「いやぁ、ちょいと良い研ぎ師を知ってるんですが、そいつに格安でその剣を研いで貰うことができるんでさぁ」
その誘いに無言で剣を取り出す。
そしてそれを引き抜いた。
「お、依頼するんですね。・・・なっ!?」
剣の刀身には傷ひとつなく全くもって刃こぼれもしていない。
ましてや知り合いの天才鍛冶見習い曰く「この剣・・・全く劣化しないよね~」といわれた剣だ。
それを見て驚いた男は剣をまじまじと見つめる。
「い、良い剣だ・・・お前さん!、研ぎ師の事は忘れて良い!その剣をちょいと売ってくれねえか!金ならいくらでも出す!」
やんわりと断り、剣を鞘に収める。
もとより売る気はない、ましてや・・・この剣は自分にしか扱えない。
「チッ・・・」
悪態を付いて男は去っていった。
気を取り直して店を見て回ることにしよう。
そして目についたのが、一つのネックレスだ。
円状の金属に石がついている装飾で身を守るおまじないをかけてあるらしい。
そういったアクセサリーは何個か手に入れたことがあり信用できると考える。
値段を聞くと十分買える金額だったのでそのまま購入した。
しかし装備をしてみるとあまり自分には似合わない。
体格的にはアレクのほうが似合うのかもしれない。
総考えこれはアレクにプレゼントすることにした。
その後集合場所としてアレクが指定した場所に移動する。
「あ、来た来た」
既にアレクは待っていたようだ。
少し待たせてしまったようなので謝る。
「別に気にしなくて良いよ」
それなら良いが・・・。
そう思いつつ、先ほど買ったネックレスを取り出した。
助けてくれたお礼と言う名目でアレクにプレゼントする。
「良いの?気にしなくて良いのに、・・・ありがと」
喜んでくれたようだ。
自分を救ってくれた恩人にたいしてこれで良いのかと思ったが、喜んでるから大丈夫だろう。
やはりこういうところは少女だった。
「さて、それじゃあそろそろ出発しようか」
それが良いだろう、既にこの町でやることは終わっている。
そして今度はどこへ行くのだろうと聞くと。
「そうだなー、次はレグニーツァのほうにでも行ってみようか」
レグニーツァ。
アレクに教えて貰った話だとルヴーシュの南にあるらしい。
ルヴーシュと同じく港があるが、海賊の被害が多く海軍も存在する。
とはいえ陸路なら海賊の危険はないだろうし、賛成した。
「よし、それじゃあレグニーツァに行こうか」
そうして二人は港町を発ち南に歩く。
レグニーツァに向かうことが運命に定められているとは知らずに・・・。