白竜の世間話   作:白浜 真砂

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 なかなかあんまりな感じでアレしてしまったイリスさんが、ディアマンテスに操られ始めてどこぞへと潜伏している時の事を妄想してみました。

 白竜の世間話を書いている最中適当に曲を聞きながら作業をしていたんですが、その時にいきなり冒頭のシチュエーションが頭の中に出てきてなんとなく妄想を纏めてみた次第です。
 DDONは現在やっているゲームの中で一番プレイしている頻度が低いんですが、なぜか一番色々な話を思いつくんですよ。
 まぁそれだけ世界観やストーリーが素敵なんでしょうけどね。DDONのシナリオライターさんには足を向けて寝られません。

 とりあえずR-15の範囲で留まる短編を思いつき次第書き溜めて投稿していくつもりではいます。
 目下の問題は、R-15で留まる話がストックできるかどうかなのですが……。


焚き火の横で

 夜更け過ぎの深い森の中で、私はレオと焚き火を囲んで野宿をしている。

 燃えている枝が静かに爆ぜる音と風が木々を揺らす音以外何も聞こえない静かな夜に、交代で睡眠をとりながら二人きりで夜が明けるのを待っていた。

 そう言えばレオと夜明かしをするなんて、随分久しぶりだなぁ。……特にレオが白翼覚者隊の統率になってからは、一緒に神殿の外に出る事なんてあんまりなくなっちゃったもんなぁー。なんて思いながら、静かな寝息をたてているレオを、私は見るともなしに見ていた。

 

「ふふっ、よっぽど疲れていたんだろうな。……ぐっすり眠っちゃって。」

 

 近くの木の幹にもたれかかっているレオは安らかな顔で、半ば体を投げ出すように眠っている。

 白竜に仕える覚者のトップとして色々な責任を背負っているレオは、最近はいつも険しい顔をしていてあまり笑顔を見せなくなった。

 そんなレオが心配な事もあって彼の右腕を買って出てはいるんだけど、それでも彼の重荷を少しでも減らせているのかは分からない。

 ……だから私は努めて明るく振る舞いながら、レオの右腕として……私に出来る精一杯のことを、一生懸命にやっているつもり。

 

(まぁ、そんな私の気持ちなんてレオは全然分かってくれないんだろうけどね……。)

 

 そう心の中で呟くと、虚ろになっているはずの胸の内がいつも抑えている彼への思いで苦しくなってきて……。その苦しさに堪えきれずに少しため息をつくと、そっと足音を忍ばせてレオの側に近寄った。

 

 少し俯くような格好で眠っているレオの睫毛が、焚き火の明かりを受けて目の下に影を落としている。

 薄く開いた唇が乾いていて、そこから時々寝言のようなものを漏らしていた。

 ためらいながら彼の頬に触れてみると、少し煩わしそうに眉を寄せるけれども起きる気配はない。

 ……私は彼が目覚めない事を祈りながらレオの顔に顔を寄せて、そっと唇に口づけた。

 

 

 その刹那、音もなく唐突に現れた黄金色の壁が間に割って入ってきて、レオと引き離されてしまった。

 

「きゃあああっ!!……な……っ、何なのこれ!?どういう事……?」

 

 突然現れた黄金の壁に回りを囲まれ、更に足元と頭の上も黄金の板のようなもので覆われてしまう。

 黄金の壁によって完全に閉じ込められた私はここから出ようと必死で壁を叩くけれど、黄金の壁はびくともしない。

 

「嫌ああっ!ここから出してよ!……レオっ!早く、私を……助けて………っ!!」

 

 そう叫んだ瞬間、私は全身を汗まみれにしながら飛び起きた。

 

「……はぁ……。何だ、夢か………。」

 

 辺りに人の気配はおろか獣の気配すらなく、独りで隠れ潜んでいる不気味なほど静かな山の中で、埋み火にした焚き火の横で眠っていた事を思い出すと、ふうっ……。とため息をつきながら私は体を起こして、額に滲む汗を手の甲で拭った。

 

 

 あれはもう随分昔の事になってしまったのだろうか。まだレオが白翼覚者隊の統率なんていう役目を与えられてなくて、私達がまだただの覚者だった頃の色々な事を、あいつに……ディアマンテスに操られていない間に、最近よく思い出す。

 あの頃にはもう戻れないのは分かっている。それどころか、神殿にも……大切な人達がいる私の帰る場所にも、もう二度と戻ることはできないんだろう。

 一体どこで間違えてしまったんだろう。どうして私なんだろう。あいつに操られてこれ以上被害を出さない様に神殿から離れてからずっと考え続けているけれど、答えは全然見つからない。

 

 ……神殿は今、どうなっているんだろう?

 多分レオの側には、あの子……ついこの前までは可愛い新人だったのに、あっという間に頭角を表してレオの信頼を得ていったあの子がついているだろうから、向こうは大丈夫のはず。

 きっとこの状況も、レオとあの子と、クラウスと……みんなが力を合わせて打開できると思う。……ううん、打開するはずだ。

 

 

 ……あの子と初めて逢ったのは、あの子の初陣の時だった。グリッテン砦がオークに襲撃された時に、レオと二人であの子に色々声をかけながら砦まで護っていったのを昨日の事のように思い出す。

 白竜の加護で身につけた装備を着心地が悪そうにしながら一生懸命魔物に立ち向かって行ったのを、戦いながら微笑ましく見ていたっけ。

 人使いの荒いレオに目をかけられて……というよりは目をつけられて、こき使われて色々な事をさせられているうちに、あの子は本当に強く、頼もしくなった。それは側で一緒に戦う事がレオよりも多かった私が一番良く知っている。

 それでもあの子は出逢った頃と変わらない穏やかな笑顔で、神殿で会うといつも嬉しそうに駆け寄ってきて、私に気さくに話しかけてきた。私が自分を見失い始めて失意の只中にいた時も、私を常に気遣ってくれていた。……そして今も恐らく、あの子の事だから私を元に戻す方法を必死に探ってくれているんだろう。

 

 いつの間にか、こんなに短い間なのに……レオに対する思いとは別の意味で、あの子が私にとって大切な人になっていたんだと改めて気付かされる。

 もうあの子と謁見の間で他愛もない話をして、ジョゼフ様に嫌な顔をされる事もないんだろう。

 もうあの子に背中を預けて、共に戦う事はないんだろう。

 もう二度と、レオと、あの子と……。みんなと笑いあうことは出来ないんだろう。

 ……そして何よりも、私の居場所だったところに……当然のようにあの子が収まってしまうんだろう。

 

 私がこんな風になってしまった以上、他の誰かがレオの補佐をしなければいけないのは分かっているし、今それに最も相応しいのはあの子だというのも分かっている。でもいきなりこんな風になって、理不尽に追われる羽目になるなんて……。そう思うと、涙が勝手に溢れ出してしまう。

 

「……アークの調査になんて、参加しなければ良かった。」

 

 自分を見失いはじめてから幾度となく呟いてきた独り言を、涙と一緒にこぼす。

 

「……何で?どうして!?……嫌だ。こんなの……あんまりだよ……!」

 

 

 座り込んで膝を抱えながら無意識のうちにそう呟いて、私は一人、声もなく泣いた。

 




 レオとイリスがよくメンヘラカップルとか言われていますが、その意見には私も概ね同意しますw

 だっていくら敵に操られているとはいえ、普通あんな風に即座に斬ろうとしないでしょう?
 しかも覚者の感覚から見てもだいぶ昔からずっと想いを寄せてくれていて、なおかつそれを表に出さないでいてくれているのに。その上ずっと側に居て自分の仕事を手伝ってくれているのに!
 何となくですが、レオはそのイリスの思いは何があっても絶対に自分を裏切らないと思っていたような、ある意味イリスに甘えていたような感じがするのです。だからこそためらいもなくイリスに刃を向けられた、と。
 それでもますます彼女の意識の侵食が進むにつれて、ディアマンテスがイリスに対して具体的に何をしたのか、どんな甘言で惑わせたのかを知りたくなったのではないかと。何しろ自分ではなくそいつの事を愛しているなんて言われてしまいましからね。それにレオもディアマンテスと対決する時に、イリスに何が起こったのか知りたい、ではなく彼女が見たものを知りたいと言っていましたし。

 ……まぁただのゲスの勘繰りなのですが、白竜の世間話でも題材にした、前作ではストーリーを進める際に覚者がしているような、DDONのプリーストのジョブマスターが言うところの『更に高次のもの』に至るのに欠かせないものを封じてしまっている、今作の覚者の歪みのような部分を分かりやすく表現していた二人だったので、つい色々考えてみてしまったんです。

 次のパッチでレオは傷心旅行(?)に出かけてしまってプレイヤーが統率代理みたいな感じになるっぽいんですが、ストーリーのどこかで答え合わせができたらいいなぁと、とても楽しみにしております。
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