廃都の騎士と戦姫   作:やきパスタ

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三話

港町を出発してから数日が経った。

 

そんな頃のレグニーツァへの道中、山賊と国の兵士との戦いに遭遇する。

数十人の山賊と兵士が殺しあっており石やら矢やらが飛び交っていた。

 

「うーん、ちょっとここは通れそうにないね・・・」

 

気が立っている両者の間を通ろうとすれば襲われることは確実だろう。

そうでなくとも矢や石が危ない。

それに、山賊は良いが兵士に危害を加えればお尋ねものになってしまう。

 

「しょうがない、迂回しよう」

 

アレクの言うとおりここは迂回をすることにした。

道からは外れるがたぶん大丈夫だろう。

別に急いでいる旅でもない。

 

「そうそう、旅は楽しまないと」

 

3年間も旅をしていれば、自ずとそういった考えになるのだろう。

自分もそれを見習わなければいけない。

 

そして迂回中に綺麗な川を見つける。

触ってみると水も冷たく気持ちがよかった。

丁度良いのでアレクに休憩を提案する。

 

「そうだね、一旦休憩にしようか」

 

アレクもそう言ってくれたので、少し遠くで水浴びをして汚れを落とすことにした。

 

「水浴び?、分かった、いってらっしゃい」

 

そうして川の上流に向かう。

丁度良い岩をみつけたので剣をそこに立てかけ服を脱いで置いておく。

そしてそれが見える位置で体を洗い始めた。

手で触れる以上に冷たいがそれはそれで気持ちが良い。

少し肌寒いが十分に耐えられる程度だ。

 

体を洗い終えてスッキリしたので着替えて戻ると、

アレクがなにやらぼーっとしていた。

 

「・・・ん?お帰り」

 

出会ってから数日経ったが、たまにアレクはああいった風にぼーっとしていることがある。

色々と考えてることがあるのだろう。

3年も旅をしているとはいえまだまだ少女、多感な時期だろう。

しかしそんな少女が人を殺す術を覚えなければならないとは・・・。

やはり難儀な世界だ。

 

 

「んー・・・じゃあそろそろ出発しようか」

 

水浴びも終わっているしそうすることにした。

 

1時間くらいたち道に戻ることができた。

しかし後ろのほうからは相変わらず戦いがやっているようで叫び声が聞こえる。

山賊が兵士の声かは分からないがかなり熾烈な戦いを繰り広げているようだ。

 

「最近は、山賊も多くなってるなぁ・・・」

 

アレクの言葉はルヴーシュとレグニーツァの間の現状を表していた。

たまにすれ違う商人も護衛を引き連れていたりと、物騒な世の中のようだ。

港町を出発してからも二回ほど山賊に襲われた。

もちろん問題なく倒すことはできたが、正直人を殺す事はあまり良い気分ではない。

たとえ何人殺してきたとしてもだ。

それと山賊は敗残兵などがなる場合が多いらしい。

そう考えると生まれながらの山賊というのはあまりいないのかもしれない。

 

「そうだね・・・というより山賊についていく女の人があまりいないから」

 

なるほど、それじゃあ子供すら出来ないわけだ。

しかしそれでも男ならそういった欲望はあるわけで・・・。

 

「・・・何を考えているのかな?」

 

気のせいだと言いわけをしておいた。

・・・少し下世話だなと自分でも思う。

アレクは・・・そういった輩から身を守るために戦う術を身に着けたんだろう。

 

「まぁ、それもあるけど・・・それだけじゃないよ?」

 

聞こえていたようだ。

 

「獣とか色々といるからね、・・・それに竜だって」

 

竜と聞いて驚く。

その名はかつて自分も死闘を繰り広げた存在だった。

 

「へぇ、竜と戦ったことがあるんだ!」

 

自分が戦ったのは青い竜・赤い竜・緑の竜・黒い竜・白い竜の5匹だ。

全員差はあれど強敵で楽な戦いは一度としてなかった。

 

「君にも色々とあったんだね」

 

 

その夜。

 

暗くなってきたので野宿をする。

 

食事のメニューは、港町で買った魚を保存用の小さい壷に入れてつけておいたものを焼く。

そしてそれをチーズと一緒にはさんだものだ。

 

「ん・・・さすがだね、今日も美味しいよ」

 

あれから食事の担当は自分になった。

自分自身料理を作るのは嫌いじゃないのでとても楽しかった。

 

しかし食事中も、アレクはなにやらぼーっとしていることがあった。

とても深刻なことを考えているようだ。

 

 

食事を終えて寝る準備も終えた後のことだった。

アレクがとても真剣な表情でこちらを見ている。

どうかしたのかと言う前にアレクが話しかけてきた。

 

「ねぇ・・・少し良いかな」

 

アレクが何かを伝えたいようだ。

とても真剣なのでこちらも真剣に内容を聞く事にした。

 

「前に・・・僕が旅をしている理由を聞いたよね」

 

アレクが旅をする理由・・・確かに聞いた気がする。

その時はいずれ話といわれたが。

 

「・・・さすがに話しておきたくなってね、・・・聞いてくれるかな」

 

話してくれるというならば嬉しいのでもちろんだと返す。

 

「ありがと。・・・それじゃあ、話すね。・・・僕の家系の女はね、血の病といったもののせいで、代々30歳くらいまでしか生きられないんだ」

 

重いことを聞いた。

30歳、それは一般的な人の半分程度の寿命だ。

そんな若さで死んでしまう家系・・・その家系に誇りをもっていたら悪いが、不幸な生まれだろう。

アレクはいま14歳といっていたが、それでもあと16年だ。

 

「続けるね・・・、それでお母さんも早くに死んでしまったんだ、でもそれまでにたくさんの事を教えてくれた」

 

曰く生存術や戦い方など様々なこと。

それはアレクが生きるためにと母親が教えてくれたものだ。

そうしてアレクは11歳までは村で育ったらしい。

つまり、アレクは母親が死んでしまったから旅に出たということになる。

 

「いや、まだ続きがあるんだ・・・それでもお母さんは僕が11歳の時に死んじゃったんだけど」

 

・・・アレクが11歳の時に30歳で亡くなった・・・ということは19歳の時にアレクを産んだのことになる。

しかしそれはさほど珍しいことではない。

重要なのは産んだ年齢ではなく亡くなってしまった年齢だろう。

むしろ生まれなら自分のほうが珍しいだろう、といっても今は関係のないことだが。

 

「お母さんは自分のことをわかっていてもしっかりと僕を育ててくれた」

 

そうだ、それは重要なことでとてもすごいことだろう。

 

「それでね・・・僕も、そんな風になりたいんだ、端的に言えば、・・・子供が欲しいんだ、それと僕の血の病の宿命を受け入れてくれる人を」

 

・・・アレクの言葉には強い願いが篭っていた。

 

「わがままな願いだってことは分かってる・・・でも、僕は」

 

アレクがその先を言うまでに、ぎゅっと抱きしめる。

そして。

 

それはわがままなんかじゃない、君の大切な夢だ、君がかなえるべき夢だ。

 

「あ・・・」

 

こうすることしか出来なかった。

ただ、一つ思い出したのは・・・同じく自分の宿命に振り回された一人の少女だった。

性格はまるっきり違うが、それでも今は、アレクとその少女を重ねてしまった。

 

「・・・」

 

ふと、アレクからの返事がないことに気づいた。

それにアレクの体が熱い。

これは・・・血の病と言っていたのでもしかして体の調子が悪いのかもしれない。

 

「い、いや、大丈夫だよ・・・まだ生まれてから一度も症状は出てないから」

 

それなら良いが・・・あまり無茶はしてしないでほしかった。

 

「う、うん・・・あれ、もしかして気づいてない?」

 

何が気づいていないのだろう。

 

「・・・いや、なんでもないよ」

 

若干あきれた顔をしながらアレクはふてくされるように寝袋に篭る。

理由は不明だが怒らせてしまったようだ。

 

「・・・考えてみれば、まずは落とさないとダメかぁ、お母さんもそこは教えてくれなかったからなぁ・・・」

 

なにやら呟いているが、良く聞こえない。

こういう時、あの野生児なら聞こえたのだろうが・・・。

 

 

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