血を受け継ぐ者たち   作:Menschsein

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永遠の王国 ⑥ (良い子は見てはダメであんす)

 シャルティアがイビルアイを引いて部屋から退室していくのをアインズは眺める。まるで奴隷を連れていく商人だなとアインズは思った。イビルアイが尻尾をつけている状態では、犬の散歩をするどこかの貴族のご令嬢というようなイメージで、晴れた青空の下、シャルティアが日傘を差しながらペットを連れて散歩していたら、それは長閑なナザリック学園の風景に溶け込んでいたかも知れない。しかし、尻尾がないだけで、奴隷を連れていく女主人という非人道的な光景のように見える。単なる印象の違いであるような気もするが、印象が全く違ってしまうのはアインズにとって不思議であった。

 

 そもそも、自分もハムスケをペットとして扱っていて、ハムスターに騎乗するというのも今更ながら如何なものかと思う。それに、イビルアイも喜んでいたようだったので、虐待をしているという訳でもない。

 尻尾の有る無しでここまで変わってしまうとはなぁ。ペロロンチーノさんの趣味も、意外と奥深いものだな。俺が思いつきで口を出して良いものではなかったかもな、とアインズは少しだけ反省をした。

 

 さて、次は二つ目の噂か……。

 

『本校舎の東の階段。屋上へと続く階段の踊り場にある鏡。それは新世界に繋がっている』

 

 なんなんだこれは? 新世界だと? これは実地調査をする必要があるな。アインズは、執務用の机から立ち上がり本校舎のその場所へと向かう。

 

「ただの鏡のように偽装されているが、これは明らかにマジック・アイテムだな」とアインズは断定する。

 道具上位鑑定オール・アプレーザル・マジックアイテムで調べた結果、転移門の鏡ミラー・オブ・ゲートが踊り場の壁に埋め込むように置かれている。それに芸が細かいという言うべきか、『寄贈 ペロロンチーノ』という文字も鏡の横に刻まれている。そういえば、卒業生が記念に贈ったりしていたな、とアインズは遠い小学生時代のことを思い出した。

 が、問題は、この転移門の鏡ミラー・オブ・ゲートが何処につながっているかである。

 噂では新世界に繋がっているということだったな……。こんな場所に来る学生がいるとはあまり思えんが、万が一、このゲートを通って行方不明になったら学校の責任問題だからな……。

 とりあえず行ってみるかと、アインズは門を通った。

 

(ここは…… クローゼットの中? 真っ暗だが…… これは服か…… 白や黒、赤のボールガウン。シャルティアの服のように思えるが……。とういうことは、これはナザリックのシャルティアの部屋と繋がっているということか? )

 

 ペロロンチーノさんは、シャルティア専用の秘密の通学路でも作りたかったのか? だが、ナザリック学園を外に作ったからには、こんなゲートがあるのは防衛上問題があるぞ。ペロロンチーノがナザリック学園の設立を提案したとき、学園は第六階層に建設される予定であった。ナザリック間の移動であれば、そこまで問題はないであろうが、現状では問題がある。これは撤去をしておくべきだな、とアインズは考える。

 

 そして、再び転移門の鏡ミラー・オブ・ゲートを通ってナザリック学園に戻ろうとするが、その時クローゼットの外から声が聞こえた。

 

「身も清め終わったでありんす。さて、アインズ様のご言いつけ通り、貴方のを散らすでありんすね」

 シャルティアとイビルアイは既に浴槽で身を清め、一糸まとわぬ姿であった。

 

「お願い致します」

 

(この声は…… シャルティアとイビルアイだな。やはりここはナザリックか。学園の生徒がもしこのナザリックにあのゲートを通って迷い込んだ場合、侵入者として始末されるぞ。まったく……)

 

「日曜大工が好きってことで、デミウルゴスにこの日の為に、造ってもらっていたでありんすえ」

 

 何をだ? とアインズは疑問に思う。そして、その好奇心がゲートを通る足を止めさせた。

 

「す、素敵に太い」とイビルアイが言う。

 

 シャルティアが持っていたのは、純白な棒であった。長さは五十センチほどであろうか。

 

「当たり前でありんす。これは人間の大腿骨から造られているのよ。人間の骨で一番大きい部位でありんす。それ以外に何か気付くことはないでありんすか?」

 

「ま、まさか…… アインズ様のお骨様と似ている……?」

 

「流石は私と同じ屍体愛好家ネクロフィリアでありんす。これはアインズ様と骨格が似た人間の骨でありんすえ。デミウルゴスが候補として持って来た数万本の骨から厳選に厳選を重ねて選び出した一品でありんす。この骨ですると、まるで気分はアインズ様のお骨様で……。あぁぁ……。想像しただけで気をやってしまうわ。あら、私のが床に垂れんした。舐めなんし」

 

 イビルアイはすぐさま床の雫を舐めとり、そしてシャルティアの足の指の間を丁寧に舐める。そして、シャルティアの真っ白な太腿を伝って流れてくるものも綺麗になめ取っている。

 シャルティアはシャルティアで、持っていた骨を「いつか愛しいアインズ様のお骨様をこうやって……」と丁寧に舌でなめたり咥えたりしている。

 

「なかなか上達したでありんすね」

 

「はっ。早くください!」

 

(どうやら骨をシャルティアはイビルアイにご褒美であげようとしているようだな。シャルティアはイビルアイを犬扱いしていたから、ご褒美に骨をあげるっていうことか。犬のおやつに骨をあげたりするって聞いたことがあるからな。きっとそうだ。うん、そうだよな、ペロロンチーノ!!)

 

「慌ててはいけんせん。アインズ様の命令は絶対でありんす。アインズ様のお話では、私がイビルアイの純潔を奪うっていうことでありんした。このままこれを入れても、私が奪ったことになりんせん。ひとまず股を閉じなんし」とシャルティアは言う。

 

「はい……」とイビルアイの返事が聞こえる。明らかに落胆しているような声であった。

 

「安心しなんし。このデミウルゴスが作ったこれの優れたところは、両端が使えることであんす。見てみなさい。この両端が亀の頭のように丁寧に磨かれているであんす。流石はデミウルゴス。いい仕事をするであんす。きっとペロロンチーノ様が仰っていた双頭ギルドーというアイテムもきっとこんな形であったと思えんす」

 

「そ、それでは!」とイビルアイは今度は歓喜の声をあげる。

 

「私がまず入れて、そしてその反対に入れてあげんす。そうすれば、私がちゃんと奪ったことになりんす。まずは私からでありんす」とシャルティアは立ったまま少し足を大股にし、そしてその骨を自らの奥へ奥へとゆっくりと沈めていく。

 

「あぁ。いつの日か本物のアインズ様のお骨様をいただけたらぁぁぁぁあぁあ。太くて固いぃぃぃぃぃいい。はぁ。さて、イビルアイ、四つん這いになってお尻をこっちに向けなんし」

 

「はっ! はい」

 

「今日はいつもの穴とは違う穴でありんすよ。最初は痛いかもしれんせんが、この骨がアインズ様のお骨様だと思えば、痛みなど忘れるほどの至福の喜びに溢れんす。さぁ、イビルアイ、散りなんし」

 

「あああっぁああああ、アインズ様ぁぁぁっぁぁぁあ」とイビルアイの大きな叫び声が聞こえる。イビルアイの子供のような声の中に、妖艶さが混じっていた。

 

「全部入ったでありんすね。では、動きんす。ぎゅっと締め付けているでありんすよ。でないと私が気持ちよくなれんせん」

 

「はぅ。はぃい」

 

 ・

 

 ・

 

 アインズは再びゲートを通って、そして大きなため息を吐いた。

 

上位道具破壊(グレーター・ブレイク・アイテム)

 

転移門の鏡ミラー・オブ・ゲートを破壊し、クリエイト魔法を使い一般的な鏡を造りだした。

 

「何が『新世界に繋がっている』だよ……。勘弁してくれ。さてと…… 気を取り直して三つ目の噂話は……」 

 

『寮のお風呂で、体を洗わずに湯船に入ると、恐い目にあうらしい』

 

 これは、間違いなく“るし★ふぁー”さんの仕業だな。大浴場スパリゾートナザリックと同様のギミックを仕掛けていたのか……。よし、破壊しに行こう……。

 

 ナザリック学園の寮の風呂も、ナザリックの地下九階層に設けられた大浴場スパリゾートナザリックには及ばないものの、9種17個の浴槽を備えた大浴場となっている。二十四時間掛け流しの贅沢な浴場である。

 

 アインズは、完全装備となってその大浴場に踏み入る。そして、獅子ライオンの口からお湯が注がれている浴槽に、ゆっくりと、だが確かな手つきで、ハンドタオルを沈めていく。

 

 が、まったくギミックが反応する様子は無い。アインズは、他の浴槽にもハンドタオルを沈めていく。だが結果は同じであった。

 どうやらこれはただの噂だったようだな、とアインズは安堵する。

 

 だが、アインズはそれと同時に悪い予感も覚える。“るし★ふぁー”さんが、女湯にギミックを設定している可能性だ。いや、大浴場スパリゾートナザリックの例で考えるなら、その可能性は高い。

 フレンドリーファイアが解禁されているという前に、ナザリック学園の生徒には、危険すぎるギミックだ。最悪死人が出てしまう可能性がある。

 

(気が進まないが…… 一応調べてみる必要があるな……)

 

 アインズがそう考えていると、女湯から声がしているのに気付いた。

 

「今日も授業疲れたわね」

「みんな、必死。頑張ってる」

 

(どうして、この浴場は壁が薄いのだろう……)

 

「それで、どの温泉がお勧めなの? 私はいつも薬湯にしか入っていなかったけど」

 

「この浴槽。強酸性泉で、お肌つるつる」

 

(声からすると、ラキュースとあの双子だろうな。声がそっくりでどちらかまでは分からんがな)

 

「火山の匂いのお風呂ね。これがティアの最近のお気に入りなの?」

 

「くんかくんか、よいにほい。まぁ、入った入った」

 

 ラキュースは、ティアに促されるままその温泉に体を沈めていく。

 

「痛ぅ。少し肌にピリッと来る温泉ね…… でも、なんだか気持ちいいわ」

 

「そのピリピリがお肌の老廃物を落としてくれる。そして、お肌つるつる」

 

「そうね。なんか慣れてくると気持ち良いわね」

 

「…… ラキュース、尿道口で自慰してる」

 

「え? な、何を言っているのよティア。私はこれでも貴族の娘よ? そんなはしたないことするわけないじゃない」

 

「嘘。足を組んで左手で恥部を覆うように隠しながら、実は右手で尿道を開いてた。この温泉のピリッと来るのにラキュースも嵌まった。忍者を舐めない。この後水風呂に入って冷やしてからまたこの温泉に入ると更に気持ちいい……」

 

「なにふざけてるのよ。もう、私は先に上がるわね」

 

「行かせない」とティアはラキュースの体に抱きつき、ラキュースの体を拘束する。忍者としてのスキルのようだ。

 

「ちょっとティア! 私はそういう趣味は無いって前にも言ったでしょ!」

 

「ほら。やっぱり…… でも、栓をしているとこの温泉を楽しめない」

 

「だ、だめ。止めなさいティア。今、膀胱に凄く貯めているところなの。それ、抜かないで!!」

 

「いや、止めない。ラキュースにもこの温泉のすごさ分かって欲しい」

 

「だ、だめ。今抜かれたら……ぁあああああああ」

 

 ちょろろろぼぼぼじょじょじょじょぼぉぼ……

 

「この温泉を尿道管に逆流させると奥までピリピリ。子宮がぎゅんぎゅん。きっとラキュースも気に入る……」

 

――もう少しお風呂のマナーを……ぉ?

 

――何? ライオンが動き出した?

 

――マナー知らずに風呂に入る資格はない! 湯船の中に放尿するなど、これは誅殺である!!

 

(やばい! やっぱりギミックは女風呂か! “るし★ふぁー”さん! 貴方って人は!!! もう女湯に踏み込むしかない!)


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